確定申告の書類は種類が色々あって、毎年混乱してしまいますよね。また、普段は確定申告をしないサラリーマンの方も、特定の収入・出費があったときは確定申告をする必要があります。
この記事では、確定申告のどの種類の書類が、どんなケースで必要になるのかをわかりやすく解説していきます。
目次
1.確定申告の用紙の種類
確定申告の種類は大きく分けて2種類です。
- 確定申告書A
- 確定申告書B
があります。
さらに、特定の収入や支出があった時には
- 申告書第三表
- 申告書第四表
- 申告書第五表
- 住宅借入金特別控除額の計算明細書
- 医療費の明細書
という添付書類も必要です。
それぞれについて、詳しく解説していきます。
(1)「確定申告書A」
確定申告書Aを使うのは、
- 会社員・パート・アルバイトで勤務先からお給料をもらっている人
- 老齢年金をもらっている人
- 株の配当金をもらっている人
- 生命保険の一時金をもらった人
などです。
確定申告書Aは、4つの所得に特化
確定申告書Aが対応している所得の種類は、
- 給与所得:給与・俸給・賃金・賞与など
- 雑所得:国民年金・厚生年金・恩給・確定給付企業年金・確定拠出年金・外国年金など
- 配当所得:株式などの配当・投資信託の収益の配当など
- 一時所得:生命保険の一時金・損害保険の満期払戻金・賞金・懸賞の当選金・ギャンブルの払戻金など
の4つのみです。
年末調整を受けていない人などが使える
一般的に確定申告書Aを使うのは、会社員・アルバイト・パート、年金受給者などで年末調整を受けていない人です。一般的な会社では、年末調整が行われるため確定申告の必要はありません。
具体的に確定申告書Aが必要なケースとしては、
- アルバイトなどを掛け持ちしていて複数箇所から給与を得ている場合
- 年末調整に算入されない一時所得があった場合
- 公的年金の収入金額が、公的年金等控除+基礎控除の合計額(108〜158万円)を上回る場合
などが挙げられます。
予定納税がある場合は使用不可
確定申告書Aは予定納税がある場合は使用できません。予定納税とは、前年の所得税が15万円以上だった場合に前払いで納める税金のことです。
(2)「確定申告書B」
確定申告書Bは、確定申告書Aよりも項目が多く、多様な所得に対応している確定申告書です。
- アパートやマンションの経営をしている人
- フリーランスで仕事をしている人
- 自営業者
などが確定申告書Bを使用します。
10種類すべての所得に対応
確定申告書Bは、全ての所得の区分に対応しています。区分は以下の10種類です。
- 給与所得:給与・俸給・賃金・賞与など
- 雑所得:国民年金・厚生年金・恩給・確定給付企業年金・確定拠出年金・外国年金など
- 配当所得:株式などの配当・投資信託の収益の配当など
- 一時所得:生命保険の一時金・損害保険の満期払戻金・賞金・懸賞の当選金・ギャンブルの払戻金など
- 利子所得:公社債や預貯金の利子、貸付信託や公社債投信の収益の分配など
- 不動産所得:不動産、土地の上に存する権利、船舶、航空機の貸付けなどから生じる所得
- 事業所得:商業・工業・農業・漁業・自由業など、事業から生じる所得
- 退職所得:退職金など
- 山林所得:5年を超えて所有していた山林を伐採して売ったり、又は立木のまま売った所得
- 譲渡所得:資産を売却して得た所得
給与所得・雑所得・配当所得・一時所得だけでもok
確定申告書Aに対応している給与所得・雑所得・配当所得・一時所得しかない人も、確定申告書Bを使用することが可能です。記入できる項目は確定申告書Bの方が多いですが、確定申告書Aを使える人はその部分が空欄になるだけです。
退職金を貰った人や個人事業主、誰でも使える
確定申告書Bは、確定申告書Aに記載できない所得がある人全てが使えます。
例えば、
- 退職金をもらった人
- 個人事業主やフリーランスで仕事をしている人
- 不動産収入を得ている人
など、給与所得以外で生活している人が主に該当します。
青色・分離・国出・損失・修正とは
確定申告書Bには、氏名や住所を書く欄の下に「種類」という項目があります。青色・分離・国出・損失・修正と種類が並んでいて丸をつけるようになっていますが、これらは以下のような意味を持っています。
- 青色:青色申告(個人事業主向けの、特別控除が受けられる申告方法)を行う人
- 分離:分離課税(特定の所得をほかと分けて計算する申告方法)を行う人
- 国出:国外転出時課税制度が適用となる人
- 損失:損失申告を行う人
- 修正:一度確定申告したあと、修正があり再度提出する人
当てはまるもの全てに丸をつけ、確定申告を行います。なお、一つも当てはまらなければ何も書かなくてOKです。
(3)(確定申告書Bに添付する)「申告書第三表(分離課税用)」
特定の取引収入があった場合は、確定申告書Bに「申告書第三表(分離課税用)」を添付する必要があります。
土地・建物や株式の譲渡、先物取引、FX取引がある人
申告書第三表を使うのは、
- 土地・建物の譲渡
- 株式などの譲渡
- FX取引や先物取引
などを行った人です。
これらの所得は、他の所得と切り離して特定の税率をかける「分離課税」に該当するためです。もし、普段は給与所得のみで生活していても、不動産や株式を売って収入を得たり、FXや先物取引で一定以上の利益を出したりした時には、確定申告Bと申告書第三表が必要になります。
(4)「申告書第四表(損失申告用)」
申告書第四表が必要になるのは、以下のようなケースです。
- 事業やで赤字が出た場合
- 株式や不動産、FXなどの取引で赤字が出た場合
- 生活に必要な資産が災害・盗難・横領などの被害を受けた場合
これらの損失を申告すると、その金額を翌年以降の所得から差し引くことができ、結果的に支払う税金の額が軽減されます。
(5)「申告書第四表(損失申告用)付表 東日本大震災の被災者の方用」
損失の中でも、東日本大震災によって資産が被害を受けた場合であれば、申告書第四表に加えてこの付表を記入し提出します。
(6)「申告書第五表(修正申告用)」
一度提出した確定申告書に間違いがあり、修正したい場合は「申告書第五表」を用います。
修正申告は必ず追加で税金を納入しなければいけないので、納税者にとって得な手続きではありません。しかし、間違った申告を放っておくと、延滞税やその他の罰金を支払うことになる恐れがあります。そのため、確定申告の内容に間違いが見つかった場合は、なるべく速やかに修正申告をして是正しましょう。
(7)「住宅借入金特別控除額の計算明細書」
「住宅借入金特別控除額の計算明細書」は、住宅を購入するためにローンを組んだ人が使用する書類です。
住宅ローン控除を受けるための書類
住宅ローン控除とは、住宅ローン残高に合わせて最大40万円(認定長期優良住宅等の場合は最大50万円)の控除を受けられる仕組みのことです。
最大10年、計400〜500万円の控除を受けられるお得な制度なので、ローンを組んで住宅を購入した場合は申告しないと絶対に損です。通常、「住宅借入金特別控除額の計算明細書」は住宅ローンを組んだ金融機関から送付されてきます。
「確定申告書A/B」に加えて作成するもの
住宅借入金特別控除額の計算明細書は、この1枚だけでは提出できません。
- サラリーマンなど給与収入を得ている人:確定申告書A
- 自営業者などその他の収入を得ている人:確定申告書B
と一緒に作成し、提出します。
会社員は1年目だけ確定申告 2年目以降は年末調整
会社員の場合、住宅ローン控除のために確定申告が必要なのは最初の1年目のみです。残りの年数分は、会社に「控除証明書」を提出すると年末調整に算入されます。
(8)「医療費の明細書」
1年間で10万円以上の医療費を支払った場合、「医療費の明細書」を確定申告書に添付すると、医療費控除を受けられます。
医療費控除を受けるための書類
自分や自分が養っている家族の医療費が年間で合計10万円以上かかった時は、医療費控除を受けるために「医療費の明細書」を作成します。
ここでいう医療費には、以下のものが含まれます。
- 医師に支払った診療費や治療費
- 治療や療養に必要な医薬品の購入(風邪を引いた際の薬代等)
- あん摩マッサージ、はり師、きゅう師、柔道整復師に支払った代金
- 出産費用
- 市販の医薬品
- 手術代金(一部例外あり)
- 通院や入院のための交通費
「確定申告書A/B」に加えて作成するもの
住宅借入金特別控除額の計算明細書と同じく、医療費の明細書はこの1枚だけでは提出できません。
- サラリーマンなど給与収入を得ている人:確定申告書A
- 自営業者などその他の収入を得ている人:確定申告書B
と一緒に作成し、提出します。
2.白色申告と青色申告とは
個人事業主の確定申告方法には、
- 白色申告
- 青色申告
の2種類があります。
(1)申告方法の種類
白色申告と青色申告の違いは、以下の通りです。
- 白色申告:届出不要、簡単な帳簿で提出できるが、節税効果は低い
- 青色申告:白色申告より控除額が大きく、節税効果が高いが、複式帳簿が必要となる
(2)白色申告とは
白色申告、青色申告の申請書を提出していない事業者が行う確定申告の方法です。
届出は不要
白色申告は届出不要で誰でもできる確定申告の方法です。手軽にできる分、控除枠や税制上の優遇措置は用意されていません。
単式簿記でOK 比較的手間のかからない申告方法
2014年以前は、白色申告を行うのであれば帳簿付けは義務ではありませんでした。その後白色申告も記帳が義務付けられましたが、青色申告で使う複式帳簿ではなく単式帳簿でもOKとなっています。帳簿付けの手間が少なく、簿記の知識がなくてもできる申告方法です。
フリーランス収入の少ない人や経費の少ない人におすすめ
白色申告は、比較的収入の少ない人や、あまり経費がかからない人におすすめです。
そもそも収入や経費が多くなければ大きな控除枠は必要ないので、手間のかからない白色申告の方が時間の節約になります。
(3)青色申告とは
帳簿付けの手間はかかりますが、青色申告は税制上で優遇されることが多く、ある程度収入がある個人事業主におすすめの方法です。
複式簿記で手間はかかるが特別控除が受けられるメリット
青色申告を行うには、複式簿記で記帳した帳簿が必要です。帳簿付けに手間はかかりますが、その分「10万円」または「65万円」の控除が無条件で受けられるというメリットがあります。
フリーランス収入が多く、節税したい人におすすめ
青色申告がおすすめなのは、ある程度フリーランスで収入があり、節税をしたい人です。
具体的には、所得税率が一気に上がる330万円以上の所得がある人は青色申告の方がお得になります。
「青色申告承認申請書」を税務署へ提出する必要がある
青色申告を行うためには、「青色申告承認申請書」を提出しなければいけません。これにより税務署の承認を得て、青色申告をする権利を得られます。
ただし、承認といっても提出内容に不備や問題がない限り、税務署から特に連絡がくることはありません。
新規開業時の申告期限
新規事業を開始した初年度から青色申告をしたい場合、開業日から2ヶ月以内に青色申告承認申請書を提出する必要があります。
白色申告からの申告期限
すでに白色申告を行なっていて青色申告に切り替えたい場合、その年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出します。
3.確定申告書を提出するには?
確定申告書を提出するには、
- WEB(e-Tax)
- 税務署へ持参する
- 税務署へ郵送する
の3つの方法があります。
(1)WEB(e-Tax)で提出可能
WEB(e-Tax)で確定申告書を提出する方法は、ペーパーレスかつ税務署に出向かなくて済むため手軽です。ただし、e-Taxを使用するためには、「電子申告等開始届出書」の提出やICカードリーダライタの購入などの事前準備が必要となります。
(2)税務署へ持参する
記入した確定申告書を税務署の窓口に直接持参することもできます。書き方がわからない人向けに相談会なども行われているので、確定申告初心者におすすめの方法です。
ただし、平日の日中しか税務署は開いていない上、確定申告の時期は窓口が混み合うため、提出に時間がかかります。
(3)税務署へ郵送する
封筒さえ準備すればいいため、郵送は手軽な提出方法です。提出用封筒と控えを受け取るための返信用封筒を用意し、所轄の税務署の住所へ送ります。
ただし、郵送に日数がかかるのと、もし不備があった場合は返送・再送が必要になるため、期日まで余裕を持って行うのがおすすめです。
4.まとめ
確定申告書の種類は2種類、添付書類には6種類があります。どれが必要なものなのかは自分で判断しなければいけないので、今回の記事を参考に選んでみてください。