会社設立の費用は、「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」の4種類によって異なります。
その中でも、実際に設立される会社の数は株式会社・合同会社の2種類が圧倒的に多いです。
目次
1.株式会社設立の費用
それではまず、株式会社の設立にかかる費用を解説していきます。
株式会社の設立には、定款の認証・登記という手続きが必要となり、合同会社よりも設立費用が高くなります。
(1)必要な法定費用は242,000円
株式会社設立の手続きにかかる費用は、資本金・雑費を除くと24万2,000円。
その内訳は、以下のようになっています。
- 定款認証手数料:5万円
- 収入印紙代:4万円
- 定款の謄本手数料:2,000円
- 登録免許税:15万円
これらを合計すると、上記の24万2,000円という金額になります。これは会社設立の手続きに必ず必要になるものです。相場などによる変動や、安くする方法はありません。
ただし、収入印紙代の4万円については、電子定款で会社を設立する場合にはかかりません。
電子定款を選択すると、紙媒体の定款自体が存在しないので、定款に印紙を貼り付ける必要がなくなるためです。
そのため、電子定款で株式会社を設立する場合、費用の合計は20万2,000円となります。
(2)その他にかかる雑費
株式会社設立の手続きを行うためには、必要な書類や印鑑の作成費用がかかります。
手続きにあたってかかる雑費の相場は、全て合わせて1万円ほど。
その内訳は、以下のようになります。
- 実印作成費(4本分):約5,000円~
- 印鑑登録の費用:約300円
- 印鑑証明書の発行費:約450円×必要枚数
- 登記簿謄本の発行費:約500円×必要枚数
雑費の中でもっとも大きな出費となるのが、実印作成費。
会社を設立する手続きには、「会社実印(代表社印)」「会社銀行印」「角印(社印)」「住所印(ゴム印)」という4種類の印鑑が必要となります。
安くても1本1,000円以上はかかるので、合計5,000円ほどは見込んでおいた方がいいでしょう。クオリティにこだわると、もっと費用がかかります。
(3)資本金はいくらにすべき?
株式会社の設立には資本金が必要です。2006年に新会社法が施行されてからは、資本金1円からでも会社設立が可能になりました。
しかし、安易に資本金1円で起業してしまうと、様々なデメリットがあります。
資本金とは、端的にいうと会社の運転資金なので、これが少なすぎると経営を維持する力が弱いということになります。
金融機関や取引先から「すぐに倒産するのでは?」と思われてしまうと、資金調達や販路拡大が難しくなってしまうのです。
ただし、多ければ多いほど良いというわけではありません。なぜなら、先にご紹介した登録免許税は、資本金が2,140万円以上になると15万円より高くなるためです。
登録免許税の金額は、正式には「15万円、または資本金の0.7%(資本金の0.7%が15万円を上回る場合)」となっています。
「資本金の0.7%=15万円」となるのが2,140万円なので、これを超えると手続きにかかる法定費用が高くなるということは知っておきましょう。
2.合同会社設立の費用
次に、合同会社を設立するための費用について解説していきます。
合同会社の場合、手続きのステップが少なく、登録免許税も株式会社より安いので、設立費用を抑えることができます。
(1)必要な法定費用は10万円
合同会社設立の手続きに必要な費用は、10万円です。
こちらも、国に支払う法定費用なので、相場による変動や安い金額に抑える方法はありません。
費用の内訳は、以下のようになっています。
- 収入印紙代:4万円
- 登録免許税:6万円
合同会社を設立する場合、株式会社で必要な定款の認証という手続きが不要です。そのため、定款認証手数料や、認証に必要な謄本の作成費用は必要ありません。
株式会社の場合と同様、電子定款の場合は収入印紙代の4万円も不要となります。ですから、合同会社設立に最低限必要な費用は、登録免許税の6万円のみです。
資本金の0.7%が6万円を超える場合には、登録免許税はそちらの金額になります。
つまり、資本金が8,571,428円を超えると法定費用が高くなるということは覚えておきましょう。
(2)その他の雑費は株式会社とほぼ同じ
法定費用以外にかかる雑費の相場は、株式会社とほぼ同じで合計1万円程度です。
- 実印作成費(4本分):約5,000円~
- 印鑑登録の費用:約300円
- 印鑑証明書の発行費:約450円×必要枚数
- 登記簿謄本の発行費:約500円×必要枚数
そのため、合同会社設立にかかる費用の合計は、最低7万円ほどです。
株式会社設立にかかる費用の1/3以下なので、とにかく安い方法を選びたい方には合同会社設立がおすすめです。
(3)資本金はいくらにすべき?
合同会社の資本金は、株式会社の場合と同じく最低1円でもOKです。しかし、こちらも株式会社の場合と同じく、資金調達や販路拡大が難しいというデメリットがあります。
合同会社の資本金の相場は、50~300万円ほどです。
具体的には、「事業の準備にかかる資金+3~6ヶ月分の運転資金」を計算して、適切な金額を考えましょう。
ただし、先にもお伝えしましたが、資本金857万円を超えると登録免許税が高くなるということは知っておいてください。
3会社設立の費用を安くする方法
会社設立の費用を安くする方法は、あまり多くありません。ここまでも何度かお伝えしてきましたが、会社設立の手続きにかかる費用は国に支払う法定費用のためです。
唯一削れるのは、定款に貼る収入印紙代の4万円。定款を紙ではなく電子定款にすれば、収入印紙代を支払わずに済みます。
ただし、電子定款は誰でも無料で作成できるわけではありません。
まず、電子定款はPDFで作成し、その中に電子署名を挿入する必要があります。PDFデータ自体はフリーソフトでも簡単に作ることができますが、電子署名を挿入するにはAdobe Acrobatなどの専門ソフトを使わなければいけません。
このAdobe Acrobatの購入には、3万円ほどの費用がかかります。
また、電子署名を作成するには、あらかじめ電子証明書の交付を受けておく必要があります。電子証明書の交付を受けるために、マイナンバーカードを読み取るカードリーダーを用意しなければいけません。
カードリーダーの価格は2,000円ほどなので、電子定款を作成する費用相場は32,000円程度と思っておきましょう。
ちなみに電子定款は、税理士や司法書士に作成を依頼することも可能です。この場合、ソフトやカードリーダー代を節約できる代わりに、報酬として5,000円ほどがかかります。
そのため、もっとも法定費用が安いのは、「電子定款+作成を外注」という方法です。
4.会社設立費用を経費として計上するには
会社設立にかかった費用は、開業前のものも含めて会社の経費にすることが可能です。設立時の費用は、「創立費」と「開業費」の2種類に分けて経費に計上します。
創立費 | 開業費 |
設立の準備にかかった費用 (設立手続きに必要な書類の作成費用、登録免許税など) | 設立後の開業準備段階に費用 (調査費用、事前広告費、打ち合わせにかかった飲食代など) |
ただし、会社設立後も経常的にかかっていく費用については、創立費または開業費として経費計上することができません。
設立と同時にかかった費用であっても、以下のようなものは通常の仕訳を行います。
- 土地や建物の賃借料
- 通信費
- 事務用消耗品費
- 仕入れ費用
- 社員の給与
など
5.まとめ
会社設立にかかる費用は、株式会社で「約25万円」、合同会社で「約10万円」。この他に、会社の運転資金として使う資本金も必要です。
会社設立の費用は法定費用なので安くする方法は少ないですが、紙ではなく電子定款を選択することで収入印紙代4万円の節約が可能です。