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2020/03/26 会社設立・登記に必要な書類とは?手続き方法、設立後にすべきこと

会社設立には、資金集めや人・モノ集め、様々なルールの決定など、準備することが膨大です。

中でも、公証人役場や法務局で行う手続きは、必要書類や手続きのステップが複雑です。

 

そこで、今回は、会社設立の必要書類と手続きの流れをわかりやすく解説。

全体の流れを把握することで、必要書類の揃え方や準備するタイミングがわかります。

 

1.≪会社設立・登記に必要な書類一覧≫

会社設立には、以下の11種類の書類が必要です。

 

・登記申請書

・登録免許税分の収入印紙を貼り付けたA4用紙

・定款

・発起人の決定書

・取締役の就任承諾書

・代表取締役の就任承諾書

・監査役の就任承諾書

・取締役の印鑑証明書

・資本金の払い込み証明書

・印鑑届出書

・登記すべき事項を保存したCD-Rまたはフロッピーディスク

 

会社設立時には、これらの書類を法務局に提出して手続きを行います。

以下の項目で、詳しい準備方法や手続きの流れについて解説していきます。

 

2.≪会社設立前の必要書類の準備プロセス≫

会社設立に必要な書類は、以下の順番で準備していきます。

用意する順番を間違えると、手続きがスムーズにできないことがあるので注意してください。

 

(1)印鑑を作成する

会社設立の必要書類を準備するにあたっては、まず法人用の印鑑を作成します。

会社設立の手続きや、開業後すぐに必要となる印鑑は、以下の4種類です。

 

・会社実印(代表社印):会社の設立登記時に登録する実印。主に重要な契約書などに使う

・会社銀行印:銀行口座の開設時に届け出る実印。会社実印と分けてリスクを分散する

・角印(社印):注文書・請求書・稟議書などに用いる会社の認印

・住所印(ゴム印):会社名・会社住所・電話番号などを記載した印鑑

 

(2)設立の基本事項を決定

次に、会社の基本事項を決定します。

会社設立にあたって、最初に決めておくべき基本事項には以下のようなものがあります。

 

・会社名

・所在地

・発起人

・事業目的

・事業年度

 

(3)定款を作成する

いよいよ、会社設立の手続きでもっとも重要な定款の作成に移ります。

定款とは、会社の基本的なルールを書面にまとめたもののことです。

定款には、以下の内容を記載します。

 

・会社名

・所在地

・事業目的

・広告方法

・発行可能株式総数

・株式の譲渡制限

・取締役の員数

・取締役の任期

・事業年度

・設立に際して出資される財産の価額

・設立後の資本金の額

・最初の事業年度

・設立時の役員

・発起人の氏名、住所等

・発起人の記名押印

・出資者全員の捨て印

 

(4)定款の認証を受ける

定款が作成できたら、その内容が正しいことを第三者に証明してもらう「認証」の手続きを行います。

 

定款の認証は、法務局ではなく公証人役場で行うため、まずは登記予定の地域に所属する公証人役場を調べましょう。

行くべき公証人役場が決まったら、以下の書類や手数料を持参して定款の認証を受けます。

 

・定款 3部

・発起人(出資者)全員の印鑑証明書

・発起人(出資者)の実印

・身分証明書

・公証人へ支払う手数料 5万円

・定款の写し交付手数料 250円×定款のページ数

・収入印紙 4万円分(電子定款の場合は不要)

 

(5)資本金を払い込む

次に行うのが、資本金の払い込みです。会社用の口座を用意して、資本金として定めた額を振り込みましょう。

 

このタイミングで行うのは、次の登記手続きで必要な書類を作成するためです。

資本金の払い込みが終わったら、通帳の以下の部分をコピーしておきましょう。

 

・通帳の記帳欄

・表紙

・個人情報欄

 

(6)設立登記をする

最後のステップが、設立登記申請です。

はじめに挙げた11種類の必要書類は、この段階で全て作成・取得が可能になっているはずです。

全ての書類を法務局に持参し、提出しましょう。

 

それぞれの書類の詳しい作成方法は、下の項目で解説します。

 

3.≪会社設立時、法務局に提出する書類≫

それでは、最初の必要書類一覧でご紹介した書類の役割や、作成方法を解説していきます。

 

(1)登記申請書

登記申請書のテンプレートは、法務省のホームページからダウンロードすることができます。

テンプレートを使わず、同じ内容を記載した書類を作成しても問題ありません。

内容は以下の事項をA4用紙に横書きにするだけなので、特に難しいステップではないでしょう。

 

・会社の基本事項(会社名・所在地・登記の事由・資本金額・登録免許税額)

・添付書類の内訳

・申請年月日

・本店と代表者の氏名・住所

 

(2)認証済みの定款

先の手続きで認証を受けた定款が、登記申請用に1部必要です。

 

(3)取締役・代表取締役の就任承諾書

「取締役・代表取締役に就任したことを承諾した」ということを証明するための書類です。 

内容は「◯年◯月◯日の取締役会で取締役(代表取締役)に選任され、承諾しました」という文章と、その人の署名です。

インターネット上でテンプレートが取得できるため、日付と署名欄を埋めるだけで問題ありません。

 

(4)発起人の決定書

発起人の決定書には、以下の内容を記載します。

 

・本店の詳細な所在地

・電子公告のURL

・発起人全員の記名捺印

こちらも、インターネット上でテンプレートのダウンロードが可能です。

 

(5)資本金の払込を証明する書類

資本金の払い込みを行なったあと、取得した通帳のコピーから作成します。

通帳の表紙、個人情報欄、記帳欄のコピーに表紙をつけ、製本しましょう。

各見開きページの綴り部分には、契印をしておきます。

 

(6)会社の印鑑届書

印鑑届書は、会社実印の印鑑登録をするために必要な書類です。

法務局のホームページでテンプレートを入手できるため、必要事項を記入して提出しましょう。

 

(7)代表取締役・取締役個人の印鑑証明

定款の認証を受ける際に取得したもの、同じ印鑑証明を使います。

それぞれが住民票を置いている自治体の役所で入手しましょう。

 

取締役が複数人いる会社の場合、全員の印鑑証明書が必要です。

ただし、取締役会を設置している場合は、代表取締役1名の印鑑証明のみで手続きができます。

 

(8)登記事項を保存した書類または磁気ディスク

登記事項を保存した書類は紙媒体で提出することもできますが、その場合は用紙を法務局で直接入手する必要があります。

そのため、法務省のホームページにある作成例を参考にしながら、自分のPCで作成した方が効率的です。

 

内容はテンプレートに従って必要事項を記入するだけなので、そこまで難しくありません。

作成が終わったら、CD-RかFDに保存し、会社名を書いたシールを貼り付けて提出します。

 

4.≪会社設立後、税務署への提出が必要な書類≫

法務局で設立登記が終わったら、それで会社設立は完了というわけではありません。

設立後、営業開始にあたって税務署に対する手続きも必要です。

税務署での手続きの、必要書類を解説していきます。

 

(1)法人設立届出書

法人設立届出書は、簡単にいうと税務署に「会社を設立しました」という報告を行う書類です。

会社設立から2ヶ月以内に提出を行います。

 

テンプレートは国税局のホームページからダウンロードでき、それに従って代表者氏名・住所・事業目的・事業開始年月日などを記入します。

また、添付書類として定款の写しが必要です。

 

(2)給与支払事務所等の開設届出書

給与支払事務所等の開設届出書とは、従業員等に給与を支払う場合に提出が必要な書類のことです。

こちらも、テンプレートは国税局のホームページで入手できます。

提出期限は、給与支払事務所として開設してから1ヶ月以内です。

 

(3)青色申告の承認申請書

青色申告の承認申請書は、法人税等の申告を青色申告で行うために必要です。

他に「白色申告」という申告方法もありますが、青色申告の方が税制上何かと有利です。

申告時に提出する帳簿の種類などを記入し、提出します。

 

提出する帳簿の種類は「現金出納帳」「預金出納帳」「売掛帳」「買掛帳」「総勘定元帳」の5つが基本です。

提出期限は会社設立後3ヶ月以内、または最初の事業年度の末日です。

 

5.≪合同会社設立の必要書類≫

ここまで解説してきたのは、もっとも数が多い「株式会社」を設立するための必要書類や手続き方法です。

合同会社を設立する場合、手続きや必要書類はもっとシンプルになります。

 

合同会社設立に必要な書類は、以下の通りです。

 

・合同会社設立登記申請書

・登記用紙と同一の用紙

・定款2部

・代表社員の印鑑証明書

・払込証明書

・印鑑届書

・代表社員就任承諾書(場合によって必要)

・本店所在地及び資本金決定書(場合によって必要)

 

合同会社を設立する場合、定款の認証というステップが必要ありません。

また、登録免許税も株式会社は15万円、合同会社の場合は6万円という違いがあります。

その他の手続き方法は、基本的には株式会社設立の場合と同じです。

 

6.≪まとめ≫

会社設立の必要書類は、全部で11種類です。

定款以外の書類は作成や入手がそこまで難しくありませんが、種類が多いので抜けや間違いがないように気をつける必要があります。

スムーズに登記申請まで終えるために、手続きの流れを把握してステップごとに準備を進めていきましょう。

2020/03/19 会社設立時に用意すべき印鑑とは?素材や書体はどう決める?

会社設立時には、会社の印鑑が4種類、個人の印鑑が3種類必要になります。

全て同じタイミングで必要というわけではありませんが、会社を設立し、開業していく中で必ず必要になるものです。

そのため、印鑑は会社設立に先んじて全種類作成しておくのがおすすめ。

 

今回は、会社設立に必要な印鑑の種類と、字体や素材の選び方のポイントを解説していきます。

 

1.≪会社設立時の印鑑の役割≫

会社設立をするとき、必要になる印鑑は4種類あります。

 

会社実印(代表社印):会社の設立登記時に登録する実印。主に重要な契約書などに使う

会社銀行印:銀行口座の開設時に届け出る実印。会社実印と分けてリスクを分散する

角印(社印):注文書・請求書・稟議書などに用いる会社の認印

住所印(ゴム印):会社名・会社住所・電話番号などを記載した印鑑

 

会社実印と会社銀行印は会社設立の手続きに、角印と住所印は開業後すぐに必要となる印鑑です。

使うタイミングは違いますが、どのみち全種類を作成することになりますので、会社設立の手続きを始める時点で全て用意しておくといいでしょう。

 

以下の項目で、それぞれの印鑑に必要な条件や選び方について、詳しく解説していきます。

 

2.≪会社設立したら作成すべき印鑑≫

それでは、会社設立に必要な印鑑について、詳しくご紹介します。

印鑑作成をする時のために、それぞれの用途と目安となる大きさ、刻印の内容について知っておきましょう。

 

(1)実印(代表者印)

会社実印(代表社印)は、会社設立の時に登録する印鑑です。丸い形をしていることから、丸印と呼ばれることもあります。

 

会社設立以降は、会社の意思決定を示すための重要な書類や、会社の存在の証明が必要となる取引・法的手続きなどに使用します。

会社実印が必要となるのは、以下のような場合です。

 

・会社の設立登記をする時

・代表取締役の変更があった時

・株券を発行する時

・法人が不動産を売却する時

・不動産を担保にいれる時

・連帯保証をする契約を結ぶ時

・他の企業を買収する時

など

 

会社実印のサイズは、法務局により「1cm以上3cm以内の正方形に収まるサイズ」と定められています。

実際には、18~21mmくらいのサイズを選ぶ人が多いです。

 

また、「照合に適するものでなければならない」という規定もあるため、シャチハタやゴム印は会社実印として使うことができません。

刻印の内容には特に決まりはありませんが、「株式会社〇〇 代表取締役印」と彫られるのが一般的です。

 

(2)銀行印

銀行印は銀行に届け出る会社の印鑑で、主に銀行・お金に関わる場面で使う印鑑です。

具体的に、銀行印が必要になるシーンは以下の通り。

 

・会社の銀行を開設する時

・融資契約を締結する時

・手形や小切手を発行する時

など

 

こちらは経営者ではなく、経理部長などが管理することが多くなっています。

経営者自身が銀行印を管理する場合、会社実印と銀行印に同じ印鑑を使っているケースもあります。

制度上は同じものを用いることもできますが、リスク分散のために銀行印は実印とは別に作成・管理しておくのがおすすめです。

 

一般的な刻印内容は、「株式会社〇〇 銀行印」です。

デザインや大きさには特に規定はありませんが、会社実印と区別するために会社実印より一回り小さいものを選ぶ場合が多いです。具体的には、16.5~18mmくらいが目安になります。

 

(3)角印(社印)

角印(社印)は、会社実印や銀行印に比べて、日常で使う頻度が高い印鑑です。

その名の通り、四角い形をしていることで他の印鑑と区別できます。

 

角印は、以下のような場面で必要になります。

 

・領収書を発行する時

・見積書を発行する時

・請求書を発行する時

・発注書を発行する時

など

 

角印に刻印する内容は、基本的には「会社名」のみ。

サイズに規定はありませんが、ある程度大きめの20~30mmほどのものが多くなっています。

 

(4)認印・ゴム印

認印とは、実印ではない全ての印鑑のことを指します。

認印が必要になるのは、以下のようなシーンです。

 

・宅急便の受け取り

・書留の受け取り

・社内文書

など

 

この認印は、会社の名前ではなく経営者や社印個人のものを使うことも多いです。

デザインや刻印内容には特に決まりはありませんが、厳重に保管すべき実印や銀行印とは必ず分けるようにしましょう。

 

一方ゴム印は、住所印と呼ばれることもある大きめの印鑑です。

その名の通りゴム製の場合が多く、会社名だけではなく住所や電話番号まで記載されています。

必ずゴム印が必要というよりは、毎回住所などを書く手間を減らす、印刷コストの削減などのために使われることが多いです。

ゴム印を使うのは、以下のような書類です。

 

・契約書・請求書・社内文書

・手形・小切手

・納品書・領収書

・会社封筒

など

 

刻印内容は、「会社名・会社住所・電話番号・代表者名・役職者名」などが多く、特に決まりはありません。

サイズにも決まりはありませんが、20mm×60mmが一般的なサイズとされています。

 

(5)代表者個人の印鑑も用意する

会社名だけではなく、代表者個人の印鑑も様々な場面で必要です。

会社設立時には「実印」「銀行印」「認・仕事印」の3種類を、個人名でも作っておきましょう。

 

会社印鑑と個人印鑑の違いは、刻印に会社名が入っているかどうかです。

個人印の刻印内容は、「姓・名」「姓のみ」「名のみ」どのタイプでも正式な印鑑として使えます。

ただし、経営者として重要な場面で使うこともあるので、偽造されやすい市販のものは避けたほうがいいでしょう。

 

また、実印・銀行印として登録するものには、シャチハタやゴム印は使えないので注意してください。

 

3.≪会社設立時の印鑑注文のポイント≫

次に、会社設立時に印鑑を注文する時のポイントをまとめてご紹介します。

 

(1)会社印鑑におすすめの材質は?

印鑑の素材は、大きく分けて「木材系」「角・牙系」「金属・樹脂系」の3種類があります。

印鑑として加工できればどんな素材も使用可能ですが、会社印鑑として使うのは、耐久性に優れ、長く使い続けられる素材がおすすめです。

会社設立・運営に必要な印鑑を揃えた「会社設立印鑑セット」で人気なのは、以下の3つの素材です。

 

・チタン

・黒水牛

・彩樺

 

これらの素材は、どれも耐久性が高く、劣化しにくいのが特徴です。

特にチタンはメンテナンスフリーで、耐食性、耐火性、耐水性全てが優れているので、万が一の事故や災害でも重要な会社印を失うことがありません。

 

(2)字体の選び方

会社の実印や銀行印は、重要な契約にも使う大切な印鑑です。

万が一、偽造されてしまうと非常に損失が大きいため、会社の印鑑は偽造されづらい複雑な字体を選ばなければいけません。

また、欠けたり磨耗したりして、当初と形状が変わってもいけないので、耐久性の高いデザインを選ぶ必要があります。

 

上記の条件を満たすおすすめの字体には、以下のようなものがあります。

 

・吉相体(きっそうたい)

・篆書体(てんしょたい)

・太枠篆書体(ふとわくてんしょたい)

 

対して認印は、「誰がこの書類を承認したか」がわかる必要があるため、読みやすさが求められます。

認印には、可読性の高い以下のような字体がおすすめです。

 

・古印体(こいんたい)

・隷書体(れいしょたい)

 

4.≪会社設立時の印鑑登録方法≫

会社設立をするときは、個人が自治体で印鑑登録をするように、会社は法務局で印鑑登録をする必要があります。

印鑑登録をすることで、印鑑証明書が取得できます。

印鑑登録・印鑑証明書の取得を経て、その印鑑が正式なものと証明し、効力を持たせることができるのです。

 

(1)印鑑届出書の提出が必要

会社設立の手続きでは、印鑑届出書を提出して法務局に会社実印を登録する必要があります。

印鑑届出書を提出すると印鑑カードが交付され、必要な時に印鑑証明書の交付申請を行うことができるようになります。

 

この印鑑証明書は会社の口座開設時に必要となるため、印鑑届出書を提出しないと資本金の払い込みができません。

ただし、印鑑証明書には期限があり、発行後3ヶ月以内に設立登記を申請する必要があるため注意しましょう。

 

(2)印鑑届出書記載時の注意点

印鑑届出書の記入自体は、決して難しくはありません。

しかし、左上と右下に押印する欄があり、それぞれ違う印鑑を押して提出するため、ここを間違えないよう気をつける必要があります。

印鑑届出書に押印する欄と印鑑は、以下のようになっています。

 

左上:代表社印

右下:印鑑提出者の実印(代理人が提出する場合、代理人の認印)

 

代理人が印鑑届出書を提出する場合、印鑑提出者は委任状を作成し、その委任状に実印を押す必要があります。

この実印は事前に自治体に登録し、印鑑証明書も同時に提出する必要があるため、早め早めに準備しておきましょう。

 

5.≪まとめ≫

会社設立時には、4種類の印鑑を準備します。それぞれ違う場面で必要になり、用途や重要度も異なる印鑑です。

 

多くのハンコ屋さんでは、会社設立に必要な印鑑がセットになった「会社設立セット」を用意しています。

価格も一つずつ購入するより割安なので、こういったセットを利用してまとめて用意するといいでしょう。

 

素材やデザインは自由度が高いので、ぜひご自分の会社印として愛着を持てる印鑑を作成してみてください。

2020/03/12 会社設立にかかる費用は?最低金額・内訳を解説

会社設立の費用は、設立したい会社の種類によって異なります。

現在、設立できる会社の種類は「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」の4種類。

ただし、実際に設立される会社の数は株式会社・合同会社の2種類が圧倒的に多いです。

 

今回は、その株式会社・合同会社の設立に関する費用について解説していきます。

 

1.≪株式会社設立の費用≫

それではまず、株式会社の設立にかかる費用を解説していきます。

株式会社の設立には、定款の認証・登記という手続きが必要となり、合同会社よりも設立費用が高くなります。

 

(1)必要な法定費用は242,000円

株式会社設立の手続きにかかる費用は、資本金・雑費を除くと24万2,000円。

その内訳は、以下のようになっています。

 

定款認証手数料:5万円

収入印紙代:4万円

定款の謄本手数料:2,000円

登録免許税:15万円

 

これらを合計すると、上記の24万2,000円という金額になります。

これは会社設立の手続きに必ず必要になるものです。相場などによる変動や、安くする方法はありません。

 

ただし、収入印紙代の4万円については、電子定款で会社を設立する場合にはかかりません。

電子定款を選択すると、紙媒体の定款自体が存在しないので、定款に印紙を貼り付ける必要がなくなるためです。

そのため、電子定款で株式会社を設立する場合、費用の合計は20万2,000円となります。

 

(2)その他にかかる雑費

株式会社設立の手続きを行うためには、必要な書類や印鑑の作成費用がかかります。

手続きにあたってかかる雑費の相場は、全て合わせて1万円ほど。

その内訳は、以下のようになります。

 

実印作成費(4本分):約5,000円~

印鑑登録の費用:約300円

印鑑証明書の発行費:約450円×必要枚数

登記簿謄本の発行費:約500円×必要枚数

 

雑費の中でもっとも大きな出費となるのが、実印作成費。

会社を設立する手続きには、「会社実印(代表社印)」「会社銀行印」「角印(社印)」「住所印(ゴム印)」という4種類の印鑑が必要となります。

安くても1本1,000円以上はかかるので、合計5,000円ほどは見込んでおいた方がいいでしょう。クオリティにこだわると、もっと費用がかかります。

 

印鑑証明や登記簿謄本の発行費は、自治体によって金額が異なるので、上記の金額は目安程度と思っておいてください。

 

(3)資本金はいくらにすべき?

株式会社の設立には資本金が必要です。

2006年に新会社法が施行されてからは、資本金1円からでも会社設立が可能になりました。

しかし、安易に資本金1円で起業してしまうと、様々なデメリットがあります。

 

資本金とは、端的にいうと会社の運転資金なので、これが少なすぎると経営を維持する力が弱いということになります。

金融機関や取引先から「すぐに倒産するのでは?」と思われてしまうと、資金調達や販路拡大が難しくなってしまうのです。

株式会社の資本金は、業種にもよりますが100~1,000万円くらいが相場となっています。可能な限りで、できるだけ多く資本金を集めた方が、設立後の事業がやりやすくなるでしょう。

 

ただし、多ければ多いほど良いというわけではありません。

なぜなら、先にご紹介した登録免許税は、資本金が2,140万円以上になると15万円より高くなるためです。

登録免許税の金額は、正式には「15万円、または資本金の0.7%(資本金の0.7%が15万円を上回る場合)」となっています。

「資本金の0.7%=15万円」となるのが2,140万円なので、これを超えると手続きにかかる法定費用が高くなるということは知っておきましょう。

 

2.≪合同会社設立の費用≫

次に、合同会社を設立するための費用について解説していきます。

合同会社の場合、手続きのステップが少なく、登録免許税も株式会社より安いので、設立費用を抑えることができます。

 

(1)必要な法定費用は10万円

合同会社設立の手続きに必要な費用は、10万円です。

こちらも、国に支払う法定費用なので、相場による変動や安い金額に抑える方法はありません。

費用の内訳は、以下のようになっています。

 

収入印紙代:4万円

登録免許税:6万円

 

合同会社を設立する場合、株式会社で必要な定款の認証という手続きが不要です。

そのため、定款認証手数料や、認証に必要な謄本の作成費用は必要ありません。

 

株式会社の場合と同様、電子定款の場合は収入印紙代の4万円も不要となります。

ですから、合同会社設立に最低限必要な費用は、登録免許税の6万円のみです。

 

資本金の0.7%が6万円を超える場合には、登録免許税はそちらの金額になります。

つまり、資本金が8,571,428円を超えると法定費用が高くなるということは覚えておきましょう。

 

(2)その他の雑費は株式会社とほぼ同じ

法定費用以外にかかる雑費の相場は、株式会社とほぼ同じで合計1万円程度です。

 

実印作成費(4本分):約5,000円~

印鑑登録の費用:約300円

印鑑証明書の発行費:約450円×必要枚数

登記簿謄本の発行費:約500円×必要枚数

 

そのため、合同会社設立にかかる費用の合計は、最低7万円ほど。

株式会社設立にかかる費用の1/3以下なので、とにかく安い方法を選びたい方には合同会社設立がおすすめです。

 

(3)資本金はいくらにすべき?

合同会社の資本金は、株式会社の場合と同じく最低1円でもOKです。

しかし、こちらも株式会社の場合と同じく、資金調達や販路拡大が難しいというデメリットがあります。

 

合同会社の資本金の相場は、50~300万円ほどです。

具体的には、「事業の準備にかかる資金+3~6ヶ月分の運転資金」を計算して、適切な金額を考えましょう。

ただし、先にもお伝えしましたが、資本金857万円を超えると登録免許税が高くなるということは知っておいてください。

 

3≪会社設立の費用を安くする方法≫

会社設立の費用を安くする方法は、あまり多くありません。

ここまでも何度かお伝えしてきましたが、会社設立の手続きにかかる費用は国に支払う法定費用のためです。

 

唯一削れるのは、定款に貼る収入印紙代の4万円。定款を紙ではなく電子定款にすれば、収入印紙代を支払わずに済みます。

ただし、電子定款は誰でも無料で作成できるわけではありません。

 

まず、電子定款はPDFで作成し、その中に電子署名を挿入する必要があります。

PDFデータ自体はフリーソフトでも簡単に作ることができますが、電子署名を挿入するにはAdobe Acrobatなどの専門ソフトを使わなければいけません。

このAdobe Acrobatの購入には、3万円ほどの費用がかかります。

 

また、電子署名を作成するには、あらかじめ電子証明書の交付を受けておく必要があります。

電子証明書の交付を受けるために、マイナンバーカードを読み取るカードリーダーを用意しなければいけません。

カードリーダーの価格は2,000円ほどなので、電子定款を作成する費用相場は32,000円程度と思っておきましょう。

 

ちなみに電子定款は、税理士や司法書士に作成を依頼することも可能です。

この場合、ソフトやカードリーダー代を節約できる代わりに、報酬として5,000円ほどがかかります。

そのため、もっとも法定費用が安いのは、「電子定款+作成を外注」という方法です。

 

4.≪会社設立費用を経費として計上するには≫

会社設立にかかった費用は、開業前のものも含めて会社の経費にすることが可能です。

設立時の費用は、「創立費」と「開業費」の2種類に分けて経費に計上します。

 

創立費:設立の準備にかかった費用(設立手続きに必要な書類の作成費用、登録免許税など)

開業費:設立後の開業準備段階に費用(調査費用、事前広告費、打ち合わせにかかった飲食代など)

 

ただし、会社設立後も経常的にかかっていく費用については、創立費または開業費として経費計上することができません。

設立と同時にかかった費用であっても、以下のようなものは通常の仕訳を行います。

 

・土地や建物の賃借料

・通信費

・事務用消耗品費

・仕入れ費用

・社員の給与

など

 

また、事務所や店舗を借りた時の敷金など、後日戻ってくるお金も開業費にすることはできません。

 

5.≪まとめ≫

会社設立にかかる費用は、株式会社で「約25万円」、合同会社で「約10万円」。この他に、会社の運転資金として使う資本金も必要です。

 

会社設立の費用は法定費用なので安くする方法は少ないですが、紙ではなく電子定款を選択することで収入印紙代4万円の節約が可能です。

ただし、電子定款の作成にもソフトなどの購入費や、外注する場合は報酬がかかることは知っておきましょう。

2020/03/05 会社設立時の資本金はいくら用意すべき?資本金額を決めるポイントとは

資本金とは、会社設立時に元手として用意するお金のことです。

新会社法の施行で、資本金は1円でも会社設立ができるようになりましたが、実際にはある程度まとまった金額を用意する経営者が多いです。

 

今回は、資本金の意味や、資本金の金額はどのように決めるべきかを詳しく解説。

資本金が少なすぎることのデメリットや、実際の払い込み手順についても知っていきましょう。

 

1.≪会社設立には資本金が必要≫

会社設立の際には、資本金が必要となります。

ただし、4種類ある会社の形態のうち、「合名会社」「合資会社」の2つでは信用や労務、現物出資が可能で、必ずしも現金を集める必要はありません。

しかし、実際に設立される会社に多い形態は、残り2つの「株式会社」「合同会社」です。この2種類の会社を設立する場合には、資本金が必須となります。

 

そもそも、資本金とは何かというと「事業を開始し、当面の間運営していくための資金」です。

もちろん、金融機関などから融資を受けたり、出資を募ったりして資金を増やすことはありますが、全ての元手になるのがこの資本金です。

 

その資本金はいくら用意すればいいかという、明確な決まりはありません。2006年の新会社法施行以降、資本金1円からでも会社設立ができるようになりました。

 

しかし、1円起業にはデメリットも多いので、ほとんどの起業家はある程度まとまった金額を資本金として用意します。

1円起業のデメリットや資本金額の目安については、後の項目で詳しく解説します。

 

ちなみに、資本金と似た言葉に「資本準備金」というものがあります。

これは、簡単にいうと万が一の時のための積立金。資本準備金の金額は、資本金の半額までと定められていて、業績が悪化した場合には資本準備金を取り崩すことで会社財産を維持することができます。

資本金とは異なり、資本準備金は必須のものではありません。

 

2.≪会社設立時の資本金の決め方≫

それでは具体的に、資本金はいくら用意すればいいのかを解説していきます。

もちろん、業種や経営方針によって必要な金額は異なりますが、基準となるポイントを見ていきましょう。

 

(1)目安は3ヶ月~半年分の運転資金

多くの会社が資本金額の目安とするのが、開業資金+3~6ヶ月分の運転資金です。

 

起業してすぐに経営が軌道に乗り、十分な利益が出せる会社というのはごく少数。ほとんどの会社は、開業からしばらくは赤字や少ない利益で会社を維持していくことになります。

そんなとき、資本金が少なすぎるとすぐに資金が底をつき、せっかく設立した会社がすぐに潰れてしまいます。

 

ですから、安定した利益を出せるようになるまで、会社を維持する体力として資本金が必要なのです。

開業後、赤字でもかかる経費(固定費)としては、以下のようなものがあります。

 

・事務所や店舗の家賃

・商品の仕入れ代金

・従業員の給与

・水道光熱費・通信費

など

 

毎月かかるこれらの経費を計算し、3~6ヶ月は赤字でも経営していけるように備えましょう。

 

また、当然それとは別に開業資金も必要です。

開業資金として必要な額は、業種によってかなり幅があります。例えば、大規模な工場が必要な製造業なら数千万円かかることもありますし、PC1台で始められるITやサービス業なら数十万円で十分ということも。

資本金を決定する前に、まずは開業準備と半年後までの経営の見通しを立て、必要な金額を算出してみましょう。

 

(2)取引先・金融機関からの信用を考慮する

次に、取引先や金融機関といった、他者から見た場合の資本金について考えていきましょう。

 

先に解説したように、資本金が少ない会社は開業直後に潰れてしまうリスクが高いです。

そんな会社に、商品を卸したり融資したりしたくないのは、当然と言えるでしょう。

そのため、資本金が少ないと取引先や金融機関から敬遠されてしまい、事業がうまく拡大できない可能性も。取引先や金融機関からの信用を得るためには、資本金は多いに越したことはないのです。

 

(3)税金負担額とのバランスを見る

一方、資本金は多ければ多いほどいいという訳ではない面もあります。

それは、税金負担額にも資本金が関わってくるためです。

資本金額によって税務上の違いが生じるボーダーラインは、1,000万円1億円です。

 

まず、1,000万円のボーダーラインで変わるのが消費税。

資本金1,000万円未満の会社の場合、設立から2年間は消費税の納付が免除されますが、1,000万円以上で起業すると、初年度から消費税の納付義務が生じてしまいます。

 

また、法人住民税の均等割についても、資本金1,000万円をボーダーラインとして変わります。

金額は自治体によりますが、例えば、東京都内で従業員が50人の会社の場合、資本金が1,000万円以下では7万円、1,000万円超では18万円と、倍以上の差があります。

 

資本金1億円のボーダーラインでは、さらに様々な違いが出てきます。

これは、資本金1億円以上の会社は「大企業」、1億円未満の会社は「中小企業」と定義されているためです。中小企業と大企業では、法人税の税率や交際費の経費計上、欠損金の繰戻還付など、税制上の扱いが根本的に異なります。

また、国や地方自治体が実施している中小企業向けの施策や補助金等も、資本金1億円をボーダーラインとして適用されなくなるものが多いです。

 

(4)許認可に資本金額が必要な業種も

最後に、業種ごとに定められている資本金額について解説します。

 

基本的に、会社設立は資本金1円から可能ですが、業種によっては一定額以上の資本金がないと、営業の許認可が取れない場合があります。

許認可に資本金の要件がある業種と金額は、以下の通りです。

 

・人材派遣業:2,000万円

・特定建設業:2,000万円

 

3.≪会社設立時の資本金が低すぎることによるリスク≫

先にもお伝えしましたが、資本金は最低1円からでも会社設立が可能です。

しかし、資本金が少なすぎるとデメリットが多く、思うように事業を運営できない可能性も。

資本金が少なすぎることで、起こりうるリスクについて知っていきましょう。

 

(1)融資が受けられない可能性がある

資本金が少ないと、まず銀行からの融資を受けにくくなります。

先にもお伝えした通り、資本金は会社の体力なので、資本金が少ないとすぐに倒産してしまいかねません。

回収の当てがない会社にお金を貸したくないのは当然で、金融機関からの融資を断られてしまう可能性が高くなります。

 

また、起業時に利用する方が多い日本政策金融公庫の新創業融資も、融資の条件に「創業資金の3分の1以上の自己資金を確認できること」があります。

他にも、資本金が少ない場合、法人口座を作ることもできないケースがあります。形式上、会社を作ることができるのと会社の信用力は別のものであることを理解しましょう。

 

(2)取引してもらえない可能性がある

よく知らない会社について調べる際、資本金を重視する人は多いです。

資本金が多ければ、それだけ会社の体力があるということで、もし事業がうまくいっていなくても長く運営を続けていけるという指標になります。

また、資本金が多いほうが事業への本気度が高いとみなされ、資本金が少ないと遊びの延長のように思われてしまいかねません。

 

新規起業でこれから顧客や取引先を確保しなければいけないという場合、信用を得づらくなり、事業拡大がしにくくなるのです。

 

(3)債務超過になりやすくなる

債務超過とは、債務者の負債の総額が資産の総額を超える状態ということです。

少なすぎる資本金で会社を設立すると、少額の借入をしただけですぐに債務超過になってしまいます。

 

債務超過の会社は、取引先・金融機関・出資者などからのイメージが非常に悪いです。

起業して早々に債務超過にならないためにも、やはり開業資金と当面の運転資金は用意しておいたほうがいいでしょう。

 

4.≪資本金の払い込み方≫

最後に、会社設立時に資本金の払い込みを行う方法について解説します。

 

(1)発起人の銀行口座を用意

会社設立時には、まず発起人名義の個人口座を用意し、そこに資本金を入金します。

口座の開設はいつでも問題ありませんが、入金のタイミングは定款認証日よりも後である必要があるので注意してください。

 

入金を行ったら、会計処理を行います。

例えば資本金を300万円用意した場合、仕訳処理の方法は以下の通りです。

 

借方:現金 3,000,000円

貸方:資本金 3,000,000円

摘要:資本金の払込

 

(2)通帳のコピー作成

資本金の払い込みを行ったら、会社の設立手続きのためにその証明が必要となります。

その証明に必要なのが、通帳のコピーと払込証明書です。

通帳は、

 

・表紙

・表紙裏

・振込内容が記帳されているページ

 

の3ヶ所をコピーします。

証明には支店名・支店番号、銀行印が必要なので、その箇所が含まれているかどうか確認しましょう。

 

また、振込内容が記帳されているページは、発起人の名前と金額にマーカーなどで印をつけておくと、会社設立時の手続きがスムーズになります。

 

(3)払込証明書を作成

最後に、以下の内容を記載した払込証明書を作成します。

 

・日付

・本店所在地

・会社名(商号)

・代表取締役の氏名

・払込があった金額

・払込があった株数

・1株の払込金額

 

この7つの項目と、「証明書の左上」「代表取締役氏名の右側」の2ヶ所に会社代表印が必要となります。

資本金の証明をして登記が終わったら、いつでも資本金を使うことができます。

発起人個人の口座から法人口座へ資本金を移動し、初期費用などにあてましょう。

 

5.≪まとめ≫

資本金は開業後の経営の元手となり、対外的にも会社の持続力をあらわす重要なお金です。

最低1円からでも会社設立はできますが、開業後の経営を考えるとある程度まとまった金額を用意したほうがスムーズです。

 

資本金は会社設立の手続きの前に現金で用意する必要があるので、計画的に準備を進めていきましょう。

2020/02/27 免税事業者とは|課税事業者とどっちがお得?

免税事業者とは、消費税の納付が免除される事業者のこと。消費税の納付義務はありませんが、消費税分の上乗せ請求はできるため、免税事業者であることのメリットは大きいです。

 

しかし、2023年に始まるインボイス方式の影響で、免税事業者はお得なだけではなくなります。

免税事業者の要件や、今後の展望について詳しく見ていきましょう。

 

 

1.≪免税事業者とは≫

免税事業者について知るには、まず消費税の仕組みを知る必要があります。

 

通常、事業者は商品やサービスの値段に消費税を上乗せし、顧客や取引先から消費税を徴収します。

課税事業者は、消費者からいったん預かった消費税を、後日まとめて国に納付する義務があるのです。

 

このように、実際に税金を負担する人と税金を納める人が違うため、消費税は「間接税」と呼ばれています。

商品の仕入れのために事業者が支払った消費税は、「仕入税額控除」という形で納付額から差し引くことができます。

 

免税事業者とは、この消費税の納付を免除される事業者のことです。

免税事業者となるためには、売上額や資本金額など一定の要件を満たす必要があります。

 

2.≪免税事業者となる基準≫

免税事業者となるための基準は、次の3つです。

 

・基準期間の課税売上高が1,000万円以下

・資本金の額または出資金が1,000万円未満

・新規開業から2年以内

 

(1)基準期間の課税売上高が1,000万円以下

免税事業者となる要件一つ目は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下ということです。

基準期間とは、以下の通り。

 

・個人事業主の場合:その年の前々年

・法人の場合:その事業年度の前々事業年度

 

つまり、大まかにいえば、売上高が1,000万円を超えるまでの期間と、その後2年間は免税事業者ということになります。

ただし、例外として、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えている場合は免税事業者と認められません。

 

この特定期間とは、以下の期間を指します。

 

・個人事業主:その年の前年の1月1日〜6月30日までの6ヶ月間

・法人:その事業年度の前事業年度開始日から6ヶ月間

 

要するに、2年前の売上が1,000万円以下であっても、前年に半年間で1,000万円以上の売り上げがあると課税事業者になるということです。

 

(2)資本金の額または出資金が1,000万円未満

基準期間の売上が1,000万円以下だったとしても、資本金が1,000万円以上の法人は消費税の納付が免除されません。

資本金1,000万円以上の事業者は、原則的に課税事業者となるということです。

 

起業するとき、資本金はできる限り多く用意した方が金融機関等からの印象はいいですが、このボーダーラインがあるため資本金を1,000万円以下に抑える企業も多いです。誰にも相談することなく資本金を決定してしまうと、第1期目から消費税を納税しないといけないケースも出てくるので、会社設立の際には税理士に相談すべきでしょう。

 

(3)新規開業から2年以内

先にも触れたように、免税事業者かどうかを判断する「基準期間」は、その年の前々年または前々事業年度です。

開業から2年以内の事業者は、当然2年前の売上はありません。どんな事業者でも、新規開業から2年以内は免税事業者ということになります。

 

個人事業主が法人化した場合には、法人化した時点で個人事業主時代の売上はリセットされます。

免税事業者である期間を伸ばすために、売上が1,000万円を超えた時点で法人化する個人事業主も多いのです。

 

また、先にもお伝えしたように、資本金・出資金1,000万円以上の法人は免税事業者にはならないため、設立1期目から消費税を納付する義務があります。

 

3.≪免税事業者でも消費税の上乗せ請求は可能?≫

ここまでの説明を見ると、消費税の納付義務がない免税事業者が商品やサービスの料金に消費税を上乗せするのは、一見フェアではないように思えます。

 

しかし、免税事業者であっても消費税を上乗せ請求することは可能です。

なぜなら、消費税法や国税庁の通達では「免税事業者は消費税を請求してはいけない」という決まりがないためです。

また、消費税を上乗せ請求できないと、仕入れなどの際に他の事業者に支払う消費税を自己負担しなければいけないことになります。

 

経理処理上は、免税事業者は「税抜き処理」「税込み処理」どちらを選択してもいいことになっています。

ちなみに、2019年10月1日の消費税引き上げに伴い、消費税には「区分記載請求書保存方式」が導入されました。仕訳や請求書では税率8%の品目と税率10%の品目を分けて表示する必要があります。

 

4.≪課税事業者とどちらが得?選択のポイント≫

それでは、課税事業者と免税事業者では、どちらが得になるのかを見ていきましょう。

 

(1)インボイス方式導入で免税事業者は不利に?

消費税率引き上げ・軽減税率導入に伴って、2023年10月から「適格請求書等保存方式(インボイス方式)」が始まります。

これによって変わるのは、仕入れなどで他の事業者に支払った消費税を納付時に相殺する「仕入税額控除」のシステムです。

インボイス方式が導入されると、事業者は適格請求書(インボイス)に記載された消費税のみしか仕入税額控除ができなくなります。

 

インボイスを発行できるのは、登録を受けた課税事業者のみ。免税事業者はインボイスを発行できないため、この制度が始まると免税事業者から取引先事業者に消費税を請求するのが難しくなります。

そうなると、仕入れの際に支払った消費税は免税事業者が自己負担することになります。

 

また、インボイスを発行できないことが理由で、取引先がインボイス発行可能な同業他社へ乗り換えてしまう可能性もあり、免税事業者は不利になってしまいます。

そのため、インボイス方式が導入される2023年10月以降は、課税事業者の方がメリットは大きいケースが多くなります。

 

インボイス方式は、2023年10月から段階的に始まり、2029年10月以降は免税事業者からの仕入れに関わる仕入税額控除が完全にできなくなる予定です。

現在、免税事業者になっている事業者も、時期を見て課税事業者に移行するべきでしょう。

 

(2)課税事業者のほうが良い場合とは

インボイス方式導入前であっても、課税事業者の方が有利な場合もあります。

 

課税事業者になった方が有利なのは、消費者から預かる消費税より、取引先に支払う消費税の方が多いケース。仕入税額控除の制度を利用して、差額分の消費税の還付を受けることができます。

 

①輸出をしている

ここまで解説してきた消費税のやりとりは、あくまで国内での取引の場合。輸出による売上高は免税取引なので、そもそも預かる消費税は0円です。

 

しかし、輸出するために国内業者から仕入れた商品の代金や、物流サービスの料金は、当然消費税が含まれた金額を支払います。

輸出を行なっている事業者は預かる消費税より支払う消費税の方が多く、免税事業者の条件に当てはまっていても、課税事業者として申告した方が得できるのです。

 

②設備投資の額が大きい

設備投資には多額のお金がかかりやすく、支払う消費税が多くなりやすくなります。

 

例えば、不動産業者がビルを建てて貸し出した場合、まずビルの建設に多額の建設費と、それに伴う消費税がかかります。

その後、ビルを貸し出して家賃収入を得たとしても、その年中に借主から預かる消費税より、建設のために支払った消費税の方が多くなるはずです。

 

多額の設備投資を行なった場合には、課税事業者になった方が消費税の還付を受けられ、得できるということになります。

 

5.≪まとめ≫

免税事業者となるための条件は、2年前の売上高が1,000万円以下であることと、資本金が1,000万円以下であることです。

免税事業者は、代金に消費税を上乗せ請求できるにも関わらず、納税の義務はないため、最大10%の得ができることになっています。

 

しかし、2023年にはインボイス方式が始まり、免税事業者は仕入税額控除の仕組み上不利になります。免税事業者の申告納税は任意なので、状況を見て経営にとって得になる判断をするようにしましょう。

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2020/02/20 基礎控除とは?税制改正に伴う変更のポイントも解説

所得税・住民税の計算をするとき、誰でも所得から差し引くことができるのが「基礎控除」です。

現在、基礎控除は一律38万円ですが、税制改正により令和2年度以降の所得は計算方法が変わります。

 

今回は、税制改正で変更となる点や、基礎控除の計算方法を詳しく解説します。

関連して、給与所得控除・相続税の基礎控除についても見ていきましょう。

 

 

1.≪基礎控除とは≫

基礎控除とは、全ての納税者が所得額から差し引ける控除のことです。

まずは、基礎控除の基本的な知識について知っていきましょう。

 

(1)所得税の基礎控除

そもそも控除とは、個人の事情に合わせて課税額を調整するためにある制度です。

例えば、一人身で特段の事情がない人と、養う家族がたくさんいたり、重い病気にかかっている人では、生活にかかる金額が異なります。

それなのに、所得額が同じなら一律で同額の税金を徴収していると、不公平が生じてしまうのです。

それを調整するために、一定の条件に当てはまる人は、総所得から控除を差し引いて課税所得を減らすことができるようになっています。

 

しかし、基礎控除は個人の事情に関係なく、誰にでも適用される控除です。

その金額は、現在38万円です。

つまり、年間の所得が38万円以下であれば、課税所得は0となり所得税がかからないことになります。

また、サラリーマン・アルバイトなどで、給与所得を得ている方には追加で、最小でも65万円の「給与所得控除」も受けられます。

このため、年間所得が「基礎控除38万円+給与所得控除65万円」の「103万円」なら、給与所得者は所得税がかかりません。

家族の扶養に入っている場合などに言われる「103万円の壁」は、基礎控除と給与所得控除の金額が根拠になっているのです。

 

ただし、令和2年度(2020年1月1日~12月31日)の所得にかかる所得税から、基礎控除の金額が改定されます。

この税制改正については、後の項目で詳しく解説します。

 

(2)住民税の基礎控除

所得税だけではなく、住民税にも基礎控除があります。

住民税の基礎控除額は、33万円です。

また、住民税には「人的非課税」という非課税制度があります。これは、生活保護世帯など一定の条件を満たしている場合、住民税を納める必要がないという制度です。

さらに、納税者に扶養親族がいない場合、所得金額が35万円以下なら住民税は課税されません。

そのため、住民税の基礎控除は基本的には33万円ですが、非課税限度額は35万円と言えます。

 

2.≪「基礎」以外のおもな「控除」≫

誰でも受けられる基礎控除以外に、様々な条件を満たすと受けられる控除があります。

その中から、適用される人が多い「扶養控除」「配偶者控除/配偶者特別控除」「社会保険料控除」について解説していきます。

 

(1)扶養控除

扶養控除とは、子供や親など、配偶者以外の家族・親族を扶養している場合に受けられる控除です。

配偶者を扶養している場合の控除は制度が異なるため、次の項目で解説します。

 

税制上、「扶養している」と言える家族・親族の条件は、以下の通りです。

・年間の所得金額が38万円以下(給与所得103万円以下)

・16歳以上の親族(6親等内の血族または3親等内の姻族)

・納税者と生計を一にしている

 

このような家族・親族が納税者の収入で生活していると、一人当たり以下の金額が控除されます。

・一般の控除対象扶養親族(16歳以上):38万円

・特定扶養親族(19歳以上23歳未満):65万円

・老人扶養親族(70歳以上・同居老親等以外):48万円

・老人扶養親族(70歳以上・同居老親):58万円

 

(2)配偶者控除/配偶者特別控除

配偶者控除・配偶者特別控除は、妻・夫を扶養している場合に受けられる控除です。

配偶者控除に当てはまる家族の条件は、以下のようになっています。

・配偶者であること

・納税者と生計を一にしていること

・配偶者の年間の合計所得金額が38万円以下であること

・青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、又は、白色申告者の事業専従者でないこと

 

配偶者控除の金額は、以下の通りです。

 

納税者の所得が900万円以下の場合

一般の控除対象配偶者:38万円

老人控除対象配偶者:48万円

 

納税者の所得が900〜950万円の場合

一般の控除対象配偶者:26万円

老人控除対象配偶者:32万円

 

また、配偶者特別控除は、以上の条件のうち収入面のみ満たしていない場合に受けられます。

配偶者特別控除は、年間所得が38万円以上123万円以下の場合かつ、納税者の所得が1,000万円以下の場合に適用されます。

配偶者特別控除の金額は、納税者と配偶者の所得金額のバランスによって異なります。

 

(3)社会保険料控除

社会保険料控除は、納税者本人や生計を一にしている家族・親族の社会保険料を支払った場合に適用されます。

控除金額は、支払った社会保険料の全額です。

 

3.≪税制改正で基礎控除はどう変わる?≫

令和2年度(2020年1月1日~12月31日)分の所得から、基礎控除額・給与所得控除額が変更になることを国税庁が決定しました。

基礎控除に関わる税制改正の内容について、詳しく見ていきましょう。

 

(1)税制改正のポイント

今回の税制改正では、

・基礎控除額の引き上げ

・給与所得控除額の引き下げ

が行われます。

以下の項目で、変更点を詳しく解説します。

 

①基礎控除引き上げ

まず、現在38万円の基礎控除額は、最大48万円に引き上げられます。

これまでは、所得総額に関わらず基礎控除は一律でしたが、改正以降は所得金額によって基礎控除の金額が異なるようになります。

税制改正後の、年間の合計所得金額と基礎控除の関係は以下の通り。

 

【所得税の基礎控除額】

〜2,400万円:48万円

2,400万円〜2,450万円:32万円

2,450万円〜2,500万円:16万円

2,500万円〜:なし

 

また、これに伴い、現在一律33万円となっている住民税の基礎控除も変更になります。

 

【住民税の基礎控除額】

〜2,400万円:43万円

2,400万円〜2,450万円:29万円

2,450万円〜2,500万円:15万円

2,500万円〜:なし

 

②給与所得控除引き下げ

給与所得者に適用される給与所得控除は、基礎控除とは逆に最大10万円引き下げられます。

また、給与所得控除の上限金額が適用となるのも、現行の1,000万円から850万円に引き下げられます。

税制改正後の、給与収入金額と給与所得控除の関係は、以下の通りです。

 

〜162.5万円:55万円

162.5万円〜180万円:収入金額×40%ー10万円

180万円〜360万円:収入金額×30%+8万円

360万円〜660万円:収入金額×20%+44万円

660万〜850万円:収入金額×10%+110万円

850万円〜:195万円(上限)

 

(2)税制改正で税金は上がる?下がる?

今回の税制改正を大まかにまとめると、「年収850万円以上の人は増税・850万円以下の人は変わらない」と言えます。

年収850万円以下の方は、基礎控除額と給与所得控除額がそれぞれ±10万円のため、実質的には影響を受けません。

年収850万円以上の方は、基礎控除額と給与所得控除額の合計が改正前よりも少なくなるため、所得税が増税されます。

また、給与所得控除に関係がない自営業やフリーランスの方は、基礎控除額の引き上げのみが適用されるため、減税となります。

 

4.≪相続税の基礎控除の仕組み≫

所得税や住民税だけではなく、相続税にも基礎控除があります。

亡くなった人の財産を相続すると相続税が発生しますが、相続したのが一定の金額以下なら納税や申告が必要なくなるのです。

このボーダーラインを、相続税の基礎控除と言います。

相続税の基礎控除の計算方法は、以下の通りです。

 

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

 

法定相続人とは民法で定められた相続人のことです。

内縁関係の配偶者や、義理の息子・娘といった関係の人は、実際に遺産を相続するとしても法定相続人には含まれません。

例えば、法定相続人の数が3人の場合、計算式は以下のようになります。

 

3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円

 

この場合、遺産の合計額が4,800万円以下なら相続税の申告・納税をする必要はありません。

また、遺産が4,800万円を超えている場合には、4,800万円を超えた金額にのみ相続税が課せられます。

 

5.≪まとめ≫

税制改正により、基礎控除は+10万円、給与所得控除は−10万円になります。

給与所得者で、年収850万円以下の方には影響がありませんが、年収850万円以上の方は増税、個人事業主やフリーランスの方は減税となります。

これにより、扶養控除や配偶者控除・配偶者特別控除の基準も変わるため、令和2年度分の確定申告には注意が必要です。

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2020/02/13 復興法人税とは?用途や税率、前倒し廃止の理由を解説

復興法人税は、東日本大震災の復興の財源とするため、法人に課せられていた特別税です。

徴収期間は2012年4月1日から2014年3月30日までで、当初の予定より1年早く廃止されました。

 

今回は、この復興法人税の概要や、廃止が前倒しされた理由について詳しく解説します。

また、個人向けの特別税である「復興所得税」についてもご紹介いたします。

 

1.≪復興特別法人税の概要≫

まずは、復興特別法人税とは何か、その概要について知っていきましょう。

 

(1)復興法人税とは

復興法人税とは、2011年に発生した東日本大震災の復興のための施策に必要な財源を確保するために実施された特別税で、平成23年12月に公布されました。

復興法人税の具体的な使い道は、以下の通り。

 

・被災者支援…被災者の生活再建への支援等

・住宅再建・復興まちづくり:復興道路などの社会インフラ整備等

・産業・生業(なりわい)の再生:観光復興や水産業の販路開拓支援等

・原子力災害からの復興・再生:避難指示が解除された区域での生活支援等

 

さらに詳しく復興法人税の使途を知りたい場合は、「東日本大震災復興特別会計歳出暫定予算予定額各目明細書」や復興庁のホームページで確認することができます。

 

復興法人税の課税対象は、全ての所得がある法人です。一般的な会社だけではなく、設立前の会社・町内会・政党要件を満たさない政治団体・マンションの管理組合といった、収益目的ではない法人でも、所得があれば課税されます。

 

ただし、赤字の会社などで法人税が課税されない場合には、復興法人税も同じく課税されません。

復興法人税が課税される法人は、各課税事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内に復興特別法人税申告書を提出し、納税額を確定します。

 

2012年4月1日から、通常の法人税に上乗せして復興法人税の徴収が始まりました。

当初、徴収時期は2015年3月30日までの予定でした。しかし、2014年4月の消費税率引き上げの影響を考慮して1年早く廃止されました。

復興法人税の廃止については、後の項目で詳しく解説します。

 

(2)復興法人税の税率

復興法人税の税率は、「法人税額の10%」です。各事業年度の法人税課税額に対して、10%の税率をかけたものが復興法人税額となります。

大まかにいうと、復興法人税の徴収期間は、それ以外の期間と比べて法人税が1.1倍になるというイメージです。

 

ただし、利子など一定の所得に課された復興所得税など、復興法人税から控除できる金額もあります。

そのため、単純に法人税が必ずしも1.1倍になるというわけではありません。

 

また、復興法人税から控除しきれない復興所得税の額がある場合には、申告書を提出することで還付を受けることができます。

 

2.≪法人税引き下げと復興法人税との関係≫

復興法人税の制度は、2011年12月に行われた法人税率の引き下げとセットで実施されています。

先にお伝えしたように、復興法人税は法人税の納税額に基づいて決定されるので、復興法人税が追加で課されたとしても、実質的には減税となりました。

 

(1)軽減税率との関係

平成23年12月以前の、法人に課せられる法人税率は以下の通りでした。

 

大企業:30%

中小企業(年間所得800万円以上):30%

中小企業(年間所得800万円以下):22%

 

そして、平成23年12月の改正で、法人税率は以下のように引き下げられます。

 

大企業:25.5%

中小企業(年間所得800万円以上):25.5%

中小企業(年間所得800万円以下):15%

 

前の項目でお伝えした通り、復興法人税は法人税の10%なので、「法人税+復興法人税」の税率は以下のようになります。

 

大企業:28.05%

中小企業(年間所得800万円以上):28.05%

中小企業(年間所得800万円以下):16.5%

 

このように、法人税引き下げ・復興法人税の実施で、大企業と年間所得800万円以上の中小企業は「1.95%」、年間所得800万円以下の中小企業は「5.5%」もの減税になったのです。

震災復興のために税収が必要となるのにも関わらず、法人に対して実質的な減税を行なったことで、当時は「企業優遇」という批判の声も上がりました。

 

(2)地方税との関係

次に、法人が納める地方税と復興法人税の関係を見ていきましょう。

 

地方事業税に関しては、復興法人税の影響はありません。地方事業税は法人の所得が課税標準となり、復興法人税の実施に際して税率の変更もなかったため、従前通りです。

 

地方住民税については、税率自体に変更はないものの、課税標準となるのが法人税額なので、法人税引き下げ・復興法人税導入の影響を受けます。

先に触れたように、法人税は1.95%または5.5%の減税となるため、地方住民税も連動して減額されます。

 

3.≪復興特別法人税の「前倒し廃止」とは≫

復興法人税が実施された当初、課税期間は課されるのは2012年4月1日から2015年3月30日まで(9月決算法人では9月30日まで)の予定でした。

 

ところが、2014年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられた影響で終了が1年前倒しされ、2014年3月30日(9月決算法人では2014年9月30日)で廃止されました。

消費税増税以外の廃止理由としては、賃金引上げを含む経済の好循環に繋がる、外国企業の誘致を促進し国際的競争力を高める、などが挙げられています。

 

具体的に、いつから復興法人税がかからなくなったかというと、3月決算の法人では2014年4月1日以降の事業所得、9月決算の法人では2014年10月1日以降の事業所得です。

個人の所得から徴収される復興特別所得税は、予定通り25年間続くため、たった2年で廃止された復興法人税は法人税率の引き下げと同じく「企業優遇」と批判を受けました。

しかし、復興法人税の廃止で浮いた金額を、従業員の賃上げに回すよう推進するということで断行されています。

 

4.≪継続中の復興特別所得税との違い≫

復興法人税の他に、復興特別税には復興所得税というものもあります。

 

復興法人税と復興所得税の違いは課税の対象者です。復興法人税は先にも触れた通り法人に、復興所得税は個人に課せられます。

 

復興所得税は全ての納税者が支払う税金です。サラリーマンなどの給与所得者は、源泉所得の際に復興所得税額も含めた金額を徴収されます。

給与以外の所得がある個人事業主等は、確定申告で所得税と復興所得税をあわせて申告し、納税します。

また、源泉徴収義務者は、従業員の給与からあらかじめ徴収した復興所得税を法定期限までにまとめて納付しなければなりません。

 

復興所得税が徴収されるのは、2013年1月1日から2037年12月31日までの25年間です。

この期間中は、全ての納税者が通常の所得税に復興所得税を上乗せして納税します。

 

復興所得税の税額は所得税額の2.1%です。個人の所得税は、所得金額が高くなるほど税率も上がる累進課税制度を採用しているため、復興所得税の金額や負担割合も所得が高くなるほど高くなります。

 

5.≪まとめ≫

復興法人税は日本国内の法人が東日本大震災の復興のために納める税金です。

個人向けの復興所得税より税率は高いですが、法人税引き下げと同時に実施されて実質的に減税になったことや、短期間で廃止されたことが批判の的になったこともあります。

 

復興法人税はすでに廃止されている税金のため、今後の経理業務に登場することはありません。

しかし、復興所得税は徴収期間が2037年まで続くため、源泉徴収や確定申告の際に気をつけておく必要があります。

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2020/02/06 役員借入金とは?役員借入金を減らす6つの方法

役員借入金とは、役員から法人に貸し付けたお金のことをいいます。上手く利用すれば節税にもなる役員借入金ですが、その金額が膨らんでしまうと様々なデメリットが生じます。

 

今回は、役員借入金が増えてしまった場合のデメリットと、その解決方法を解説いたします。

役員借入金は、借入をするメリットとデメリットを踏まえて適切に利用する必要があります。

 

 

1.≪役員借入金とは?≫

役員借入金とは、会社の役員から会社に対して貸し付けているお金のことで、勘定科目では「役員借入金(負債)」と仕訳します。

逆に、役員が会社から借りているお金のことは役員貸付金と言い、勘定科目では「役員貸付金(資産)」となります。

 

役員借入金が発生するのは、主に以下のような場合です。

 

会社の資本金が足りない時、役員のポケットマネーで立て替えた

法人設立時の開業費等の費用

 

役員借入金のメリットは、金融機関や他社からの借入とは違い、返済期日や利息が自由に定められることです。

もちろん、いずれは返済する必要がありますが、経営状態に余裕のあるタイミングで都合よく返済することができます。

 

さらに、返済するときには当然会社から役員へお金を支払うことになりますが、これは報酬ではなく借入金の返済なので、税金や社会保険料がかかりません。

元本の返済ではなく、利息についても同様なので、役員は利息分については非課税の収入を得ることができるのです。

 

また、役員借入金の利用法として、借入金を増額することで資本金を3,000万円以下に抑え、中小企業向けの税制度を受けるという使い方もあります。

さらに、役員借入金の利息は経費にできるため、適正な利息を役員に支払うことで会社の経費を増やし、利益調整することもできます。

 

2.≪役員借入金が増えるとどうなる?≫

先に役員借入金のメリットをお伝えしましたが、一方で役員借入金が増えてしまうことによるデメリットもあります。

 

取締役会の承認が必要に

金融機関の印象悪化

相続税の対象になる

 

以下の項目で、詳しく見ていきましょう。

 

(1)取締役会の承認が必要に

役員借入金には、金融機関からの借り入れのようなビジネスという側面がありません。

そのため、役員から会社にお金を貸す時には、無利子での賃借が認められています。

 

しかし、利益調整などの目的で利息を設定する場合には利益相反取引に該当するため、取締役会での承認が必要となります。

役員借入金の返済利息は、お金を貸す役員個人では決めることができないのです。

 

(2)金融機関の印象悪化

いくら身内からの借り入れであっても、役員借入金は決算書類上の負債に該当します。

 

また、役員借入金は法人の経営状況が健全であれば、そもそも発生させる必要がない項目なので、金融機関からの印象が悪くなります。

経営状態に問題がないのに役員借入金が多い企業は、役員個人のお金と会社のお金の区別がついていないルーズな会社と思われてしまいかねません。

 

先に解説したようなメリットがあるとはいえ、役員借入金は乱用するべきものではないのです。

 

(3)相続税の対象になる

会社にお金を貸している役員が亡くなった場合、役員借入金も相続税の課税対象です。相続人にとっては、会社に対する債権が相続財産になります。

 

もし、会社の業績が悪く、相続人に対して返済することができない場合も、相続放棄をしない限りは相続人が債権を引き継ぐことになります。そのため、相続人から見ると、戻ってくる見込みがないお金に対して相続税が生じる可能性があるのです。

役員借入金の金額が大きくなればなるほど、相続税負担も重くなります。

 

3.≪役員借入金を減らす6つの方法≫

それでは、上記のデメリットをなくすため、役員借入金を減らす方法を6つご紹介します。

 

(1)役員報酬を減額

役員借入金が増えてしまう原因として、会社の資本に対して役員報酬が高すぎるという問題が挙げられます。

過剰な節税対策で役員報酬の金額を上げすぎると会社に資本が残らず、役員が自分の報酬を役員借入金として会社に戻さざるを得なくなっているのです。

 

その場合には、役員報酬の金額を見直すことで負のスパイラルから抜け出すことができます。

役員借入金が膨らみすぎてしまった企業では、まず役員報酬の減額を考えてみましょう。

 

(2)債務免除する

会社にお金を貸した役員が債務免除をすれば、当然、役員借入金を減らすことができます。

 

ただし、債務免除された金額は「債務免除益」として利益に組み込まれ、法人税の課税対象となります。(消費税については課税売上とはならず、消費税の納税額が増えることはありません。)

また、財産の贈与とみなされて贈与税が発生する場合もあるので注意してください。

 

(3)後継者へ贈与する

役員借入金を後継者に贈与する「暦年贈与」という方法があります。

 

この方法は、役員が亡くなった場合を見越した相続税対策として使えます。

生前に贈与しておけば、贈与税の基礎控除額である110万円の範囲内であれば贈与税はかかりません。

相続税がネックになりそうな役員借入金は、万が一の事態が起こる前から計画的に減らしておくのが大切です。

 

また、役員が亡くなった時、相続税の税務調査に備えておくため、暦年贈与の際は必ず贈与契約書を作成しましょう。

 

(4)DES活用

DESは「Debt Equity Swap」の略です。

「債務と資本を交換する」という意味で、役員借入金を返済する代わりに、役員に会社の株式を発行します。

 

この方法を使うことで、実際に現金を動かすことなく役員借入金を減らすことが可能です。

 

(5)生命保険を活用する

生命保険の解約返戻金や死亡保険金を使って、役員借入金を減らすこともできます。

生命保険料を損金に計上しながら解約返戻金を簿外に貯めていき、その貯まった資金で役員に借入金を返済するという方法です。

 

ただし、解約返戻金には契約上もっとも得ができるタイミングがある(返戻率が年々推移するため。)ので、解約時期を決めて計画的に利用する必要があります。

 

(6)代物返済

代物返済とは、役員の承諾を得て現金以外のもので役員借入金を返済することです。

会社が保有している自己株式、不動産、在庫商品などで、役員借入金を相殺することができます。

 

ただし、会社と役員間の取引はルーズになりがちなので、税務調査などで代物返済にあてた物の時価総額などが問われる場合があります。

会社や役員にとって都合のいい取引ではなく、他者の目から見ても公正と思える取引で返済しなければいけません。

 

4.≪役員借入金は決算書でも工夫が必要≫

先にもお伝えしたように、役員借入金は仕訳では負債に組み込まれます。

身内からの借入金であっても借金は借金なので、決算書上で負債が多すぎるのは問題です。

金融機関や取引先からの印象を良くするためには、役員借入金の扱い方に工夫が必要です。

 

役員借入金は、返済利息だけではなく返済期間も自由に設定することができます。

ですから、役員借入金の返済期間はできるだけ1年以上の長期に定め、決算書上は「固定負債」に組み込まれるようにしましょう。

そうすることで流動負債を減らし、流動比率(流動資産÷流動負債)を良く見せることができるのです。

また、固定長期適合比率(固定資産÷(固定負債+自己資本))についても、流動比率と連動して良い値になります。

 

5.≪まとめ≫

役員借入金は、使い方によっては節税に役立つこともあります。

しかし、そもそも会社の経営状態が健全なら発生させる必要はなく、決算書上では負債となるため金融機関からの印象も悪くなります。

また、役員が亡くなった場合には相続税の対象となるため、あまり増やしすぎず、できるだけ早く返済していくのが理想です。

今回ご紹介した6つの方法を使って、役員借入金が増えすぎないように調整しましょう。

 

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2020/01/29 営業利益とはなにか?他の利益との違いや計算方法を解説

損益計算書に登場する様々な項目は、企業の経営状況を見極めるヒントとなります。

今回は、その中の「営業利益」について詳しく解説していきます。

 

企業が本業で得た利益を示す営業利益を見れば、その会社の競争力を知ることができます。

営業利益率を求め、他社と比較することで、会社がどのような戦略で経営しているかもわかりますよ。

 

 

1.≪営業利益とは?≫

営業利益とは、その会社が本業で稼いだ利益のことです。自動車製造業なら自動車、製薬会社なら薬の販売など、その会社が主とする事業で得た利益のことを営業利益と呼びます。

 

似た言葉に「売上総利益」や「経常利益」がありますが、それぞれ営業利益とは意味が違います。

売上総利益は物やサービスを販売して得た収益から、仕入原価を引いたものです。

それに対して、営業利益は、仕入原価以外にかかった経費である「販売費および一般管理費」を抜いたもののことを言います。販売費および一般管理費には、人件費・家賃地代・宣伝費などが含まれます。

 

経常利益は会社が本業で得た利益以外に、不動産収入や配当収入、サイドビジネスの収益などを加えたものです。本業で得た利益以外については、支払利息や雑損失などの経費もマイナスして計上します。

 

2.≪営業利益と他の利益との違い≫

決算期に企業が作成する損益計算書には、「利益」とつく項目が5つあります。

この項目では、それぞれの違いと関係性を知っていきましょう。

 

(1)売上総利益

売上総利益とは、商品の売り上げによって獲得した利益のことで、「売上高—売上原価」という計算式で求めます。例えば50円で仕入れた商品を100円で売っている場合、50円が売上利益。その売上利益の一決算期分の合計が、売上総利益となります。

建設業や飲食業などで、「粗利」という用語をよく使いますが、粗利とは売上総利益のことを指しています。

 

営業利益と売上総利益を比べると、人件費や家賃などの販売費・管理費にどれだけの金額を割いているかがわかります。

売上総利益は多いのに営業利益が少ないという場合、原価以外の管理費がかかりすぎている可能性があります。

 

逆に、営業利益に比べて売上総利益が少ないと、商品の仕入原価が高すぎるということを意味します。

 

(2)営業利益

先にも解説しましたが、営業利益は企業が本業で獲得した利益です。

会社がいくつかの事業を行なっていたり不動産収入などの不労所得があったりする場合は、それらを除いた本業のみの利益を示します。

 

営業利益は「売上総利益—販売費及び一般管理費」という計算式で求めることができます。

売上総利益から、人件費や家賃などの経費を差し引いたものというイメージですね。

 

(3)経常利益

経常利益は、会社の本業と本業以外の利益を合計したもののことを言います。計算式は「営業利益+営業外収益—営業外費用」です。

営業外収益としては、会社が所有している不動産の家賃収入や、本業以外のサイドビジネスの利益などが考えられます。

 

営業利益と経常利益の関係を見ると、会社の本業が順調かどうかわかります。

経常利益の中で営業利益の占める割合が多い場合、会社のメイン収入を本業のみに頼っているということで、経営は順調ですがリスク分散ができていない可能性があります。

 

それに対して、営業利益が占める割合が低い場合、本業以外に会社を支える事業や資産があるということで、もし本業が傾いたとしてもダメージが少ないと予想できます。

 

(4)税引前当期純利益

税引前当期純利益とは、法人税などを支払う前の利益のことを言います。

 

経常利益との違いは、特別利益・特別損失が計算に入ることです。

特別利益・特別損失とは、通常の経営では起こらない臨時的な利益や損失のことです。例えば、株や不動産の売却益や盗難・災害による損失など、一度限りの損益のことを言います。

 

税引前当期純利益は、「経常利益+特別利益—特別損失」という計算式で求めます。

 

(5)当期純利益

当期純利益は、税引前当期純利益から税金を差し引いて、最終的に会社の手元に残る利益のことです。

「税引前当期純利益—法人税等」という計算式で求めます。

結局、一年で会社がどれだけ稼いだのかという結果は、当期純利益を見て判断します。

 

3.≪営業利益の計算方法≫

それでは、営業利益の計算方法について解説していきます。

 

(1)営業利益の計算式

営業利益を求めるための計算式は、以下の通りです。

 

・営業利益 = 売上総利益 - 販売費及び一般管理費

 

ここでは、会社が本業以外で得た収益や、一時的な収入・損失は計算には入れません。

あくまで本業に関して、売上総利益から仕入れ以外の経費を引いたものが営業利益となります。

 

(2)「売上総利益(粗利益・粗利)」とは?

先にも解説しましたが、売上総利益は1年間の全ての売上金額から仕入原価を引いたもの。同じ意味で、粗利益・粗利と呼ばれることもあります。

 

売上総利益は、その企業の競争力を示します。

例えば、同じものを同じ価格で、同じ個数売った場合、仕入原価を抑えられた会社の方が売上総利益は大きくなります。同規模の会社と売上総利益を比較することで、自社の仕入れノウハウがどの程度なのかを測ることができるのです。

 

売上総利益は、以下の計算式で求められます。

 

・売上総利益 = 売上高 — 売上原価

 

(3)「販売費及び一般管理費」に含まれる勘定科目

販売費及び一般管理費には、仕入原価以外の経費が含まれます。

具体的に、販売費及び一般管理費となる勘定科目は以下のものです。

 

・給料

・賞与

・法定福利費

・福利厚生費

・広告宣伝費

・接待交際費

・旅費交通費

・支払手数料

・賃借料

・通信費

・水道光熱費

・保険料

・減価償却費

・租税公課

・消耗品費

 

4.≪売上高営業利益率とは?≫

売上高営業利益率とは、売上高に対する営業利益の比率です。

これを見ることで、その企業が本業でどれだけ効率的に利益を生み出せたかがわかります。

 

(1)利益率の計算方法

売上高営業利益率は、以下の計算式で求めます。

 

売上高営業利益率(%) = 営業利益 ÷ 売上高 × 100

 

先にもお伝えしましたが、売上高営業利益率は売上高に対する営業利益の割合です。

本業で稼いだ金額から、原価も経費も引かない状態の売上高と営業利益を比べ、割合をパーセンテージで算出します。

 

(2)利益率から何が分かる?

売上高営業利益率からわかるのは、品物の原価にどれだけの利益率を乗せて販売しているかということです。

これが高ければ高いほど、その会社は付加価値の高い商品を販売しているということで、ブランド力や競争力があるということになります。

 

ただし、逆に売上高営業利益率を低くして、大量に売ることで利益を出すという戦略も考えられるため、売上高営業利益率が高ければ高いほどいいというわけではありません。

 

(3)優良企業の利益率の目安

売上高営業利益率の理想的な数値は、企業ごとの経営戦略によるため、一概には言えません。

 

ちなみに、日本企業の売上高営業利益率ランキングでトップの「アサックス」は71.08%となっています。

アサックスは不動産担保ローンを扱う会社で、商品の製造・販売など実際の「モノ」を扱う業種より、サービスを扱う業種の方が売上高営業利益率は高いです。

 

全業種での売上高営業利益率の平均値は3.4%となっていて、物販関係の業種ごとの平均値は以下の通りです。

・製造業:4.7%

・卸売業:1.4%

・小売業:2.7%

 

人件費や設備費用が多くかかる製造業・小売業では、全体的に売上高営業利益率が高く、その間の卸売業ではやや低めという傾向があります。

 

5.≪まとめ≫

営業利益はその企業が本業で稼いだ金額から、仕入原価や経費を引いたものです。

会社の中心的な事業が、どれだけの利益をあげているのかという指標になります。

 

売上総利益や経常利益と比較することで、本業の経営が順調かどうか、仕入れノウハウが優れているかどうかを判断できます。

今回お伝えした知識を、企業研究や経営分析をする時にぜひ役立ててみてください。

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2020/01/22 「雑所得」に含まれる収入と申告方法

雑所得には、年金・副業による収入・先物取引やFXによる収入などが含まれます。

会社員は20万円以上、その他の方は1円でも雑所得があると、確定申告が必要です。

 

今回は、雑所得の具体例や計算方法、確定申告の方法について詳しくご紹介いたします。

無申告だと追徴課税を課せられる可能性もあるので、雑所得がある方は申告方法を知っておきましょう。

 

 

1.≪雑所得とは?概要と具体例≫

雑所得とは、定義付けされた9種類の所得に含まれない、その他の所得のことです。

まずは、雑所得と他の所得の違いや、雑所得が発生する具体例などを解説していきます。

 

(1)所得の種類

所得は、その発生理由によって9種類に分類されています。

 

・利子所得:預金・貸付金などの利子

・配当所得:株式などの配当金

・不動産所得:所有する不動産から得る家賃地代

・事業所得:事業を行なって得た所得

・給与所得:会社から得た給与・賞与

・退職所得:退職金

・山林所得:所有する山林の木などを譲渡して得た所得

・譲渡所得:土地・建物・株式・会員権などを譲渡して得た所得

・一時所得:懸賞・ギャンブルの払戻金・生命保険の一時金など一度限りの所得

 

これらのどの種類にも当てはまらない所得を、雑所得と呼びます。

 

(2)雑収入・事業所得・一時所得との違い

雑所得と雑収入は、言葉は似ていますが違う意味を持っています。

 

まず雑所得とは、先にも解説した通り、定められた9つのカテゴリに含まれない所得のことです。

一方、雑収入とは、事業に関連して得た本業以外の収入のこと。例えば、事業を行う中で得た空き箱などを売却した収入や、会社のものを貸し出した時のリース料などが該当します。

この雑収入は、事業に関連しているものなので事業所得に含まれ、雑所得とは根本から異なるものなのです。

 

次に、一時所得と雑所得の違いは、一時的なものかどうか、また儲けようとして得たものどうかで判断します。

一時所得に含まれる懸賞やギャンブル等の払戻金、生命保険の一時金などは、基本的に一度限りかつ偶発的で、事業や労働の対価として得たものではありません。

 

そういった一時所得の条件を満たさず、かつ他の所得に当てはまらないものを雑所得と呼びます。

 

(3)雑所得の具体例

雑所得の具体例を挙げると、以下のようなものがあります。

 

・年金・恩給など公的年金

・副業による収入

・ネットオークションの売上金

・先物取引・FX・仮想通貨などで得た収益

・本業以外で得た原稿料・印税・講演料など

・非営業用貸金の利子

・外貨建預金の為替差益

・生命保険などの個人年金保険

・税務署等からの還付金

 

2.≪雑所得と税額の計算方法≫

それでは、雑所得と、雑所得に課せられる税額の計算方法を解説していきます。

 

(1)雑所得の計算方法

雑所得の計算方法は、公的年金とその他の雑所得で異なります。

 

・公的年金:収入金額ー公的年金等控除額=公的年金等の雑所得

・その他の雑所得:総収入金額ー必要経費=その他の雑所得

 

年金所得とその他の雑所得が両方ある場合は、この2つの合計を計算します。

 

(2)雑所得の税額は?

雑所得は給与所得など他の全ての所得と合計して総所得額を算出し、そこに所得税率をかけて税額を計算します。

所得税は累進課税制度が採用されていて、所得額が上がると税率も上がる仕組みです。

 

所得額に対する、所得税の税率一覧は以下の通り。

 

〜195万円:5%

195〜330万円:10%

330〜695万円:20%

695〜900万円:23%

900〜1,800万円:33%

1,800〜4,000万円:40% 

4,000万円〜:45%

 

ただし、雑所得のうち、先物取引によるものは申告分離課税の対象です。

申告分離課税とは、一時的に大きな金額が手に入ったとき、その分だけを所得と切り離して考えることで、実情に沿わない高額納税を避ける制度です。

先物取引で出た雑所得には、金額に関わらず一律で20.135%の税率が課せられます。

 

3.≪雑所得の確定申告はどうする?≫

雑所得が生じた場合には、一定の場合をのぞいて確定申告が必要です。

雑所得の確定申告が必要なケースや、具体的な申告方法を解説していきます。

 

(1)20万円以下なら申告不要?

「20万円以下の雑所得なら、申告不要」という話を聞いたことがある人も多いと思います。

 

しかし、これが適用されるのは、サラリーマンなど会社から給与所得を得ている人のみです。

例えばサラリーマンが副業をしたり、ネットオークションで物を売ったりして雑収入を得た場合なら、その金額が年間20万円以下なら確定申告の必要がありません。(ただし、住民税の申告は所得の金額の大小に関係なく必要になります。)

それ以外のフリーランスや主婦/主夫などの方は、雑収入が20万円以下であっても確定申告が必要です。

 

また、給与収入を得ている場合でも、年収が2,000万円以上の方、会社で年末調整を受けていない方は確定申告を行います。

 

(2)申告免除でも住民税申告が必要なケースとは

雑所得が20万円以下で、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は必須です。

なぜなら、所得税を納めるのは国、住民税を納めるのは地方自治体で、それぞれ申告要件が異なるためです。

雑所得が20万円以下で所得税の申告が不要だからといって、住民税の申告を行わないと、無申告と見なされてしまいます。

 

雑所得が20万円以上あり所得税の確定申告を行なった場合には、そのデータが住民税の計算にも流用されるため、改めて申告する必要はありません。

 

(3)認められる必要経費・認められない必要経費

必要経費とは、その所得を得るために必要な経費のことです。

 

例えば、商品を仕入れ、ネットショップで販売して収入を得ているなら、

・商品の仕入れ代金

・ネットショップのシステム利用料

・ラッピングや送料

・通信費

・交通費

・パソコンやスマートフォンの購入費

・家賃や倉庫の賃料

・賃貸物件を維持するための光熱費

・販促費・広告費

・業務のための借入金の利息

などが必要経費と認められます。

 

ただし、自宅で業務を行なっている場合、部屋・パソコン・通信費・光熱費などはプライベートで使うこともあるでしょう。

その場合は家事按分といって、それらを業務に使用している面積・時間などの割合をかかった金額にかけたものが必要経費として認められます。

 

完全にプライベートで使った費用や、確定申告で所得控除の対象となる生命保険などは必要経費として認められません。

雑所得の金額は、稼いだ総額ではなく、総額からこれらの必要経費を差し引いて計算します。

 

(4)雑所得の申告方法の具体例

それでは具体的な雑所得の申告方法を、ケース別に解説していきます。

 

①サラリーマンの副業

サラリーマンが副業で20万円以上の雑所得を得ている場合、確定申告が必要です。

 

まず、副業で得た収入の総額から必要経費を差し引き、雑所得の金額を算出します。

所得が給与所得と雑所得のみの場合は、確定申告書Aを使い、源泉徴収票と帳簿を参考にして収入金額と所得金額を書き込みましょう。

 

副業をしていることを会社に知られたくない場合には、会社に住民税の通知が届かないよう第二表にある「住民税に関する事項」の「自分で納付」に〇をつけて提出します。

 

②オークションやフリマなどの収入

ネットオークションやフリマを利用して収入を得た場合、課税対象にならない取引もあります。

それは、生活用動産の売買です。

 

生活用動産とは、生活に必要な動産(不動産以外の財産)うち、30万円以下のものです。

家具・衣服・書籍・自動車・安価な貴金属などの取引は非課税となるので、20万円以上の所得があっても確定申告の必要はありません。

 

一方、30万円以上の高級品を売却した場合は、その所得を雑所得として確定申告する必要があります。

確定申告の方法は上記で説明したサラリーマンのケースと同様で、給与所得がなく雑所得のみの場合には、該当する項目にだけ記入します。

 

③確定申告に必要な書類

確定申告書はAとBの2種類です。

その年に得た所得が、給与所得・雑所得・総合課税の配当所得・一時所得のいずれかの場合は、確定申告書Aを使用します。他に事業所得・山林所得・不動産所得などがある場合には、確定申告書Bを使用します。

 

他に確定申告に必要な書類は、以下の通りです。

・本人確認書類

・所得を証明する書類(源泉徴収票・支払調書など)

・控除を受けるための書類

 

4.≪雑所得の確定申告を行うメリット≫

雑所得の確定申告を行うメリットは、払いすぎた税金が還付される可能性があることです。

副業でも、支払い元が所得税を源泉徴収している場合があり、その場合は払いすぎた所得税が戻ってきます。

 

また、雑所得は確定申告をしない場合のリスクが大きく、税務署に無申告がバレてしまうと追徴課税が課せられる可能性があります。

追徴課税の税率は重く、実際に支払うべきだった税額よりかなり余計な出費になってしまうため、雑所得があった場合には正直に申告しておいた方がいいのです。

 

5.≪まとめ≫

雑所得は、定められた所得のカテゴリに当てはまらない、年金・副業・先物取引などで得た所得のことです。

年末調整を受けているサラリーマンは、雑所得が20万円以下であれば確定申告の必要がありませんが、その他の方は雑所得の金額がいくらでも申告をする必要があります。

 

また、所得税の確定申告が必要ない方も、住民税の申告は必須です。

無申告の場合は重い追徴課税が課せられることもあるので、雑所得を得た方は申告を忘れないようにしましょう。

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