芸能人の確定申告は、個人事業主か給与所得者のどちらに該当するか、専属マネジメント契約なのか委任契約なのか、所得金額によっても異なります。
最近、TVを見ていたら「数ヶ月前までは一般人でした~!」と話している芸能人を目にしました。
SNSや動画サイトをきっかけに、ある日突然、一般人から芸能人になりうる今日、遠い世界の話ではない「芸能人の確定申告」についてご紹介します。
1.芸能人は確定申告をする必要があるのか?
確定申告が必要かどうか判断するためにまず考えなければならない点は、「芸能人は個人事業主・給与所得者のどちらに該当するのか」という点です。
芸能人と一言で言っても、俳優、女優、声優、歌手、モデル、タレント、アイドル、芸人など様々な方がいますし、各事務所との契約内容も異なっています。
ここでは多くの芸能人と事務所の間で結ばれている、「専属マネジメント契約」を例にとってご説明していきます。
2芸能人と事務所の契約関係
「専属マネジメント契約」とは、簡単に言うと、「芸能人は事務所のために、事務所は芸能人のために活動することを誓います」、という内容の契約です。
この契約では事務所が芸能人に対し専属料として、給与ではなく報酬として毎月固定の金額を支払う場合と、完全出来高制で支払う場合があります。
つまり、芸能人と事務所の間の契約形態が雇用契約ではなく委任契約であり、芸能人は事業報酬を受け取っているということになります。
「マネジメント契約」、「タレント契約」、「専属タレント契約」と別名で契約を結んでいらっしゃる方もいますが、呼び方が違うだけで基本的には全て委任契約となります。
これらのことから、「多くの芸能人は個人事業主として確定申告をする必要がある」と言えるでしょう。
3芸能人の所得金額
それでは、芸能人の方の税額はどのような手順を踏んで確定するのでしょうか?
まず、芸能人の方の税額を計算するための基準となる金額は、「所得金額」になります。
よく「所得金額」と「収入金額」を混同されている方がおられますが、「所得」と「収入(報酬)」は同じではありません。
所得金額とは、税金計算上の基準となる儲けや利益のことです。この儲けや利益を生もうとすると、当然「経費」がかかります。
この税金計算のための基となる「所得金額」は収入(報酬)から「経費」を差し引いた残りの金額となります。
収入(報酬)-必要経費=所得金額(税額計算の基準となる金額)
ということは、当然の事ながら「必要経費」が多ければ多いほど、税額計算の基準となる「所得金額」が小さくなる=支払う税金の額が少なくて済む、という事になるわけです。
芸能人の必要経費
しかし、芸能人の方がお金を使ったら何でもかんでも必要経費となるわけではありません。
必要経費算入のための条件があります。
- 芸能人としての報酬を得るために直結した支出(報酬に関連する支払いのこと)
- 芸能人としての報酬を得るために間接的にかかった支出(報酬と支出の関連性が曖昧なもの)
場合によっては②が必要経費とできる場合もありますが、基本的に「必要経費」は①のみです。
それでは、必要経費と認められる支出には具体的にどのようなものが挙げられるのか考えてみましょう。
衣装代・小物代
仕事で使うこれらの支出は必ず領収書・レシートをもらっておいて下さい。
また、いつどのようなお仕事で使ったのかなどを記録として「メモ」しておくと、いざ税務調査が入った時、納得のいく説明ができます。
あくまでも仕事で使ったというのが前提ですが、例えば普段着でも着ることのできる洋服の場合、全額を経費に計上することは難しく、かかった金額のうち、仕事で使った分だけを経費に計上する「家事按分」という方法をとります。
「仕事で〇%くらい使ってプライベートで△%くらい使用する」という場合であれば、購入金額の〇%を経費として計上します。
美容院代・エステ・ネイル・化粧品代
これも上記同様、仕事で使った分のみを経費として計上する事ができますが、例えばお仕事前に美容院で髪をセットし、お仕事が終わったら元に戻す場合は全額経費にできるでしょう。
しかし、髪をカットした場合、その効果が仕事終了後も続く場合、これを経費にする事は難しいので、例えば半額を経費として計上することなどが考えられます。
飲食代
業界関係者との飲食が、今後の仕事につなげるためのものという目的が明確である場合は、交際費として計上する事ができますが、友人や仕事仲間との打ち上げなどは認められません。
その他
仕事現場、オーディション会場への交通費、宣伝の為の撮影代、レッスン料など芸能活動に直接関わる支出は経費として計上する事ができます。
携帯代、水道光熱費、家賃などは仕事にかかわる部分とプライベートな部分があると考えられるので、ご自身の場合において経費計上できるか否か詳しくは税理士にお問い合わせ下さい。
また、税理士に支払う顧問料・確定申告料は全額経費計上可能です。
4雇用契約でも確定申告が必要な場合
また、専属マネジメント契約以外の形で雇用契約を事務所と結んでいる場合にも、「確定申告が必要な人って?」というコラムでご紹介した条件に当てはまれば、確定申告をする必要があるでしょう。
①給与の収入金額が2,000万円を超える人
②給与を1か所からもらっている人で、給与及び退職所得以外の所得額が20万円を超える人
③2か所以上から給与をもらっている人で、
年末調整されていない給与の収入金額とその他の所得金額との合計額が20万円を超える人
④同族会社の役員やその親族などで、その同族会社から給与のほかに、貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
⑤災害にあって、災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人
芸能界では「CM1本の出演料が1,000万円」という場合もあるため、①に該当する人も多いのかもしれませんね。
芸能人の方は税金についてかなりナーバスになっている方もいらっしゃいます。
例えば、脱税や滞納が発覚すると、芸能人生が終わりかねないからです。
マスコミによる報道や風評被害など気にされている方が多いです。
そういった方は税理士に丸投げされている方が多いですね。
5.まとめ
- 多くの芸能人は所属事務所と「専属マネジメント契約」という委任契約を結んでおり、事業報酬を受け取っているため、個人事業主として確定申告をする必要がある。
- 税金の計算では、収入(報酬)-必要経費=所得金額が税金の基となる金額である。
- 何でもかんでも必要経費として認められるわけではない。個別具体的なご相談は税理士まで。
- また、雇用契約の場合でも、所定の条件に当てはまれば確定申告をする必要がある。
ここまで読んでくださったアナタが芸能人になった時には、
東京・大阪経理代行へお気軽にお問い合わせください。
親切・丁寧に対応させていただきます。