「起業したい」という志を抱く人は多いですが、どんなことから始めればいいか知っていますか?漠然と考えているだけでは、いつまでたっても起業はできません。逆に、優れたビジネスモデルがあれば、学生や主婦でも成功をつかむことも可能です。
1.起業する理由や目的、事業内容を考える
起業するには、企業のアイデアや目的が不可欠です。漠然と「起業したい」というだけでは事業は始まらないので、まず自己分析をして企業したい理由を煮詰めていきましょう。
(1)なぜ起業したいのかを明確にする
「何でもいいからとにかく社長になりたい」「起業って面白そう」「〇〇をやってみたら儲かりそう」など、曖昧な理由で起業した会社では、軸が定まらず失敗する可能性が大。「起業する」だけではなく「起業して成功する」には、しっかりと事業の軸になる理由や目的が必要なのです。
ビジネスモデルを描き出す前に、
- なぜ起業したいのか
- 起業して何を実現したいのか
- 起業することで、自分はどうなりたいのか
を突き詰めて考えておきましょう。
(2)どのような事業を行うのかを決める
起業する目的が決まったら、それに沿ってどんな事業を行うのか決めていきます。すでにアイデアがある人は、そのアイデアを具体的に実現するための手段を考えましょう。
また、なかなかアイデアが浮かばないという方は、以下のような発想を持つのがおすすめです。
- 既存の商品やサービスを発展させる方法
- 既存の商品やサービスを組み合わせる方法
- 自分の趣味や特技、専門知識を活かす方法
- 海外で成功している事業を輸入する方法
- 日常的に感じる不便を解消する方法
自分の中で考えるだけではなく、家族や友人、インターネットの声などを参考にすると、アイデアが生まれやすいかもしれません。
(3)どのような価値を提供できるのかを考える
次に、自分の事業でどのような価値を世間に提供できるかを考えます。できれば、既存の企業がまだ実現していないオリジナルの価値を見出せると良いでしょう。
(4)具体的なビジネスモデルにする
最後に、事業内容を噛み砕き、具体的なビジネスモデルにしていきます。
具体的であればあるほど現実味が増しますが、少なくとも
- 「誰に」
- 「何を」
- 「どうやって」
という3つの軸はしっかり決めておきましょう。
1.「誰に」 主な顧客は?ターゲット層 | まずは、自分のサービスや商品を「誰に」売るのかというターゲット層を決めます。万人ウケする商品やサービスは既に出揃っていることが多いので、今までにない価値を生むならピンポイントにターゲットを定めるのが重要です。 さらに、ターゲット層は具体的に定めておきましょう。例えば、「若い女性」というだけではなく、「18〜25歳の女性」「○○が好きな若い女性」など。そうすると、その層の平均収入や生活スタイルから求められているものが見えてきやすいです。 |
2.「何を」 売りたいモノ・サービスは? | 次に、ターゲット層から見えてきたニーズを形にします。このとき、ただ理想を追い求めるだけではなく、原価率や生産効率などが現実的かどうかも重視しましょう。 モノやサービスを具体的にしていく中で何度もブラッシュアップを重ね、他社にはない独自の価値が創造できるといいですね。 |
3.「どうやって」 販売方法は? | 最後に、流通経路を決めていきます。
など、どの販売形態が顧客にアプローチしやすいか考えてみましょう。 また、商品を宣伝するマーケティング方法についても合わせて考えます。ネットショップでの販売・SNSを活用した広報活動など、販売・広報に資金を割かずに事業を行うこともできますよ。 |
2.資金の計画・調達方法
具体的なビジネスモデルが決まったら、次に実際に資金を集めていきます。
資金調達は、
- 企業資金の把握
- 自己資金を貯める
- 融資や助成金など他者から調達
というステップで行なっていきます。
(1)必要な起業資金を試算・把握する
どれくらいの資金が必要かわかっていないと、集めようにも集められません。資金が潤沢であるに越したことはありませんが、起業するにはどれくらいの金額がかかるのか把握しておきましょう。
店舗・事務所・機械などにかかる設備資金
起業するのにまずかかるのは、店舗・事務所・機械などにかかる設備資金です。設備資金は、起業資金の中でも大きな割合を占めることが多くなります。
以下のようなものが、設備資金に含まれます。
- 店舗・事業所関係:敷金、礼金、仲介手数料、改装費、看板制作費 など
- 設備費:机、椅子、パソコン、プリンター、電話、車、レジスター、棚、厨房機器 など
- 備品費:ユニフォーム、食器、事務用品 など
- 広告宣伝費:チラシ、Webサイト、雑誌広告 など
店舗や事務所を借りるための初期費用は、家賃の10ヶ月分くらいが目安。改装などを行う場合、さらに500〜2,000万円ほどかかることもあります。
仕入れ・給料・広告費などの運転資金
次に、仕入れ・従業員の給与・広告費など、事業を運転していくための資金も必要です。以下のような費用(運転資金)が毎月いくらかかるのか把握しておきましょう。
- 家賃
- 人件費・経営者の生活費
- 仕入れ代金
- 水道光熱費
- 通信費
- 広告宣伝費
- 借入れ返済額
(2)自己資金を貯める
自己資金とは自分の貯金の中で事業に回せる資金のことです。返済や利息が必要ないので、自己資金の割合が高いほど余裕を持って事業を運営することができます。可能であれば、全て自己資金で起業できるのが理想でしょう。
ただし、融資の審査は起業時より起業後の申込みの方が厳しくなります。自己資金のみで起業すると、もし立ち行かなくなって融資を受けたいときに審査が通りにくい場合があるので注意が必要です。
(3)他から調達する場合
自己資金だけでは起業できない場合、他から融資を受けて起業資金を調達します。
金融機関から融資を受ける
銀行などの金融機関から融資を受けるのはとてもポピュラーな方法です。
しかし、個人で起業をしたい場合、メガバンクから創業融資を受けることは基本的にできません。地方銀行は、地元の起業家を応援する意味もあって起業融資に積極的なことが多いです。
日本政策金融公庫の新創業融資制度を利用する
日本政策金融公庫は、少額の融資で起業家を応援してくれます。事業実績がない企業でも、無担保・無保証で3,000万円(うち運転資金1,500万円)まで融資を受けることが可能です。
助成金・補助金など自治体の支援制度を利用する
国や自治体が、起業家を応援するための助成金・補助金を設けていることもあります。事業内容や事業所を置く場所によって限定的に受けられる助成金・補助金もあるので、ビジネスモデルを考えるときにチェックしておきましょう。
クラウドファンディングを活用する
近年注目されている資金調達方法が、クラウドファンディング。インターネットを通じて、事業内容に賛同してくれる人たちから少額ずつ融資を募るものです。
資金調達段階からPRの代わりになるので、マーケティングを兼ねることもできます。
3.起業の種類
次に、起業に向けての手続きを行います。
- 法人を設立する
- 個人事業主として開業する
それぞれの方法で、必要となる手続きが異なります。
(1)法人を設立する
法人を設立するには、公証人役場・法務局・税務署・年金事務所・労働基準監督署での手続きが必要です。
以下のステップを踏んで、法人登録をしていきます。
- 定款を作成し、公証人役場の認証を受ける
- 法務局に行き、設立登記を行う
- 税務署に行き、法人設立届出書を提出する
- 年金事務所で、健康保険と厚生年金保険加入の手続きをする
- 労働基準監督署で、労働保険加入の手続きをする(従業員を雇う場合)
(2)個人事業主として開業する
個人事業主として開業するのは、法人の設立よりもずっと簡単です。
手続きは税務署で開業届を提出するだけ
個人事業主として起業する手続きは、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するだけです。この手続きは、開業から1ヶ月以内に行います。費用は特に必要ありません。また、青色申告を行う場合や、従業員を雇って給与を支払う場合は別の届け出が必要になります。
このような計画がある場合は、開業届と一緒に手続きを行うとスムーズです。
4.高校生におすすめ!大学で起業を勉強できる時代
アップルやマイクロソフト、フェイスブックなど、学生起業家が起こした大企業は多数あります。若い起業家は、フレッシュなアイデアや学生のエネルギーを利用できるのが最大のメリットです。
(1)起業家支援施設や育成施設がある
「起業をしてみたいけど、知識がなくて不安」という学生向けに、起業家支援施設や育成施設が増えています。知識が豊富なスタッフや、同じく起業を志す仲間と出会う場にもなるため、起業を考えている学生は一度訪れてみるのがおすすめです。
起業に役立つ知識はもちろん、空き店舗の斡旋や起業後の経営相談をしてくれる施設もありますよ。
(2)学生の企業への出資制度がある大学も
学生の起業をサポートするために、学生の企業に出資などの支援を行う大学があります。
- 日本経済大学
- 慶應義塾大学
- 早稲田大学
- 京都大学
- 大阪商業大学
- 同志社大学
- 岡山大学
- 九州情報大学
など
大学時代に起業をしたいと思っている高校生は、起業家支援を軸に大学を選んでみてはいかがでしょうか。
(3)専属アドバイザーがいることも
学生の起業支援に力を入れている大学では、専属の起業アドバイザーの力を借りられることもあります。経済・経営系の学部なら、豊富な知識を持つ教授が相談に乗ってくれることも。
学生起業家は、周りの力を借りやすいというメリットもあるのです。
5.独立起業するのは難しい?
独立起業は、決して難しいことではありません。元手がかからず、パソコン一台で始められる事業もあります。まずは挑戦してみて、軌道に乗りそうなら本業化するというのも一つの方法です。
(1)会社に勤めながらネット副業 週末起業する人も
今は、クラウドソーシングなどを利用して誰でもフリーで仕事ができる時代です。ライティング、プログラミング、デザインなど、仕事で培ったスキルがあれば、会社の給与より高収入が得られることも。まずは副業から始め、事業が軌道に乗ったところで退職して本業化すると、収入が途切れることがなく安心です。
(2)女性起業家も増加 主婦の趣味・経験を活かした起業例
結婚後は家に入るのではなく、自分のスキルを活かした起業をする女性も多くなっています。
子育て経験を活かして 育児ビジネス
子育て中、様々な不便に気づいて「こんな商品・サービスがあればいいのに」と思う女性は多いです。そんなアイデアを行かせるのが、子育て経験のある女性による育児ビジネス。子育て中のピンポイントなニーズを押さえた商品やサービスなど、女性による育児関連の起業が注目されています。
また、自分の子育てが終わったあと、ベビーシッターとして活躍する女性も多いですね。
自宅でできる お教室やエステサロン
料理・洋裁・ヨガ・フラワーアレンジメントなど、自分の興味や特技を活かせるのが自宅で行うお教室。結婚や出産で退職したエステティシャン・ネイリストが、自宅でサロンを開くというケースも多いです。家庭の都合で出勤や長時間勤務が難しい、人に教えられる特技があるという女性におすすめの起業方法です。
カフェなどの飲食店経営も
「個人で起業」というと思い浮かべる人の多い、カフェなどの飲食店経営。飲食店経営には保健所の飲食店営業許可、お酒を扱う場合は税務署の酒類販売業免許が必要ですが、スキルの面では比較的ハードルが低い起業方法です。
6.起業を考えたら
「起業」というワードが頭に浮かんだら、まずは行動あるのみです。経営者には行動力が必須スキルですから、第一歩を踏み出してみるのが大切ですよ。
(1)まずはネットや本で勉強してみる
起業に関するノウハウを書いた本は、書店に数え切れないほどあります。また、インターネットでは無料の起業関連サイトも多く、知識の入り口としておすすめです。漠然と「起業したい」と思うだけでは始まりません。本やネットの知識をもとに起業について多方面から考えてみましょう。
(2)税金やお金の知識は必須
ビジネスは理想や熱意があれば成功するものではありません。起業をするなら、一般常識以上の税金やお金の知識は必須となります。できれば簿記の資格を持っていると、起業後に帳簿付けなどの作業がスムーズにできますよ。
7.まとめ
起業するには、実現可能なビジネスモデルを具体的に考えるのが大事です。その後、起業するまでには資金調達・起業の手続きというステップがあります。
学生や主婦、いま会社勤めをしている方でも、やり方次第で起業は可能です。