確定申告とは、その年の終了後に確定した所得と税額を税務署に申告する手続きのことです。
目次
1.東京・大阪の経理代行|確定申告が必要な人って?
創業して間もない顧問先の社長様より、「会社の社長は確定申告をする必要がありますか?」というお問い合わせをいただくことがあります。
役員報酬は給与所得となるため、年末調整で所得税額を確定し納税を完了しているので、通常は確定申告の必要はありません。
ただし役員・従業員にかかわらず給与所得者のうち一定の要件に該当する場合は確定申告の必要があります。
それは一体どのような場合でしょうか。
(1)確定申告をする必要のある人って?
以下の場合、確定申告が必要となります。
- 給与の収入金額が2,000万円を超える人
- 給与を1か所からもらっている人で、給与及び退職所得以外の所得額が20万円を超える人
⇒オークションやアフィリエイト収入がある人、外貨預金で為替差益がある人、株や不動産売却で譲渡所得がある人など、いわゆる副業で収入を得ている場合は確定申告が必要です。また原稿料や講演料など源泉徴収をされた報酬がある場合には支払調書を準備しましょう。
2か所以上から給与をもらっている人で、年末調整されていない給与の収入金額とその他の所得金額との合計額が20万円を超える人
⇒「乙欄」といって高めに源泉徴収されているケースがあります。確定申告することで還付になる場合もありますので源泉徴収票を準備しましょう
同族会社の役員やその親族などで、その同族会社から給与のほかに、貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
⇒自宅で事業をしていて会社使用分を家賃として会社からもらっている、または保有している土地や建物を会社に賃貸しているといった場合には、不動産所得が発生していますので確定申告が必要です。固定資産税等の経費資料を準備しましょう。
⇒会社への貸付金がある場合には、貸付金の利息が生じています。この利息は社長の所得となり、確定申告の対象となります。
※この収入については、金額の大小にかかわらず確定申告の必要があります。
災害にあって、災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人
在日の外国公館に勤務する方や家事使用人の方などで、給与の支払を受ける際に所得税等を源泉徴収されないこととなっている人
【参考】国税庁HP「平成28年分確定申告特集」
2.東京・大阪の経理代行|確定申告した方が得する場合って?
「年末調整の書類と控除について」のコラムでお伝えしたように、年末調整では「医療費控除」「寄附金控除」「雑損控除」は対象になりません。
これらの控除がある方は、確定申告をする必要があります。
このように今回は確定申告が義務ではないけれど、確定申告すれば一度納めた税金が戻ってくる(還付される)可能性がある場合について説明したいと思います。
(1)確定申告すると得するケースとは?
1.医療費が高額となった場合 | 自分や家族のために支払った医療費等の実質負担額が、1年間で10万円(所得金額が200万円未満の人は「所得金額×5%」の額)を超えた場合、その超えた金額をその年の所得から差し引くことができます。控除できる金額の上限は200万円です。 ⇒医療費の領収書が必要となりますが、医療機関へのタクシー代・バス代など交通費等も対象になります。領収書は捨てずにとっておきましょう。 |
2.寄付をした場合 | ◎国境なき医師団やユニセフなど国が定めた団体に寄付をした人 政治活動関連への寄付金や認定NPO法人、公益社団法人などへ寄付をした場合には、その金額の一部を所得控除にするか税額控除とするか、計算してお得な方を選択できます。⇒年収1千万円以上の高額所得者でない場合、税額控除を受けた方がお得な場合が多いです。 ◎ふるさと納税した人 通常の寄付金控除に加え、住民税の税額控除の特例が受けられます。⇒「ふるさと納税ワンストップ特例」を使う場合、確定申告は不要ですが、6つ以上の自治体にふるさと納税をした人はこの特例は使えず、「ふるさと納税以外の理由で確定申告する人」もこの特例が使えないので確定申告が必要です。 |
3.仕事に必要なものを自腹で多く支払った場合 | 「給与所得者の特定支出控除」といって、通勤費、転居費、研修費、資格取得費、単身赴任者などの帰宅旅費、書籍代や交通費などのうち、会社が必要経費と認めた費用の合計額が、同年の給与所得控除額の2分の1を超えた場合、その超えた分の金額を所得から控除できます。 ⇒平成24年の改正で要件が緩和されたので、自分の支払っている分が、特定支出控除にできるか確認してみましょう。 |
4.株で損をした人 | 株式等の売買で出た損失分を、申告分離課税を選択した配当所得などと損益通算できます。相殺しきれない場合は、翌年以降3年間繰越して損益通算できます。⇒NISA口座や源泉徴収あり特定口座で株取引をしていれば確定申告は不要と思われがちですが、損失がでた場合は確定申告した方がよいでしょう。
<株式の配当金や投信の分配金をもらった人> 配当金は源泉徴収されているので確定申告は不要ですが、確定申告をすれば配当控除が受けられます。⇒この場合は本業の収入に対する税率20%以下の人しか得しないので注意が必要です。 |
5.災害や盗難にあった人 | 地震や火事などの災害又は盗難若しくは横領によって、資産について損害を受けた場合等には、雑損控除により一定の金額の所得控除を受けることができます。 |
6.住宅ローンを組んで家を買って入居した人 | 1年目は確定申告が必要ですが、2年目からは年末調整可能です。 ⇒その他、マイホームを増改築した、耐震工事した、売った人にも控除がいろいろあります。 【参考】国税庁HP「マイホームの取得や増改築などしたとき」 |
その他
- 年の途中で退職して再就職していない人
- 年末調整で漏れがあった人、年末調整後に扶養家族に変更があった人
このように確定申告は税金をただ支払うだけではなく、場合によっては税金が還付される可能性のあるシステムでもあるのです。確定申告期間中は税務署などに確定申告書作成コーナーが設けられ、無料で教えてもらいながら申告書を作ることができます。
【参考】国税庁HP「平成28年分確定申告特集」
3.東京・大阪の経理代行|確定申告代行のメリットと注意点
確定申告は本人がすることももちろん可能ですが、税金に関する問題は専門家である税理士に任せたほうが、時間的に節約できるのはもちろん、金銭的にもお得になる可能性があります。
近年、個人事業主やフリーランスの方だけでなく副業の所得が20万円を超える会社員の方などから、「税理士へ確定申告をお願いしたい」というお問い合わせをいただくことも増えています。
(1)確定申告の代行は税理士へ
本人が確定申告をする場合には、特に制限はありませんが、他人の確定申告書の作成などは、税理士法に以下のような規定があります。
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税理士法第二条(税理士の業務)
税理士は、他人の求めに応じ、租税に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 税務代理
二 税務書類の作成
三 税務相談
同法第五十二条(税理士業務の制限)
税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。
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つまり確定申告の代行は税理士にしかできないということです。
「会社を経営している友達に頼んで手伝ってもらった」など軽い気持ちでやったことも法律違反となります。上記の税理士にしかできない業務をしっかり把握しておきましょう。
(2)確定申告代行を税理士にお願いするメリット
①節税できる
個人事業主の方は節税できる方法がいくつもあります。青色申告制度を活用した「青色専従者給与」の活用、「65万円控除」、「小規模企業共済」の活用など節税してキャッシュアウトを減らしましょう。
場合によっては、法人成りしたほうが節税できるケースもあります。また、青色申告では、赤字が出た場合でも損失を3年間繰り越しできます。将来、所得が出た場合に赤字部分と相殺することで将来発生する税金も節税できます。
青色申告の特典は他にも多くあります。
まずは、青色申告の承認申請書を税務署に提出しましょう!
②手間が省ける
大量の領収書や請求書など書類の整理や会計ソフトへの入力、また、どこまで経費にしていいのか迷った場合、自分で調べようとすると時間も手間もかかりますが、税理士へ依頼すれば、こういった作業を全て代行してくれます。
慣れていない確定申告に時間を大量投下するよりも、その時間を本業に投下するほうが最終的に皆さんの手元にお金は残ります。本業に時間も体力も集中投下することで売上を上げることに集中してください。
③正確な確定申告ができる
自分で確定申告をした場合、記帳内容の不備やミスで申告漏れが発生する可能性があります。経費や控除に関してもよく知らなかったために損をすることも。
1つのミスで延滞税や加算税が多額にかかってしまった事例も多くあります。専門家である税理士に任せたほうが、結果的に正確な申告をしてもらえます。
④税務調査の立会いをしてもらえる
税務調査は法人にだけ存在するものだと思っていませんか?個人にも税務調査はあります。自分の事業に税務調査が訪れる可能性は高いのか低いのか、税務調査のときはどのように対応すればいいのか?
経験豊富な税理士にアドバイス・対応してもらえると安心です。
ただ、税理士に確定申告代行を依頼した場合、当然ですが費用が発生します。
コスト削減の為、ご自身で確定申告をされることでかえって余計な税金がかかってしまい、税理士に依頼した方が割安だったという結果になることもあります。
青色申告の65万円控除のように目に見えて税金を少なくするだけでなく、確定申告に費やす時間的・金銭的コストを節約し、本業で集中していただけるので、実際には顧問料以上のメリットを税理士は提供できます。
4.東京・大阪の経理代行|確定申告のポイント
先ほどは確定申告代行のメリットと注意点について説明しました。
最後に、「平成 28 年分 確定申告のポイント」について説明していきたいと思います。
(1)平成28年分確定申告の相談・申告書の受付、納期限及び振替日
※振替納税をご利用の方は、事前に預貯金残高をご確認ください。
⇒残高不足等で振替ができない場合は、振替日ではなく納期限の翌日(所得税等は3月16日)から納付日までの延滞税がかかる場合があります。必ず預貯金残高を確認して不足がないようにしておきましょう。
(2)社会保障・税番号(マイナンバー)制度の本格導入
平成28年分の確定申告でもっとも大きな変更点と言えるのが、社会保障・税番号(マイナンバー)制度の本格導入です。
今回より「マイナンバーの記載」と「本人確認書類の提示又は写しの添付」が必要となります。
⇒ただマイナンバーの記載がなくても罰則規定は設けられてはいません。現状は、マイナンバーの記載がなくても確定申告書は受理してもらえます。
(3)給与所得控除の上限額の引き下げ(給与収入1,200万円を超える場合
給与所得控除とは給与を得るためにかかる経費を概算計算した控除項目であり、給与の年収額に応じて定められている金額をいいます。
この給与所得控除額の上限額が平成28年分より段階的に引き下げられます。つまり年収1,200万を超える高額所得者は増税となります。
【年収1,200万円超1,500万円以下の人】
<改正前>給与所得控除額 収入金額×5%+170万円
↓ ↓ ↓
<改正後>給与所得控除額 230万円
【年収1500万円超】
<改正前>給与所得控除額 245万円
↓ ↓ ↓
<改正後>給与所得控除額 230万円
(4)特定公社債等が申告分離課税の対象へ
国債、地方債、社債といった特定公社債等の売却益は非課税でしたが、上場株式等の譲渡所得として20.315%の申告分離課税となりました。
また特定公社債等の利子所得についても、源泉分離課税から申告分離課税に変更されています。こちらは選択により申告しなくても構いません。
(5)多世帯同居リフォーム工事の税額控除
世代間の助け合いによる子育てを支援する観点から、祖父母・父母・子世代の三世代等の同居を後押しするため、住宅の三世代同居改修工事等に係る特例という制度が創設されました。
【対象になるリフォーム】
- 所有する居住用家屋に対してのリフォーム
- キッチン、浴室、トイレ、玄関のいずれかの増設
- リフォーム費用が50万円を超える
- 改修後にキッチン、浴室、トイレ、玄関のいずれか2つ以上が複数になる
⇒住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)との併用はできません。
(6)公益社団法人等寄附金特別控除の対象拡大
国立大学や公立大学などへの個人の寄付を促すため、現行の所得控除に加え、税額控除が追加され、いずれかを選べるようになりました。
その他についてはこちらを参照ください。
【参考】国税庁HP「平成28年分確定申告 税制上の主な変更点」
5.まとめ
今回の経理代行コラムでは個人の方の確定申告についてお話しました。
日本は年末調整という制度があるため、多くの方が確定申告は自分には関係ないものと思い税金について無関心になっているのが現状です。確定申告しなければいけない方が確定申告をしていないと、後々、延滞税や加算税がかかってしまい、余計に税金を納めることになります。
確定申告を通じて税金に対して意識をすることで適切な税金を納める(または還付される)ことが大事ですね。確定申告をしていない方は、今一度、ご自身に確定申告義務がないのか確認しておくべきでしょう。