「コーポレートファイナンス」という言葉を聞いたことがありますか?難しい経済用語のように思えますが、要はコーポレートファイナンスとは「企業価値を高めることを目的とした財務活動」のこと。
財務活動の中で、特に資金調達のことをコーポレートファイナンスと呼ぶことも多いです。
目次
1.コーポレートファイナンスとは?
コーポレートファイナンスとは、企業価値を高めることを目的とした資金調達・資金運用といった財務活動のことです。
また、必要な事業資金を市場から調達することをコーポレートファイナンスと呼ぶこともあります。
さらに、「企業の財務や金融」「資金調達の方法」「投資判断の方法」などの意味でコーポレートファイナンスという言葉が使われることもあります。
現時点では「コーポレートファイナンス」は多様な意味を持つ言葉なのです。企業側から見るか、投資家側から見るかで意味合いが変わってくるので、なかなか理解しにくいところがあります。
「コーポレートファイナンス」という言葉で呼ぶと難しく感じますが、要は「企業の利益を上げて大きくしていくための経営戦略」ということ。決して難しいことではなく、どの企業も目標としている基本的なことですね。
(1)コーポレートファイナンスとプロジェクトファイナンスの違い
コーポレートファイナンスとプロジェクトファイナンスの違いは、以下の通りです。
コーポレートファイナンス | 企業の事業全体に対する投資・出資・融資などの集め方・運用方法 |
プロジェクトファイナンス | 企業が行う一つのプロジェクトに対する投資・出資・融資などの集め方・運用方法 |
2.コーポレートファイナンスにおける企業価値の求め方
コーポレートファイナンスの目的は、その企業の「企業価値」を最大化すること。投資家側からすると、企業価値が投資の判断基準(コーポレートファイナンス)となります。
ここでは、そもそも企業価値とはなんなのか、また企業価値を判断するための指標について解説していきます。
(1)企業価値とは
企業価値とは、一言でまとめると「企業全体の経済的な価値」のこと。具体的には、「その企業が将来にわたって生み出すフリーキャッシュフローの現在価値」を意味します。
「フリーキャッシュフロー」とは「自由に使える現金」のこと。つまり、負債ではない企業の純資産ということですね。
この純資産を増やして経営を安定させることが、コーポレートファイナンスの目的です。
例えば、純利益1億円という売上がこの先10年続くであろうという企業の企業価値は、10億円です。さすがに実際の計算はここまで単純ではありませんが、「その企業にこの先見込める利益の総額」というイメージですね。
(2)企業価値をもとめる際に使われる指標
企業価値を求める際に使われる指標には、以下のものがあります。
- NPV(正味現在価値)
- DCF法
- IRR(内部収益率)
それぞれについて、詳しく解説していきます。
(3)NPV(正味現在価値)
NPV(正味現在価値)とは、「Net Present Value」という言葉の略です。「企業が将来にわたって生み出す利益を、現在の価値に換算した場合の企業価値」という意味です。
NPVは「その企業に投資することにより、どれだけの利益が得られるのか」を判断する指標となります。
企業価値=将来のキャッシュフローの総額(現在価値)−投資コスト |
投資家や株主、金融機関が企業に出資・融資するのは、企業が将来にわたって生み出す利益を購入することと同じです。その将来にわたって生み出す利益より投資額の方が少ないとわかれば、投資をする価値があるということになりますよね。
しかし、現在の1万円と、10年後の1万円の価値は違います。
例えば、10年後に日本の経済規模や物価が10倍になっていれば、10年後の1万円は現在の1,000円の価値しかありません。ここまで極端なことはありえませんが、投資する側がお金の価値の変動を含めた損得を計算するために求めるのが、NPV(正味現在価値)なのです。
(4)DCF法
DCF法とは「Discounted Cash Flow」、直訳すると「割引キャッシュフロー」の略。事業が生み出す期待フリーキャッシュフロー全体を、一定の割引率で割り引いて企業価値を算出する方法です。
企業価値=将来のフリーキャッシュフローの総額を加重平均資本コスト(WACC)で割り引いた現在価値 |
先に解説したNPV(正味現在価値)も、DCF法のうちの一つ。事業・プロジェクト・企業など、収益を生み出す資産を所有し続けた時に生み出す利益を、加重平均資本コスト(WACC)を用いて現在価値に換算したものです。
(5)IRR(内部収益率)
IRRは「Internal Rate of Return(内部収益率)」の略。新規の事業やプロジェクトの収益率を計算し、投資判断を行うためのもので、「事業やプロジェクトのNPVがちょうどゼロになるような割引率」と定義されています。
簡単にいうと、ある事業やプロジェクトが将来生み出すフリーキャッシュフロー(現在価値)と、それに必要な投資額(現在価値)がちょうど均衡する割引率となります。
投資家はあらかじめIRRにハードルレートを定め、その企業のIRRがハードルレートを超えていれば投資するという判断を行います。
3.コーポレートファイナンスにおける資金調達
最後に、コーポレートファイナンスにおける資金調達の方法について解説していきます。
広義でいうコーポレートファイナンスとは企業の資金調達活動そのものなので、企業間の与信取引や、売上金で運営をする内部調達なども含みます。
(1)株主資本
企業が株式を発行し、将来的な収益を見越した投資家がそれを購入して集まる資金が「株主資本」です。
コーポレートファイナンスにおける株主資本の最大のメリットは、返済の義務がないこと。例えば当初1万円で購入した株式の価値が経営状況の悪化などで100円まで下がっても、それは投資家の見通しが甘かったという自己責任になるので企業は補償義務を負いません。
また、信用度の面で借入や社債発行ができない企業も、株式の発行なら資金調達をすることができます。
ただし、株主の持分によって経営権が生じるため、場合によっては外部の投資家や投資企業に経営権が奪われる可能性があります。また、株主には持分に合わせた配当が必要となるので、一度発行した株式には株式資本コストがかかります。
(2)負債
負債は、金融機関や投資家・投資企業などからお金を借りるという資金調達方法です。もっとも単純かつ一般的なコーポレートファイナンスの方法となります。
もちろん借金ですから返済の必要があり、利息という負債コストも追加でかかりますが、設備投資などで大きな出費が必要となる時には有効なコーポレートファイナンスです。将来にわたって利益を生み出す見込みがある、企業価値が高い企業ほど高額の借入が可能となります。
なお、借入の他には、新株予約権付社債・普通社債の発行という方法もあります。
ただし、借入をするためには担保や保証人が必要となる場合が多く、会社の信用が問われます。また、期日が来れば経営状況に関わらず返済をしなければいけないので、赤字経営のベンチャー企業や零細企業には厳しい資金調達方法といえるでしょう。
4.まとめ
「コーポレートファイナンス」という言葉の意味や、企業価値の求め方がわかりましたか?
コーポレートファイナンスとは「企業の利益を上げて大きくしていくための経営戦略」のことです。