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2019/12/11 法人税等とは?「法人税等調整額」の取り扱いも解説

損益計算書や賃借対照表で用いる、「法人税等」という言葉。

法人税や、それに類する税金を表すことは予想できますが、具体的に何が含まれているのか知っていますか?

今回は、法人税等に含まれる税金や、会計処理上の扱いについて解説します。

古殿
古殿
ほぼ全ての企業で毎年必要になる作業なので、法人税等の仕訳や処理方法を知っておきましょう!

 

1.法人税等とは?

企業の経理業務には、「法人税等」という言葉が登場します。

文字通り「法人税や、それに類するもの」という意味ですが、具体的にどんなものが法人税等に含まれるのかはご存知ですか?

 

法人税等には、以下の3つの税金が含まれています。

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

1.法人税

2.住民税

3.事業税

「法人税等」というくらいなので、当然法人税等のメインは法人税です。

法人税は会社の所得に対して課税される税金で、個人事業主における所得税にあたります。そのため、「法人所得税」と呼ばれることもある税金です。

法人税の税率は法人の区分や所得金額により異なり、所得金額が高くなるほど税率も上がる「累進課税制度」が採用されています。

 

国に対して納める国税で、法人税等に含まれる税金の中では唯一の国税となっています。

法人税等に含まれる税金2つ目は、住民税です。法人税等に含まれる住民税は、個人のものと区別するために「法人住民税」と呼ばれることもあります。

 

法人住民税は法人が事業所を置く市区町村に納付する税金です。法人税が国税なのに比べ、こちらは地方税。

法人住民税には2種類あり、法人税額よって金額が変わる「法人税割」と、資本金の額などに応じて金額が決まる「均等割」の2つの合計金額を支払います。

法人税割は、赤字だった年など法人税がかからない場合は支払いが発生しませんが、均等割は赤字の場合でも支払い義務があります。

事業税は法人が事業を行うにあたって利用している、道路や港湾、消防、警察といった公共施設・公共サービスの費用を負担するための税金です。

 

法人税と同じく所得金額に対して課税されますが、納める先は国ではなく地方自治体の地方税です。

資本金が1億円以上の法人の場合は、所得に課税される「課税割」だけではなく「付加価値割」「資本割」も加わります。

ただし、このうち法人税等に含まれるのは所得割のみ。付加価値割と資本割は、法人税等ではなく「販売費および一般管理費」に計上します。

 

(4)租税公課との違い

法人税等と似た勘定科目に、「租税公課」というものがあります。

 

租税公課とは、その名の通り「租税」と「公課」、国や地方自治体に納める税金や、国・地方公共団体・その他団体などから課せられる会費・組合費・賦課金・罰金などを計上する科目です。

損益計算書上では、「販売費および一般管理費」という部に属しています。

 

しかし、法人税等に含まれる法人税・住民税・事業税の課税割は、租税公課には含まれません。法人税等は、損益計算書上「法人税、住民税および事業税」という部となります。

古殿
古殿
なぜなら、法人税等は所得の中から支払われる税金で、損金算入できないためです。

 

(5)法人税等は消費税の課税対象外

課税売上高が1,000万円を超える法人には、消費税の支払いが発生します。

消費税は税金の中でも「間接税」といい、顧客や取引先が商品の購入に際して支払った消費税を法人が一旦預かり、それをまとめて納付するものです。

 

先にも触れましたが、法人税等は所得の中から支払われる税金なので、消費税の課税対象にはなりません。

消費税の課税所得を算出する際には、法人税等の金額を除いて計算します。

 

2.法人税等の申告について

法人は1年分の法人税等を、「中間申告納付」と「確定申告納付」の2回に分けて納付します。

 

法人税等はその法人の1年分の所得に対して課税されるため、1年の営業が終わってみないと具体的な納税額が確定しません。そのため、まず中間申告では「前事業年度の法人税額÷12×6」、つまり前事業年度に支払った法人税の半額を支払います。

中間申告納付を会計処理する際は、「仮払法人税等」という勘定科目を使います。

その後、1年分の所得金額がわかった上で「確定申告納付」を行い、残りの法人税等の正確な金額を算出します。

法人税等の金額が確定したら、会計処理で「仮払法人税等」の金額を、「法人税等」の科目に振り替えます。

 

3.法人税等の調整額とは?

会計上の利益と法人税の課税所得にズレがある場合、法人税法が定める方法で所得を再計算し、法人税等の調整を行います。

その場合に発生するのが、法人税等調整額です。

 

(1)法人税等調整額の見方

「法人税等調整額」という科目は、損益計算書の「法人税等合計」の内訳にあります。

「法人税、住民税および事業税」から「法人税等調整額」を引いた金額が、実際の法人税等の支払い金額となります。

 

(2)企業会計と法人税のズレを調整

なぜ法人税等調整額が必要になるかというと、法人税法上の所得の計算ルールと、一般的な企業の利益の計算ルールが同じではないため。

一般的な利益の計算方法で企業の所得を算出すると、法人税等が過剰または過少になってしまうケースがあるのです。

 

そういった場合に、「税効果会計」という作業を行なって法人税等調整額を算出し、「法人税、住民税および事業税」の金額に加算・減算します。企業会計上と法人税のズレを解消するために使用する科目が「法人税等調整額」であると言えます。

税効果会計の対象になるのは、「貸倒引当金繰入超過額」「減価償却費」「退職給付引当金」「賞与引当金」「繰越欠損金」といった将来解消される見込みのある一時差異のみです。

 

4.法人税等の仕訳計上のポイント

先に触れたように、法人税等は「中間申告納付」「確定申告納付」と年2回に分けて納付します。

そのため、法人税等を仕訳計上する際は、「仮払法人税等」「未払法人税等」という勘定科目を使って処理します。

 

まず、前年分の法人税額をベースにして、中間申告で納付すべき法人税等が50万円と計算された場合。

【借方】仮払法人税等 500,000円【貸方】現金 500,000円

 

次に、1年間の営業利益が昨年分より増えたため、確定申告で納付すべき法人税等が110万円だとわかった場合。

110万円のうち、50万円は先に支払っているので、以下のように仕訳を行います。

【借方】法人税等 1,100,000円

【貸方】仮払法人税等 500,000円

    未払法人税等 600,000円

 

最後に、法人税等の残りを現金で納付した場合、仕訳は以下のようになります。

【借方】未払法人税等 600,000円【貸方】現金 600,000円

 

古殿
古殿
このように、法人税等の納付に際しては、中間申告・確定申告・納付時の3段階に分けて仕訳を行うことになります!

 

5.まとめ

法人税等には「法人税」「住民税」「事業税」の3つの税金が含まれます。他の税金を計上する「租税公課」とは分けて考え、所得から支払う税金のため消費税の課税対象にもなりません。

 

法人税等の納付は中間申告・確定申告の2回に分けて行い、会計処理は「仮払法人税等」「未払法人税等」という勘定項目を使って3段階に分けて仕訳。

古殿
古殿
少し複雑な作業が必要ですが、ほぼ全ての法人で毎年必要な処理となるため、経理担当者・経営者の方はしっかり把握しておきましょう。

 

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2019/12/04 税務調査とは?調査の流れや必要な準備を解説

税務調査は、税務署が各会社の申告・納税状況が正しいかどうかチェックする調査のことです。

毎年約20万件の調査が行われ、中小企業は平均で5年に1回程度の頻度で税務調査を受けます。

今回は、税務調査とはどういった内容なのかや、その流れについて解説します。

税務調査に備えて、きちんと準備をしておけるようにしましょう。

古殿
古殿
税務調査は「交渉」が最も重要になります。よって、依頼している税理士によって結果が変わることもあり、税務調査は信頼できるプロの税理士に依頼するようにしましょう!

 

1.税務調査とは?

税務調査とは、法人・個人事業主・個人などが、正しく納税を行なっているかどうか調査すること。

税務に関する帳簿や書類を確認し、申告通りの内容になっているかどうかを調べます。

実施される税務調査の数は、年間約20万件。毎年、全法人の6%程度が税務調査を受けることになります。

 

2.税務調査で実際に行われること

それでは、実際の税務調査ではどのようなことが行われるのかを見ていきましょう。

 

(1)調査方式は「任意」と「強制」の2種類

税務調査には、任意調査と強制調査の2種類があります。

任意調査

脱税の疑いなどがない場合に行われる税務調査。任意調査の場合は事前に連絡が入り、日付を決めて調査が行われます。税務の実情が申告通りなら、特に問題ありません。

ただし、税務調査の場で調査官から質問を受け、それに虚偽の答えをしたり黙秘をしたりすると、罰則が課せられる場合があります。

強制調査

脱税の疑いがある場合、強制調査が行われます。強制調査を行うのは、税務署ではなく「マルサ」とも呼ばれる国税局査察部です。「脱税の隠蔽工作が悪質なこと」「脱税額が1億円を超えること」が強制調査の条件となっています。

裁判所の令状を持って、事前連絡はなく直接現場に踏み込み、帳簿などの証拠を差し押さえます。

 

(2)事前に行われる準備調査の内容

税務調査とは、任意調査でも強制調査でも、対象の事業所に出向いて実際に帳簿などを見聞することをいいます。

実は、税務署の調査官は、実際に税務調査を行う前に「準備調査」を行い、当日にチェックするポイントなどを定めてきています。

準備調査には、「内偵調査」と「外観調査」の2種類があります。

内偵調査

飲食店や小売店などに、調査官が客を装って来店すること。レジ打ちの有無・客数・客単価・従業員数などを事前にチェックし、税務調査の日に帳簿の内容と実情が合致しているかを調べるために行います。

外観調査

外観調査は、社長の自宅や会社の事務所、所有している土地などの状況を事前に確認する調査です。

例えば、社長が自宅の修繕工事などを行なっていた場合、税務調査の時にその金額を会社の帳簿に計上して公私混同をしていないかを調べます。

 

(3)実地調査で調べられること

税務調査当日、会社の中で行う調査を実地調査といいます。

実地調査では、主に帳簿を中心にチェックが行われます。

  • 総勘定元帳
  • 現金預金出納帳などの補助元帳
  • 会計伝票、給与台帳
  • 預金通帳
  • 領収書、請求書などの証拠書類
  • 各種契約書

 

これらの帳簿の内容が、調査官が持参している過去の申告内容と合っているかどうか照らし合わせる作業です。

場合によっては、帳簿調査の他に現況調査が行われることもあります。

現況調査とは、現物の資産を実際に調査すること。金庫やレジを開けて抜き打ち調査し、そこにある現金と現金出納帳の金額が合致しているかどうかなどを調べます。

 

また、調査官には質問検査権があるため、帳簿の内容や申告状況について質問を行います。

先に触れましたが、虚偽や黙秘には罰則が課せられるため、税務調査に立ち会う担当者は、これらの質問に間違いなく適切に答えなければいけません。

 

顧問税理士がいれば、社員に代わって質問に答えたり、経費の使い方等について説明したりすることもあります。

そのため、税務調査には会社の顧問税理士が立ち会うのが基本です。

※ワンポイント

税務調査は「交渉」が最も重要になります。よって、依頼している税理士によって結果が変わることもあり、税務調査は信頼できるプロの税理士に依頼するようにしましょう。税法の解釈などのプレゼンテーション、税務調査の経験が重要となります。素人の方が自分一人だけで対応すると、納める必要のなかった税金を負担することになるケースもあります。税務調査はプロの税理士に必ず依頼すべきです。

 

(4)事前連絡あり?税務調査の流れ

任意調査の場合、税務調査が行われる2週間ほど前までに、税務署から会社または顧問税理士に連絡が入ります。

日付も指定されますが、その日に都合が悪い場合は日付をずらすことも可能です。

 

強制調査の場合、証拠を隠滅される恐れがあるため事前連絡はありません。

とはいえ、強制調査は相当悪質なケースでない限り行われることはないため、一般的な企業は気にする必要はないでしょう。

 

調査当日は、当日10時ころ、調査官が事業所を訪れて調査が始まります。

調査官の人数は、中小企業の場合、1名か2名のことが多いです。質問への受け答えや帳簿の説明、対応のアドバイスなどをしてもらうため、税理士にも立ち会ってもらうのが安心です。

 

税務調査にかかる時間は、法人の場合、基本的には2日間で実施され、1日あたり6〜7時間となります。特に問題がなければ、それより早く終わることもあります。

規模の小さい会社で、特に問題がなければ調査は2日間で終了します。大企業や何か問題が見つかった場合は、3〜5日続けて調査が行われることも中にはあります。

 

3.法人を対象とした税務調査は5年に1回

法人を対象とする税務調査では、主に法人税・消費税に関わる財務状況がチェックされます。

 

(1)法人への税務調査の頻度

税務調査をどのくらいの間隔でするといった決まりは、特にありません。

会社の規模・業績・業種などによって、税務署側が一社ごとに調査周期を決めています。

ほぼ毎年行われたり、20年以上も行われなかったりと様々です。

一般的な中小企業では、多くても3年に1回。5年に1回ほどが平均的な頻度と言われています。

 

1回の税務調査で3年分の帳簿を調査するため、新規起業の会社は3年目から税務調査が入りやすくなります。

古殿
古殿
ただし、1年目から大幅な黒字が出るなど、税務署が注目するポイントがあると、起業まもない会社にも税務調査が入ることがあります!

 

(2)税務調査が入りやすい会社の特徴

税務調査が入りやすい会社は、「脱税の疑い」とまでは言わないまでも、脱税をしやすい、またはしている可能性が疑われる会社という見方もできます。

具体的には、以下のような会社が条件に当てはまります。

  • 現金を扱う業種
  • 売上が急増している
  • 売上の伸びと利益の伸びが比例していない
  • 粗利の変動が大きい
  • 売上の伸びに対して人件費の伸びが大きい
  • 支店や店舗が増えているのに売上が伸びていない
  • 代表者の報酬が多すぎる
  • 代表者が、報酬額に比べて高価すぎる買い物をしている

 

また、大きな会社ほど脱税額も大きくなるので、規模の大きい会社に優先的に税務調査が入りやすいです。

また、赤字の会社も、粉飾決算で黒字を赤字に見せている疑いがある場合、税務調査が入る場合があります。

とはいえ、税務調査が行われる絶対的な規則性はなく、3~5年に1回は税務調査が実施されると考えたほうがいいでしょう。

 

(3)税務調査に必要な準備・ポイント

税務調査が入るという連絡があったら、過去3年分の帳簿や財務に関する書類を整理し、調査官に見せられるようにします。

具体的に、準備する書類は以下のものがあります。

売り上げに関する書類

  • 請求書
  • 見積書
  • 受注書の控え
  • 総勘定元帳
  • 小切手の控え
  • 売掛帳など

仕入や経費に関する書類

  • 買掛帳
  • 支払い領収書
  • 請求書
  • 納品書
  • 発注書など

その他の書類

  • 法人税の納付書控え
  • 源泉所得税の納付書控え
  • 資産関係の契約書
  • 現金残高のわかる通帳
  • 手形帳など

雇用に関する書類

  • 源泉徴収簿
  • 扶養控除申告書
  • 出勤簿やタイムカード
  • 雇入関係書類
  • 退職給与受給申告書など

 

古殿
古殿
当日の調査中に、3年以上前の帳簿を見せるように求められる場合もあるため、保管義務のある書類はできるだけ整理しておきましょう!

 

また、当日の質問では、一見調査に関係のない、経営者の私生活について聞かれることもあります。

例えば、最近の買い物、旅行、乗っている車、子供の学校や習い事などについて。これは単なる世間話ではなく、暮らしぶりから脱税の疑いがないかどうか判断しようとしています。

余計なことを話すと疑いを深められてしまう可能性があるため、聞かれた以上のことは答えないのが税務調査時のポイントと言ってもいいでしょう。

 

4.税務調査は個人も対象になる

税務調査は個人が対象になることもあります。

個人の税務調査の場合、主に相続税がチェックされ、申告件数全体の25%~30%に対して調査が行われます。

 

ちなみに、調査対象はランダムに決まるわけではなく、申告書の内容から、漏れや誤りがある可能性が高い人が選ばれています。

個人の場合、法人のように帳簿付けは行なっていないため、主に預金・金融資産・不動産・保険や、相続者の収入状況などが調査の対象となります。

 

もちろん、個人事業主に対しても税務調査は行われます。

消費税も納税している課税事業者であれば、基本的には、税務調査は定期的にあるものだと考えていいでしょう。昨今では、建設業や不動産事業の業種に調査が多い傾向があります。

古殿
古殿
景気によって業績が上がっている事業者の方が多いこと、調査による税務署の否認統計がこれらの業種に多いことが影響していると考えられます。

 

5.税務調査のその後の流れとは

税務調査の結果は、調査が行われた約1週間〜数ヶ月後に出ます。

調査官が何も問題がなかったと判断すれば、その通知をもって税務調査は終了となります。会社側が行う手続き等は、特にありません。

 

税務調査で問題が見つかり、指摘事項がある場合は、調査結果の内容や指摘について税務署が説明を行います。

指摘事項に不服があれば、会社側は異議申し立てや訴訟を行うことができます。

 

最後に、税務調査で問題があり、税務署が修正申告を求める場合。修正申告を行うと、過去の申告の誤りを認めたことになり、税金の追納が必要になります。

修正申告を行なった後では、内容に不服があっても異議申し立てができないため、顧問税理士によく相談してから修正申告を行いましょう。

 

6.まとめ

税務調査とは、各会社が正しく申告や納税を行なっているかどうかをチェックするための調査のこと。

年間20万件、前企業の6%が調査を受けることを考えると、あなたの会社にいつ税務調査が回ってきても不思議ではありません。

繰り返しになりますが、税務調査は「交渉」が最も重要になります。よって、依頼している税理士によって結果が変わることもあり、税務調査は信頼できるプロの税理士に依頼するようにしましょう。

古殿
古殿
もちろん調査の有無に関わらず、脱税はいけないことですが、税務調査に常に備えて正しい帳簿付けと申告を行うようにしましょう。

 

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2019/11/27 給与計算でミスが発覚!ミスを防止するための対策とは?

社員の生活に直結する給与計算は、決してミスが許されない作業。しかし、人が行う仕事にはどうしてもミスが付きものです。

今回は、給与計算にミスが発覚した時の対処方法をご紹介いたします。

速やかに正しい対応をして、ミスの影響を最低限に抑えましょう。

古殿
古殿
給与計算のミスが起こらないよう、予防する方法やミスが起こりやすいポイントも解説します。

 

1.給与計算のミスによって起こる問題

給与計算のミスによって起こる問題は、多岐に渡ります。

大きなものでは、社員に不信感を抱かせる、会社の信頼が失墜するなど、心理面の問題です。給与が本来の額より少なければ誰でも嫌な気持ちになりますし、逆に払いすぎていた場合は本人も知らない間に横領をさせてしまうことになります。

 

また、給与計算のミスが相次いだり、税金・保険料のミスを放置したりして脱税の疑いをかけられてしまった場合、会社自体の評判も悪くしてしまいます。

さらに、ミスをしてしまうと、給与計算の担当者の査定にも響くでしょう。

 

他に給与計算のミスは、実務面にも影響を及ぼします。

  • 訂正業務が必要
  • 税金・保険料の追徴・訂正申請が必要なことも

 

気持ちの面で申し訳ない以上に、給与計算のミスのせいで余計な業務が増えて、他の仕事を圧迫してしまうのです。

古殿
古殿
他にも、給与計算に用いる社員の個人情報漏洩などのリスクも考えられます!

 

2.給与計算でミスに気付いた時の対応

それでは、実際に給与計算のミスに気づいたら、どのように対応すればいいかを解説していきます。

 

(1)本人に通知・お詫びをする

給与計算のミスに気づいたら、何より先に本人に通知・お詫びをします。

嘘をついたり、誤魔化そうとしたりすると、嘘が嘘を呼んで余計に大きな問題に発展しかねません。給与計算のミスがあった社員本人に、給与計算にミスがあった事実と金額の過不足を伝え、誠実に謝罪しましょう。

古殿
古殿
システム上の問題などで大人数にミスがあった場合には、正しく事実が伝わるよう謝罪文を作成・配布してもいいでしょう。

 

(2)正確な給与明細を作り直す

本人への謝罪が済んだら、正確な給与明細を作り直します。

ミスをすると「早く訂正しなければ」と焦ってしまいがちですが、ここでもミスがあるとさらなる問題を引き起こしかねません。迅速性も大切ですが、入念にチェックをして正しく給与計算し直しましょう。

 

(3)なぜミスが起きたのかを説明する

ミス発見時、または訂正をする際に、ミスの原因が浮かび上がるはず。

どこがどうして間違ってしまったのかを本人に説明し、再度謝罪しましょう。

複数人で給与計算を行っている場合は、ミスの原因をチームに共有するのも大切です。

 

(4)過不足の修正

正しい給与明細に基づいて、給与の過不足を清算します。

払いすぎていた場合

不足していた場合

給与計算でミスをして多く払いすぎていた場合、従業員から過払い額を払い戻してもらう必要があります。

手渡し・振込どちらでも問題ありませんが、過払い分ときっちり同額を受け取り、金額を明記した領収書を渡しましょう。

 

従業員がスムーズに対応すれば事を荒立てる必要はありませんが、払い戻しを渋るような場合は「不当利得返還請求権」で過払い分を請求することになります。

会社側のミスで給与が多く支払われたのだとしても、受け取った従業員は会社に不利益を与えたということになってしまうのです。

 

もし、それでも返還しない、過払いに気付いていたのに長期間に渡って申告しなかったなど悪質な場合には、社内対応の枠を超えて警察や弁護士に相談することになります。

給与の支払額が不足していた場合は、速やかに不足分を支払います。

支払い方は、普段給与を支払っている方法と同じでいいでしょう。

正しい給与明細と、不足分の支払いを本人に確認してもらい、金額を明記した領収書を受け取ります。

 

(5)翌月給与での相殺は違法?

過払い分・不足分が少額なら、翌月の給与に足し引きして相殺すればいいと思うかもしれません。

しかし、それは「賃金全額払いの原則」に違反してしまう対応です。結果は同じになるとしても、原則的には給与は給与、過不足分は過不足分として対応します。

特に不足がある場合は、当月中に速やかに不足額を支払うようにしましょう。

 

ただし、過払いの場合には翌月調整も可能です。

労使協定に「ミスがあった場合には翌月に調整する」という文言がある場合や、本人と話し合って同意が得られた場合には翌月以降に過払い分を相殺しても問題ありません。

 

3.給与計算でのミスが起きやすいときとは

それでは、給与計算のミスが起こりがちなのはいつなのか、タイミングや注意点を解説していきます。

 

(1)異動や年齢によって項目が変化したとき

給与計算のミスが発生するのは、給与額や保険に何らかの変更があったとき。

異動や昇進などで給与額・支払い方法に変更があると、変更忘れや入力間違いでミスが起こりやすくなります。

 

また、社会保険料・雇用保険料が変わる年齢でも、ミスが起こりやすいです。

  • 40歳:40歳になる誕生月より、介護保険料の徴収開始。
  • 64歳:雇用保険料の免除開始。4月1日時点で64歳以上の人が免除対象。
  • 65歳:65歳になる誕生月の前月で、介護保険料の特別徴収終了。

 

(2)税額や保険料が改定されたとき

給与収入にかかる税額や保険料は、頻繁に改正されます。

この改正に対応しきれず変更漏れがあると、全社に渡る大規模な給与計算ミスが起こりかねません。給与計算の担当者は、毎年の改正を注意深くチェックするようにしましょう。

 

税金・保険料の改正タイミングは、以下の通りです。

  • 健康保険料:毎年3月
  • 雇用保険料:毎年4月
  • 住民税額:毎年6月
  • 厚生年金保険料:毎年9月

 

(3)月途中の入社・退社があったとき

月途中に入社・退社した社員は、給与の日割り計算が必要になります。この計算を忘れて、ひと月分払ってしまった、または払わなかったというのは、起こりうるミスです。

日割り計算の方法も会社の就業規定によって異なるので、よく確認する必要があります。

 

さらに、入退社時は保険の手続きも複雑です。

入社時、雇用保険料は当月から、社会保険料は翌月から控除を始めます。月の途中で退職した場合、退職月分の社会保険料は掛かりません。

 

(4)イレギュラーな支給があったとき

臨時の賞与・祝い金・見舞金などイレギュラーな支給があったときも、給与計算のミスが起こりやすいタイミング。

支給自体は正しく支払っても、税金や保険料の課税対象になるかどうかで納めるべき税額・保険料が変わり、正しく納付できない可能性があります。

 

4.給与計算でミスをなくすための対策

最後に、給与計算のミスをなくすための防止策について考えていきましょう。

1.給与計算のルールを見直す

ミス防止の基本は、給与計算のルールを見直すこと。給与計算の担当者が変わるときにも同じルールで引き継げるよう、誰が見てもわかりやすい資料を整備しましょう。

欠勤控除、日割計算の算出法など曖昧になりがちな部分も、賃金規定を確認して正しい方法で行う必要があります。

また、交通費や扶養控除の不正を防止するため、定期的に社員情報をアップデートするのも大切です。

2.ミスしやすいポイントを押さえる

給与計算でミスをしやすいポイントは、先に触れたように給与に何らかの変更があるタイミング。

社会保険が変わる年齢の社員や、入退社・異動があった社員を事前にリストアップしておけば、ミスしやすいポイントを重点的にチェックできます。

3.ダブルチェック体制を導入

人の手で行う作業には、入力間違いなどのミスが付き物です。そして、自分のミスには自分ではなかなか気づくことができません。

給与計算は一人に任せるのではなく、複数人で行なうダブルチェック体制を導入しましょう。

ただし、チームで給与計算を行う場合、ルールの周知や作業の進捗など情報共有をしっかりしていく必要があります。

4.給与計算ソフトや専門家に代依頼

給与計算のミスは、入力間違い・計算間違いといったヒューマンエラーで起こるケースが最も多いです。

そのため、給与計算はソフトを用いて、できるだけ自動化するのがおすすめです。

もしくは外部業者に給与計算を委託すれば、専門家が正確に給与計算をしてくれる上、自社で経理スタッフを雇う必要がなくなり人件費の節約にも繋がります。

 

5.まとめ

給与計算のミスは、社員のモチベーション低下や会社の信頼失墜に直結する問題。できるだけミスを防止し、万が一ミスがあった場合には速やかな対応が不可欠です。

給与計算のミス防止には、ミスが起こりやすいタイミングを知ることが大事です。

古殿
古殿
ソフトで自動化したり、給与計算自体を外注したりすることで、ミスをなくしてスムーズに会社を運営することができますよ!
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2019/11/20 給与計算の実務に資格は必要?仕事の流れと代行のメリット・デメリットを解説

給与計算は税金や社会保険について様々な知識が必要な業務。そんな給与計算の実務に就くには、資格は必要なのでしょうか。

今回は、給与計算の実務の流れや、必要な知識についてご紹介いたします。

古殿
古殿
給与計算の実務能力を証明する「給与計算実務能力検定試験」、給与計算のアウトソーシングサービスについても解説します!

 

1.給与計算での実務内容は?

まずは、給与計算の実務内容をステップごとにご紹介いたします。

給与計算の実務には大きく分けて、

  • 従業員に支払う給与の算出
  • 税金・保険料を算出・納付

 

という2種類の作業があります。

 

(1)従業員に支払う給与の算出

給与計算の実務の最初のステップは、従業員一人ひとりの勤怠状況を把握すること。

労働日数・労働時間・時間外労働・遅刻や早退などの状況を確認しましょう。

 

そのデータに基づき、労働時間に対する賃金を算出します。

その後、会社ごとに定められている手当(通勤手当・住宅手当・家族手当など)を加算して、給与の支払い総額を決定します。

 

(2)税金・保険料を算出・納付

給与計算の実務には、税金や保険料を算出、天引きして支払い金額を決定するまでの作業が含まれています。

一般的なサラリーマンの場合、給与計算の際に総額から差し引く税金・保険料は以下の通りです。

  • 健康保険料
  • 介護保険料(40〜64歳の従業員のみ)
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料
  • 所得税
  • 住民税

 

社会保険料に関しては、加入している保険組合によって保険料率が定められているため、標準報酬月額に保険料率をかけて算出します。

所得税は累進課税制度が採用されているので、収入や控除の金額によって税額が変動。住民税は従業員が住んでいる自治体によって税率が異なります。

 

給与総額から税金・保険料を引いたものが、いわゆる「手取り」。これらの内容を記載した給与明細を作成し、給与支給と同時に従業員に配布します。

 

その後、台帳に支払い内容を記録し、天引きした税金・保険料の納付を行います。

古殿
古殿
支払い金額の算出以後の作業は、厳密には給与計算の実務には含まれませんが、実質的には給与計算の担当者が納付まで担当することが多いです。

 

(3)ミスが及ぼす影響は大きい

給与計算は従業員の生活に直結している実務。万が一ミスや遅れがあると、従業員に会社への不信感を抱かせてしまいます。

また、給与計算の中でも税金・保険料の計算ミスがあった場合、追徴や訂正申請が必要になります。

気づかず放置していると脱税の疑いをかけられる可能性もあり、給与計算の実務にミスがあると、会社自体に大きな影響を及ぼしてしまうのです。

 

2.給与計算前に行うべき実務

それでは、実際に給与計算を始める前に、事前準備として必要な実務を見ていきましょう。

1.従業員情報の確認

給与計算の実務を行うためには、従業員情報の確認が不可欠。給与計算や支払いには、従業員ごとに以下の情報が必要になります。

  • 給与の振込口座
  • 通勤経路と交通費
  • 扶養家族の人数
  • 勤怠管理

通勤経路や扶養家族については、申請内容次第で給与を多く受け取る不正も可能となってしまいます。そのため、従業員情報は、定期的に見直し・更新をしていきましょう。

2.支払い方法の確認

給与の支払い方法は、会社ごとに異なります。

月ごとに銀行振込という会社が多いですが、日払いや週払い、振込ではなく手渡しというケースもあるでしょう。

従業員ごとに希望の方法が違うなど、支払い方法が数種類ある場合もあるため、給与計算の実務を始める前に確認しておく必要があります。

3.労働協定の確認

就業規則や給与規定が定まっていないと、そもそも給与計算ができません。給与計算は事業開始直後から必要になる実務なので、起業の際や従業員を初めて雇い入れる前に決定しておく必要があります。

給与計算のために取り決めが必要な項目は、以下のようなものがあります。

  • 始業と終業の時刻、休憩時間の規定
  • 時間外労働・深夜労働・休日労働時間に関する割増率(法令で規定あり)
  • 会社独自の時間外計算があるかどうか(宿直手当、夜勤手当、代休時の割増率など)
  • 時間外計算の単位
  • 日割り計算の方法
  • 給与の計算方法・締め日と支払い日

また、国が定めている労働基準法についても、人事担当者や給与計算担当者が知っておく必要があります。

  

3.給与計算における実務の流れ

それでは、給与計算における実務の流れを説明していきます。

 

(1)勤怠項目・支給項目・控除項目を算出

給与計算には、大きく分けて3つの項目が関わってきます。

  • 勤怠項目
  • 支給項目
  • 控除項目

 

給与計算の大まかな計算式は、「勤怠項目+支給項目−控除項目」です。

勤怠項目

勤怠項目というのは、実際の労働時間に関して支払う賃金のことです。

勤怠項目には「基本給」「時間外手当」の2種類があり、時間外手当は労働基準法で定められた割増率で計算します。

支給項目

支給項目は、労働時間に関わらない手当などのことです。通勤手当や家族手当、住宅手当など、会社によって規定が違います。

従業員一人ごとに、該当する手当を加算します。

控除項目

控除項目は税金や保険料など給与総額から差し引くもの。

社宅の家賃や制服代、食事代なども、給与から天引きしている場合は控除項目に当てはまります。

 

(2)支払い業務

給与総額から控除項目を引き、支払い金額が確定したら支払い業務を行います。

給与計算の根拠となったデータから給与明細を作成し、支払いと共に配布しましょう。

決定した額を、振り込み・手渡しなど決められた方法で従業員に支払うのみなので、実務自体が難しいというわけではありません。

しかし、実際にお金が動く作業なので、間違いが許されない部分でもあります。

 

(3)支払いの後処理

従業員の給与は、もちろん支払って終わりではありません。支払いの記録を後に残せるよう、賃金台帳を記入して保管します。

また、従業員の給与から天引きした税金・保険料を納付する作業も給与計算担当者が行うことが多いです。

 

(4)給与計算の年間スケジュール

給与計算の実務は、毎月の支払い金額算出だけではありません。

給与計算の実務に関わる年間スケジュールを、月ごとにまとめてみました。

 

1月:税務署に法定調書を提出、市区町村に給与支払報告書を提出

2月:特になし

3月:4月の新規採用者・異動者の給与決定、4月に64歳以上になる従業員を把握(雇用保険料が免除となるため)

4月:新入社員・異動社員の給与設定、税率・保険料に改定があれば変更を反映

5月:4月に入社した社員の社会保険料控除開始

6月:住民税の新年度控除額を登録、賞与の計算(6月に賞与支給がある場合)

7月:労働保険の年度更新(保険料計算)、社会保険は算定基礎届提出、4月昇給者の随時改定(月額変更届)

8月:4月昇給による随時改定者の社会保険料改定

9月:厚生年金保険料率の変更(変更後の保険料が控除されるのは10月に支払う給与から)

10月:7月に算定基礎届を提出した社員の社会保険料改定

11月:年末調整の準備(社員に案内し、必要書類を配布する)

12月:賞与支給、年末調整実施

古殿
古殿
給与計算には保険や税金が関わっているので、年間スケジュールもそれに伴うものが多くなっています。

 

4.給与計算の実務には資格が必要?

給与計算の実務に資格なスキルをご紹介致します。

 

(1)専門性の高い仕事だが資格は不要

給与計算の実務は専門性の高い仕事ですが、特別な資格は必要ありません。

自社内で給与計算を行なっている会社では、経営者や経理スタッフ、人事スタッフなどが行なっているケースが多いです。

 

(2)税務・労務の知識が必須

給与計算の実務には、税金や社会保険の幅広い知識を用います。さらに手当や就業規定は会社によって異なるため、会社内部の知識が不可欠です。

また、従業員の個人情報を扱う仕事のため、コンプライアンスもしっかりした人材が担当する必要があります。

そのため、資格が必要ないとは言っても、給与計算の担当者にはしっかりと教育や研修を行なった方がいいでしょう。

 

(3)実務能力検定試験とは?

給与計算は資格がなくても担える業務ですが、民間の検定で「給与計算実務能力検定試験」というものがあります。

これは、その名の通り給与計算に関する知識を問い、給与計算の実務能力を証明する試験です。

 

検定には1級と2級があり、試験は年2回。自社社員に検定を受けさせることで知識が身につくため、会社負担で経理スタッフに資格取得を求めるケースも多いです。

古殿
古殿
また、給与計算はどの会社でも必ず発生する実務なので、経理スタッフの就職・転職にも役立つ資格となっています。

 

(4)給与計算代行のメリットとデメリット

給与計算は自社内で行う以外に、税理士や社労士にアウトソーシングするという方法もあります。

給与代行サービスを利用するメリット・デメリットは以下の通り。

 

メリット

  • 専門家による正確な給与計算
  • 自社内の業務負担を減らせる
  • コスト削減になる場合も

 

デメリット

  • コストがかかる
  • 自社内に給与計算のノウハウが育たない
  • 情報漏洩のリスクも
古殿
古殿
メリット面とデメリット面をよく比較して、自社に必要なサービスを取り入れてみましょう。

 

5.まとめ

給与計算の実務には、複雑な税金・保険の知識が不可欠です。

特に資格が必要な仕事ではありませんが、実務能力を証明する「給与計算実務能力検定試験」という検定があります。

古殿
古殿
自社内で給与計算が難しい場合は、給与計算の代行サービスも検討してみてください!

 

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2019/11/13 給与計算での社会保険の算出方法は?代行のメリット・デメリットも解説

給与計算では、会社側が従業員の給与総額から社会保険料を算出して天引きします。

万が一の時に労働者の生活を守る、大切な社会保険料。全部で5種類ある社会保険の種類と制度、税率や計算方法を知っておきましょう。

古殿
古殿
給与計算を外部の社会保険労務士にアウトソーシングするメリットもお伝えしていきます。

 

1.給与計算における社会保険とは?

毎月の給与計算では、給与総額から会社が社会保険料を差し引き、従業員への支払い金額を決定します。

給与計算で社会保険料を算出する方法を知る前に、まずは社会保険の意義や種類といった基礎知識から知っていきましょう。

 

 

(1)社会保険とは

社会保険とは、労働者が退職した時や病気になったとき、そして、老後に生活を保証するためにある保険制度です。

被保険者がケガや病気、解雇や倒産などで収入がなくなった時に給付されます。

 

保険料は本人と所属している会社が折半で支払い、本人の負担分は毎月の給与計算で会社に天引きされます。

 

(2)社会保険の種類

一般的な社会保険には、以下の5種類があります。

  • 健康保険:病院の治療費や薬代が3割負担になる
  • 厚生年金保険:加入者が65歳以上になると年金が給付される
  • 介護保険:介護される立場になった時、1〜2割負担になる(支払いは40歳以上)
  • 雇用保険:失業した際、失業給付金が給付される
  • 労災保険:仕事が原因で起きたケガ・病気・障害・死亡等を保障する

 

狭義には、「社会保険料」というと、上の3つの健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料のことを指します。

その場合、雇用保険料と労災保険料はまとめて「労働保険料」と呼ばれます。

 

(3)社会保険の対象者は?

社会保険の対象者は、社会保険の種類によって異なります。

 

健康保険:会社に所属する75歳以下の役員・正社員・下記要件を満たすパート・アルバイト。

  • 2ヵ月超の雇用見込み
  • 週の労働時間数が正社員の4分の3以上
  • 月の労働日数が正社員の4分の3以上

 

また、501人以上の事業所では、パート・アルバイトの加入要件が異なります。

  • 1年以上の雇用見込み
  • 週の労働時間数が20時間以上
  • 月収88,000円以上

 

厚生年金保険:70歳未満の役員・従業員。(その他の条件は健康保険と同じ)

介護保険:40〜64歳の役員・従業員。(その他の条件は健康保険と同じ)

雇用保険:労働時間週20時間以上・31日以上の雇用見込みの従業員。(個人事業主・会社役員・役員家族・学生を除く)

労災保険:全ての役員・従業員

 

2.給与計算における社会保険の計算方法

それでは、具体的に給与計算で社会保険料を算出する方法を解説していきます。

 

(1)社会保険の基本となる計算式

社会保険料の計算式は、基本的にどの種類の保険でも同じです。

 

保険料=標準報酬月額×保険料率÷2

最後に「÷2」をするのは、先に触れたように社会保険料は会社と本人が折半して支払うためです。

 

ただし、労災保険だけは会社が100%負担。つまり、従業員は労災保険料を1円も支払わなくていいため、労災保険料は給与計算には参入しません。

古殿
古殿
また、雇用保険料は本人と会社で折半負担ではなく、業種によって負担率が異なります。

 

(2)基礎となるのは「標準報酬月額」

社会保険料は、各従業員の「標準報酬月額」に対して保険料率がかかります。                 

 

この標準報酬月額とは、その従業員の平均的な給与額を定めたもの。会社員の給与は、毎月の残業代などで変動するため、毎月計算式が異なると給与計算の業務量が膨大になってしまいます。

そこで、年度始めの4〜6月の給与の平均額を取り、それをその年の一律の給与として社会保険料を計算することになっているのです。

標準報酬月額からは税金等は控除せず、基本給・残業代・各種手当なども全て含めて計算します。

古殿
古殿
ただし、毎月支給されるわけではない「祝い金・見舞金」「出張旅費」「賞与」「退職手当」などの収入は標準報酬月額の計算には含みません。

 

(3)保険料率は改定も

健康保険や介護保険の保険料率は定期的に改定があるので、給与計算の担当者は注意しておきましょう。

厚生年金保険の保険料率は、平成29年9月以降は18.300%で固定されています。

 

3.給与計算での「社会保険(狭義)」の算出方法

 

先にも触れたように、「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」の3種の保険を、狭義の「社会保険」と呼びます。

給与計算の際、これらの社会保険料をどのように計算するのか見ていきましょう。

 

(1)「健康保険料」の計算式

給与計算の際は、健康保険料のうち本人負担額のみを計算します。

 

健康保険料(従業員負担額)=標準報酬月額×健康保険料率÷2

 

健康保険の保険料率は、加入している保険組合や、都道府県によって異なります。

例えば、健康保険組合・東京都の保険料率は、9.90%。標準報酬月額が20万円の人の場合、健康保険料の本人負担額は「9,900円」となります。

ちなみに、健康保険料は給与計算担当者が計算しなくても、各組合・都道府県の保険料一覧表で確認できます。

 

(2)「厚生年金保険料」の計算式

厚生年金保険料についても、給与計算の際には本人負担額のみを計算します。

 

厚生年金保険料(本人負担額)=標準報酬月額×18.3%÷2

 

厚生年金保険料の保険料率は、先にもお伝えした通り18.3%で固定されています。

そのため、例えば標準報酬月額が20万円なら、厚生年金保険料の本人負担額は「36,600円」です。

 

(3)「介護保険料」の計算式

介護保険料は、社会保険の対象者のうち40〜64歳の人のみが支払います。健康保険に付随するものなので、健康保険料に2%程度上乗せされる形になっています。

 

介護保険料(本人負担額)=標準報酬月額×介護保険料率÷2

 

健康保険組合・東京都での介護保険料率は、1.73%。標準報酬月額が20万円なら、介護保険料の本人負担額は「3,460円」です。

 

4.給与計算での広義の「社会保険」は業種に注意

広義の社会保険である「雇用保険」と「労災保険」は、業種によって保険料率が異なります。

給与計算の際は、自社の業種の保険料率を当てはめて計算しましょう。

 

(1)業種で負担率が変わる「雇用保険料」

雇用保険の保険料率は、業種によって異なります。

業種によって本人負担額・事業主負担額が両方異なるのですが、今回は給与計算の時を想定しているため本人負担の保険料率をご紹介します。

  • 一般の事業:0.3%
  • 農林水産・清酒製造の事業:0.4%
  • 建設の事業:0.4%

 

雇用保険料(本人負担額)=標準報酬月額×雇用保険料率

 

よって、指定されている業種以外で標準報酬月額が20万円の場合、雇用保険料の本人負担額は「600円」です。

 

(2)会社が全面負担する「労災保険料」

労災保険は会社が全額負担する保険のため、従業員は保険料を1円も支払いません。

よって、給与計算の際には労災保険料は考慮しなくてOK。

古殿
古殿
労災保険の保険料率は業種によって細かに異なり、怪我や死亡の可能性が高い危険な業種ほど保険料率が高くなっています。

 

5.給与計算での社会保険算出を代行してもらう場合は

ある程度の規模の会社になると、給与計算をアウトソーシングしているケースも多いです。

給与計算の社会保険料算出を、外部業者に代行してもらうメリットについて解説していきます。

 

(1)社会保険の計算には専門的な知識が必須

社会保険料の計算には、頻繁に改定される税制や加入している組合・都道府県・本人の年齢など、様々な要素が絡んできます。

 

一般的な企業で、事務スタッフや経営者が給与計算を行なっていると、知識の勉強やアップデートがとても大変。遅れや間違いが許されない業務なので、コストがかかってもアウトソーシングしている会社が多いのです。

 

(2)社会保険労務士なら専門的な対応も

毎月の給与計算だけではなく、社員の退職や新入社員の採用、産休・育休の取得にも社会保険が関わってきます。

専門知識のない経理や人事スタッフでは、全てに正確に対応できないことも。

 

社会保険の専門家である社会保険労務士は、アウトソーシングで企業をサポートします。

社会保険労務士に給与計算を依頼した場合、従業員1人につき5,000〜20,000円ほどで業務委託を行なってくれます。

顧問契約を結べば、給与計算以外の手続き代行や相談サービスを受けられますよ。

 

6.まとめ

給与計算で社会保険料を算出するには、社会保険の種類と制度、税率を理解することが大切。健康保険や介護保険は、保険料率が頻繁に改定されるため、給与計算担当者は年度ごとに知識のアップデートを行なっていきましょう。

全ての変更や業務量に対応しきれない場合、外部の給与計算サービスを頼るのも手です。

古殿
古殿
社会保険労務士は社会保険の専門家なので、入社・退社や育休・産休にまつわる社会保険の手続きも委託できます!

 

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2019/11/06 給与計算で算出する「所得税」とは?

所得税とは、その名の通り所得に対してかかる税金です。収入から所得控除を引いた金額に対して、一定の税率で課されます。所得金額が上がるほど税率も高くなる累進課税制度を採用しており、多く稼ぐ人ほど多く支払う税金となっています。

この記事では、源泉徴収税の中でも所得税についてわかりやすく解説いたします。

古殿
古殿
給与計算での所得税の算出方法や、注意点について知っていきましょう。

 

1.給与計算で算出する「所得税」

毎月の給与総額を算出し、社会保険料や源泉徴収税を差し引く作業を給与計算といいます。

給与計算は社員の生活に直結する業務のため、ミスは厳禁。給与計算に関わる控除や税率は、給与計算担当者が詳しく把握しておく必要があります。

給与計算の際に算出する所得税は、サラリーマンなど会社勤めの方は給与計算の際に天引きされ、個人事業主の場合は確定申告で所得を申告することで支払額が確定します。

 

(1)給与と所得の違い

「給与」と「所得」は混同されがちな言葉ですが、実は少し意味合いが違います。

 

まず給与とは、会社から支払われる賃金や、個人事業主の場合は自分で稼いだ売り上げ。所得とは、そこから「必要経費」を差し引いたものです。

住民税の計算は、この所得に基づいて行います。

 

所得から差し引ける必要経費は、個人事業主の場合、事業所の家賃や商品の仕入れ金額、従業員に支払った給与など、売り上げを出すために必要な出費です。

会社勤めの方は、仕事の時だけ着るスーツや靴、自分の携帯を仕事にも使う場合の通信費などが当てはまります。

 

しかし、毎月具体的な金額を申告して給与計算するのは難しいため、「給与所得控除」という一定の式に当てはめた額が採用されます。

給与所得控除については、後の項目で詳しく解説するので、そちらを参照してください。

古殿
古殿
そのほかに、扶養家族の数に従って課税額が減額される「扶養控除」、ふるさと納税などの「寄付控除」、誰でも無条件で差し引かれる「基礎控除」などの控除も必要経費に含まれます!

 

(2)所得税の仕組み

先にも触れましたが、所得税は「累進課税制度」が採用されている税金。所得額が上がると税率も上がり、多く稼ぐ人ほど多く負担することになっています。

所得金額ごとの税率は、以下の通りです。

  • 〜195万円:5%
  • 195〜330万円:10%
  • 330〜695万円:20%
  • 695〜900万円:23%
  • 900〜1800万円:33%
  • 1800〜4000万円:40%
  • 4000万円〜:45%

 

所得税の金額は、給与総額から必要経費や控除を引いた額にこの税率をかけて計算します。

 

(3)「源泉徴収」とは

源泉徴収とは、従業員の給与から支払うべき所得税や住民税を、会社が前もって差し引き、国に支払うことをいいます。

従業員を雇い、給与を支払っている事業者は、必ず給与計算の際に行わなければいけません。

古殿
古殿
源泉徴収をすることで、会社勤めの人は毎月の給与から少額ずつ税金を支払っていることになり、確定申告をする必要がなくなるのです。

 

2.給与計算で所得税を算出する前に押さえておきたい用語

それでは、給与計算で所得税を算出するに当たって、必ず知っておきたい用語を解説していきます。

後で解説する計算方法にはこれらの用語が登場するので、実際に給与計算をする前に言葉の意味を理解しておきましょう。

 

(1)課税所得

課税所得とは、給与の支払い総額から必要経費や控除を全て差し引いた金額です。

この課税所得に、先にお伝えした所得税の税率をかけると、所得税の金額が算出できます。

 

(2)扶養控除申告書

扶養控除申告書は毎月の給与計算ではなく、年末調整のタイミングで必要になる書類。正式には「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」という名称です。

 

年に一度、従業員本人が記入して提出し、扶養している家族や配偶者がいることを申告する書類です。

ここに書かれた内容を元に、扶養控除の金額が決まります。

 

(3)給与所得控除

給与所得控除は、会社勤めの人の必要経費にあたるものです。

 

会社に勤めている人は、仕事をするときに着る服や靴の購入費、仕事関係の電話にかかる電話代などを自分で負担しています。

これらの具体的な金額を一人一人に申告させていると毎月の給与計算の業務量が膨大になってしまうので、給与の額に対して全員一率で計算するのが給与所得控除です。

 

給与所得控除の計算式は、給与収入の額に応じて異なります。

  • 〜180万円:収入金額×40%(65万円に満たない場合には65万円)
  • 180〜360万円:収入金額×30%+18万円
  • 360〜660万円:収入金額×20%+54万円
  • 660〜1,000万円:収入金額×10%+120万円
  • 1,000万円〜:2,200,000円(上限)

 

(4)給与所得の源泉徴収税額表

「給与所得の源泉徴収税額表」とは、その名の通り給与所得に対してかかる源泉徴収税額の一覧表です。

給与の金額と扶養家族の数を参照すると、複雑な計算を経ずに源泉所得税額がわかるようになっています。

 

3.給与計算で所得税を計算する方法

それでは、給与計算で所得税を算出するための計算方法を解説していきます。

 

(1)所得税の計算式

給与計算で所得税を計算する場合、必要になる情報は以下の通りです。

  • 給与の支払い総額
  • 社会保険料の総額

 

例えば、給与・社会保険料が、以下のような内容の人がいた場合。

  • 基本給:200,000円
  • 残業手当:15,000円
  • 非課税の手当(通勤手当など):6,000円
  • 健康保険料:9,970円
  • 厚生年金保険:16,766円
  • 雇用保険料:1,105円
  • 扶養親族等の数:2人

 

この場合、給与計算で源泉所得税を算出する計算式は以下のようになります。

  • 給与の支払い総額総額:200,000円+15,000円=215,000円
  • 社会保険料の総額:9,970円+16,766円+1,105円=27,841円

 

そして、「給与所得の源泉徴収税額表」を参照する際は、給与から社会保険料等を差し引いた金額と、扶養親族等の数が必要です。

  • 給与の支払い総額総額−社会保険料の総額=187,159円
  • 扶養親族等の数:2人

 

この条件で、最新の平成31年版「給与所得の源泉徴収税額表」を参照すると、「1,100円」と記載されています。

よって、この人の源泉所得税額は1,100円です。

 

(2)「給与所得の源泉徴収税額表」の見方

給与所得の源泉徴収税額表は、給与計算の際に求めた「給与総額−社会保険料」と「扶養親族等の数」を基準に参照します。

 

まず、「給与総額−社会保険料」を算出し、一番左の欄で当てはまる行を探しましょう。

上で挙げた例だと、「187,159円」は「187,000円以上、189,000円未満」の行に当てはまります。

 

そして、「扶養控除申告書」が提出されている従業員は「甲」欄の扶養親族の人数に該当する場所、それ以外の従業員は「乙」欄を参照します。

 

4.給与計算で所得税を算出する時の注意

それでは、給与計算で所得税を算出する際、注意するべきポイントを解説していきます。

 

(1)扶養家族の数え方

給与計算で、扶養家族として数えることができる家族の条件は、以下の通り。

  • 年間の所得金額が38万円以下(給与所得103万円以下)
  • 16歳以上の親族(6親等内の血族または3親等内の姻族)
  • 納税者と生計を一にしている

 

基本的には、パート・アルバイト・無職などで収入が少ない配偶者・16歳以上の子供・老親など、同居や仕送りをしている家族の中でこの条件に当てはまる人数を数えるだけです。。

ただし、以下の条件に当てはまる場合、実際に扶養している人が存在しなくても、扶養家族の数を加算して給与計算します。

 

  • 本人が障害者、寡婦(寡夫)、勤労学生の場合:1条件につき1人加算。
  • 同一生計配偶者・扶養親族(16歳未満を含む)が一般障害者または特別障害者の場合:1人加算
  • 同一生計配偶者・扶養親族(16歳未満を含む)が同居特別障害者の場合・2人加算

 

(2)賞与の源泉所得税の計算方法

賞与の源泉所得税を計算するときは、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用います。

給与計算の時と違うのは、この表で賞与にかける税率を参照する点です。

 

例えば、賞与金額が100万円、扶養親族が2人という場合、「扶養親族2人」の欄から「987,000円以上、1,370,000円未満」の行を参照します。

すると、左の欄に書いてある賞与に対する源泉所得税率が「32.672%」とわかります。

  • 100万円×32.672%=326,720円

 

この場合の賞与の源泉所得税額は、326,720円ということです。

 

(3)復興特別所得税も同時に徴収

2011年に発生した東日本大震災の復興財源にあてるため、2013年から所得税に加えて復興特別所得税も徴収されるようになりました。

 

復興特別所得税の税率は、課税基準となる所得税額の2.1%。毎月の給与だけではなく、賞与も課税の対象です。

興特別所得税は、2037年まで徴収される予定となっています。

 

5.給与計算で算出した所得税の納付方法

給与計算で算出した源泉所得税は、翌月の10日までに会社が納めます。

基本的には毎月行う手続きですが、従業員10人未満の小規模な会社は「納期の特例」という制度を利用すると納付のタイミングが年2回にまとめることができます。

古殿
古殿
納付方法は、e-taxもしくは所轄の税務署の窓口。「所得税徴収高計算書(納付書)」を作成し、従業員全員の所得税の合計額を支払います。

 

6.まとめ

給与計算で所得税を算出する方法は、給与総額と社会保険料を先に求め、「源泉徴収税額表」で扶養家族の数を参照するだけ。

一見簡単ですが、給与計算の中で忘れてはいけない大事なステップです。

課税対象にならない収入の範囲や、扶養家族の数え方がやや複雑なため、給与計算を担当する方は制度をよく知っておきましょう。

古殿
古殿
また、頻繁に制度改正がある部分でもあるため、毎年の変更点にも注意を払う必要があります。
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2019/10/24 給与計算の基礎【計算方法から算定基礎届の書き方まで】

給与計算はどんな会社にも発生する基本的な業務です。

しかし、一人一人適用される控除や手当が異なるので、実際の業務内容はかなり複雑。給与計算を任されても、事務職に就いて日が浅い方はわからないことだらけで困ってしまうことも多いでしょう。

古殿
古殿
この記事では、給与計算の基礎の基礎についてわかりやすく解説していきます!

 

1.給与計算の基礎

まずは、給与計算の基礎から学んでいきましょう。

ただし、給与計算の細かな方法は会社によって異なるため、ここでご紹介するのはあくまで一般的な計算方法となります。

 

 

(1)給与計算の基本式

給与計算のもっとも基本となる式は、以下の通りです。 

  • 総支給額-控除額=差引支給額

 

「総支給額」とは、基本給に残業代などの時間外手当や、各種手当が加算された給与の総額。時間外手当の割増率は法令で定められていますが、各種手当については会社ごとに規則が異なります。

 

「控除額」とは、税金や保険料など会社が給与から天引きする金額のことです。

一般的なサラリーマンの給与にかかる税金・保険料は以下のものがあります。

  • 所得税
  • 住民税
  • 雇用保険料
  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料

 

また、税金・保険料以外にも、社宅の家賃など会社が天引きしているものがあればそれも控除額に含まれます。

古殿
古殿
「差引支給額」とはいわゆる「手取り」のことです。総支給額から支払うべき税金や保険料が引かれて、実際に従業員の手元に入る金額となります。

 

(2)総支給額の計算方法

それでは、具体的に総支給額の給与計算方法を見ていきましょう。

  • 基本は「基本給」+「諸手当」

総支給額は、「基本給+諸手当」という計算式で給与計算ができます。

 

「基本給」とは、従業員ごとに雇用契約で定められている基本の給与のことです。求人票などに「月給20万円」「日給1万円」などと書かれているものですね。

社内規定により、勤続年数や実績に合わせて昇給・減給することもあります。

 

「諸手当」には、「時間外手当」と「その他の手当」の2種類があります。

時間外手当とは、残業代や休日出勤手当など、基本給に含まれていない勤務時間にかかるものです。

 

給与計算の式は、それぞれ以下の通りです。

残業手当

基本給(1時間)×1.25×実働時間数

 深夜残業手当
(22時~翌5時の間の残業)

基本給(1時間)×1.5×実働時間数

休日出勤手当
(法定休日) 

基本給(1時間)×1.35×実働時間数

休日出勤手当
(法定外休日) 

基本給(1時間)×1.25×実働時間数

 休日出勤手当
(法定外休日)

 基本給(1時間)×実働時関数

 

その他の手当は、会社が独自に定めて支給している手当のことです。

会社ごとに自由に定められるため種類や名称はバラバラですが、よくある手当には以下のようなものがあります。

  • 通勤手当
  • 住宅手当
  • 役職手当
  • 資格手当
  • 役職手当

など

古殿
古殿
基本給と時間外手当、その他の手当を全て足し合わせたものが、「総支給額」となります。

 

基準内給与・基準外給与

給与計算に関わる言葉で、「基準内給与」「基準外給与」というものがあります。

それぞれの言葉の意味は、以下の通りです。

  • 基準内給与:割増賃金(残業代など)を計算する際の基礎となる賃金
  • 基準外給与:割増賃金の計算には算入されない賃金

 

残業代などの割増賃金を計算するときは、基礎となる時間給に1.25〜1.5の割増率をかけて計算します。

しかし、基準外給与となる諸手当はその計算に算入されません。例えば、「基準内給与20万円+基準外賃金5万円=総支給25万円」というケースの場合、割増賃金の基礎となる給与は「20万円」となります。

 

具体的には、厚生労働省は以下の7つを基準外給与と定めています。

  • 通勤手当
  • 家族手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われる手当
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

 

なぜこれらが割増賃金の基礎に含まれないかというと、これらは労働時間ではなく個人の事情によって支給される手当のため。常識的に考えて、家が遠くて通勤手当を多くもらっている人の基礎賃金が、家が近い人に比べて高くなってしまうのは変ですよね。

 

ただし、例えば通勤手当が全社員に一律に支給されている場合など、個人の事情が関わっていない通勤手当は基準内給与に含まれます。

古殿
古殿
基準外給与かどうかということは、その名称ではなく実態に伴って判断されるのです。

 

(3)控除額の計算方法

次に、総支給額から天引きする「控除額」の給与計算方法を解説していきます。

 

法定控除・協定控除

総支給額から差し引かれる控除には、「法定控除」と「協定控除」の2種類があります。

  • 法定控除:法律の定めにより決まっている控除額。従業員の同意がなくても控除することができる
  • 協定控除:会社の労働組合、または従業員の過半数を代表するものと会社が協定を結ぶことで発生する控除

 

法定控除とは、法律で納入が定められている税金や保険料のことです。給与の金額ごとに定められた税率・保険料があり、必ず納めなければいけません。

詳しくは、下の項目で解説します。

 

協定控除とは、法律で定められていないので労働組合や会社が独自に規定するものです。

例えば、

  • 財形貯蓄
  • 食事代
  • 社宅使用料
  • 労働組合費
  • 団体生命保険料
  • 社内預金
  • 互助会費
  • クリーニング代

 

などが協定控除です。

項目や金額は会社ごとにバラバラで、もちろん協定控除がない会社もあります。

 

税・社会保険料

先にも触れましたが、一般的なサラリーマンの給与にかかる税金・保険料は以下のものがあります。

所得税

所得税は、総支給額から控除や非課税の手当といった「非課税所得」を除いた金額に課税されます。

累進課税制度を採用しているので、給与の金額が高くなると税率も上がるシステムとなっています。

住民税

住民票を置いている自治体に支払う税金です。

税率は市区町村によって異なります。

雇用保険料

失業したとき、失業給付を受けるための掛け金です。

健康保険料

従業員が怪我や病気で医療機関にかかるとき、負担額を減らせるように加入しているものです。保険料は従業員と会社で折半して負担します。

厚生年金保険料

 将来年金を受け取るための掛け金です。健康保険料と同じく、会社と従業員が折半して負担します。

国民年金保険料は収入額に関わらず一律ですが、厚生年金保険は給与の額が基準となって保険料が異なります。

 

これらの税率・保険料率は、個々の収入額・居住地・加入している保険組合などによって異なるため、共通した計算式はありません。

そのため、総支給額は同じでも控除額に差があり、手取り額は一人一人異なるのです。

 

2.給与計算の月毎・年間の基礎的スケジュール

次に、給与計算の業務にまつわる基礎的なスケジュールを見ていきましょう。

 

(1)毎月行う業務

給与は多くの会社で月払い形式を採用しているため、給与計算の業務は毎月発生します。そのため、給与計算の担当者は毎月同じサイクルで全従業員の給与計算を行なっていくことになります。

そして、給与計算の作業は、毎月の締め日から給与支払い日までに行う必要があります。

 

例えば、締め日が毎月15日、25日が支払日という会社の場合、基礎的なスケジュールは以下の通り。

  • 〜15日:人事異動・昇降給・扶養家族増減・氏名、振込先変更などの把握・確認
  • 15日〜17日:勤怠(出退勤:遅早欠勤・休暇)の把握、歩合給の算出基礎
  • 18日〜20日:支給額・控除額の計算、管理資料・給与明細の作成
  • 21日〜22日:給与支払いの手配
  • 25日:給与支払い・給与明細の配布
  • 月末:社会保険料の納付
  • 翌月10日:源泉所得税、住民税の納付

 

給与計算にかかる労力や時間は、従業員の人数・担当者の人数・締め日から支払日までの日数などで会社ごとにかなりばらつきがあります。

そのため、それぞれの工程にかかる日数は異なりますが、作業の順番や工程数は会社の規模に関わらず同じです。

古殿
古殿
給与計算の遅れは給与の遅配にも繋がるので、実際に業務を担当するときはスケジュール組みがとても重要になりますよ!

 

(2)給料計算の年間スケジュール

次に、給与計算に関わる年間スケジュールを月ごとにまとめてみました。

 

1月

税務署に法定調書を提出、市区町村に給与支払報告書を提出

2月

 特になし
3月

4月の新規採用者・異動者の給与決定、4月に64歳以上になる従業員を把握(雇用保険料が免除となるため)

4月

新入社員・異動社員の給与設定、税率・保険料に改定があれば変更を反映

5月

 4月に入社した社員の社会保険料控除開始

6月

 住民税の新年度控除額を登録、賞与の計算(6月に賞与支給がある場合)

7月

労働保険の年度更新(保険料計算)、社会保険は算定基礎届提出、4月昇給者の随時改定(月額変更届)

8月

4月昇給による随時改定者の社会保険料改定

9月

厚生年金保険料率の変更(変更後の保険料が控除されるのは10月に支払う給与から)

10月

 7月に算定基礎届を提出した社員の社会保険料改定

11月

 年末調整の準備(社員に案内し、必要書類を配布する)

12月

 賞与支給、年末調整実施

 

給与計算には保険や税金が関わっているので、年間スケジュールもそれに伴うものが多いです。

年末調整がある12月や、新入社員・異動社員の多い4月が給与計算業務の繁忙期となります。

 

3.給与計算に必須!算定基礎届

給与計算の中の保険料の計算には、算定基礎届という書類が必要です。

算定基礎届とは何なのか、また何のために提出する書類なのかを見ていきましょう。

 

(1)算定基礎届が大事なわけ

社会保険の保険料は、給与の金額によって納付する額が異なります。

しかし、給与は毎月変動するものなので、毎回社会保険料を一から計算するのはとても大変ですよね。

 

そこで必要となるのが「算定基礎届」。算定基礎届で「標準報酬月額」を決定し、その金額に基づいて保険料を計算することができる制度となっています。

 

(2)算定基礎届の提出期限・対象者は?

算定基礎届の提出期限は、毎年7月10日。この算定基礎届で決まった標準報酬月額は、同年9月から翌年8月まで適用されます。

 

算定基礎届の対象者となるのは、その年の7月1日に勤務している従業員です。

ただし、4〜6月のどの月も出勤日数が17日以下だった場合や、病欠などで賃金を受け取らなかった場合には算定基礎届の対象外となります。

 

(3)算定基礎届の提出方法

算定基礎届の提出には、以下の2種類の書類が必要です。

  • 算定基礎届
  • 算定基礎届総括表

 

これらの書類を、毎年7月1日〜10日の間に年金事務所や保険組合に提出します。

窓口への持ち込み・郵送・電子申請での提出が可能です。

 

4.基礎日数から標準報酬月額を計算する

算定基礎届の提出には、標準報酬月額の算出が必要です。

その計算方法を、簡単に解説していきます。

 

(1)支払い基礎日数の求め方

支払い基礎日数とは、給与計算の対象となる労働日数のことです。

 

(2)月給制の場合

月給制の支払い基礎日数は、「欠勤控除なし」「欠勤控除あり」の2パターンがあります。

欠勤控除なしの場合

「暦日数=支払い基礎日数」。カレンダー上の日数がそのまま支払い基礎日数になります。

欠勤控除ありの場合

「所定労働日数-欠勤日数=支払い基礎日数」。例えば月の労働時間が22日と就業規則で定められている場合、そこから欠勤日数を引いたものが支払い基礎日数です。

 

(3)日給・時給制の場合

日給・時給制の場合は、実際に出勤した日数がそのまま支払い基礎日数となります。

 

(4)標準報酬月額の求め方

標準報酬月額は、4〜6月の賃金を3で割り、平均を出したものです。

この賃金には、通勤手当や残業代など、基本給以外の手当も全て含みます。基準内賃金とは計算方法が違うので注意してください。

古殿
古殿
基本的には支払われた報酬全てが含まれますが、結婚祝い・見舞金といった一時金や、出張の旅費など経費精算で支払われた金額は除外して計算します。

 

5.まとめ

給与計算の基礎的な計算方法が、わかりましたか?

給与計算は会社ごとに計算方法が違い、また従業員一人一人についても適用される手当や控除が異なるので、そう単純ではありません。

古殿
古殿
今回ご紹介した計算方法は、あくまで基本的なものです。実際に給与計算の業務を行うときは、社内の賃金規定を優先して行いましょう。
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2019/10/17 給与の計算方法は7段階?日割り計算の方法も紹介

毎月何気なく受け取っている給与明細。しかし、給与明細に書かれているそれぞれの項目が、どのように計算されているか知っていますか?

今回は、給与計算の方法とその準備、リスク管理などについて解説していきます。

古殿
古殿
給与計算の手順をステップごとに紹介いたしますので、経理担当の方も参考にしてみてください。

 

1.給与の計算方法は会社により異なる?

給与計算の方法を知る前に、まずは前提として給与計算の基本を知っておきましょう。

給与計算の方法は会社によって違い、また従業員の生活に直結する業務特有のリスクも伴います。

 

 

(1)計算方法は会社により異なる

給与計算の方法は会社によって異なります。

それは、給与の支払い方法や会社ごとに規定している手当などが会社ごとにバラバラだから。そのため、今回ご紹介する給与計算の方法はあくまで一般的な例で、全ての会社にこれが当てはまるとは限りません。

 

(2)給与計算のリスク

給与計算はどんな会社にも発生する基本的な業務ですが、実は特有のリスクも伴います。従業員の生活に直結することだからこそ、少しでも計算ミスがあると従業員からの信用を失ってしまうのです。

勤怠の記録システムが万全でないと、残業代の未払いなどの問題が起こってしまうこともありますね。

 

また、給与計算の遅れは給与の遅配にも繋がるので、毎月期限内に済ませることが必要です。そして、給与計算をするためには、家族や保険の情報、マイナンバーなど、従業員の個人情報を用います。

古殿
古殿
大切な情報を預かるからこそ、情報漏洩には細心の注意が必要となります。

 

(3)給与計算に必要な知識

給与計算に伴うリスクを防ぐためには、予防策の準備が必要です。

人の手が関わる以上ケアレスミスは起こり得ますが、システムがきちんと整っていればリスクを最小限に抑えることができるのです。

労務

まずは、給与計算の担当者が「労働基準法」や「就業規則」などの知識をきちんと理解していること。

小規模な会社でも、なあなあにならないよう明確なルールが必要です。国の法令に則して、就業規則と給与規定をきちんと定めましょう。

税務

給与計算には、所得税や住民税といった税金も絡んできます。給与計算の担当者は、国の税制度についても精通する必要があるのです。

源泉徴収税の計算ミスや、控除漏れがあった場合は追徴や訂正申請が必要となるので、税金関連のミスは何としても防がなければいけません。

リスク管理

最後に、情報漏洩などに対するリスク管理です。給与計算の担当者による故意の流出はもちろん、ハッキングなどによる情報漏洩にも注意しなければいけません。

社員を雇用する際は契約条件に守秘義務の項目を入れたり、経理情報を扱うPCは一段とセキュリティに気を配ったりする必要があります。

経理データの持ち出しも、社内規定などで禁止しておいたほうがいいでしょう。

 

2.給与の計算方法は7段階

それでは、給与計算の方法をステップごとに解説していきます。

給与計算には、全部で7つの段階があります。

 

(1)勤怠状況を確認・集計

まずは、タイムカードなどの情報から各従業員の勤怠状況を把握します。集計期間中の労働時間について、従業員一人ずつの状況を確認しましょう。

次の3つの項目に分けて集計します。

  • 労働日数
  • 労働時間
  • 時間外労働

 

(2)総支給額を決定

次に、労働時間の情報から総支給額を決定します。

時間外労働には法令で定められた割増率があるので、それに則した割増率で計算しましょう。

 

さらに、会社独自の手当(通勤手当・家族手当・役職手当など)があれば、ここで加算します。

  • 基本給
  • 時間外手当
  • 各種手当

この3つの合計が「総支給額」となります。

 

(3)控除額を計算

次に、給与から天引きする税金や保険料などの「控除額」を計算します。

一般的なサラリーマンの給与にかかる税金・保険料には、以下のものがあります。

  • 雇用保険料
  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料
  • 所得税
  • 住民税

 

扶養家族の数などにより非課税所得がある場合もあるので、この計算式は従業員の個々の状況によって変わります。

古殿
古殿
また、社宅の家賃など税金・保険料以外に会社が天引きしているものがあれば、ここで差し引いておきます。

 

(4)手取り金額を計算

「総支給額」から「控除額」を引いたものが、「手取り金額」となります。従業員に実際に支払うのは、この手取り金額です。

 

(5)給与明細作成・賃金台帳への記録

ここまで計算した内容を元に、給与明細を作成します。

給与計算した数字を給与明細のフォーマットに当てはめるだけなので、難しい作業ではありません。

また、支払いの記録を後に残せるよう、賃金台帳にも記入します。

 

(6)支払・給与明細配布

給与明細の内容に従い、各従業員に給与を支払います。

その際、必ず給与明細も一緒に交付します。給与明細の交付は所得税法で定められている義務なので、どんな会社・雇用形態でも必ず交付しなければいけません。

 

(7)社会保険料、税金納付

最後に、社会保険料や税金を、会社が従業員に代わって納付します。

社会保険料は会社と従業員が折半する決まりなので、納付額は全従業員の給与から差し引いた控除額のちょうど2倍となります。

 

3.日割りの給与を計算する方法

次に、月収ではなく日割りで給与計算する方法をご紹介いたします。

 

(1)就業規則を確認

実は、日割り給与の計算方法は法律で定められていません。そのため、各会社が定めている就業規則や賃金規定に従うことになります。

下で挙げるのは、一般的な例です。

 

(2)月の途中で入社した場合

月の途中で入社した場合、一般的な計算ルールは以下の3パターンが考えられます。

1.暦日基準

(給与)÷(その月の日数)×(所属日数)

2.所定労働日基準

(給与)÷(その月の所定労働日数)×(出勤日数)

3.月平均の所定労働日基準

(給与)÷(月平均の所定労働日数)×(出勤日数)

(月平均の所定労働日数)=(年間の所定労働日数)÷12

 

各種手当については、日割りする根拠がないものは月途中の入社でも満額支給されます。ただし、弁当代や通勤手当など1日分の金額が明確な場合には、満額ではなく日割り計算となる場合もあります。

 

(3)月の途中で退職した場合

月の途中で退職した場合、月の途中での入社と計算ルールは基本的に同じです。

 

ただし、退職の場合は上の計算方法に加え、出勤しなかった日数分の給与を満額から差し引くという計算方法もあります。日額の求め方は、入社のケースと同じ3パターンです。

退職は円満な形だけではない可能性もありますが、どんな形であれ給与計算期間に少しでも労働した従業員には給与を支払う必要があります。

 

(4)その他の給与計算の方法

上記の他にも、「日給月給制」や「変形労働時間制」などの制度を導入している会社があります。

 

日給月給制

日給月給制とは、給与形態のひとつ。

あらかじめ定められている月の給与から、欠勤・遅刻・早退などで労働しなかった時間分をそこから差し引くという計算方法です。

具体的な計算式は、以下の通りです。

  • (給与の総額÷1ヵ月の通常就労日数)×勤務日数+残業給与=支給額

 

日給月給制では手当も含めて1ヶ月分の給与となっているので、欠勤などがあった場合には手当も含めて減額されます。

 

変形労働時間制

変形労働時間制とは、労働時間を月・年単位で調整することで、時間外労働を調節する制度のことです。

労働基準法では、「週40時間・1日8時間」以上の労働を時間外労働と定めています。これが変形労働時間制を採用すると、例えばある週に60時間働いても、次の週の労働時間が20時間になれば時間外労働は発生しません。

 

週単位だけではなく月単位でもこれが可能なため、多く働いた月の給与が増えない代わりに、長期休暇をとった月も満額の基本給が貰えるということに。

繁忙期と閑散期に波がある業種で、導入されていることが多い制度です。

 

4.給与の計算前の準備について

最後に、給与計算をする前に必要な準備について解説します。

 

(1)就業規則・給与規定を整備

就業規則・給与規定が定まっていないと、そもそも給与計算ができません。

取り決めが必要な項目は、以下のようなものがあります。

  • 始業と終業の時刻、休憩時間の規定
  • 時間外労働・深夜労働・休日労働時間に関する割増率(法令で規定あり)
  • 会社独自の時間外計算があるかどうか(宿直手当、夜勤手当、代休時の割増率など)
  • 時間外計算の単位
  • 日割り計算の方法
  • 給与の計算方法・締め日と支払い日

 

(2)従業員情報を収集・更新

従業員個人の情報も、給与計算には不可欠です。

給与計算に必要な情報は、以下の通り。

  • 給与の振込口座
  • 通勤経路と交通費
  • 扶養家族の人数
  • 勤怠管理

 

古殿
古殿
通勤経路や扶養家族については、申請内容次第で給与を多く受け取る不正も可能となってしまいます。従業員情報は、定期的に見直し・更新をしていきましょう。

 

(3)適切な保険の加入

従業員を雇用する企業では、従業員を守るために保険に加入しなければいけません。

正社員以外のパートやアルバイトも、収入金額や労働時間などが条件に当てはまれば保険に加入させる義務があります。

 

企業が加入すべき保険には、以下の種類があります。

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 社会保険
  • 介護保険
  • 雇用保険
  • 労災保険など

 

5.まとめ

給与計算の方法は、法令で定められている部分と会社が独自に規定している部分があります。とても多くの知識が必要となるので、見た目以上に大変な作業です。

また、従業員の生活や個人情報に関わることなので、ミスや遅れ、情報漏洩は許されません。

古殿
古殿
給与に関わる情報は厳密に管理し、正確な計算ができるようにシステムを整備していきましょう!

 

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2019/10/10 手取りとは?月給・年収の額面から手取りを計算する方法【給与計算の基本】

新社会人になりたての時、自分で給与計算していた額と実際に支払われた額が違って驚いたことはありませんか?

「手取り」とは、会社から支払われる額面上の給料全体から、税金(所得税や住民税など)や社会保険料(健康保険料や厚生年金料)を引いたものです。

実際にはこの手取り給料で毎月生活することになります。

古殿
古殿
この記事では、手取りを算出する給与計算の方法についてわかりやすく解説していきます!

 

1.給与計算の基本!手取りって何?

給与計算時に当然のように使っている「手取り」という言葉ですが、その意味をきちんと理解していますか?

まずは「手取り」という言葉の意味や、どんなものによって左右されるのかという基礎知識を知っていきましょう。

 

 

(1)手取りは実際に受け取る金額

手取りとは、毎月の給与の総支給額から、支払うべき税金や保険料が差し引かれた金額のことです。給与の中から実際に手元に入ってくる金額なので、「手取り」と言います。

計算式は以下の通りです。 

「額面給与」-「控除」=「手取り」

 

「額面給与」とは、基本給に時間外手当や会社ごとに規定された手当などがプラスされた総支給額のこと。

一般的に、年収は税などが差し引かれる前の総支給額で計算します。

 

「控除」とは、給与収入の中から国や保険組合に支払う税金・保険料のことです。従業員の手に渡る前に、会社によって天引きされます。

そして、総支給額から税金などが抜かれ、実際に手に入るお金が手取りです。

 

(2)額面が同じなら手取りも同じ?

実は、額面が同じなら手取り額が同じということにはなりません。

これは、人によって課税されない「控除額」が異なるため。

 

例えば家族を扶養している場合、「扶養控除」が適用されて1人あたり年間38~58万円が非課税所得となります。

所得税などの税金は、総支給から非課税所得を引いた後の金額に課税されるので、額面の給与が同じでも手取り額は一人一人細かに異なるのです。

 

また、日本では求人広告などに提示される給与額は「額面」に一本化されていますが、海外ではそうは限りません。「額面給与」を「Gross」・「手取り額」を「Net」と呼び分け、求人票にはどちらの金額を提示する場合もあります。

海外での就職を考える人や、日本での事業を拡大して海外の人材を雇用したい人は、「Gross」と「Net」の使い分けを覚えておいた方がいいでしょう。

 

2.給与計算の手取りを算出する方法

それでは、給与計算で手取り額を算出する方法を解説します。

繰り返しになりますが、手取りとは総支給額から控除を除いた金額なので、給与計算においてはその両方を計算する必要があります。

 

(1)支給されるもの

まずは、給与計算のベースとなる総支給から計算していきましょう。

 

基本給

基本給は、雇用契約や社内規定によって定められています。

もし、勤怠で欠勤や遅刻・早退があった場合には、日割り給与や時間当たりの金額を算出して差し引きます。

 

営業職などインセンティブがある仕事の場合は、基本給に歩合給がプラスされる場合もあります。

 

時間外手当

時間外手当とは、残業や休日出勤に対する手当のことです。金額は法律によって定められています。

 

残業手当

週40時間・1日8時間を超えた労働時間に対して加算される。

計算式は「基本給(1時間)×1.25」

深夜残業(22時~翌5時の間の残業)の場合、「基本給(1時間)×1.5」

 

休日出勤手当

法定休日と法定外休日があり、計算式が異なる。

法定休日は「基本給(1時間)×1.35×出勤時間数」

法定外休日は、時間外労働の場合「基本給(1時間)×1.25×出勤時間数」

時間外労働でない場合は、「基本給(1時間)×出勤時関数」

 

家族手当

家族手当は、企業がそれぞれの規定で導入している福利厚生です。

家族手当の制度がない企業もありますが、家族手当を何らかの形で導入している会社の割合は78.1%という調査結果もあり、非常に身近な手当と言えます。

 

配偶者や子供が主な対象となり、支給額の相場は以下の通りです。

  • 配偶者:月額10,000~15,000円ほど
  • 子供:月額3,000~5,000円ほど

 

その他

その他、会社ごとに規定している手当もあります。

多くの企業が導入している手当の例は、以下の通りです。

  • 資格手当
  • 住宅手当
  • 通勤手当
  • 役職手当

 

手当の種類や金額は企業が自由に決められるので、中には「禁煙手当」「オシャレ手当」などユニークな手当も。金額はそこまで大きくないこともありますが、企業が何を重視しているかという性格が出やすい部分です。

 

(2)控除されるもの

次に、総支給から差し引かれる「控除額」を計算します。

 

健康保険料

健康保険料は、従業員が怪我や病気で医療機関にかかるとき、負担額を減らせるように加入しているものです。

会社が加入している保険組合によって保険料率が変動し、保険料の負担額は従業員と会社で折半となります。

 

厚生年金保険料

厚生年金保険料は将来年金を受け取るための掛け金です。健康保険料と同じく、会社と従業員が折半して負担します。

国民年金保険料は収入額に関わらず一律ですが、厚生年金保険は給与の額が基準となって保険料が異なります。

 

所得税

所得税は総支給額から控除や非課税の手当といった、「非課税所得」を除いた金額に課税されます。

累進課税制度を採用しているので、給与の金額が高くなると税率も上がるシステムとなっています。

 

その他

その他、給与から差し引かれる控除には以下のものがあります。

  • 雇用保険:失業した時に失業給付を受けるための保険。
  • 介護保険料:介護を受ける立場になった時、負担額を減らすための保険。
  • 住民税:住民票を置いている自治体に支払う税金。

 

他には、会社によっては「労働組合費」「退職金の積立金」「社宅の家賃」なども引かれることがあります。

古殿
古殿
給与計算時、これらすべての控除額を総支給額から引くと、手取り金額を算出することができます。

 

3.給与計算で手取りの目安をシミュレーション

それでは、実際の給与計算の例を挙げて、手取り金額の目安を計算していきましょう。

 

(1)手取りの目安は額面の75~80%

加入している保険組合や控除などの条件によって、手取り金額は異なります。

しかし、多くの人の場合、手取りの目安は「額面の75~80%」と言われています。

(例)

月収22万円の場合→手取り16万5,000円~17万6,000円

年収400万円の場合→手取り年収300万円~320万円

 

ただし、会社の規定で非課税の手当が非常に多い場合や、船員保険など一般の健康保険と大幅に保険料率が異なる保険に加入している場合、手取り金額の目安はこの限りではありません。

 

(2)手取りが分かれば逆算もできる

手取り金額が分かれば、逆算して総支給額や源泉徴収税を算出することも可能です。

 

「手取り金額÷0.75~0.8」という式で大体の総支給額がわかります。

なお、源泉徴収税を算出したい場合は、「総支給額×2~2.5」です。

 

(3)給与計算の無料シミュレーションサイト

これらの計算式はあくまで目安なので、正確な金額ではありません。

もっと詳しく手取り額や総支給額を知りたい場合には、シミュレーションサイトを利用しましょう。

インターネットで検索すると、給与計算の無料シミュレーションサイトが多数出てきますよ。

 

4.転職時の給与計算は手取りと額面に注意!

転職をする時は、前職での年収を尋ねられることが多いです。そういった場合は、手取り金額よりも額面を優先します。

 

(1)大事なのは手取りより額面

就職・転職の場面で給与の話をする時は、基本的に額面ベースです。実際にもらっていた金額ではなく、自分の額面年収を把握しておきましょう。

 

給与明細の「総支給額」に書いてあるのが額面の月収、年収は12ヶ月分の額面月収にボーナスなども足した「1年間に支給されたすべてのお金」です。

ただし、交通費や経費精算など、使途が明確かつ使った金額と支給された金額が一致しているものは年収に含みません。

 

(2)転職サイトへの「登録」は額面

転職サイトに登録する時は、前職(現職)での年収や希望の年収・月収などを入力します。

その場合も、手取りではなく額面の年収・月収を登録するようにしましょう。

 

「求人広告」「面接」も額面

 

日本国内では、求人広告に記載される給与も額面で統一されています。

ただし、海外ではGrossとNetどちらも使用されるので、海外企業や外資系企業の求人を見る時は気をつけましょう。

古殿
古殿
また、面接で前職の年収や希望年収を聞かれた時も、すべて額面の金額で答えるようにします!

 

5.まとめ

手取り額とは、給与の総支給額から税金などの控除を除き、実際に手元に入る金額のこと。額面は同じでも、個々の条件により手取り額は異なります。

手取り額の大体の目安は、総支給額の75~80%です。

古殿
古殿
転職関連で聞かれる年収や月収は、すべて手取りではなく額面ベースになることを覚えておきましょう!

 

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2019/10/03 給与計算はアウトソーシングすべき?【メリット・デメリットを解説】

給与計算は、従業員を雇用している全ての会社に発生する基本的な業務。しかし、その計算は単純なものではなく、税制や保険に関わる様々な知識が必要となります。

従業員が増えてくると、自社内での対応に手が回らなくなり、アウトソーシングを検討する経営者も多いでしょう。

古殿
古殿
今回は、給与計算のアウトソーシングに関する基礎知識をお伝えしていきます。

 

1.給与計算はアウトソーシングすべき?

まず、給与計算とはその名の通り従業員に支払う給与を計算する作業のこと。総支給額から税金・保険料・控除などを天引きし、実際に支払う手取り金額を計算します。

 

従業員の生活に直結する仕事なので、給与計算に間違いや遅れがあると信用問題となってしまいます。

 

(1)給与計算の手順

それでは、順を追って給与計算の手順を見ていきましょう。

 

総支給額を計算

まずは、給与計算のベースとなる総支給額を計算します。

 

給与の支払い方法や社内規定によっても詳細は異なりますが、「基本給」に「各種手当」を足したり、「各種控除」を引いたりする作業です。

基本給

契約上各従業員に対して定められている給与のベース金額

各種手当

通勤手当・住宅手当・残業手当・休日出勤手当など

各種控除

欠勤控除・遅刻控除・早退控除など

 

各種手当には、就業規則で各会社が決めているものと、法律で決められているものがあります。

古殿
古殿
また、基本給の計算における各種控除には税金などの控除は含まず、ここでは欠勤や遅刻など労働実績によって差し引くべき額のみを基本給から引きます。

 

税金・社会保険料を計算

次に、総支給額に基づいて税金・社会保険料を計算します。

 

一般的なサラリーマンの場合、給与にかかる税金・保険料は以下の通りです。

  • 所得税
  • 住民税
  • 健康保険料
  • 介護保険料(40歳以上のみ)
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料

 

所得税や住民税は、給与の金額によって税率が変わり、「総支給額×税率」で計算します。累進課税制度を採用しているので、給与の金額が高くなると、税率も高くなります。

 

社会保険料は金額が毎年度更新され、都道府県によっても保険料が異なります。

また、船員・公務員・教員など、一般的な社会保険には加入せず、業種別の保険に加入する人もいます。

 

その他控除額を計算

控除額とは、個別の条件により税金の支払いが免除される金額のことです。

 

一般的なサラリーマンに適用される控除は、以下のものがあります。

  • 基礎控除
  • 所得控除
  • 給与所得控除
  • 扶養控除
  • 配偶者控除
  • 社会保険料控除

 

これらの控除額には課税されないので、税金の計算をするときは総支給から控除額を差し引いてから税率をかけます。

古殿
古殿
また、通勤手当のように各種手当の中にも課税対象とならないものがあるので、それらも総支給から差し引きます!

 

給与の支払いと記録をする

最後に、給与計算で算出された金額を、間違いがないよう各従業員に支払います。

もちろん支払って終わりではなく、後に記録を残せるよう台帳処理などの事務手続きも必要です。

 

(2)給与計算の難しさ

給与計算は従業員を雇っている会社全てに発生する基本的な業務ですが、内容はそう簡単ではありません。

なぜ給与計算は難しいのか、その理由を見ていきましょう。

 

①計算項目の多さと複雑さ

給与計算に必要な要素は大きく分けて「基本給」「税金・保険料」「控除額」の3つですが、その3つを細かく見ていくと非常にたくさんの項目に分かれています。

会社独自の規定・法令で決まっているものなど多様な種類があり、知識のない人がすぐに覚えられるものではありません。

 

また、税制度や保険料は毎年見直されるため、毎年度何らかの変更があります。社内で計算システムを構築してもすぐそれが使えなくなることもあり、順応するには大変な労力が必要なのです。

 

②ミスが許されない

先にも述べましたが、給与計算は従業員の生活に直結しているもの。少しでもミスがあると、従業員に不信感を抱かせて会社の信用が失墜してしまいます。

 

また、給与計算の遅れは給与の遅配にも繋がりますので、遅れも許されません。

複雑な業務にも関わらず、正確かつ迅速に作業を進めることが求められるのです。

 

③専門的な知識が必要

繰り返しになりますが、給与計算は複雑な計算が必要なので、なかなか簡単にこなせるものではありません。

ごく小規模な会社の場合は社長が自ら給与計算をしているケースも多いですが、ある程度規模が大きくなると経理の知識がある社員を雇わざるをえなくなります。

 

その上、一般的な税制の知識だけではなく、社内規定についても詳しくなる必要があるので、入社後の研修にも長時間を要してしまうのです。

 

④コストがかかる

給与計算は忙しさに波のある作業です。毎月の給与計算はもちろんありますが、年末調整が必要な12月や、新入社員が入社する4月には非常に業務量が多くなります。

 

特に小規模な会社では、ピーク時の業務量に合わせて人員を確保し、ピーク以外の時期も保持し続けるのは難しいでしょう。

情報漏洩などの観点から短期の派遣社員に任せるのも難しい仕事なので、給与計算に関わるコストに頭を悩ませる経営者は多いのです。

 

2.給与計算をアウトソーシングするメリット

それでは、給与計算をアウトソーシングすると、どのようなメリットがあるのかを考えていきましょう。

 

(1)正確に対応してくれる

給与計算のアウトソーシングを請け負うのは、給与計算に特化した専門チーム。知識を持った人員が、毎年の税改正などにも順応しながら正確に給与を計算してくれます。

 

自社の社員に一から教育するより、社員の負担を減らして、ミス・遅れを防ぐことができるのです。

 

(2)コストを削減できるケースも

給与計算をアウトソーシングすれば、雇用コストを削減できることも。経理事務の仕事の平均月収は27万円のため、給与計算をするために経理スタッフを雇用するとなるとそれなりのコストがかかります。

 

もちろん経理スタッフを雇用すれば給与計算以外の業務を任せることもできるので、単純な比較はできません。

しかし、ピーク時には多くの人員が必要になることなどを考えると、アウトソーシングの方が結果的に得になることも多いのです。

 

(3)本業に集中できる

社長や経理専門ではない社員が給与計算をしている場合、給与計算をしている時間は本来の業務ができません。給与計算は売り上げを生み出す仕事ではないので、社員にはなるべく本業に集中してほしいですよね。

 

給与計算を丸ごとアウトソーシングしてしまえば、業務時間の全てを本業に充てることができます。

それにより伸びる売り上げとアウトソーシングにかかる費用を比較すると、アウトソーシングの方がお得なこともあるのです。

 

3.給与計算をアウトソーシングするデメリット

給与計算のアウトソーシングは、実はメリットばかりではありません。

デメリット面も知って、自社に導入するべきかきちんと検討しましょう。

 

(1)追加費用がかかるケースも

アウトソーシングを請け負う会社は、クライアントとなる会社ごとに計算システムを構築して対応しています。

そのため、社内規定が改定になるとシステムにも変更の必要が出て、その作業に追加費用がかかることも。社内規定が何度も変わる会社だと、費用が嵩んでしまうケースもあります。

 

(2)社内で対応できる人材の育成ができない

給与計算を丸ごと外部に任せるということは、当然社内にノウハウが残らないということ。万が一、アウトソーシング会社が倒産したり、何らかの理由で急に契約を打ち切らなければいけなくなったりしたとき、給与計算ができる人がいないという状況に陥ります。

古殿
古殿
また、一度アウトソーシングした後で自社の経理に作業を戻したいというときも、社内にノウハウがないと社員教育のしようがなく、困ってしまうこともあるのです。

 

4.給与計算のアウトソーシングはどこにする?

それでは、給与計算のアウトソーシングを請け負っている会社には、どんな種類があるのかを見ていきましょう。

 

(1)会計事務所

給与計算のアウトソーシング会社として多いのが、会計事務所。ほとんどの会計事務所で、給与計算の請負業務を行なっていると思っていいでしょう。

 

非常に数が多いので、いきなり一社に決めず、数社で相見積もりを取るのがおすすめです。また、会計事務所なら給与計算以外にも決算など会計業務全般を依頼することもできます。

 

(2)社会保険労務士

従業員の数が多くなると、従業員の入退社や産休・育休の取得などが多くなり、保険にまつわる給与計算業務が多くなります。

 

そんな時は、社会保険の専門家である社会保険労務士に給与計算を依頼するのがおすすめ。十数人〜数百人規模の企業は、社会保険労務士に依頼するのが適しています。

 

(3)税理

小規模な会社でも、ほとんどは顧問税理士を依頼しています。

社員の人数が少ない場合、顧問税理士がサービスの一環として、低価格で給与計算を請け負ってくれることがあります。

 

スタートアップ企業で給与計算のコストを低く抑えたい場合、まずは顧問税理士に相談をしてみるのがおすすめです。

 

(4)アウトソーシングする場合の相場

給与計算のアウトソーシングサービスを利用する場合、かかる金額の相場は以下の通り。

  • ・基本料金:無料〜20,000円
  • ・追加料金(給与計算1人あたり):500〜1,000円

 

ほとんどのアウトソーシング会社で、サービス自体を利用するための「基本料金」に、1人あたりの給与計算作業にかかる「追加料金」が加算されるという料金システムを採用しています。例えば社員100人の会社の場合、相場料金は50,000〜120,000円くらいです。

なお、年末調整など追加業務が必要になる場合は、さらに追加料金がかかります。

 

(5)アウトソーシングする場合の必要な準備

給与計算をアウトソーシングするためには、以下のものを準備し、依頼する会社に提出します。

 

  • 就業規則や賃金規程:基本給や昇給基準、各種手当など、会社ごとのルールを記した書類が必要です。
  • 従業員名簿と賃金台帳:従業員の名簿と、扶養控除や手当にまつわる書類が必要です。不正をしている社員がいないとも限らないので、一定期間ごとに見直しましょう。
  • タイムカードや出勤簿:従業員の勤怠を把握するため、出勤・退勤時間などを記録します。

 

5.給与計算のアウトソーシングを検討する基準

給与計算のアウトソーシングを検討する基準は、従業員の人数や、今いる人員に対する業務量です。

10人以下の小規模な企業など、すでに雇用している従業員の中で給与計算業務まで十分手が回っているなら、もちろんアウトソーシングを検討する必要はないでしょう。

 

従業員数が数十人〜百人を超えてくると、多くの企業が給与計算をアウトソーシングしています。

給与計算のために経理スタッフを雇用しても、従業員の増加とともに対応しきれなくなり、結局アウトソーシングに切り替えるというケースも。

古殿
古殿
コスト面も、ピーク時に数百人分の給与計算ができるほど大人数の経理スタッフを雇うより、アウトソーシングにした方が抑えられます。将来的に目指す会社の規模など、将来性も視野に入れてアウトソーシングを検討するといいでしょう。

 

6.給与計算をアウトソーシングせずに無料でする方法はある?

給与計算をアウトソーシングせず無料で行いたいなら、社長やすでに雇用している従業員に業務を割り振るしかありません。

しかし、経理の知識がない人材だと、わからないところは勉強しながらこなすしかないのでミスや遅れが発生することも。

 

コスト削減も大切ですが、給与計算は正確性が一番です。他の業務を圧迫しないためにも、会社の拡大とともにアウトソーシングを視野に入れて検討した方がいいでしょう。

 

7.まとめ

給与計算はどんな会社にも発生する業務ですが、内容はそう単純ではありません。

必要な知識量が多く、間違いは許されない業務なので、自社内で対応できなければアウトソーシングがおすすめです。

古殿
古殿
アウトソーシングなら、専門スタッフが対応するため正確な仕事が期待できます。コスト削減になることもあるので、会社の規模が拡大してきたら給与計算のアウトソーシングを検討してみましょう。

 

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