会社設立時には、会社の印鑑が4種類、個人の印鑑が3種類必要になります。全て同じタイミングで必要というわけではありませんが、会社を設立し、開業していく中で必ず必要になるものです。
そのため、印鑑は会社設立に先んじて全種類作成しておくのがおすすめ。
目次
1.会社設立時の印鑑の役割
会社設立をするとき、必要になる印鑑は4種類あります。
- 会社実印(代表社印):会社の設立登記時に登録する実印。主に重要な契約書などに使う
- 会社銀行印:銀行口座の開設時に届け出る実印。会社実印と分けてリスクを分散する
- 角印(社印):注文書・請求書・稟議書などに用いる会社の認印
- 住所印(ゴム印):会社名・会社住所・電話番号などを記載した印鑑
会社実印と会社銀行印は会社設立の手続きに、角印と住所印は開業後すぐに必要となる印鑑です。
使うタイミングは違いますが、どのみち全種類を作成することになりますので、会社設立の手続きを始める時点で全て用意しておくといいでしょう。
以下の項目で、それぞれの印鑑に必要な条件や選び方について、詳しく解説していきます。
2.会社設立したら作成すべき印鑑
それでは、会社設立に必要な印鑑について、詳しくご紹介します。
印鑑作成をする時のために、それぞれの用途と目安となる大きさ、刻印の内容について知っておきましょう。
(1)実印(代表者印)
会社実印(代表社印)は、会社設立の時に登録する印鑑です。丸い形をしていることから、丸印と呼ばれることもあります。会社設立以降は、会社の意思決定を示すための重要な書類や、会社の存在の証明が必要となる取引・法的手続きなどに使用します。
会社実印が必要となるのは、以下のような場合です。
- 会社の設立登記をする時
- 代表取締役の変更があった時
- 株券を発行する時
- 法人が不動産を売却する時
- 不動産を担保にいれる時
- 連帯保証をする契約を結ぶ時
- 他の企業を買収する時
- など
会社実印のサイズは、法務局により「1cm以上3cm以内の正方形に収まるサイズ」と定められています。
実際には、18~21mmくらいのサイズを選ぶ人が多いです。
また、「照合に適するものでなければならない」という規定もあるため、シャチハタやゴム印は会社実印として使うことができません。
刻印の内容には特に決まりはありませんが、「株式会社〇〇 代表取締役印」と彫られるのが一般的です。
(2)銀行印
銀行印は銀行に届け出る会社の印鑑で、主に銀行・お金に関わる場面で使う印鑑です。
具体的に、銀行印が必要になるシーンは以下の通り。
- 会社の銀行を開設する時
- 融資契約を締結する時
- 手形や小切手を発行する時
など
こちらは経営者ではなく、経理部長などが管理することが多くなっています。経営者自身が銀行印を管理する場合、会社実印と銀行印に同じ印鑑を使っているケースもあります。
制度上は同じものを用いることもできますが、リスク分散のために銀行印は実印とは別に作成・管理しておくのがおすすめです。
一般的な刻印内容は、「株式会社〇〇 銀行印」です。
(3)角印(社印)
角印(社印)は、会社実印や銀行印に比べて、日常で使う頻度が高い印鑑です。その名の通り、四角い形をしていることで他の印鑑と区別できます。
角印は、以下のような場面で必要になります。
- 領収書を発行する時
- 見積書を発行する時
- 請求書を発行する時
- 発注書を発行する時
など
角印に刻印する内容は、基本的には「会社名」のみ。
サイズに規定はありませんが、ある程度大きめの20~30mmほどのものが多くなっています。
(4)認印・ゴム印
認印とは、実印ではない全ての印鑑のことを指します。
認印が必要になるのは、以下のようなシーンです。
- 宅急便の受け取り
- 書留の受け取り
- 社内文書
など
この認印は、会社の名前ではなく経営者や社印個人のものを使うことも多いです。デザインや刻印内容には特に決まりはありませんが、厳重に保管すべき実印や銀行印とは必ず分けるようにしましょう。
一方ゴム印は、住所印と呼ばれることもある大きめの印鑑です。その名の通りゴム製の場合が多く、会社名だけではなく住所や電話番号まで記載されています。
必ずゴム印が必要というよりは、毎回住所などを書く手間を減らす、印刷コストの削減などのために使われることが多いです。
ゴム印を使うのは、以下のような書類です。
- 契約書・請求書・社内文書
- 手形・小切手
- 納品書・領収書
- 会社封筒
など
刻印内容は、「会社名・会社住所・電話番号・代表者名・役職者名」などが多く、特に決まりはありません。
サイズにも決まりはありませんが、20mm×60mmが一般的なサイズとされています。
(5)代表者個人の印鑑も用意する
会社名だけではなく、代表者個人の印鑑も様々な場面で必要です。会社設立時には「実印」「銀行印」「認・仕事印」の3種類を、個人名でも作っておきましょう。
会社印鑑と個人印鑑の違いは、刻印に会社名が入っているかどうかです。
個人印の刻印内容は、「姓・名」「姓のみ」「名のみ」どのタイプでも正式な印鑑として使えます。ただし、経営者として重要な場面で使うこともあるので、偽造されやすい市販のものは避けたほうがいいでしょう。
また、実印・銀行印として登録するものには、シャチハタやゴム印は使えないので注意してください。
3.会社設立時の印鑑注文のポイント
次に、会社設立時に印鑑を注文する時のポイントをまとめてご紹介します。
(1)会社印鑑におすすめの材質は?
印鑑の素材は、大きく分けて「木材系」「角・牙系」「金属・樹脂系」の3種類があります。印鑑として加工できればどんな素材も使用可能ですが、会社印鑑として使うのは、耐久性に優れ、長く使い続けられる素材がおすすめです。
会社設立・運営に必要な印鑑を揃えた「会社設立印鑑セット」で人気なのは、以下の3つの素材です。
- チタン
- 黒水牛
- 彩樺
これらの素材は、どれも耐久性が高く、劣化しにくいのが特徴です。特にチタンはメンテナンスフリーで、耐食性、耐火性、耐水性全てが優れているので、万が一の事故や災害でも重要な会社印を失うことがありません。
(2)字体の選び方
会社の実印や銀行印は、重要な契約にも使う大切な印鑑です。万が一、偽造されてしまうと非常に損失が大きいため、会社の印鑑は偽造されづらい複雑な字体を選ばなければいけません。
また、欠けたり磨耗したりして、当初と形状が変わってもいけないので、耐久性の高いデザインを選ぶ必要があります。
上記の条件を満たすおすすめの字体には、以下のようなものがあります。
- 吉相体(きっそうたい)
- 篆書体(てんしょたい)
- 太枠篆書体(ふとわくてんしょたい)
対して認印は、「誰がこの書類を承認したか」がわかる必要があるため、読みやすさが求められます。
認印には、可読性の高い以下のような字体がおすすめです。
- 古印体(こいんたい)
- 隷書体(れいしょたい)
4.会社設立時の印鑑登録方法
会社設立をするときは、個人が自治体で印鑑登録をするように、会社は法務局で印鑑登録をする必要があります。
印鑑登録をすることで、印鑑証明書が取得できます。
印鑑登録・印鑑証明書の取得を経て、その印鑑が正式なものと証明し、効力を持たせることができるのです。
(1)印鑑届出書の提出が必要
会社設立の手続きでは、印鑑届出書を提出して法務局に会社実印を登録する必要があります。印鑑届出書を提出すると印鑑カードが交付され、必要な時に印鑑証明書の交付申請を行うことができるようになります。
この印鑑証明書は会社の口座開設時に必要となるため、印鑑届出書を提出しないと資本金の払い込みができません。
(2)印鑑届出書記載時の注意点
印鑑届出書の記入自体は、決して難しくはありません。しかし、左上と右下に押印する欄があり、それぞれ違う印鑑を押して提出するため、ここを間違えないよう気をつける必要があります。
印鑑届出書に押印する欄と印鑑は、以下のようになっています。
- 左上:代表社印
- 右下:印鑑提出者の実印(代理人が提出する場合、代理人の認印)
代理人が印鑑届出書を提出する場合、印鑑提出者は委任状を作成し、その委任状に実印を押す必要があります。
この実印は事前に自治体に登録し、印鑑証明書も同時に提出する必要があるため、早め早めに準備しておきましょう。
5.まとめ
会社設立時には、4種類の印鑑を準備します。それぞれ違う場面で必要になり、用途や重要度も異なる印鑑です。
多くのハンコ屋さんでは、会社設立に必要な印鑑がセットになった「会社設立セット」を用意しています。
価格も一つずつ購入するより割安なので、こういったセットを利用してまとめて用意するといいでしょう。