屋号とは、ビジネスを営む際に用いる名称のことで、会社でいう社名に相当します。
屋号は意外に重要で、事業の業績が屋号によって左右されることもあります。この記事では、屋号の基礎知識と、屋号を決める時のコツやルールをわかりやすく解説していきます。
目次
1.屋号とは?
確定申告など、様々な場面で書類に記入することがある「屋号」。
しかし、そもそも「屋号」とは何なのかを理解していない人もおられるのではないでしょうか。
まずはその定義から知っていきましょう。
(1)屋号って何?
屋号とは事業を行う上で名乗る名前のことです。要は「事業者名」のようなもので、法人では「会社名」、個人事業主なら「屋号」と呼びます。個人でお店を営んでいる場合、その店名が「屋号」ということになります。
フリーで活動している人の場合は、名前をそのまま出すのに抵抗があるときにペンネームや芸名を屋号とすることも。この場合は「屋号」と同じ意味合いで「雅号」という言葉を使ったりもします。
そもそも歴史的には、「屋号」という言葉は様々な意味合いで使われてきました。苗字を持たない農民が家を区別するための「あだ名」のようなものであり、また江戸時代に商店が「越後屋」「松屋」など「屋」が末尾につく店名をつけたことから「店名」という意味でも使われます。
しかし、現代では「屋号」といえば「個人事業主が仕事上で使う名前」というのが一般的です。
(2)屋号をつけるのはいつ?
屋号をつけるのは個人事業の開業時というのが一般的ですが、実はいつでも構いません。開業後につけることも、後から変更することも可能です。
(3)屋号は必ず必要?
屋号は必ずしも必要なものではありません。「青色申告をする個人事業主は屋号が必要、白色申告の場合は必要ない」と誤解されがちですが、実はそれは間違いです。
確定申告の方法に関わらず、屋号はつけてもつけなくてもいいものです。確定申告書などの書類に屋号を記入する欄があることもありますが、屋号がなければ空欄にしておいて問題ありません。
2.屋号はいつ使う?
それでは、個人事業主で屋号をつけることを考えている方向けに、屋号を使うタイミングについて解説していきます。
(1)一番よく使うのは請求書・領収書
一番屋号を使う機会が多いのは、請求書や領収書です。例えば、個人商店から何か買い物をしたとき、請求書の宛名が店名(屋号)になっていた方が、店主の個人名が記載されているより何となく安心できますよね。事業の経費にする買い物の領収書も、屋号名義で作成してもらいます。
(2)屋号だけで個人の銀行口座が開ける?
屋号を持っていると、その名前を使って銀行口座を開設することができます。プライベート用とは別に屋号付きの口座を設けることで、お金の流れを一本化することができて資産管理や帳簿付けの際に便利です。
また、顧客から銀行振込を受ける際も、個人名より屋号付き口座の方がより信頼感が増します。
(3)事業用の口座名に使う時は注意!
屋号を使って事業用口座を開設するときは、個人口座とは違い注意が必要です。
なぜなら、「事業用口座」として開設すると開設手続きが複雑になったり、利用料・口座管理料などが発生したりすることがあるため。個人口座でも問題なく事業が運営できている場合は、無理に事業用口座を設ける必要はないでしょう。
3.屋号の付け方
それでは、実際に屋号をつける上で、注意したいポイントやルールを押さえておきましょう。
(1)付け方にルールはある?
まず、屋号に使える文字の種類は、以下の通りです。
- 漢字
- カタカナ
- ひらがな
- アルファベット(大文字・小文字)
- 数字(アラビア数字)
- 特定の記号(「&」「’」「.」「-」「.」「・」
また、屋号の文字数には制限がありません。個人事業主ではなく法人の会社名ですが
「株式会社あなたの幸せが私の幸せ世の為人の為人類幸福繋がり創造即ち我らの使命なり今まさに変革の時ここに熱き魂と愛と情鉄の勇気と利他の精神を持つ者が結集せり日々感謝喜び笑顔繋がりを確かな一歩とし地球の永続を約束する公益の志溢れる我らの足跡に歴史の花が咲くいざゆかん浪漫輝く航海へ」
という137文字の会社名も存在します。
ただし、あまり長いと覚えにくかったり、名乗る時や電話で聞き取りづらかったりするので、一般的な店名などの場合は2~7文字ほどがおすすめです。
(2)こんな屋号がおすすめ
屋号の決め方は基本的に自由ですが、こんなポイントを押さえておくと事業がうまくいきやすいかもしれません。
①事業内容がはっきりわかる
屋号付けの基本は、事業内容がわかりやすいことです。「◯◯美容院」「××工務店」など、業種を明らかにしておけば、一目でどのような仕事をしているのかがわかります。
逆に何をしているかわからない会社だと、顧客やクライアントも仕事の依頼がしにくいですよね。大手企業でも、「紳士服の青木」「トヨタ自動車」など、売り物が一目でわかる会社名は多いです。
②覚えやすい
商売繁盛のためには、お客さんに店の名前を覚えてもらうのが大切です。仮に同じ価格・サービスのお店が2つあったとしたら、口コミが広まりやすいのは覚えやすく伝わりやすい屋号のほうです。
英語を使った店名などはオシャレなイメージですが、お客さんにとっては日本語の方が覚えやすいということもありますよ。
③言いやすく、書きやすい
屋号は口に出して言ったり書類に記入したりすることも多いです。言いにくい発音で、電話口などでも聞き取りづらい屋号をつけると不便を感じることが多いでしょう。あまりに画数が多い、スペルミスを間違いやすい英語となどいった屋号も、書類仕事が煩雑になりがちです。
④SEO(検索エンジン最適化)を意識する
お店を探す時や詳しい情報を知りたい時、お客さんはインターネット検索をよく利用します。一般的な名詞や、ネット上で知名度が高いブロガー等のハンドルネームと屋号が同じだと、なかなかお店の情報が出てきません。
また、お店を探すときは「新宿 中華料理」「大阪 美容院」のように、地域名・業種と絡めて検索されることが多いです。そのため、地名や業種を屋号に含めると、インターネット検索により強くなります。
⑤人に話せるエピソードがある
個性的な屋号にするときは、何かエピソードに絡めた屋号にするのがおすすめです。個人事業を始めると、屋号の由来を聞かれることが何かと多いもの。その時に話せるエピソードがあると、インパクトがあって印象に残りやすいです。お店に来店したお客さんや、取引先とのコミュニケーションにも役立ちますよ。
⑥「あ」「A」などから始まる
引越し業者には、「アーク」「アート」「アリさんマーク」など「ア」から始まる会社名がとても多いです。これは、引越し業者に依頼する時は電話帳で探すことが多かったため。電話帳の最初の方にあると注目されやすく、たくさんの依頼が集まったのです。
現在は電話帳を使うことは少なくなりましたが、複数の商店が参加するイベントなどでは五十音順・アルファベット順に屋号を並べられることもあります。頭文字にこだわるのも、屋号を決める時の一つのアイデアです。
(3)こんな屋号はNG
屋号は、基本ルールを守っていても公俗秩序に反すると判断されると受理されない場合があります。
①会社・組織をイメージさせる屋号
個人事業主の屋号には、「会社」「法人」「コーポレーション」など会社・組織をイメージさせる言葉は使えません。実際は個人なのに会社であるようなイメージを抱かせると、混乱や誤解の原因になるためです。
②故意に他の事業者と同じ屋号をつける
故意に他の事業者と同じ・類似した屋号をつけるのもNG。同じ屋号の業者が他業種である場合は基本的に大丈夫なようですが、同じ業界の場合は訴訟や差し止め請求を受ける場合もあります。
また、一般的に知名度の高い企業と誤解されるような屋号、商標登録された言葉を使った屋号もNGです。
③ネガティブなイメージがある屋号
下品な言葉や、マイナスなイメージがある屋号も受理されません。例えば、下ネタや犯罪を連想させる言葉、罵倒や悪口などがこれに当たります。「やぶ医者」「まずい店」などはグレーゾーンです。インパクトやウケ狙いでつけている事業者もゼロではありませんが、基本的にはやめた方がいいでしょう。
4.まとめ
屋号は個人事業主にとっての「会社名」のようなもので、事業のイメージを大きく左右します。つけてもつけなくてもいいものですが、屋号をつけると「事業を始めた」という感じがして気が引き締まりますし、お客さん・取引先からの信頼も増します。