会社を経営する上で悩まされることも多い資金調達。金融機関からの融資以外にも、様々な資金調達方法があります。
ここでは低金利・低リスクの方法から最新の資金調達方法まで、14種類についてメリット・デメリットをご紹介いたします。
目次
1.資金調達の方法
資金調達の方法には、大きく分けて以下の方法があります。
- ファクタリング
- 日本政策金融公庫からの融資
- 商工組合中央金庫からの融資
- 自治体の制度融資
- 銀行からの融資
- ビジネスローン
- 私募債
- 手形割引
- クラウドファンディング
- 自治体の補助金・助成金制度
- 知り合いや家族から借りる
- ベンチャーキャピタルからの出資
- 個人投資家からの出資
- ICO(イニシャル・コイン・オファリング)
それぞれのメリット・デメリットや仕組みについて解説していきます。
(1)ファクタリング
ファクタリングとは、売掛金を専門の業者に買い取ってもらって行う資金調達の方法のことです。メリットは短い審査期間で返済不要な現金が手に入ること。「今すぐ現金が必要」という緊急性の高いシチュエーションに適しています。
ただし、金融機関などの金利に比べて、高額の手数料がかかるというデメリットも。ファクタリングを利用するかどうかは、調達コストと緊急性を見極めて決めましょう。
(2)日本政策金融公庫からの融資
日本政策金融公庫は政府出資100%の金融機関で、中小企業向けに融資を行っています。他の金融機関等より大幅に低金利なため、資金調達に時間がかかっても構わないなら、もっとも得ができる資金調達方法と言えるでしょう。
ただし、審査が厳しく、さらに審査には3週間〜1ヶ月かかるため、緊急性の高い資金調達には適していません。
(3)商工組合中央金庫からの融資
商工組合中央金庫は日本政策金融公庫と同じく政府系の金融機関です。日本政策金融公庫との違いは、信用保証協会の保証がつくことと、未上場なら中小企業以外も利用できること。全体的に、日本政策金融公庫を利用する企業よりも会社ステージが進んだ企業が受ける融資です。
なお、低金利というメリットや、審査に時間がかかるというデメリットは日本政策金融公庫と同じです。
(4)自治体の制度融資
自治体の制度融資とは、各自治体が信用保証協会・金融機関と連携し、融資を斡旋する仕組みです。制度は自治体によって異なりますが、日本政策金融公庫・商工組合中央金庫より低い金利で融資を受けられることもあります。
上限額などの条件は細かく異なるため、事業所を置いている自治体に問い合わせてみてください。
(5)銀行からの融資
銀行からの融資には、
- プロパー融資
- 制度融資
の2種類があります。
1.プロパー融資 | プロパー融資とは、民間の金融機関がリスクを負って資金を貸し出すことです。そのため、ある程度信用を勝ち得るだけの業績がなければ、プロパー融資での資金調達はできません。創業間もない企業には、かなり厳しい方法です。 |
2.制度融資 | 制度融資とは、銀行と借主の間に信用保証協会を置く融資方法です。信用保証協会は国の機関で、万が一事業者が借りたお金を返済できなくなっても、リスクを銀行に代わって負ってくれます。銀行にはリスクがないため、創業したばかりの企業でも比較的審査に通りやすいです。 |
(6)ビジネスローン
ビジネスローンは銀行や消費者金融が提供している法人向けローンです。無担保・無保証で借りることができ、審査も厳しくないのがビジネスローンのメリット。まだ実績がない中小企業でも借りることができます。
ただし、金利は高いのですぐに返せる目処が立っていない場合はあまり利用しないほうがいいでしょう。
(7)私募債
私募債は社債を発行して少数の投資家から資金調達する方法です。無担保・無保証ですが、魅力的な実績がなければ資金を出してくれる投資家がつきません。
また、私募債は投資家からの借金なので、金利の支払いと借金返済が必要になります。
(8)手形割引
手形割引とは、商取引で受け取った手形を銀行に売却し現金に変えることです。すでに持っている権利を売って資金調達するという意味では、ファクタリングに似ています。
ただし、手形割引の場合、売却した手形が不渡りになった場合には、その手形を買い戻す義務があります。
なお、利用にあたっては通常の融資と同じく審査があります。
(9)クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、事業内容に賛同してくれる人を集め、その人々から少額ずつ出資を募ることです。
クラウドファンディングには、
- 融資型クラウドファンディング
- 投資型クラウドファンディング
- 購入型クラウドファンディング
- 寄付型クラウドファンディング
の4種類があります。
1.融資型クラウドファンディング | 融資型クラウドファンディングは、投資家が資金を企業に貸付する形式のクラウドファンディングです。投資家にとっては、貸し出した資金から利益を得られるので、資産運用ができるというメリットがあります。 企業側は、銀行等ほど厳しくない審査・金利で融資を受けられるのがメリットです。 |
2.投資型クラウドファンディング | 投資型クラウドファンディングは、出資額に応じて株式を譲渡して資金調達をする方法です。少額でも出資者は株主となるので、ある程度株主の意向に沿った運営が必要となります。 また、まだ実現していない事業で投資型クラウドファンディングを行う場合、技術不足などで事業が実行できず、出資者にリターンができない可能性も。投資型クラウドファンディングを行う場合は、本当に実現可能な事業かどうかよく考えておくことが必要です。 |
3.購入型クラウドファンディング | 購入型クラウドファンディングとは、資金調達の目標金額を達成した場合、出資額に応じた商品をリターンとして提供するものです。出資者は消費者感覚で参加する人が多く、事業の事前広告にもなります。 欲しがる人の多いアイデア商品の実現などに用いられることが多い方法です。 |
4.寄付型クラウドファンディング | 寄付型クラウドファンディングとは、特に投資家に見返りを用意することなく出資を募る方法です。社会的に意義がある事業や、創業者自身を応援したいと思う人が多ければ、利益がなくても資金が集まることも。 企業だけではなく、ボランティア活動や慈善事業、個人的な夢を叶えるための資金調達としても用いられることが多いです。 |
(10)自治体の補助金・助成金制度
補助金・助成金制度は、自治体が独自に定めた条件に合致することで、返済義務のない融資・出資を受けられる制度です。例えば、特定の事業を応援する補助金や、従業員に特定の研修を行った時に受け取れる助成金などがあります。
条件は自治体ごとに様々なので、当てはまる補助金・助成金はないかどうか調べてみましょう。
(11)知り合いや家族から借りる
身近に資金を持っていて、事業を応援してくれる人がいるなら、その人から個人的に借りるのも手です。
ただし、身近な人といえども、お金のやりとりは信用問題。もし後々トラブルになった場合、人間関係が崩壊してしまいかねません。身内からお金を借りる時も、借りる前にはしっかりと条件を決め、借用書や契約書を用意するようにしましょう。
(12)ベンチャーキャピタルからの出資
ベンチャーキャピタルとは、ベンチャー企業や新規事業に投資するための機関のことです。スタートアップ企業の株を購入し、当初の株式の額と、公開後の売却額の差額で利益を出すことを目的にしています。
返済義務や限度額がありませんが、ベンチャーキャピタル側も投資目的のため、利益を出せる見込みがないと株主にはなってくれません。また、ベンチャーキャピタルが株主になるということは、ベンチャーキャピタルの意向にある程度沿った経営をする必要も出てきます。
(13)個人投資家からの出資
個人投資家はエンジェル投資家とも呼ばれ、有望な新規事業に投資支援を行っています。元起業家の個人投資家も多いので、有望だと見込まれればまとまった額の投資や経営アドバイスを受けることもできます。
ただし、将来の展望がない業種では投資家がつかないほか、必要以上に経営に口出しをする投資家もいるため注意が必要です。
(14)ICO(イニシャル・コイン・オファリング)
ICO(イニシャル・コイン・オファリング)とは、企業が「トークン」と呼ばれる独自の仮想通貨を発行し、そのトークンを世界中の投資家に購入してもらうことで資金調達を行う方法です。クラウドファンディングに似ていますが、違うのは企業が成長していくにつれてトークンの価値が高まっていくことや、投資家間でトークンの売買もできること。
2.資金調達方法の選び方
上の項目でご紹介した資金調達方法は、担保や返済義務の有無、融資を受けられるまでの期間、条件など様々です。その中のどれを選べばいいのか、資金調達方法の選び方を解説します。
(1)会社の目指す方向によって変わる
資金調達には「必ずこれがいい」という方法はありません。会社の状況や目指す方向性によって、おすすめの資金調達方法は違います。
例えば、これから創業するスタートアップ企業は、事業実績や今後事業が軌道に乗る保障がないため、銀行からの融資は難しいです。
そのため、
- 日本政策金融公庫の融資
- ベンチャーキャピタルからの出資
- 個人投資家(エンジェル投資家)からの出資
- クラウドファンディング
など、返済義務がなくある程度まとまった額が調達できる方法がおすすめです。
(2)企業向け、個人向けで選ぶ
上でご紹介した資金調達方法を、企業向け・個人向けに分けると以下のようになります。
企業向け
- ファクタリング
- 日本政策金融公庫からの融資
- 商工組合中央金庫からの融資
- 自治体の制度融資
- 銀行からの融資
- ビジネスローン
- 私募債
- 手形割引
- クラウドファンディング
- 自治体の補助金・助成金制度
- ベンチャーキャピタルからの出資
- 個人投資家からの出資
- ICO(イニシャル・コイン・オファリング)
個人向け
- 日本政策金融公庫からの融資
- 自治体の制度融資
- 知り合いや家族から借りる
- クラウドファンディング
- 自治体の補助金・助成金制度
企業向けの資金調達方法に比べ、個人向けは選択肢が少なく、規模も小さくなりがちです。
(3)返済義務のない調達方法を選ぶ
万が一事業が失敗した場合、返済義務のある資金調達方法を選んでいると多額の借金を抱えることになります。そのため、創業間もなくてまだ軌道に乗っていない企業は、できる限り返済義務のない資金調達方法を選ぶのがおすすめ。信用保証協会を利用すると手数料が取られますが、大きなリスクを負うよりはずっと気楽ですよ。
4.まとめ
資金調達には、様々な方法があります。金利・融資額・審査期間・その後のリスクなども、方法によって千差万別。