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2019/09/18 法人成りとは?メリット・デメリットを解説

個人事業主の方の中には、事業が軌道に乗ったタイミングで「法人成り」を検討する人も少なくないでしょう。法人成りには、会社社長としてのキャリアがスタートして気が引き締まるだけではなく、節税面でもメリットがたくさんあります。

ただし、法人成りの手続きは複雑ですし、デメリットもゼロではありません。

 

今回は、そんな法人成りのメリット・デメリットや、法人成りに関する手続きを解説していきます。

 

 

1.≪法人成りとは?≫

法人成りとは、個人事業主が会社を設立し、事業を法人にすること。

会社には株式会社と合同会社の2種類がありますが、どちらになることも同じく「法人成り」と呼びます。

 

それでは、個人事業主と法人の違いや、法人成りをするタイミングの目安について詳しく見ていきましょう。

 

(1)法人と個人事業主の違い

法人と個人事業主の大きな違いは、設立時の手続きです。

個人事業主は開業届を提出するだけですぐに開業できますが、法人は登録や定款などの手続きが必要になり、数週間はかかります。また設立時にかかる費用も、個人事業主は0円から開業できるのに比べ、法人は手続き関連に20万円以上、さらに資本金などの用意も必要です。

 

ただし、設立に手間やお金がかかる分、法人は事業に対する本気度が高いと判断されて社会的な信用度が高いです。

信用度が高いと、資金調達や取引先の獲得が個人事業主に比べて容易になり、事業拡大のスピードも早い傾向があります。

 

(2)法人成りをする目安について

法人成りをする目安は、「売上1,000万円」または「利益500万円」を超えるタイミング。

 

①売上1,000万円

まず、前者の「売上1,000万円」には消費税の納税義務が関わっています。

事業での売上が2年前時点で1,000万円を上回っていると、消費税の課税事業者となります。つまり、売上が1,000万円を超えた年の2年後からは、法人でも個人事業主でも消費税を納税しないといけないということですね。

 

しかし、法人成りをすれば個人とは別人格になるので、個人事業主時代の売上の情報は引き継がれません。そのため、法人成りをすると消費税が非課税となる事業者でいられる年数が伸びるのです。

 

②利益500万円

次に、「利益500万円」は節税の観点でおすすめのタイミングです。

収入から経費を差し引いた「所得」に課税される税金は、個人事業主は「所得税」法人は「法人税」です。どちらも累進課税制で、所得が大きくなればなるほど税率も上がります。

そして、所得税の課税率は5~45%と幅が大きいのに対し、法人税は15~23%と累進課税率が低いのです。

 

法人成りすることでかかる社会保険料のコストなどを考慮しても、法人税の節税効果の方が高くなる目安が「利益500万円」程度。

ただしこのボーダーラインは事業規模や事業以外の所得の有無などで変わってくるので、詳しくは税理士などの専門家に相談した方がいいでしょう。

 

2.≪法人成りをするメリット・デメリットまとめ≫

法人成りをすることのメリット・デメリットは、それぞれ以下の通りです。

 

メリット

  • 所得の分散が可能になる
  • 社宅が必要経費になる
  • 税率が一定になる
  • 退職金も法人の費用になる
  • 納税義務が免除される
  • 社会的信頼性の向上

 

デメリット

  • お金を自由に使うことができない
  • 接待交際費が費用にならないことも
  • 赤字でも税金の負担がある
  • 手続き・提出書類が増える
  • 社会保険の加入義務がある

 

(1)メリット①所得の分散が可能になる

法人成りするメリットの1つ目は、所得の分散が可能になること。

節税のために重要なのは、経費をできるだけ多く計上して、「課税所得」つまり書類上での利益を減らすことです。

 

法人成りをすると、社長や役員に対する報酬を「役員報酬」として経費にすることができます。会社の利益を役員個人に分散し、さらに他の会社から給与を得ていない役員の所得は「給与所得控除」も受けることができるので、大幅に課税所得を削減できるのです。

 

(2)メリット②社宅が必要経費になる

法人成りをすると、法人名義で不動産契約をすることで「社宅」とすることができ節税が可能です。

従業員が生活するためのマンションなどを借りてもいいですし、社長の自宅を法人名義にして社宅にすることもできます。

 

個人事業主の場合、自宅で仕事をしていても「家事按分」で一部しか経費に計上できないので、これも法人成りの大きなメリットです。

 

(3)メリット③税率が一定になる

先の項目でも触れましたが、個人事業主にとっての所得税にあたる「法人税」は、所得税より累進課税率が低いです。

他のコストを考えず課税率だけでいうと、課税所得が330万円を超えたところから法人税の税率の方が低くなります。

 

所得金額に関わらず税率がほぼ一定になるので、法人成りは節税の面でメリットが大きいのです。

 

(4)メリット④退職金も法人の費用になる

個人事業主の場合、退職金はその金額に関わらず経費に計上できません。しかし、法人成りをすると、適正額であれば退職金も経費として計上できます。

 

本来、個人事業当時から法人成り後まで勤続している従業員の退職金は、法人成り後の期間のみの金額が経費にできるシステムです。

ですが、法人成り後、それなりの期間が経ってから退職した場合には、例外として個人事業当時から通算した退職金の金額を経費として計上することができます。

 

(5)メリット⑤納税義務が免除される

「法人成りをする目安」の項目でも解説しましたが、法人成りをすることにより消費税の納税義務を回避することができます。

 

ただし、これには条件があり、

  • 資本金1,000万円未満であること
  • 設立1年目の前半6カ月で売上1,000万円を超えないようにすること

の2点を満たさなければいけません。

 

消費税納税を回避するために法人成りする場合には、注意する必要があります。

 

(6)メリット⑥社会的信頼性の向上

法人成りするメリット6つ目は、社会的な信頼性が向上すること。「個人商店やフリーで仕事をしている人より、会社という肩書きがあった方がなんとなく信頼できる」というのは誰にでもある感覚だと思います。

 

また、実務の面でも法人は登記簿謄本により、会社の所在地や資本金、役員などの重要事項を確認することができるので、社会的な信頼が厚いです。

さらに、企業や金融機関によっては法人としか取引をしないという場合もあるので、法人成りをすることで販路や資金調達の幅が広がることもあります。

 

(7)デメリット①お金を自由に使うことができない

個人事業主の場合は、稼いだお金は全て事業主のものとなり、自由に使うことができました。

しかし、法人成りをすると、会社と個人のお金が明確に区別されるようになります。社長の給料も、役員報酬として会社から受け取るという形に変わります。

 

また、役員報酬の額は自由に変更することができず、経費として計上することができるのは決算日の翌日より3ヶ月以内に決定した「定期同額給与」のみです。

 

(8)デメリット②接待交際費が費用にならないことも

個人事業主の場合、事業に関連がある範囲であれば接待交際費を自由に経費にすることができます。

しかし、法人成りをすると、接待交際費は原則損金不算入です。

 

ただし、資本金1億円以下の中小企業の場合は、年間800万円以下なら経費として計上することができます。

 

(9)デメリット③赤字でも税金の負担がある

個人事業主の場合、赤字で利益がない場合には所得税は課税されず、納税の義務があるのは年数千円程度の個人住民税の均等割りのみです。

しかし、法人の場合は法人住民税の均等割りがあるため、利益が全く無くても毎年最低7万円を納税する必要があります。

 

(10)デメリット④手続き・提出書類が増える

法人成りすると、個人事業の時よりも提出書類が増え、なおかつ複雑になります。

例えば確定申告の手続きなら、個人事業主なら全ての申告が書類1枚で済みますが、法人の場合は法人税の申告だけで19枚も書類があります。

 

そのため、手続きのために事務員を雇ったり、税金の申告のために税理士と契約したりする必要が出てきます。そのためのコストがかかるようになるのも、法人成りのデメリットです。

 

(11)デメリット⑤社会保険の加入義務がある

法人は従業員を守るために社会保険加入の義務があります。そして、会社は従業員にかかる社会保険料の半分を負担しなければなりません。

そのため、従業員を雇うごとにコストが増えるというのも法人成りのデメリットです。

 

また、社長1人だけで事業を行う場合も、個人事業主の国民健康保険+国民年金よりも社会保険料のほうが高額になります。

 

3.≪法人成りに必要な手続き≫

それでは、法人成りに必要な手続きをステップごとに見ていきましょう。

 

(1)法人(会社)の設立

法人成りをするには、当然法人の設立が必要になります。

法人には株式会社と合同会社がありますが、実質的には株式会社を選ぶ人が圧倒的に多いです。

 

個人事業主が法人成りする場合、個人事業主自身が発起人となって企画・立案し、株主となって出資し、新会社の代表取締役として就任することになります。

 

(2)所有する資産・負債の引継ぎ

会社を設立した後、個人事業の資産・負債を新会社に引き継ぐ手続きが必要です。引き継ぐ資産・負債は、この時任意に決めることができます。

 

そして、このステップで「財産目録(引き継ぎ資産・負債の一覧表)」「事業譲渡(営業譲渡)契約書」「株主総会(取締役会)議事録」などの書類も作成します。

 

(3)契約の名義変更の手続き

法人成りをすると、それまでの個人事業主と会社は別人格になります。

そのため、預金通帳・不動産・車両・ライフライン・借入金など、事業に関連する全ての所有物・契約の名義変更をしなければいけません。

 

(4)個人事業の廃業届も忘れずに

事業を会社に引き継いだということは、それまでの個人事業は廃業することになります。個人事業の廃業届も、忘れずに提出しましょう。

 

(5)青色申告の取りやめ手続き

法人成りすると、税金関連の申告方法も変わります。

そのため、青色申告で確定申告している個人事業主は、法人成り際に「所得税の青色申告の取りやめ届出書」も必要になります。青色申告をやめる年の、翌年3月15日までに提出しましょう。

 

4.≪法人成りの挨拶状の書き方・文例≫

法人成りが完了したら、取引先や顧客に挨拶状を書いて法人成りしたことを知らせましょう。

失礼のない内容なら、相手との関係性によって自由に文面を考えて問題ありませんが、挨拶状のテンプレートは以下のようなものです。

 

おめでたいことなので、勢いを止めてしまうという意味がある「、」や「。」は用いません。言葉や文章の区切りは、改行やスペースで行います。

 

例:

 

謹啓 ○○の候 貴社ますますご隆昌のこととお慶び申し上げます

平素は一方ならぬご厚情を賜りお礼申し上げます

さて この度弊社は組織を株式会社に改め

来る○月○日より 株式会社○○○○として再出発することになりました

これを機に 社員一同 社業の発展を期すべく決意も新たに

一層精励いたして参る所存でございます

何卒 倍旧のご支援ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます

まずは略儀ながら書中をもってご挨拶申し上げます

                     謹白

 令和○年○月吉日

             株式会社○○○○

             代表取締役 ○○○○

 

5.≪まとめ≫

法人成りは、事業を大きく発展させるための一つのステップ。手続きは複雑で手間と費用もかかりますが、節税面や社会的な信用の面で大きなメリットがあります。

 

ただしデメリットもゼロではないので、法人成りをするかどうか、またそのタイミングは注意深く決断しましょう。