取引先との関係をスムーズにするために何かと嵩む交際費。実は、交際費は上限ありで損金算入できるのです。2014年の税制改正で損金算入できる交際費の枠が大きくなり、節税しやすくなりました。
目次
1.交際費の定義とは?
国税庁によると、交際費とは「法人がその得意先・仕入先・その他事業に関係のある者等に対する接待・供応・慰安・贈答・その他これらに類する行為のために支出する費用」と定められています。
わかりやすく言うと、事業に関係のある相手を接待するために使ったお金ということです。
例えば、接待や懇親のための飲み会や、お中元・お歳暮などの贈答品の費用が交際費にあたります。
2.交際費の損金不算入制度の変更点
原則として、交際費は全額損金不算入ということになっています。しかし、「交際費課税の特例措置」という制度があり、現行法では交際費も一定額までは損金に計上することが可能です。
この交際費課税の特例措置は2014年4月に改正されました。改正前・改正後でどのような違いがあるのかを詳しく見ていきましょう。
(1)改正前
2014年4月に税制が改正される前は、現行制度よりも少ない金額で交際費の損金算入が認められていました。
時期によって金額が異なりますが、その内容は以下の通りです。
- 2003年4月1日~2009年3月31日:400万円×当該事業年度の月数÷12×90%
- 2009年4月1日~2013年3月31日:600万円×当該事業年度の月数÷12×90%
- 2013年4月1日~2014年3月31日:800万円×当該事業年度の月数÷12
このように、交際費が損金算入できる枠は数年ごとに見直されています。2013年3月31日までは、交際費の10%は損金算入できませんでしたが、2013年4月の改正で撤廃されました。上限800万円という内容は、現在もそのまま引き継がれています。
ただし、これが適用されていたのは資本金1億円以下の中小企業の場合です。
(2)改正後
2014年の改正後には、それ以前よりも損金算入できる交際費の金額が大きくなりました。中小企業は「上限800万円」という以前の内容に加え、「上限なく、交際費(飲食費)の半額を損金算入できる」という条件も選択できるようになっています。
また、資本金1億円以上の大企業にも交際費の損金算入が認められるようになったのは大きな変化です。
3.交際費課税の特例措置が2年延長
2018年の税制改正で、交際費課税の特例措置は2020年3月31日まで延長されることになりました。ここでは、その理由や現行の交際費の損金算入について、詳しい内容を解説していきます。
(1)なぜ適用期間が延長になったのか?
「交際費課税の特例措置」が延長されたのは、消費を増やして日本の経済活動を活性化させるためです。厚生労働省などの要望によりこの延長は実現されましたが、その理由として以下の2点が挙げられています。
- 飲食店などでの接待を促し、法人企業の収益機会を増やすこと。
- より多くの飲食店を利用することにより、消費の喚起を促すこと。
内容としてはほとんど同じですが、つまり「接待で積極的に飲食店等を利用し、消費を促進させよう」ということですね。「従業員は経費で飲食ができる」「企業側は節税になる」「飲食店は収益を上げられる」という、誰にとってもメリットの多い措置なのです。
(2)中小企業(資本金1億円以下)
2014年の「交際費課税の特例措置」改正後、資本金1億円以下の中小企業は以下の条件で交際費を損金算入できるようになりました。
①上限800万円まで、交際費全額を損金算入できる
②上限なく、交際費(飲食費)の半額を損金算入できる
中小企業はこのどちらかを選択して交際費を損金算入します。つまり、交際費の合計が800万円以下の場合は①を、接待飲食費の合計が1,600万円以上の場合は②を選んだ方が有利ということになりますね。
(3)大企業(資本金1億円以上)
資本金1億円以上の大企業の場合は、中小企業の②と同じ「上限なく、交際費(飲食費)の半額を損金算入できる」が適用されます。そのため、2014年4月1日〜2020年3月31日の期間に大企業が損金算入できる交際費の額は、単純に「接待飲食費×50%」という計算になります。
(4)個人事業主・フリーランス
個人事業主の場合は、法人とは違って交際費の上限が定められていません。そのため、個人事業主は金額に関係なく全額を損金算入できるということになります。
4.交際費にあたるのは何?
それでは、具体的にどのような出費が交際費にあたるのかを見ていきましょう。一見交際費のように思えても、実はルールに照らすとそうではないというケースもあるため、注意が必要です。
(1)分かりやすい交際費の例一覧
先にも解説しましたが、交際費とは取引先などを接待するためにかかったお金のことです。飲食代などの接待で直接かかる費用だけではなく、タクシー代などの間接的な費用も上限800万円までなら損金算入することができます。
飲食費については次の項目で解説しますが、飲食費以外で交際費に認められる例には以下のようなものがあります。
- ゴルフ、旅行、観劇など慰安費
- お中元、お歳暮など贈答品費
- 香典、結婚祝いなど慶弔に関する出費
- 開店祝いなどの花代
- 取引先訪問の際の手土産
(2)飲食費
交際費のうち、飲食費とはその名の通り取引先などを接待するための飲食にかかったお金のことを指します。具体的には以下のものが飲食費に含まれます。
- 自社の従業員が、取引先社員などを接待して飲食するための代金
- 飲食のために発生する、テーブルチャージ代やサービス料、会場費
- 飲食後に、飲食店等で貰うお土産代
- 取引先の業務やイベントに弁当等の差入れを行うための弁当代など
- 親会社やグループ内法人の役員等に対して接待するための飲食代
このうちのどれかかつ5000円以上のものが飲食費として損金算入できます。
では、5000円以下の場合はどうなるかというと、これは会議費にあたります。
(3)会議費
会議費とは「会議に関連してかかった費用」のことです。具体的には、以下のようなもののことです。
- 会議のために借りた会場費
- 会議に使用した資料代
- 会議に際して出した弁当・お茶・茶菓子代
また、先に触れたように、取引先との飲食代も5000円以下であれば会議費として計上できます。なぜなら、取引先と飲食をする場合は仕事の話が出るのは自然なことであって、会議と飲食費の区別が難しいためです。そのため、5000円以上は飲食費・5000円以下は会議費と定められているのです。
(4)広告宣伝費
通常の贈答品は交際費になりますが、その品物が社名入りのタオルやカレンダーといった会社のグッズなら、広告宣伝費として損金算入できます。
不特定多数に向けて会社をアピールするために作ったものなら、広告宣伝目的とすることができるのです。一見交際費のようでも、広告宣伝費として損金算入できる場合はこちらを優先するようにしましょう。
5.まとめ
交際費の損金算入は、経済を活性化させるために枠がどんどん大きくなっています。損金算入の上限がない会議費や広告宣伝費も活用すれば、大きな利益調整ができますよ。