制度融資とは、各自治体が実施している中小企業の支援制度です。金融機関から融資を受ける際、自治体が保証料などをサポートすることで、起業まもない会社でも融資を受けやすくなります。
この記事では、制度融資の仕組みや利用方法、メリット・デメリットをわかりやすく説明します。
目次
1.制度融資とは
制度融資とは、金融機関から直接融資を受けることが難しい中小企業の資金調達を支援するためにある制度です。
各自治体が窓口となり、資金調達をしたい企業に信用保証協会をつけ、銀行からの融資を斡旋します。
(1)制度融資の仕組み
制度融資は、地方自治体と信用保証協会が貸す側の金融機関と借りる側の企業の間に入るという仕組みで、中小企業も資金調達がしやすくなっています。
まず、制度融資でお金を借りたい企業は、地方自治体の窓口で申請をします。
すると、地方自治体が融資の斡旋を行い、信用保証協会がその保証人になります。
そして地方自治体が預託金を金融機関に預け、企業は保証金を信用保険協会に支払うことで、貸し倒れのリスクを抑えることが可能になります。もちろん、借りたお金は企業が全額返済するのが前提ですが、地方自治体が協力することで融資のハードルを下げ、地域の中小企業の事業維持に繋がるのです。
(2)利用できる制度融資の例
制度融資を利用可能な事業者の基準は、各地方自治体で異なります。業種や会社の規模などの要件があるので、事業所のある地方自治体の制度融資を調べてみることをおすすめいたします。
例えば、大阪府の制度融資可能な企業の業種・規模は次の通りです。
- 製造業、建設業、運輸業、以下に掲げる以外の業種:資本金3億円以下・従業員300人以下(ゴム製品製造業は900人以下)
- 卸売業:資本金1億円以下・従業員100人以下
- 小売業(飲食業を含む。):資本金5,000万円以下・従業員50人以下
- サービス業:資本金5千万円以下・従業員100人以下
- ソフトウェア業、情報サービス業:資本金3億円以下、従業員300人以下
- 旅館業:資本金5,000万円以下、従業員200人以下
- 医療法人等:資本金条件なし・従業員300人以下
出典:http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/246/00000000/1annai%20.pdf
また、地方自治体によって、業種と規模の他に
- 都道府県内に事業所(住居)があること
- 事業税などの租税の未申告、滞納がないこと
- 許認可や登録等を必要とする事業で、当該許認可または登録等を受けていること
- 暴力等不法行為者でないこと
- 申し込みに際して、いわゆる「金融あっせん屋」などの第三者が介在していないこと
といった条件が課せられることもあります。
そして、制度融資の内容も、自治体によって様々です。
東京都の例を挙げると、以下のような制度融資があります。
- 創業融資(上限 3,500万円)
- 小口零細企業保証制度(上限 2,000万円)
- 一般事業資金融資(上限 28,000万円)
- 企業再生支援(上限 20,000万円)
など
(3)制度融資の利用方法
制度融資の手続きは、以下のようなプロセスで進んでいきます。
- 地方自治体の窓口に申請
- 金融機関へ融資の申し込み
- 信用保証協会へ保証の申し込み
- 信用保証協会の審査・面接
- 金融機関の最終審査
- 融資の実行
- 返済
2.制度融資のメリット
制度融資は中小企業を支援するための制度なので、利用すると様々なメリットがあります。
主な5つのメリットについて、解説していきます。
1.審査のハードルが低め | 制度融資のメリット1つ目は、審査のハードルが低いことです。 金融機関から直接融資を受けようと思うと、ある程度の社会的信用や経営実績が必要になります。これは起業したての企業にとっては厳しい条件であり、資金調達ができないので事業拡大もできないという負のスパイラルに陥ってしまいます。 制度融資はこの状態を防ぐためにあります。もし返済が滞ったとしても、信用保証協会による立て替えがあるため融資リスクが低く、審査もそのぶん甘くなっているのが実態です。 |
2.金利が低い | 2つ目の制度融資のメリットは、金利が低いことです。 制度融資の金利相場は、1.0〜3.0%となっています。 ちなみに、中小企業が銀行で保証協会付き融資を受けると、金利の相場は0.9〜3.5%。保証協会付きの融資の場合は他に保証料もかかるので、金利自体は同程度でも割高になります。 ビジネスローンの金利相場は3.0〜18.0%で、制度融資よりもかなり高いです。 |
3.据え置き期間が長い | 据置期間とは、元本を返済せずに金利だけを支払う期間のことです。 制度融資だとこの据置期間が1年間であることが多いので、その間は少額の返済で済みます。 余裕を持った返済計画を立てられるので、起業間もなく、安定した利益が出ていない企業も安心です。 |
4.経営支援が受けられることも | 地方自治体によっては、制度融資の対象事業者に対して経営支援を行なっています。 これは地方を活性化するためには、中小企業の成長が重要となるためです。 利子補給や保証料の補助、経営アドバイスなどで、中小企業経営者をサポートしています。 |
5.基本的に連帯保証人不要 | 制度融資は信用保証協会が保証人となるので、原則として連帯保証人は不要です。 ただし、場合によっては社長の連帯保証が必要になることもあるので、詳しくは利用したい制度の要件をチェックしてください。 |
3.制度融資のデメリット
制度融資には、デメリット面も存在します。
制度融資の利用を検討する際は、以下の点に気をつけましょう。
1.上限金額がある | 制度融資は、利用する制度ごとに上限金額が定められています。多額の資金が必要になる業種では、融資金額が足りないということも起こりうるでしょう。 利用前にリサーチして、自分の事業にぴったりの制度を見つける必要があります。 |
2.融資実行までに時間がかかる | 制度融資は、申し込みから融資実行まで2〜3ヶ月ほどかかります。これは、企業と金融機関の他に自治体・保証協会が関わるので、それぞれの機関で審査や事務手続きに時間がかかるためです。 そのため、緊急性の高い資金調達には、あまり向いていないと言えます。 |
3.融資を受ける手続きが煩雑 | 制度融資に関わっている機関が多いため、それぞれに提出する書類の作成などで手続きが煩雑です。 利用プロセスがシンプルでないのも、制度融資のデメリットと言えます。 |
4.自治体ごとに内容が違う | 繰り返しになりますが、制度融資は各自治体が実施しているものです。そのため、企業が本拠地を置いている自治体によって、利用できる制度融資が異なります。 利用要件・上限額・利率などにばらつきがあるので、自分のニーズにあった制度がないというケースもあるのです。 |
5.連帯保証を求めるものもある | 制度融資では信用保証協会が保証人になりますが、さらに会社代表が連帯保証人になるよう求められることもあります。 また、担保に関しても、利用する制度によっては必要になることがあります。 |
4.制度融資は日本政策金融公庫より得?
制度融資と並んで、創業時に利用する人が多いのが、日本政策金融公庫の「創業融資」です。
制度融資と日本政策金融公庫は、どちらが得とは一概に言い切れません。
それは、制度融資の内容は自治体によって違うので、金利や上限額の設定がまちまちのためです。
ただし、日本政策金融公庫の「新創業融資」は無保証で利用できるのに対し、制度融資は必ず信用保証協会の保証をつける必要があります。
その分、新創業融資は金利が高めなので、保証料と金利の差でどちらが得になるのかが、見極めのポイントとなるでしょう。
5.制度融資と他の融資の併用は可能?
制度融資は、他の融資と併用することができます。
創業時に利用する人が多い、日本政策金融公庫の創業融資とも併用が可能です。ビジネスローン、ファクタリング、個人投資家などの資金調達と併用しても、問題ありません。
制度融資以外の資金調達方法について詳しく知りたい方は、「資金調達の方法は?融資以外や返済不要の調達方法もご紹介」もご覧ください。
6.まとめ
制度融資は、自治体が地域の中小企業を支援するために行なっている制度です。
金融機関からの借り入れのハードルが下がるので、起業してまもない会社でも利用できるのが大きなメリットです。
各自治体で利用できる制度融資について知りたい方は、地域の労働局のホームページをチェックしてみてください。