源泉徴収されないフリーランスの方は、自分で支払うべき税金を計算して申告しなければなりません。フリーになったばかりで、どんな税金をどのくらい払えばいいかわからないという方もおられるのではないでしょうか。
今回はフリーランスの方が支払うべき税金と、その計算方法をご紹介します。
1.フリーランスの人が納める税金は?
フリーランス1年生の中には、どんな税金をどのくらい納めればいいかわからないという方もいるでしょう。
フリーランスの人が納める税金・保険料は、
所得税・住民税・国民健康保険料・国民年金保険料・個人事業税・消費税
以下の6つです。
税務上、フリーランスの収入は事業所得にあたります。年間の所得が38万円を超えると所得税が発生し、確定申告が必要となります。その所得税の確定申告に基づき、住民税の納入額が計算されます。
フリーランスの仕事のみで生計を立てている人は、所得税と住民税はほぼ支払わなければならない税金となります。
また、フリーランスはサラリーマンのように会社加入の保険に入っていないため、個人として国民健康保険と国民年金に加入します。「税」という名称ではありませんが、これもフリーランスの人が支払わなければならないお金です。
そして、個人事業税・消費税は一定の所得や売り上げを超える人のみに課せられる種類の税金のため、フリーランスだから絶対に支払わなければならないという訳ではありません。
2.所得税
先ほど少し触れましたが、所得税は年間の所得が38万円を超える場合に支払う税金です。この金額を超えると、確定申告をして所得税を納める必要が出てきます。
(1)収入と所得はどう違う?
税務の計算をする上では、「収入」と「所得」は異なります。
収入とは「売り上げ」のことで、フリーランスの仕事で実際に受け取った金額が全て収入となります。一方所得は、その収入から必要な経費を除いた金額のことを指します。
経費とは、仕事をする事務所の家賃や仕事に必要なパソコン、製造業なら材料の原価、仕事をするためにかかる交通費などです。
節税をするためには、この経費をなるべく多く計上して所得を減らすのがポイントです。
(2)所得税の計算方法
所得税は、
- 所得税額=課税所得金額×適用税率-控除額
- 課税所得金額=事業収入-必要経費-基礎控除(38万円)
という式で計算して求められます。
適用税率は所得が大きくなるほど大きくなります。控除も様々な種類・段階があり、0〜479万6,000円と幅広いです。
そのため、フリーランスの所得税がどのくらいかというのは一概には言えませんが、課税所得が200万円で5〜9万円、300万円で10〜17万円、400万円で20〜30万円くらいが目安です。
(3)所得税の節税となる控除
フリーランスが課税所得金額を減らして所得税を節税するためのポイントとしては、先ほど紹介した経費をなるべく多く計上することに加え、控除を効果的に利用することが挙げられます。
フリーランスならではの控除には、「小規模企業共済等掛金控除」があります。これは自営業者のための退職金積立制度のようなもので、フリーランスの仕事を廃業した時に掛け金に一定の利率を上乗せした金額を受け取れます。
支払った掛け金全額が控除金額となるため、フリーランスの方はぜひ利用したい制度です。
また、青色申告者の特典として与えられる「青色申告控除」もフリーランスならでは。最大65万円の大幅控除なので、可能なら青色申告を目指すのがおすすめです。
3.その他納めなければいけない税金など
その他、フリーランスの人が納める税金について、納付方法や金額の目安をそれぞれの項目で解説していきます。
(1)住民税
住民税は所得税の確定申告を元に計算されるため、特に申告は必要ありません。金額は「所得割(一律10%)+均等割(世帯割)」という式で求めます。
年間の所得が一定以下の場合は減額や免除という措置もありますが、その基準は自治体によって異なります。目安としては、所得200万円で10〜17万円、所得300万円で20〜27万円、所得400万円で30〜37万円ほどです。
課税所得の10%が住民税の概算額になるということもお聞きになったことがあるかもしれません。
(2)個人事業税
個人事業税は公共サービスの財源で、事業を行なっている都道府県に納めます。所得が290万円を超えた時に3〜5%の割合で課されます。税率は業種により異なるため、自分の事業の課税割合を知っておきましょう。
特に申告の必要はなく、確定申告を元に納付が必要かどうか判定されて、自動的に納付書が送られてきます。金額の目安は、所得290万円の場合9〜15万円ほどです。
(3)固定資産税
固定資産税とは、土地や家屋といった固定資産を持っている人が納めなければならない税金です。その不動産を事業所に使っているのであれば、固定資産税を経費として計上できます。
税額は「固定資産の評価額×1.4%」という式で求めます。例えば評価額3,000万円の不動産を持っていた場合、42万円が目安です。
(4)消費税
消費税は2年前の課税売上高が1,000万円以上の場合に課税されます。
計算方法には本則課税と簡易課税の2種類がありますが、本則課税がベーシックです。「消費税 = 売上の消費税-経費の消費税」という式で計算します。
(5)国民健康保険・国民年金
国民健康保険の金額や納付方法は都道府県によって異なります。
基本的には世帯割に加算されるため、住民税より高額になるケースが多いです。年ごとに一括、または半期ごとに各市区町村に納め、その金額が確定申告の時に控除されます。
国民年金はフリーランスの場合「第1号被保険者」となります。金額は一定の保険料額に保険料改定率(前年度の物価・賃金変動率などを考慮したもの)を掛けて計算します。
(6)フリーランスの税金支払額【計算例】
それでは、具体的にフリーランスの税金支払い額を計算してみましょう。今回は売り上げ600万円・経費150万円という人を例としてみます。
事業収入600万円-経費150万円–基礎控除38万円=412万円
上記の式で、まずこの人の課税所得金額が412万円ということが割り出せます。全ての税金は、この課税所得金額をベースに計算していきます。
そのため、所得税は
412万円×適用税率20%-控除額42万7,500円=39万6,500円
という計算で39万6,500円となります。
住民税や国民健康保険料は、自治体によって異なります。フリーランスで所得400万円であれば、全ての税金を合わせた額は概算で80〜100万円ほどになります。
4.フリーランスの税金対策3選
フリーランスの方が税金を節約するには、確定申告の時に対策をとる必要があります。知っているのと知らないのとでは控除額が大きく変わってくることもあるため、しっかりと把握しておきましょう。
(1)確定申告時にしっかり経費を申請する
まず、経費をなるべく多く計上して課税所得を減らすのがもっとも大事です。自宅で仕事をしているなら家賃の一部も経費にできますし、交際費や自家用車、私服の購入費用なども工夫次第で経費に計上できます。
あまりにも度がすぎると差し戻しされてしまう可能性もありますが、できる限り経費はしっかりと申請しましょう。
(2)控除の手続きを行う
控除額も、工夫次第で大幅に増える場合があります。例えば、フリーランスの仕事で家族を養っている場合、家族の働き方が少し変わるだけで扶養家族にできることもあります。
また、先ほど紹介した小規模企業共済等掛金控除は節税になる上、退職金の積み立てもできる嬉しい制度です。他にも資産運用に興味のある方はイデコ、従業員さんがいらっしゃる個人事業主の方は「旅費規定」を作成して日当を支給すれば節税になります。
こういった制度を見逃さず控除の手続きを行っておくことで、課税所得を減額することができます。
(3)節税が期待できる保険や年金に加入する
生命保険や個人年金は支払額によって控除額の割合が異なります。控除を受けて節税ができれば、その分保険料に利息がついたのと同じことになるので積極的に加入しましょう。
また、フリーランスでかつ不安定な業種の場合、年金や保険は万が一の時に役立つというメリットもあります。
5.経費にできる税金と経費にできない税金
税金を経費に計上できれば、かなりの節税効果が見込めます。ここでは、フリーランスが経費にできる税金とできない税金をまとめました。
(1)経費にできない税金
基本的には、税金は経費にできないと思っておきましょう。所得税や住民税、フリーランスの仕事に使っていない自宅の固定資産税など、ほとんどの税金は経費にできません。
(2)経費にできる税金
例外的に、個人事業税は経費に計上することができます。その名の通り事業にかかる税金のため、事業をしていなければ払う必要がないということで経費にできるのです。
また、売り上げにかかる消費税も税込経理をしていれば経費に計上することが可能です。
さらに、自宅で仕事をしている場合は、その仕事場にあたる部分の固定資産税も経費として認められます。仕事場として使っている面積の割合を算出し、その割合を固定資産税額にかけて算出します。
6.まとめ
フリーランスの方にかかってくる税金や保険料について概略を解説してきました。フリーランスは、サラリーマンのように源泉徴収されない分、売り上げから支払う様々な税金があります。
滞納は信用問題にも繋がりますので、必ず正しく申告し、納税を行うようにしましょう。