会社が会社として成立するには、法務局で会社設立登記という手続きをする必要があります。会社設立登記は必要書類を用意して提出するだけで完了しますが、その準備がなかなか大変です。
この記事では、会社設立登記の基本的な流れと、必要書類・費用について解説します。
目次
1.会社設立登記の流れ
まずは、大まかな会社設立登記の流れを見ていきましょう。
会社設立登記をするときは、この順番に従って必要な書類を集め、提出や手続きを行っていきます。
(1)必要事項を決定する
会社設立の最初のステップは、基本事項の決定です。
最初に決めておくべき基本事項には、以下のようなものがあります。
- 商号(会社名)
- 所在地(登記する正確な住所)
- 発起人
- 登記簿謄本に記載する事業内容
- 資本金額
- 決算日
また、このタイミングで、以降の手続きに必要な会社の印鑑4種類も作成しておきます。
(2)定款を作成する
次に、定款の作成を行います。定款とは、会社の基本的なルールを書面にまとめた書類のことです。
定款には以下のような内容を記載します。
- 会社名
- 所在地
- 事業目的
- 広告方法
- 発行可能株式総数
- 株式の譲渡制限
- 取締役の員数
- 取締役の任期
- 事業年度
- 設立に際して出資される財産の価額
- 設立後の資本金の額
- 最初の事業年度
- 設立時の役員
- 発起人の氏名、住所等
- 発起人の記名押印
- 出資者全員の捨て印
(3)公証役場で定款の認証を受ける
定款が作成できたら、その内容が正しいことを第三者に証明してもらう「認証」の手続きを行います。
公証役場に定款を提出して手数料を納付し、公証人による認証を受けます。
ちなみに、この定款の認証は、株式会社を設立する場合のみ必要な手続きです。合同会社設立の場合は必要ありません。
(4)資本金を払い込む
会社設立時の資本金額を準備し、振り込みます。
会社法の改正により、資本金は1円からでも起業できますが、実際には資本金は多く用意した方が社会的信用は得やすいです。
後の会社設立登記で「資本金の払込証明書」が必要になるので、このタイミングで会社用の口座を用意し、資本金として定めた額を振り込みましょう。
(5)法務局で設立登記する
会社設立の最後の手続きが、登記申請です。
会社の設立登記は、法務局に必要書類を提出して行います。
この会社設立登記の手続き方法には、「直接提出」「郵送」「オンライン提出」の3つがあります。
2.会社設立の登記に必要な書類
それでは、会社設立登記の必要書類を、1つずつ見ていきましょう。
(1)必須となる書類
以下で解説する書類は、設立する会社の形式や規模に関わらず、どんな会社の設立登記にも必要です。
- 登記申請書
- 登録免許税納付用台紙
- 登記すべき事項を記録した磁気ディスク(CD-Rなど)
- 公証人の認証済みの定款
- 資本金払込証明書
- 役員の就任承諾書
- 役員の印鑑証明書
- 印鑑届書
- 印鑑カード交付申請書
1.登記申請書 | 登記申請書のテンプレートは、法務省のホームページからダウンロードすることができます。テンプレートを使わず、同じ内容を記載した書類を作成しても問題ありません。内容は以下の事項をA4用紙に横書きにするだけなので、特に難しくはないでしょう。
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2.登録免許税納付用台紙 | 登録免許税納付用台紙には、株式会社の場合15万円分、合同会社の場合は6万円分の収入印紙を貼り付けて提出します。 この書類には、特に決まった形式はありません。法務局の窓口で申し出て入手することもできますし、ネット上でテンプレートを探してダウンロードしたり、ただの白紙に収入印紙を貼り付けて提出したりしても問題ありません。 |
3.登記すべき事項を記録した磁気ディスク (CD-Rなど) | 登記事項を保存した書類は紙媒体で提出することもできますが、その場合は用紙を法務局で直接入手する必要があります。法務省のホームページにある作成例を参考にしながら、自分のPCで作成した方が効率的です。 内容はテンプレートに従って必要事項を記入するだけなので、そこまで難しくありません。作成が終わったら、CD-RかFDに保存し、会社名を書いたシールを貼り付けて提出します。 |
4.公証人の認証済みの定款 | 株式会社を設立する場合、登記の一つ前のステップで公証人の認証を受けた定款が1部必要です。 合同会社の場合、定款の認証は必要ありませんが、登記の際に定款を1部提出します。 |
5.資本金払込証明書 | 資本金払込証明書は資本金の払い込みを行なったあと、取得した通帳のコピーから作成します。通帳の記帳欄、表紙、個人情報欄のコピーに表紙をつけ、製本しましょう。 各見開きページの綴り部分には、契印をしておきます。 |
6.役員の就任承諾書 | 役員の就任承諾書は、「取締役・代表取締役に就任したことを承諾した」ということを証明するための書類です。 内容は「○年○月○日の取締役会で取締役(代表取締役)に選任され、承諾しました」という文章と、その人の署名です。 インターネット上でテンプレートが取得できるため、日付と署名欄を埋めるだけで問題ありません。 |
7.役員の印鑑証明書 | 役員の印鑑証明書は、会社の役員は住民票を置いている自治体の役所で入手します。定款の認証を受ける際に取得したものと、同じ印鑑証明が必要です。 役員が複数人いる会社の場合、全員のものを用意しましょう。 ただし、取締役会がある場合は、代表取締役1名の印鑑証明のみで手続きが可能です。 |
8.印鑑届書 | 印鑑届書は、登記の際に会社実印の印鑑登録をするために必要な書類です。 法務局のホームページでテンプレートを入手できるため、必要事項を記入して提出しましょう。 |
9.印鑑カード交付申請書 | 会社実印の印鑑登録をしたあと、印鑑証明書を入手するために印鑑カードが必要です。印鑑届書と同じく、法務局のホームページで入手したテンプレートに必要事項を記入して提出します。 会社の印鑑証明書は会社設立後の様々な手続きに使いますが、同じく設立後の手続きで必要になる登記簿謄本については、事前に申請しなくても誰でも取得できます。 |
(2)場合によっては必要な書類
場合によっては会社設立登記をする時、上記の他に以下の書類が必要になることもあります。
- 発起人決定書
- 調査報告書
- 財産引継書
- 資本金の額の計上に関する証明書
まず「発起人決定書」は、定款に取締役・代表取締役・本店所在地の番地・電子定款のURLなどの記載がない場合に必要です。
「調査報告書」「財産引継書」「資本金の額の計上に関する証明書」は、資本金や出資金に現金以外の現物出資が含まれる場合に必要な書類です。
3.会社設立登記の申請・手続きの方法
それでは、会社設立登記の具体的なやり方や費用について解説していきます。
(1)申請先と申請期限
会社設立登記の申請先は、法務局です。法務局の窓口に必要書類を持参して出向くか、法務局の住所に郵送、または専用の申請システムを使ってオンライン申請で行います。
また、会社設立登記を行う期間「設立時取締役の調査完了日、もしくは発起人が定めた日から2週間以内」です。
(2)登記に必要な費用
登記に必要な費用は、ステップごとに以下のものがあります。
①定款認証関連
株式会社を設立する場合、定款の認証に以下の費用がかかります。
- 定款に貼り付ける収入印紙:40,000円(電子定款の場合は不要)
- 公証人に払う手数料:50,000円
- 定款の謄本交付手数料:約2,000円(250円×ページ数)
②設立登記関連
登記申請の際には登録免許税がかかりますが、登録免許税の金額は会社の形式や資本金の額により異なります。
- 株式会社:150,000円(資本金の0.7%が150,000円以上の場合、その金額)
- 合同会社:60,000円(資本金の0.7%が60,000円以上の場合、その金額)
③その他の費用
会社設立登記にかかるその他の費用としては、印鑑の作成費用・各種証明書の交付費用・交通費などがあります。
これらの雑費については、合わせて10,000円ほど見込んでおけばいいでしょう。
4.会社設立登記の後に必要な手続き
会社設立登記の後に必要な手続きは、大きく分けて以下の3つがあります。
- 税務署への各種届出
- 健康保険・厚生年金保険への加入
- 労災保険・雇用保険への加入
どの手続きも、事業開始後の税申告や、従業員の保護のために必要な手続きです。
手続きを怠ると、後でペナルティが課せられる可能性があるため、会社設立登記の後に速やかに行いましょう。
5.まとめ
会社設立登記は、会社設立を行う中で最後のステップです。登記が完了することで、初めて会社として成立します。スムーズに会社設立登記を行うには、手続きの流れと必要書類をしっかり理解し、順序よく準備を進めていく必要があります。
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