個人クリニックでは、家計とクリニックの会計は分けて考える必要があります。領収書もしっかりと分け、プライベートの領収書が混ざらないよう注意する必要があります。個人経営のクリニックでは医師が経理を兼ねている場合も度々あるため、最低限の経理に関する知識は必須と言えるでしょう。
目次
1.事業と家計の分離からはじめる
個人経営の病院では、生活用の銀行口座やクレジットカードを本業で使用している場合も珍しくはありません。起業時からそのままだったり、手間だからと分けずに使っている方も少なくはないでしょう。
しかし、家計と事業を分けずに口座やカードを使用していると、経理が非常に複雑になります。特に注意したいのが経費の処理で、家計の支出と本業の支出が区分しづらくなり、混乱してしまうことも考えられます。
例えば同一の口座を使用している場合、引き落とされた1万円が家計の支出なのか、それとも病院の支出なのか判断に迷う場合もあるでしょう。
こうした混同を避けるためにも、家計とクリニックの会計は分けて考える必要があります。必ずクリニック専用の銀行口座とカードを作成し、入金と支払い時に使うようにしましょう。
2.最低限の経理の知識が必須
個人経営のクリニックでは医師が経理を兼ねている場合も度々あります。規模の小さなクリニック・病院ではごく一般的ですが、最低限の経理に関する知識は必須と言えます。
経理は収入と支出を管理するためのものですが、それぞれ勘定科目で細かく仕訳する作業が必要です。例えばどの経費をどの勘定科目で仕訳するか、売上をどう計上するかなど、正確な処理が求められます。最低でも収入・経費の勘定科目と仕訳の方法は覚える必要があるでしょう。
また、自宅とクリニックを兼ねている場合、家事按分(かじあんぶん)も考慮しなくてはいけません。特に注意したいのは水道光熱費で、例えば家事とクリニックで使用した電気代の割合を計算し、使用した割合に応じて経費を計上します。
他にも、従業員を雇った場合の給与や各種保険の経理など、規模によって幅広い知識が求められます。
3.個人にかかる税金の範囲
個人クリニックに課せられる税金は、一般の事業を行う「個人事業者」とほぼ同様の取り扱いとなります。
従って、個人クリニックにかかる税金としては、個人事業者と同様に所得税をはじめ、住民税や事業税、消費税、固定資産税(該当する不動産や償却資産等がある場合)などがあります。
しかし、一般の個人事業者は、「会社法」を基礎としていますが、医療機関は、「医療法」を基礎としているため、会計処理の方法や余剰金の取扱いなどで、医療機関独特の取扱いになるところもあります。
【個人クリニックにかかる主な課税税目】
所得税、消費税、住民税、事業税、固定資産税など
4.税務上の言葉の意味
会計や税金に関する言葉には、意味が分かりづらいことが良くあります。
病院における「収入」「必要経費」「所得」の意味の違いを見ていきましょう。
(1)収入
患者から直接いただく窓口収入や社会保険料収入や自由診療収入等の振込入金のように、入ってきた金額の総額のことを言います。自営業者の場合、一般的に年商などとも表現されます。
ちなみに、支払基金からの振込金額は源泉所得税が差引かれていますので、その額を加算した金額の総額が「収入」となります。
(2)必要経費
必要経費は収入を得るために必要な経費であり、業種や業態によって多少変わっててきます。開業医の場合は、診療所の家賃や駐車場代、看護師や事務員などの給料、医療設備の減価償却といったものが必要経費となります。
開業医の場合は、下記(6)に追記しますが「家事関連費」にも注意が必要です。
(3)所得
上記の「収入」から「必要経費」を差し引いた差額を意味します。
各種税金はこの「所得」に対して一定の税率を乗じて課せられるケースが大半です。
(4)個人事業主の10種類の所得
院長の方の中には、診療所診察の他にも学校医をしたり、講演や原稿料などの収入がある方もいらっしゃいます。これらにかかる報酬も「収入」と言えます。
そこで、税金を計算する第一段階として「収入」を種類ごとに分類します。そしてその分類した「収入」の種類ごとに経費を差し引いたり、特定の計算をしたりして「所得」を算出します。
「所得」の種類は下記の通り10種類もあります。
ちなみに、講演料や原稿料の「収入」は「事業所得」ではなく「雑所得」に分類されます。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
(5)収入計上の時期
院長(診療所)の税金を計算する場合、患者を12月に診療したのであれば、たとえその診療報酬の振込入金が2月になったとしても、年末の時点で「未収入金」としてその報酬をその年分の「収入」に含めて計算することになります。
(6)家事関連費
①家事関連費とは
病院の経費と家事上の支出が混在している経費を「家事関連費」と言います。
これらの費用は確定申告の時に使用時間や使用面積割合などの合理的基準により按分して事業用の部分のみを経費とします。
②主な家事関連費と按分基準
- 車両費…ガソリン代、車検等の維持費などは、使用割合により按分
- 減価償却費…建物、車両などは使用面積、使用割合などより按分
- 損害保険料…火災保険料、自動車保険料などは使用面積、使用割合などにより按分
- 租税公課…固定資産税、都市計画税は使用面積、使用割合などにより按分
- 支払利息…診療所などに関る支払利息は使用面積などにより按分
- 水道光熱費…病院と家事用のメーターが同一な電気代、水道代、ガス代などは使用時間、電灯数、蛇口数などにより按分する。
5.必要経費の計算の特例
税金は上記の通り、収入から経費を引いた所得(利益)に対して課せられます。そのため経費を増やそうと、院長は個人的な支出まで医院の経費に加えたり、不必要なものまで購入して経費を増やそうとしたりする傾向があります。
しかしそのようなことをしていると、医院の本当の健康状態すなわち経営成績が分からなくなってしまいます。
そこで覚えておいてほしいのが、医療業の特例「概算経費」です。
6.概算経費率特例制度とは
(1)意義
医院は、医療サービスを提供するという「公共性」の観点等から、独自の税負担軽減の特例措置や、課税の計算方法が設けられています。
そのような特例措置のうち、医院にとっての要諦ともいえるものとして、「概算経費率特例制度」があります。
この特例制度は、「個人・法人」という経営形態に関わらず、社会保険診療報酬が5,000万円以下である場合に、その社会保険診療報酬にかかる経費について、実際に支出した経費の金額ではなく、社会保険診療報酬(収入)に応じて定められた下記の概算値を用いて経費を計上するというものです。
(2)社会保険診療報酬と概算経費の額(速算表)
保険診療収入 | 概算経費 |
2500万円以下 | 診療報酬収入×72%(所得率28%) |
2500万円超~3000万円 | 診療報酬収入×70%(所得率30%) +控除額50万円 |
3000万円超~4000万円 | 診療報酬収入×62%(所得率38%) +控除額290万円 |
4000万円超~5000万円 | 診療報酬収入×57%(所得率43%) +控除額490万円 |
(3)概算経費を用いた場合の計算例
(例)社会保険診療報酬が4,000万円、社会保険診療報酬にかかる実額経費が2,000万円である場合
①通常の場合 | ②概算経費の場合 |
収入 4,000万円-経費 2,000万円 =所得 2,000万円 税金 2,000万円×40%-2,796千円 ⇒ 520.4万円 | 収入 4,000万円 |
【上記の差額】
520.4万円-252.3万円 ⇒ 268.1万円 の節税になります!!
※所得控除等は考慮していません。
(4)概算経費の活用
上記の計算例のように、診療報酬を5000万円以内の範囲に留めて優遇制度を受けると、大きな節税効果が期待できます。
このような有利な制度を受けることができるにも関わらず、最終の着地点をギリギリで外してしまうと、とてももったいないことになります。
7.まとめ
開業医にとって経理が大きな負担となりかねません。医師は診療業務でも負担が大きいのに、経理でさらなる負担を強いられることは避けたいところです。
しかし、経理担当を雇う余裕が無い場合も珍しくはありませんし、雇った人が正確な経理処理をしてくれるとも限りません。
個人クリニックの経理は負担が非常に大きいため、経理代行サービスを検討してみると良いでしょう。経理のプロである税理士の経理代行や、経理派遣などのサービスを利用すれば、面倒な経理業務全般の負担から開放されます。
別途経理担当者を雇うよりも経理派遣などの方が経費が節約できるほか、信頼性の高さが魅力です。
個人クリニックの経理でお困りの方は東京・大阪経理代行へお気軽にお問い合わせください。
親切・丁寧に対応させていただきます。
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