確定申告とは、税務署に前年の所得額を申告して納税額を確定させる作業のことです。38万円を超える所得があれば個人・法人ともに行う必要がありますが、うっかり忘れてしまうと追徴課税が課せられることも。
今回は、確定申告の種類である「青色申告」「白色申告」について詳しく解説します。
目次
1.確定申告における青色申告と白色申告の違いとは?
確定申告とは、その年にあった収入や控除額を税務署に申告し、納税すべき税額を決める手続きのことです。
(1)確定申告の種類
確定申告には青色申告(10万円控除・65万円控除)と白色申告があります。
青色申告と白色申告は、大まかに言うと必要になる帳簿の書き方と控除額が違います。
青色申告(65万円控除) | 青色申告承認申請書が必要・複式簿記・特別控除65万円+基礎控除38万円 |
青色申告(10万円控除) | 青色申告承認申請書が必要・簡易簿記・特別控除10万円+基礎控除38万円 |
白色申告 | 事前の申請必要なし・簡易な記帳・基礎控除38万円のみ |
また、青色申告をするのは事業所得を得ている人(個人事業主)や法人と不動産所得を得ている人のみ。
その他の人や、青色申告承認申請書を提出していない人・法人は白色申告を行います。
(2)誰が確定申告をする必要がある?
確定申告は個人・法人で38万円以上の所得があった人や、給与以外の収入が20万円以上あった人が行います。
- 配当所得があった人
- 不動産所得があった人
- 事業所得があった人(個人事業主)
- 給与所得があった人(2箇所以上から給与を得ている人や、職場で年末調整を受けていない人)
- 退職所得があった人
- 譲渡所得があった人
- 山林所得があった人
- 一時所得があった人
- 雑所得があった人(年金、副業による所得などがあった人)
給与所得を1箇所のみから得ていて、所属している会社が年末調整を行なっている場合(一般的なサラリーマンなど)は確定申告する必要はありません。
ただし、給与に加えて副業などの所得があった場合や、住宅購入や寄付などをして控除を受ける場合にはサラリーマンも確定申告の必要があります。
(3)確定申告の提出時期・期間は
確定申告の提出期限は、毎年2月16日~3月15日です。
2月16日と3月15日に土曜日・日曜日が重なる場合には、それぞれ後ろ倒しになります。
2.青色申告と白色申告のメリット&デメリット
それでは、青色申告と白色申告の違いやメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
(1)青色申告のメリット
- 青色申告特別控除
- 純損失の繰越し控除
- 青色専従者給与
- 少額減価償却の特例
- 家事按分
青色申告のメリットは全部でこの5つ。具体的にどのような利点があるのでしょうか。
青色申告特別控除
青色申告の最大のメリットは、白色申告より控除額が大きいことです。「青色申告特別控除」といって、帳簿の付け方によって基礎控除に加えて「10万円」「65万円」の控除枠がもらえます。この控除があると、収入額のうち10万円・65万円が無条件に非課税ということになるので、大幅に所得税を節約できます。
純損失の繰越し控除
青色申告では、事業が赤字となった場合、その赤字額を3年まで繰り越すことができます。例えば、1年目は100万円の赤字・2年目も100万円の赤字・3年目は200万円の黒字が出た場合、過去2年の赤字を繰り越して3年目の事業所得を0とすることができます。
1年ごとに税額を計算する白色申告では、3年目の200万円にそのまま課税されてしまうので、収入が年によって不安定な場合も青色申告にメリットがあります。
青色専従者給与
青色申告は「専従者給与」でも優遇されています。白色申告の場合、家族など生計を同一にする従業員を雇っていた場合、専従者給与として差し引けるのは、配偶者86万円、その他の親族は50万円と決まっています。一方青色申告では、妥当性のある金額であれば専従者給与に上限が設けられていません。
ただし、このシステムを利用するためには、その年の3月15日までに税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要があります。
少額減価償却の特例
白色申告の場合、事業に必要な機材などの購入で、一括で減価償却できるのは10万円までです。10万円を超えた分は、耐用年数に応じて少しずつ経費として計上します。
青色申告ではこの一括減価償却が30万円まで可能。これを「少額減価償却の特例」と言います。一括で経費に算入できる額が大きくなるので課税所得が減り、納税額の調整が可能です。
家事按分
自宅などで事業を行なっている場合、「家事按分」といって家賃や光熱費などの一部を経費として算入できるシステムがあります。家事按分自体は白色申告にも認められていますが、青色申告ではその範囲が異なります。
白色申告では家事関連の主な部分が業務に関わっていなければ認められませんが、青色申告では業務に必要なことが明白であれば経費に認められます。
(2)青色申告のデメリット
一方で、青色申告のデメリットはこの2つです。
- 青色申告承認申請書が必要
- 帳簿付けが複雑
青色申告承認申請書が必要 | 青色申告をするためには、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。年度の途中で開業した場合には、開業から2カ月以内に提出しなければならなりません。 そのため、確定申告直前に、いきなり「青色申告をしよう!」と思い立ってできるものではないのです。 |
帳簿付けが複雑 | 青色申告の65万円控除を受けるためには、複式簿記で帳簿をつけなければいけません。手書きで複式簿記をつけるには、専門的な知識が必要ですし手間もかかります。 手間を減らすために会計ソフトを利用したり、税理士事務所に依頼したりするためにもコストがかかるというのがデメリットです。 |
(3)白色申告のメリット
白色申告のメリットは、記帳が簡単で手間が少ないことです。収支内訳書に売上や経費などを記入するだけの、シンプルな帳簿で申告が認められます。
青色申告のように事前申請等も必要がないので、節税よりも時間の節約を選びたい場合におすすめです。
(4)白色申告のデメリット
白色申告のデメリットは、以下の2つです。
- 特別控除枠がない
- 赤字を繰り越せない
特別控除枠がない | 白色申告で受けることができる控除は、どんな人も無条件で受けられる「基礎控除38万円」のみ。帳簿付けの手間は実質的に「青色申告10万円控除」と変わらないため、青色承認申請書を提出するだけで、追加で10万円の控除を受けることができます。 |
赤字を繰り越せない | 先の項目でも触れましたが、白色申告では青色申告とは違い赤字の繰り越しができません。そのため、赤字の年は青色・白色ともに非課税になりますが、黒字の年は過去の赤字で所得を打ち消せない白色申告の方が税額は重くなります。 業績が赤字と黒字を繰り返している場合には、青色申告の方が適しているのです。 |
3.個人の青色申告・白色申告について
それでは、個人が確定申告をする場合の流れについて、詳しく見ていきましょう。
(1)個人は「所得税」
個人が確定申告を行う目的は「所得税」の金額を算定するためです。ちなみに住民税も同じ所得額から計算されるので、「住民税」の金額もここで確定します。
(2)個人の青色申告・白色申告の流れ
個人が確定申告をする場合の流れは、以下の5ステップです。
- 青色申告の場合、「青色申告承認申請書」を提出する
- 請求書や領収書を保管しておく・帳簿をつけておく
- 確定申告書を入手する
- 確定申告書に記入する
- 確定申告書を提出する
①青色申告の場合、「青色申告承認申請書」を提出する
繰り返しになりますが、青色申告をするためには事前に申請が必要です。
また、個人で青色申告が認められるのは「個人事業主」のため、「開業届」を提出して事業主になる必要があります。
②請求書や領収書を保管しておく・帳簿をつけておく
確定申告には1年分の収支の証明が必要です。1月1日~12月31日までの収支を、それぞれの申告に必要な方法で記録し、その証明となる請求書・領収書を保管しておきましょう。
③確定申告書を入手する
確定申告書は税務署や市区町村役所の税務課で直接入手したり、税務署のホームページからダウンロードしたりできます。
④確定申告書に記入する
①住所・氏名などの基本情報を記入する
②所得金額を項目別に記入する
③控除額を項目別に記入する
- 所得金額から控除額を差し引き、課税所得を算出する
④課税所得を元に納税額を計算し、記入する
⑤確定申告書を提出する
確定申告書の提出は、所轄の税務署の窓口に直接提出・郵送・e-Tax3つの方法で行えます。
提出時に必要な書類は、以下の通りです。
- 確定申告書
- 収支内訳書(白色申告の場合)
- 青色申告決算書(青色申告の場合)
- 医療費控除の明細書(医療費控除を受ける場合)
- 源泉徴収票(給与所得があった場合)
- 寄附金の受領証明(ふるさと納税等、寄付をした場合)
(3)青色申告向きなのはこんな人
青色申告に向いているのは、以下のような人です。
- 個人事業主・不動産所得がある人・山林所得がある人
- 特別控除を受けて節税したい人
- 複式簿記で帳簿付けができる人
- 年によって年収にばらつきがある人
- 家族・親族を従業員として雇用している人
- 自宅で仕事をしているなど家事按分で節税できる人
(4)白色申告向きなのはこんな人
- サラリーマンなど、個人事業主以外の人
- 給与所得や副業での所得など、青色申告できない所得がある人
- 帳簿付けが手間だと感じる人
青色申告で申告できるのは「事業所得」「不動産所得」「山林所得」のみです。その他の「給与所得」「退職所得」「雑所得」などの収入があった場合には、青色申告はできません。
4.会社の青色申告・白色申告について
最後に、会社が確定申告をする場合の流れについて見ていきます。
(1)会社は「法人税」
会社が確定申告をするのは「法人税」の納税額を確定するためです。法人の種類と規模によって適用される法人税率が異なるため、自社の法人税率を事前に把握しておきましょう。
(2)法人税申告の青色申告と白色申告の流れ
法人税申告の際の流れは、次の4ステップです。
- 決算の確定
- 税務調整をする
- 添付書類を用意する
- 法人税申告書を提出する
①決算の確定
法人税の確定申告には、まず決算の確定が必要です。会計上のルールに従って、その年の収支や財務状況を整理します。
②税務調整をする
会計上の利益を税務上の利益に適応させるため、調整を行います。そして、法人税申告書の別表を使い、課税所得と法人税額を計算して記入します。
③添付書類を用意する
法人税の確定申告に必要な添付書類を準備します。
必要な書類は、以下の5つです。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本等変動計算書
- 勘定科目内訳書
- 法人事業概況説明書
④法人税申告書を提出する
添付書類と法人税申告書を税務署に持参するか、郵送・e-Taxで提出します。
(3)便利な会計ソフト
法人であれば多くの場合税理士に確定申告を依頼しますが、そうではない場合は会計ソフトが便利です。必要項目を入力するだけで、帳簿付けや確定申告書の作成が自動で完了します。
税理士に丸投げするよりは手間や知識が必要になりますが、コストを大幅に節約することが可能です。
5.まとめ
青色申告には、10万円・65万円の特別控除枠をはじめとしたメリットがたくさん。白色申告にも帳簿付けが義務付けられたので、手間の面では青色申告もあまり大きな差がありません。