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2020/02/27 免税事業者とは|課税事業者とどっちがお得?

免税事業者とは、消費税の納付が免除される事業者のこと。消費税の納付義務はありませんが、消費税分の上乗せ請求はできるため、免税事業者であることのメリットは大きいです。

 

しかし、2023年に始まるインボイス方式の影響で、免税事業者はお得なだけではなくなります。

免税事業者の要件や、今後の展望について詳しく見ていきましょう。

 

 

1.≪免税事業者とは≫

免税事業者について知るには、まず消費税の仕組みを知る必要があります。

 

通常、事業者は商品やサービスの値段に消費税を上乗せし、顧客や取引先から消費税を徴収します。

課税事業者は、消費者からいったん預かった消費税を、後日まとめて国に納付する義務があるのです。

 

このように、実際に税金を負担する人と税金を納める人が違うため、消費税は「間接税」と呼ばれています。

商品の仕入れのために事業者が支払った消費税は、「仕入税額控除」という形で納付額から差し引くことができます。

 

免税事業者とは、この消費税の納付を免除される事業者のことです。

免税事業者となるためには、売上額や資本金額など一定の要件を満たす必要があります。

 

2.≪免税事業者となる基準≫

免税事業者となるための基準は、次の3つです。

 

・基準期間の課税売上高が1,000万円以下

・資本金の額または出資金が1,000万円未満

・新規開業から2年以内

 

(1)基準期間の課税売上高が1,000万円以下

免税事業者となる要件一つ目は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下ということです。

基準期間とは、以下の通り。

 

・個人事業主の場合:その年の前々年

・法人の場合:その事業年度の前々事業年度

 

つまり、大まかにいえば、売上高が1,000万円を超えるまでの期間と、その後2年間は免税事業者ということになります。

ただし、例外として、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えている場合は免税事業者と認められません。

 

この特定期間とは、以下の期間を指します。

 

・個人事業主:その年の前年の1月1日〜6月30日までの6ヶ月間

・法人:その事業年度の前事業年度開始日から6ヶ月間

 

要するに、2年前の売上が1,000万円以下であっても、前年に半年間で1,000万円以上の売り上げがあると課税事業者になるということです。

 

(2)資本金の額または出資金が1,000万円未満

基準期間の売上が1,000万円以下だったとしても、資本金が1,000万円以上の法人は消費税の納付が免除されません。

資本金1,000万円以上の事業者は、原則的に課税事業者となるということです。

 

起業するとき、資本金はできる限り多く用意した方が金融機関等からの印象はいいですが、このボーダーラインがあるため資本金を1,000万円以下に抑える企業も多いです。誰にも相談することなく資本金を決定してしまうと、第1期目から消費税を納税しないといけないケースも出てくるので、会社設立の際には税理士に相談すべきでしょう。

 

(3)新規開業から2年以内

先にも触れたように、免税事業者かどうかを判断する「基準期間」は、その年の前々年または前々事業年度です。

開業から2年以内の事業者は、当然2年前の売上はありません。どんな事業者でも、新規開業から2年以内は免税事業者ということになります。

 

個人事業主が法人化した場合には、法人化した時点で個人事業主時代の売上はリセットされます。

免税事業者である期間を伸ばすために、売上が1,000万円を超えた時点で法人化する個人事業主も多いのです。

 

また、先にもお伝えしたように、資本金・出資金1,000万円以上の法人は免税事業者にはならないため、設立1期目から消費税を納付する義務があります。

 

3.≪免税事業者でも消費税の上乗せ請求は可能?≫

ここまでの説明を見ると、消費税の納付義務がない免税事業者が商品やサービスの料金に消費税を上乗せするのは、一見フェアではないように思えます。

 

しかし、免税事業者であっても消費税を上乗せ請求することは可能です。

なぜなら、消費税法や国税庁の通達では「免税事業者は消費税を請求してはいけない」という決まりがないためです。

また、消費税を上乗せ請求できないと、仕入れなどの際に他の事業者に支払う消費税を自己負担しなければいけないことになります。

 

経理処理上は、免税事業者は「税抜き処理」「税込み処理」どちらを選択してもいいことになっています。

ちなみに、2019年10月1日の消費税引き上げに伴い、消費税には「区分記載請求書保存方式」が導入されました。仕訳や請求書では税率8%の品目と税率10%の品目を分けて表示する必要があります。

 

4.≪課税事業者とどちらが得?選択のポイント≫

それでは、課税事業者と免税事業者では、どちらが得になるのかを見ていきましょう。

 

(1)インボイス方式導入で免税事業者は不利に?

消費税率引き上げ・軽減税率導入に伴って、2023年10月から「適格請求書等保存方式(インボイス方式)」が始まります。

これによって変わるのは、仕入れなどで他の事業者に支払った消費税を納付時に相殺する「仕入税額控除」のシステムです。

インボイス方式が導入されると、事業者は適格請求書(インボイス)に記載された消費税のみしか仕入税額控除ができなくなります。

 

インボイスを発行できるのは、登録を受けた課税事業者のみ。免税事業者はインボイスを発行できないため、この制度が始まると免税事業者から取引先事業者に消費税を請求するのが難しくなります。

そうなると、仕入れの際に支払った消費税は免税事業者が自己負担することになります。

 

また、インボイスを発行できないことが理由で、取引先がインボイス発行可能な同業他社へ乗り換えてしまう可能性もあり、免税事業者は不利になってしまいます。

そのため、インボイス方式が導入される2023年10月以降は、課税事業者の方がメリットは大きいケースが多くなります。

 

インボイス方式は、2023年10月から段階的に始まり、2029年10月以降は免税事業者からの仕入れに関わる仕入税額控除が完全にできなくなる予定です。

現在、免税事業者になっている事業者も、時期を見て課税事業者に移行するべきでしょう。

 

(2)課税事業者のほうが良い場合とは

インボイス方式導入前であっても、課税事業者の方が有利な場合もあります。

 

課税事業者になった方が有利なのは、消費者から預かる消費税より、取引先に支払う消費税の方が多いケース。仕入税額控除の制度を利用して、差額分の消費税の還付を受けることができます。

 

①輸出をしている

ここまで解説してきた消費税のやりとりは、あくまで国内での取引の場合。輸出による売上高は免税取引なので、そもそも預かる消費税は0円です。

 

しかし、輸出するために国内業者から仕入れた商品の代金や、物流サービスの料金は、当然消費税が含まれた金額を支払います。

輸出を行なっている事業者は預かる消費税より支払う消費税の方が多く、免税事業者の条件に当てはまっていても、課税事業者として申告した方が得できるのです。

 

②設備投資の額が大きい

設備投資には多額のお金がかかりやすく、支払う消費税が多くなりやすくなります。

 

例えば、不動産業者がビルを建てて貸し出した場合、まずビルの建設に多額の建設費と、それに伴う消費税がかかります。

その後、ビルを貸し出して家賃収入を得たとしても、その年中に借主から預かる消費税より、建設のために支払った消費税の方が多くなるはずです。

 

多額の設備投資を行なった場合には、課税事業者になった方が消費税の還付を受けられ、得できるということになります。

 

5.≪まとめ≫

免税事業者となるための条件は、2年前の売上高が1,000万円以下であることと、資本金が1,000万円以下であることです。

免税事業者は、代金に消費税を上乗せ請求できるにも関わらず、納税の義務はないため、最大10%の得ができることになっています。

 

しかし、2023年にはインボイス方式が始まり、免税事業者は仕入税額控除の仕組み上不利になります。免税事業者の申告納税は任意なので、状況を見て経営にとって得になる判断をするようにしましょう。

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2020/02/20 基礎控除とは?税制改正に伴う変更のポイントも解説

所得税・住民税の計算をするとき、誰でも所得から差し引くことができるのが「基礎控除」です。

現在、基礎控除は一律38万円ですが、税制改正により令和2年度以降の所得は計算方法が変わります。

 

今回は、税制改正で変更となる点や、基礎控除の計算方法を詳しく解説します。

関連して、給与所得控除・相続税の基礎控除についても見ていきましょう。

 

 

1.≪基礎控除とは≫

基礎控除とは、全ての納税者が所得額から差し引ける控除のことです。

まずは、基礎控除の基本的な知識について知っていきましょう。

 

(1)所得税の基礎控除

そもそも控除とは、個人の事情に合わせて課税額を調整するためにある制度です。

例えば、一人身で特段の事情がない人と、養う家族がたくさんいたり、重い病気にかかっている人では、生活にかかる金額が異なります。

それなのに、所得額が同じなら一律で同額の税金を徴収していると、不公平が生じてしまうのです。

それを調整するために、一定の条件に当てはまる人は、総所得から控除を差し引いて課税所得を減らすことができるようになっています。

 

しかし、基礎控除は個人の事情に関係なく、誰にでも適用される控除です。

その金額は、現在38万円です。

つまり、年間の所得が38万円以下であれば、課税所得は0となり所得税がかからないことになります。

また、サラリーマン・アルバイトなどで、給与所得を得ている方には追加で、最小でも65万円の「給与所得控除」も受けられます。

このため、年間所得が「基礎控除38万円+給与所得控除65万円」の「103万円」なら、給与所得者は所得税がかかりません。

家族の扶養に入っている場合などに言われる「103万円の壁」は、基礎控除と給与所得控除の金額が根拠になっているのです。

 

ただし、令和2年度(2020年1月1日~12月31日)の所得にかかる所得税から、基礎控除の金額が改定されます。

この税制改正については、後の項目で詳しく解説します。

 

(2)住民税の基礎控除

所得税だけではなく、住民税にも基礎控除があります。

住民税の基礎控除額は、33万円です。

また、住民税には「人的非課税」という非課税制度があります。これは、生活保護世帯など一定の条件を満たしている場合、住民税を納める必要がないという制度です。

さらに、納税者に扶養親族がいない場合、所得金額が35万円以下なら住民税は課税されません。

そのため、住民税の基礎控除は基本的には33万円ですが、非課税限度額は35万円と言えます。

 

2.≪「基礎」以外のおもな「控除」≫

誰でも受けられる基礎控除以外に、様々な条件を満たすと受けられる控除があります。

その中から、適用される人が多い「扶養控除」「配偶者控除/配偶者特別控除」「社会保険料控除」について解説していきます。

 

(1)扶養控除

扶養控除とは、子供や親など、配偶者以外の家族・親族を扶養している場合に受けられる控除です。

配偶者を扶養している場合の控除は制度が異なるため、次の項目で解説します。

 

税制上、「扶養している」と言える家族・親族の条件は、以下の通りです。

・年間の所得金額が38万円以下(給与所得103万円以下)

・16歳以上の親族(6親等内の血族または3親等内の姻族)

・納税者と生計を一にしている

 

このような家族・親族が納税者の収入で生活していると、一人当たり以下の金額が控除されます。

・一般の控除対象扶養親族(16歳以上):38万円

・特定扶養親族(19歳以上23歳未満):65万円

・老人扶養親族(70歳以上・同居老親等以外):48万円

・老人扶養親族(70歳以上・同居老親):58万円

 

(2)配偶者控除/配偶者特別控除

配偶者控除・配偶者特別控除は、妻・夫を扶養している場合に受けられる控除です。

配偶者控除に当てはまる家族の条件は、以下のようになっています。

・配偶者であること

・納税者と生計を一にしていること

・配偶者の年間の合計所得金額が38万円以下であること

・青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、又は、白色申告者の事業専従者でないこと

 

配偶者控除の金額は、以下の通りです。

 

納税者の所得が900万円以下の場合

一般の控除対象配偶者:38万円

老人控除対象配偶者:48万円

 

納税者の所得が900〜950万円の場合

一般の控除対象配偶者:26万円

老人控除対象配偶者:32万円

 

また、配偶者特別控除は、以上の条件のうち収入面のみ満たしていない場合に受けられます。

配偶者特別控除は、年間所得が38万円以上123万円以下の場合かつ、納税者の所得が1,000万円以下の場合に適用されます。

配偶者特別控除の金額は、納税者と配偶者の所得金額のバランスによって異なります。

 

(3)社会保険料控除

社会保険料控除は、納税者本人や生計を一にしている家族・親族の社会保険料を支払った場合に適用されます。

控除金額は、支払った社会保険料の全額です。

 

3.≪税制改正で基礎控除はどう変わる?≫

令和2年度(2020年1月1日~12月31日)分の所得から、基礎控除額・給与所得控除額が変更になることを国税庁が決定しました。

基礎控除に関わる税制改正の内容について、詳しく見ていきましょう。

 

(1)税制改正のポイント

今回の税制改正では、

・基礎控除額の引き上げ

・給与所得控除額の引き下げ

が行われます。

以下の項目で、変更点を詳しく解説します。

 

①基礎控除引き上げ

まず、現在38万円の基礎控除額は、最大48万円に引き上げられます。

これまでは、所得総額に関わらず基礎控除は一律でしたが、改正以降は所得金額によって基礎控除の金額が異なるようになります。

税制改正後の、年間の合計所得金額と基礎控除の関係は以下の通り。

 

【所得税の基礎控除額】

〜2,400万円:48万円

2,400万円〜2,450万円:32万円

2,450万円〜2,500万円:16万円

2,500万円〜:なし

 

また、これに伴い、現在一律33万円となっている住民税の基礎控除も変更になります。

 

【住民税の基礎控除額】

〜2,400万円:43万円

2,400万円〜2,450万円:29万円

2,450万円〜2,500万円:15万円

2,500万円〜:なし

 

②給与所得控除引き下げ

給与所得者に適用される給与所得控除は、基礎控除とは逆に最大10万円引き下げられます。

また、給与所得控除の上限金額が適用となるのも、現行の1,000万円から850万円に引き下げられます。

税制改正後の、給与収入金額と給与所得控除の関係は、以下の通りです。

 

〜162.5万円:55万円

162.5万円〜180万円:収入金額×40%ー10万円

180万円〜360万円:収入金額×30%+8万円

360万円〜660万円:収入金額×20%+44万円

660万〜850万円:収入金額×10%+110万円

850万円〜:195万円(上限)

 

(2)税制改正で税金は上がる?下がる?

今回の税制改正を大まかにまとめると、「年収850万円以上の人は増税・850万円以下の人は変わらない」と言えます。

年収850万円以下の方は、基礎控除額と給与所得控除額がそれぞれ±10万円のため、実質的には影響を受けません。

年収850万円以上の方は、基礎控除額と給与所得控除額の合計が改正前よりも少なくなるため、所得税が増税されます。

また、給与所得控除に関係がない自営業やフリーランスの方は、基礎控除額の引き上げのみが適用されるため、減税となります。

 

4.≪相続税の基礎控除の仕組み≫

所得税や住民税だけではなく、相続税にも基礎控除があります。

亡くなった人の財産を相続すると相続税が発生しますが、相続したのが一定の金額以下なら納税や申告が必要なくなるのです。

このボーダーラインを、相続税の基礎控除と言います。

相続税の基礎控除の計算方法は、以下の通りです。

 

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

 

法定相続人とは民法で定められた相続人のことです。

内縁関係の配偶者や、義理の息子・娘といった関係の人は、実際に遺産を相続するとしても法定相続人には含まれません。

例えば、法定相続人の数が3人の場合、計算式は以下のようになります。

 

3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円

 

この場合、遺産の合計額が4,800万円以下なら相続税の申告・納税をする必要はありません。

また、遺産が4,800万円を超えている場合には、4,800万円を超えた金額にのみ相続税が課せられます。

 

5.≪まとめ≫

税制改正により、基礎控除は+10万円、給与所得控除は−10万円になります。

給与所得者で、年収850万円以下の方には影響がありませんが、年収850万円以上の方は増税、個人事業主やフリーランスの方は減税となります。

これにより、扶養控除や配偶者控除・配偶者特別控除の基準も変わるため、令和2年度分の確定申告には注意が必要です。

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2020/02/13 復興法人税とは?用途や税率、前倒し廃止の理由を解説

復興法人税は、東日本大震災の復興の財源とするため、法人に課せられていた特別税です。

徴収期間は2012年4月1日から2014年3月30日までで、当初の予定より1年早く廃止されました。

 

今回は、この復興法人税の概要や、廃止が前倒しされた理由について詳しく解説します。

また、個人向けの特別税である「復興所得税」についてもご紹介いたします。

 

1.≪復興特別法人税の概要≫

まずは、復興特別法人税とは何か、その概要について知っていきましょう。

 

(1)復興法人税とは

復興法人税とは、2011年に発生した東日本大震災の復興のための施策に必要な財源を確保するために実施された特別税で、平成23年12月に公布されました。

復興法人税の具体的な使い道は、以下の通り。

 

・被災者支援…被災者の生活再建への支援等

・住宅再建・復興まちづくり:復興道路などの社会インフラ整備等

・産業・生業(なりわい)の再生:観光復興や水産業の販路開拓支援等

・原子力災害からの復興・再生:避難指示が解除された区域での生活支援等

 

さらに詳しく復興法人税の使途を知りたい場合は、「東日本大震災復興特別会計歳出暫定予算予定額各目明細書」や復興庁のホームページで確認することができます。

 

復興法人税の課税対象は、全ての所得がある法人です。一般的な会社だけではなく、設立前の会社・町内会・政党要件を満たさない政治団体・マンションの管理組合といった、収益目的ではない法人でも、所得があれば課税されます。

 

ただし、赤字の会社などで法人税が課税されない場合には、復興法人税も同じく課税されません。

復興法人税が課税される法人は、各課税事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内に復興特別法人税申告書を提出し、納税額を確定します。

 

2012年4月1日から、通常の法人税に上乗せして復興法人税の徴収が始まりました。

当初、徴収時期は2015年3月30日までの予定でした。しかし、2014年4月の消費税率引き上げの影響を考慮して1年早く廃止されました。

復興法人税の廃止については、後の項目で詳しく解説します。

 

(2)復興法人税の税率

復興法人税の税率は、「法人税額の10%」です。各事業年度の法人税課税額に対して、10%の税率をかけたものが復興法人税額となります。

大まかにいうと、復興法人税の徴収期間は、それ以外の期間と比べて法人税が1.1倍になるというイメージです。

 

ただし、利子など一定の所得に課された復興所得税など、復興法人税から控除できる金額もあります。

そのため、単純に法人税が必ずしも1.1倍になるというわけではありません。

 

また、復興法人税から控除しきれない復興所得税の額がある場合には、申告書を提出することで還付を受けることができます。

 

2.≪法人税引き下げと復興法人税との関係≫

復興法人税の制度は、2011年12月に行われた法人税率の引き下げとセットで実施されています。

先にお伝えしたように、復興法人税は法人税の納税額に基づいて決定されるので、復興法人税が追加で課されたとしても、実質的には減税となりました。

 

(1)軽減税率との関係

平成23年12月以前の、法人に課せられる法人税率は以下の通りでした。

 

大企業:30%

中小企業(年間所得800万円以上):30%

中小企業(年間所得800万円以下):22%

 

そして、平成23年12月の改正で、法人税率は以下のように引き下げられます。

 

大企業:25.5%

中小企業(年間所得800万円以上):25.5%

中小企業(年間所得800万円以下):15%

 

前の項目でお伝えした通り、復興法人税は法人税の10%なので、「法人税+復興法人税」の税率は以下のようになります。

 

大企業:28.05%

中小企業(年間所得800万円以上):28.05%

中小企業(年間所得800万円以下):16.5%

 

このように、法人税引き下げ・復興法人税の実施で、大企業と年間所得800万円以上の中小企業は「1.95%」、年間所得800万円以下の中小企業は「5.5%」もの減税になったのです。

震災復興のために税収が必要となるのにも関わらず、法人に対して実質的な減税を行なったことで、当時は「企業優遇」という批判の声も上がりました。

 

(2)地方税との関係

次に、法人が納める地方税と復興法人税の関係を見ていきましょう。

 

地方事業税に関しては、復興法人税の影響はありません。地方事業税は法人の所得が課税標準となり、復興法人税の実施に際して税率の変更もなかったため、従前通りです。

 

地方住民税については、税率自体に変更はないものの、課税標準となるのが法人税額なので、法人税引き下げ・復興法人税導入の影響を受けます。

先に触れたように、法人税は1.95%または5.5%の減税となるため、地方住民税も連動して減額されます。

 

3.≪復興特別法人税の「前倒し廃止」とは≫

復興法人税が実施された当初、課税期間は課されるのは2012年4月1日から2015年3月30日まで(9月決算法人では9月30日まで)の予定でした。

 

ところが、2014年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられた影響で終了が1年前倒しされ、2014年3月30日(9月決算法人では2014年9月30日)で廃止されました。

消費税増税以外の廃止理由としては、賃金引上げを含む経済の好循環に繋がる、外国企業の誘致を促進し国際的競争力を高める、などが挙げられています。

 

具体的に、いつから復興法人税がかからなくなったかというと、3月決算の法人では2014年4月1日以降の事業所得、9月決算の法人では2014年10月1日以降の事業所得です。

個人の所得から徴収される復興特別所得税は、予定通り25年間続くため、たった2年で廃止された復興法人税は法人税率の引き下げと同じく「企業優遇」と批判を受けました。

しかし、復興法人税の廃止で浮いた金額を、従業員の賃上げに回すよう推進するということで断行されています。

 

4.≪継続中の復興特別所得税との違い≫

復興法人税の他に、復興特別税には復興所得税というものもあります。

 

復興法人税と復興所得税の違いは課税の対象者です。復興法人税は先にも触れた通り法人に、復興所得税は個人に課せられます。

 

復興所得税は全ての納税者が支払う税金です。サラリーマンなどの給与所得者は、源泉所得の際に復興所得税額も含めた金額を徴収されます。

給与以外の所得がある個人事業主等は、確定申告で所得税と復興所得税をあわせて申告し、納税します。

また、源泉徴収義務者は、従業員の給与からあらかじめ徴収した復興所得税を法定期限までにまとめて納付しなければなりません。

 

復興所得税が徴収されるのは、2013年1月1日から2037年12月31日までの25年間です。

この期間中は、全ての納税者が通常の所得税に復興所得税を上乗せして納税します。

 

復興所得税の税額は所得税額の2.1%です。個人の所得税は、所得金額が高くなるほど税率も上がる累進課税制度を採用しているため、復興所得税の金額や負担割合も所得が高くなるほど高くなります。

 

5.≪まとめ≫

復興法人税は日本国内の法人が東日本大震災の復興のために納める税金です。

個人向けの復興所得税より税率は高いですが、法人税引き下げと同時に実施されて実質的に減税になったことや、短期間で廃止されたことが批判の的になったこともあります。

 

復興法人税はすでに廃止されている税金のため、今後の経理業務に登場することはありません。

しかし、復興所得税は徴収期間が2037年まで続くため、源泉徴収や確定申告の際に気をつけておく必要があります。

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2020/02/06 役員借入金とは?役員借入金を減らす6つの方法

役員借入金とは、役員から法人に貸し付けたお金のことをいいます。上手く利用すれば節税にもなる役員借入金ですが、その金額が膨らんでしまうと様々なデメリットが生じます。

 

今回は、役員借入金が増えてしまった場合のデメリットと、その解決方法を解説いたします。

役員借入金は、借入をするメリットとデメリットを踏まえて適切に利用する必要があります。

 

 

1.≪役員借入金とは?≫

役員借入金とは、会社の役員から会社に対して貸し付けているお金のことで、勘定科目では「役員借入金(負債)」と仕訳します。

逆に、役員が会社から借りているお金のことは役員貸付金と言い、勘定科目では「役員貸付金(資産)」となります。

 

役員借入金が発生するのは、主に以下のような場合です。

 

会社の資本金が足りない時、役員のポケットマネーで立て替えた

法人設立時の開業費等の費用

 

役員借入金のメリットは、金融機関や他社からの借入とは違い、返済期日や利息が自由に定められることです。

もちろん、いずれは返済する必要がありますが、経営状態に余裕のあるタイミングで都合よく返済することができます。

 

さらに、返済するときには当然会社から役員へお金を支払うことになりますが、これは報酬ではなく借入金の返済なので、税金や社会保険料がかかりません。

元本の返済ではなく、利息についても同様なので、役員は利息分については非課税の収入を得ることができるのです。

 

また、役員借入金の利用法として、借入金を増額することで資本金を3,000万円以下に抑え、中小企業向けの税制度を受けるという使い方もあります。

さらに、役員借入金の利息は経費にできるため、適正な利息を役員に支払うことで会社の経費を増やし、利益調整することもできます。

 

2.≪役員借入金が増えるとどうなる?≫

先に役員借入金のメリットをお伝えしましたが、一方で役員借入金が増えてしまうことによるデメリットもあります。

 

取締役会の承認が必要に

金融機関の印象悪化

相続税の対象になる

 

以下の項目で、詳しく見ていきましょう。

 

(1)取締役会の承認が必要に

役員借入金には、金融機関からの借り入れのようなビジネスという側面がありません。

そのため、役員から会社にお金を貸す時には、無利子での賃借が認められています。

 

しかし、利益調整などの目的で利息を設定する場合には利益相反取引に該当するため、取締役会での承認が必要となります。

役員借入金の返済利息は、お金を貸す役員個人では決めることができないのです。

 

(2)金融機関の印象悪化

いくら身内からの借り入れであっても、役員借入金は決算書類上の負債に該当します。

 

また、役員借入金は法人の経営状況が健全であれば、そもそも発生させる必要がない項目なので、金融機関からの印象が悪くなります。

経営状態に問題がないのに役員借入金が多い企業は、役員個人のお金と会社のお金の区別がついていないルーズな会社と思われてしまいかねません。

 

先に解説したようなメリットがあるとはいえ、役員借入金は乱用するべきものではないのです。

 

(3)相続税の対象になる

会社にお金を貸している役員が亡くなった場合、役員借入金も相続税の課税対象です。相続人にとっては、会社に対する債権が相続財産になります。

 

もし、会社の業績が悪く、相続人に対して返済することができない場合も、相続放棄をしない限りは相続人が債権を引き継ぐことになります。そのため、相続人から見ると、戻ってくる見込みがないお金に対して相続税が生じる可能性があるのです。

役員借入金の金額が大きくなればなるほど、相続税負担も重くなります。

 

3.≪役員借入金を減らす6つの方法≫

それでは、上記のデメリットをなくすため、役員借入金を減らす方法を6つご紹介します。

 

(1)役員報酬を減額

役員借入金が増えてしまう原因として、会社の資本に対して役員報酬が高すぎるという問題が挙げられます。

過剰な節税対策で役員報酬の金額を上げすぎると会社に資本が残らず、役員が自分の報酬を役員借入金として会社に戻さざるを得なくなっているのです。

 

その場合には、役員報酬の金額を見直すことで負のスパイラルから抜け出すことができます。

役員借入金が膨らみすぎてしまった企業では、まず役員報酬の減額を考えてみましょう。

 

(2)債務免除する

会社にお金を貸した役員が債務免除をすれば、当然、役員借入金を減らすことができます。

 

ただし、債務免除された金額は「債務免除益」として利益に組み込まれ、法人税の課税対象となります。(消費税については課税売上とはならず、消費税の納税額が増えることはありません。)

また、財産の贈与とみなされて贈与税が発生する場合もあるので注意してください。

 

(3)後継者へ贈与する

役員借入金を後継者に贈与する「暦年贈与」という方法があります。

 

この方法は、役員が亡くなった場合を見越した相続税対策として使えます。

生前に贈与しておけば、贈与税の基礎控除額である110万円の範囲内であれば贈与税はかかりません。

相続税がネックになりそうな役員借入金は、万が一の事態が起こる前から計画的に減らしておくのが大切です。

 

また、役員が亡くなった時、相続税の税務調査に備えておくため、暦年贈与の際は必ず贈与契約書を作成しましょう。

 

(4)DES活用

DESは「Debt Equity Swap」の略です。

「債務と資本を交換する」という意味で、役員借入金を返済する代わりに、役員に会社の株式を発行します。

 

この方法を使うことで、実際に現金を動かすことなく役員借入金を減らすことが可能です。

 

(5)生命保険を活用する

生命保険の解約返戻金や死亡保険金を使って、役員借入金を減らすこともできます。

生命保険料を損金に計上しながら解約返戻金を簿外に貯めていき、その貯まった資金で役員に借入金を返済するという方法です。

 

ただし、解約返戻金には契約上もっとも得ができるタイミングがある(返戻率が年々推移するため。)ので、解約時期を決めて計画的に利用する必要があります。

 

(6)代物返済

代物返済とは、役員の承諾を得て現金以外のもので役員借入金を返済することです。

会社が保有している自己株式、不動産、在庫商品などで、役員借入金を相殺することができます。

 

ただし、会社と役員間の取引はルーズになりがちなので、税務調査などで代物返済にあてた物の時価総額などが問われる場合があります。

会社や役員にとって都合のいい取引ではなく、他者の目から見ても公正と思える取引で返済しなければいけません。

 

4.≪役員借入金は決算書でも工夫が必要≫

先にもお伝えしたように、役員借入金は仕訳では負債に組み込まれます。

身内からの借入金であっても借金は借金なので、決算書上で負債が多すぎるのは問題です。

金融機関や取引先からの印象を良くするためには、役員借入金の扱い方に工夫が必要です。

 

役員借入金は、返済利息だけではなく返済期間も自由に設定することができます。

ですから、役員借入金の返済期間はできるだけ1年以上の長期に定め、決算書上は「固定負債」に組み込まれるようにしましょう。

そうすることで流動負債を減らし、流動比率(流動資産÷流動負債)を良く見せることができるのです。

また、固定長期適合比率(固定資産÷(固定負債+自己資本))についても、流動比率と連動して良い値になります。

 

5.≪まとめ≫

役員借入金は、使い方によっては節税に役立つこともあります。

しかし、そもそも会社の経営状態が健全なら発生させる必要はなく、決算書上では負債となるため金融機関からの印象も悪くなります。

また、役員が亡くなった場合には相続税の対象となるため、あまり増やしすぎず、できるだけ早く返済していくのが理想です。

今回ご紹介した6つの方法を使って、役員借入金が増えすぎないように調整しましょう。

 

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2020/01/29 営業利益とはなにか?他の利益との違いや計算方法を解説

損益計算書に登場する様々な項目は、企業の経営状況を見極めるヒントとなります。

今回は、その中の「営業利益」について詳しく解説していきます。

 

企業が本業で得た利益を示す営業利益を見れば、その会社の競争力を知ることができます。

営業利益率を求め、他社と比較することで、会社がどのような戦略で経営しているかもわかりますよ。

 

 

1.≪営業利益とは?≫

営業利益とは、その会社が本業で稼いだ利益のことです。自動車製造業なら自動車、製薬会社なら薬の販売など、その会社が主とする事業で得た利益のことを営業利益と呼びます。

 

似た言葉に「売上総利益」や「経常利益」がありますが、それぞれ営業利益とは意味が違います。

売上総利益は物やサービスを販売して得た収益から、仕入原価を引いたものです。

それに対して、営業利益は、仕入原価以外にかかった経費である「販売費および一般管理費」を抜いたもののことを言います。販売費および一般管理費には、人件費・家賃地代・宣伝費などが含まれます。

 

経常利益は会社が本業で得た利益以外に、不動産収入や配当収入、サイドビジネスの収益などを加えたものです。本業で得た利益以外については、支払利息や雑損失などの経費もマイナスして計上します。

 

2.≪営業利益と他の利益との違い≫

決算期に企業が作成する損益計算書には、「利益」とつく項目が5つあります。

この項目では、それぞれの違いと関係性を知っていきましょう。

 

(1)売上総利益

売上総利益とは、商品の売り上げによって獲得した利益のことで、「売上高—売上原価」という計算式で求めます。例えば50円で仕入れた商品を100円で売っている場合、50円が売上利益。その売上利益の一決算期分の合計が、売上総利益となります。

建設業や飲食業などで、「粗利」という用語をよく使いますが、粗利とは売上総利益のことを指しています。

 

営業利益と売上総利益を比べると、人件費や家賃などの販売費・管理費にどれだけの金額を割いているかがわかります。

売上総利益は多いのに営業利益が少ないという場合、原価以外の管理費がかかりすぎている可能性があります。

 

逆に、営業利益に比べて売上総利益が少ないと、商品の仕入原価が高すぎるということを意味します。

 

(2)営業利益

先にも解説しましたが、営業利益は企業が本業で獲得した利益です。

会社がいくつかの事業を行なっていたり不動産収入などの不労所得があったりする場合は、それらを除いた本業のみの利益を示します。

 

営業利益は「売上総利益—販売費及び一般管理費」という計算式で求めることができます。

売上総利益から、人件費や家賃などの経費を差し引いたものというイメージですね。

 

(3)経常利益

経常利益は、会社の本業と本業以外の利益を合計したもののことを言います。計算式は「営業利益+営業外収益—営業外費用」です。

営業外収益としては、会社が所有している不動産の家賃収入や、本業以外のサイドビジネスの利益などが考えられます。

 

営業利益と経常利益の関係を見ると、会社の本業が順調かどうかわかります。

経常利益の中で営業利益の占める割合が多い場合、会社のメイン収入を本業のみに頼っているということで、経営は順調ですがリスク分散ができていない可能性があります。

 

それに対して、営業利益が占める割合が低い場合、本業以外に会社を支える事業や資産があるということで、もし本業が傾いたとしてもダメージが少ないと予想できます。

 

(4)税引前当期純利益

税引前当期純利益とは、法人税などを支払う前の利益のことを言います。

 

経常利益との違いは、特別利益・特別損失が計算に入ることです。

特別利益・特別損失とは、通常の経営では起こらない臨時的な利益や損失のことです。例えば、株や不動産の売却益や盗難・災害による損失など、一度限りの損益のことを言います。

 

税引前当期純利益は、「経常利益+特別利益—特別損失」という計算式で求めます。

 

(5)当期純利益

当期純利益は、税引前当期純利益から税金を差し引いて、最終的に会社の手元に残る利益のことです。

「税引前当期純利益—法人税等」という計算式で求めます。

結局、一年で会社がどれだけ稼いだのかという結果は、当期純利益を見て判断します。

 

3.≪営業利益の計算方法≫

それでは、営業利益の計算方法について解説していきます。

 

(1)営業利益の計算式

営業利益を求めるための計算式は、以下の通りです。

 

・営業利益 = 売上総利益 - 販売費及び一般管理費

 

ここでは、会社が本業以外で得た収益や、一時的な収入・損失は計算には入れません。

あくまで本業に関して、売上総利益から仕入れ以外の経費を引いたものが営業利益となります。

 

(2)「売上総利益(粗利益・粗利)」とは?

先にも解説しましたが、売上総利益は1年間の全ての売上金額から仕入原価を引いたもの。同じ意味で、粗利益・粗利と呼ばれることもあります。

 

売上総利益は、その企業の競争力を示します。

例えば、同じものを同じ価格で、同じ個数売った場合、仕入原価を抑えられた会社の方が売上総利益は大きくなります。同規模の会社と売上総利益を比較することで、自社の仕入れノウハウがどの程度なのかを測ることができるのです。

 

売上総利益は、以下の計算式で求められます。

 

・売上総利益 = 売上高 — 売上原価

 

(3)「販売費及び一般管理費」に含まれる勘定科目

販売費及び一般管理費には、仕入原価以外の経費が含まれます。

具体的に、販売費及び一般管理費となる勘定科目は以下のものです。

 

・給料

・賞与

・法定福利費

・福利厚生費

・広告宣伝費

・接待交際費

・旅費交通費

・支払手数料

・賃借料

・通信費

・水道光熱費

・保険料

・減価償却費

・租税公課

・消耗品費

 

4.≪売上高営業利益率とは?≫

売上高営業利益率とは、売上高に対する営業利益の比率です。

これを見ることで、その企業が本業でどれだけ効率的に利益を生み出せたかがわかります。

 

(1)利益率の計算方法

売上高営業利益率は、以下の計算式で求めます。

 

売上高営業利益率(%) = 営業利益 ÷ 売上高 × 100

 

先にもお伝えしましたが、売上高営業利益率は売上高に対する営業利益の割合です。

本業で稼いだ金額から、原価も経費も引かない状態の売上高と営業利益を比べ、割合をパーセンテージで算出します。

 

(2)利益率から何が分かる?

売上高営業利益率からわかるのは、品物の原価にどれだけの利益率を乗せて販売しているかということです。

これが高ければ高いほど、その会社は付加価値の高い商品を販売しているということで、ブランド力や競争力があるということになります。

 

ただし、逆に売上高営業利益率を低くして、大量に売ることで利益を出すという戦略も考えられるため、売上高営業利益率が高ければ高いほどいいというわけではありません。

 

(3)優良企業の利益率の目安

売上高営業利益率の理想的な数値は、企業ごとの経営戦略によるため、一概には言えません。

 

ちなみに、日本企業の売上高営業利益率ランキングでトップの「アサックス」は71.08%となっています。

アサックスは不動産担保ローンを扱う会社で、商品の製造・販売など実際の「モノ」を扱う業種より、サービスを扱う業種の方が売上高営業利益率は高いです。

 

全業種での売上高営業利益率の平均値は3.4%となっていて、物販関係の業種ごとの平均値は以下の通りです。

・製造業:4.7%

・卸売業:1.4%

・小売業:2.7%

 

人件費や設備費用が多くかかる製造業・小売業では、全体的に売上高営業利益率が高く、その間の卸売業ではやや低めという傾向があります。

 

5.≪まとめ≫

営業利益はその企業が本業で稼いだ金額から、仕入原価や経費を引いたものです。

会社の中心的な事業が、どれだけの利益をあげているのかという指標になります。

 

売上総利益や経常利益と比較することで、本業の経営が順調かどうか、仕入れノウハウが優れているかどうかを判断できます。

今回お伝えした知識を、企業研究や経営分析をする時にぜひ役立ててみてください。

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2020/01/22 「雑所得」に含まれる収入と申告方法

雑所得には、年金・副業による収入・先物取引やFXによる収入などが含まれます。

会社員は20万円以上、その他の方は1円でも雑所得があると、確定申告が必要です。

 

今回は、雑所得の具体例や計算方法、確定申告の方法について詳しくご紹介いたします。

無申告だと追徴課税を課せられる可能性もあるので、雑所得がある方は申告方法を知っておきましょう。

 

 

1.≪雑所得とは?概要と具体例≫

雑所得とは、定義付けされた9種類の所得に含まれない、その他の所得のことです。

まずは、雑所得と他の所得の違いや、雑所得が発生する具体例などを解説していきます。

 

(1)所得の種類

所得は、その発生理由によって9種類に分類されています。

 

・利子所得:預金・貸付金などの利子

・配当所得:株式などの配当金

・不動産所得:所有する不動産から得る家賃地代

・事業所得:事業を行なって得た所得

・給与所得:会社から得た給与・賞与

・退職所得:退職金

・山林所得:所有する山林の木などを譲渡して得た所得

・譲渡所得:土地・建物・株式・会員権などを譲渡して得た所得

・一時所得:懸賞・ギャンブルの払戻金・生命保険の一時金など一度限りの所得

 

これらのどの種類にも当てはまらない所得を、雑所得と呼びます。

 

(2)雑収入・事業所得・一時所得との違い

雑所得と雑収入は、言葉は似ていますが違う意味を持っています。

 

まず雑所得とは、先にも解説した通り、定められた9つのカテゴリに含まれない所得のことです。

一方、雑収入とは、事業に関連して得た本業以外の収入のこと。例えば、事業を行う中で得た空き箱などを売却した収入や、会社のものを貸し出した時のリース料などが該当します。

この雑収入は、事業に関連しているものなので事業所得に含まれ、雑所得とは根本から異なるものなのです。

 

次に、一時所得と雑所得の違いは、一時的なものかどうか、また儲けようとして得たものどうかで判断します。

一時所得に含まれる懸賞やギャンブル等の払戻金、生命保険の一時金などは、基本的に一度限りかつ偶発的で、事業や労働の対価として得たものではありません。

 

そういった一時所得の条件を満たさず、かつ他の所得に当てはまらないものを雑所得と呼びます。

 

(3)雑所得の具体例

雑所得の具体例を挙げると、以下のようなものがあります。

 

・年金・恩給など公的年金

・副業による収入

・ネットオークションの売上金

・先物取引・FX・仮想通貨などで得た収益

・本業以外で得た原稿料・印税・講演料など

・非営業用貸金の利子

・外貨建預金の為替差益

・生命保険などの個人年金保険

・税務署等からの還付金

 

2.≪雑所得と税額の計算方法≫

それでは、雑所得と、雑所得に課せられる税額の計算方法を解説していきます。

 

(1)雑所得の計算方法

雑所得の計算方法は、公的年金とその他の雑所得で異なります。

 

・公的年金:収入金額ー公的年金等控除額=公的年金等の雑所得

・その他の雑所得:総収入金額ー必要経費=その他の雑所得

 

年金所得とその他の雑所得が両方ある場合は、この2つの合計を計算します。

 

(2)雑所得の税額は?

雑所得は給与所得など他の全ての所得と合計して総所得額を算出し、そこに所得税率をかけて税額を計算します。

所得税は累進課税制度が採用されていて、所得額が上がると税率も上がる仕組みです。

 

所得額に対する、所得税の税率一覧は以下の通り。

 

〜195万円:5%

195〜330万円:10%

330〜695万円:20%

695〜900万円:23%

900〜1,800万円:33%

1,800〜4,000万円:40% 

4,000万円〜:45%

 

ただし、雑所得のうち、先物取引によるものは申告分離課税の対象です。

申告分離課税とは、一時的に大きな金額が手に入ったとき、その分だけを所得と切り離して考えることで、実情に沿わない高額納税を避ける制度です。

先物取引で出た雑所得には、金額に関わらず一律で20.135%の税率が課せられます。

 

3.≪雑所得の確定申告はどうする?≫

雑所得が生じた場合には、一定の場合をのぞいて確定申告が必要です。

雑所得の確定申告が必要なケースや、具体的な申告方法を解説していきます。

 

(1)20万円以下なら申告不要?

「20万円以下の雑所得なら、申告不要」という話を聞いたことがある人も多いと思います。

 

しかし、これが適用されるのは、サラリーマンなど会社から給与所得を得ている人のみです。

例えばサラリーマンが副業をしたり、ネットオークションで物を売ったりして雑収入を得た場合なら、その金額が年間20万円以下なら確定申告の必要がありません。(ただし、住民税の申告は所得の金額の大小に関係なく必要になります。)

それ以外のフリーランスや主婦/主夫などの方は、雑収入が20万円以下であっても確定申告が必要です。

 

また、給与収入を得ている場合でも、年収が2,000万円以上の方、会社で年末調整を受けていない方は確定申告を行います。

 

(2)申告免除でも住民税申告が必要なケースとは

雑所得が20万円以下で、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は必須です。

なぜなら、所得税を納めるのは国、住民税を納めるのは地方自治体で、それぞれ申告要件が異なるためです。

雑所得が20万円以下で所得税の申告が不要だからといって、住民税の申告を行わないと、無申告と見なされてしまいます。

 

雑所得が20万円以上あり所得税の確定申告を行なった場合には、そのデータが住民税の計算にも流用されるため、改めて申告する必要はありません。

 

(3)認められる必要経費・認められない必要経費

必要経費とは、その所得を得るために必要な経費のことです。

 

例えば、商品を仕入れ、ネットショップで販売して収入を得ているなら、

・商品の仕入れ代金

・ネットショップのシステム利用料

・ラッピングや送料

・通信費

・交通費

・パソコンやスマートフォンの購入費

・家賃や倉庫の賃料

・賃貸物件を維持するための光熱費

・販促費・広告費

・業務のための借入金の利息

などが必要経費と認められます。

 

ただし、自宅で業務を行なっている場合、部屋・パソコン・通信費・光熱費などはプライベートで使うこともあるでしょう。

その場合は家事按分といって、それらを業務に使用している面積・時間などの割合をかかった金額にかけたものが必要経費として認められます。

 

完全にプライベートで使った費用や、確定申告で所得控除の対象となる生命保険などは必要経費として認められません。

雑所得の金額は、稼いだ総額ではなく、総額からこれらの必要経費を差し引いて計算します。

 

(4)雑所得の申告方法の具体例

それでは具体的な雑所得の申告方法を、ケース別に解説していきます。

 

①サラリーマンの副業

サラリーマンが副業で20万円以上の雑所得を得ている場合、確定申告が必要です。

 

まず、副業で得た収入の総額から必要経費を差し引き、雑所得の金額を算出します。

所得が給与所得と雑所得のみの場合は、確定申告書Aを使い、源泉徴収票と帳簿を参考にして収入金額と所得金額を書き込みましょう。

 

副業をしていることを会社に知られたくない場合には、会社に住民税の通知が届かないよう第二表にある「住民税に関する事項」の「自分で納付」に〇をつけて提出します。

 

②オークションやフリマなどの収入

ネットオークションやフリマを利用して収入を得た場合、課税対象にならない取引もあります。

それは、生活用動産の売買です。

 

生活用動産とは、生活に必要な動産(不動産以外の財産)うち、30万円以下のものです。

家具・衣服・書籍・自動車・安価な貴金属などの取引は非課税となるので、20万円以上の所得があっても確定申告の必要はありません。

 

一方、30万円以上の高級品を売却した場合は、その所得を雑所得として確定申告する必要があります。

確定申告の方法は上記で説明したサラリーマンのケースと同様で、給与所得がなく雑所得のみの場合には、該当する項目にだけ記入します。

 

③確定申告に必要な書類

確定申告書はAとBの2種類です。

その年に得た所得が、給与所得・雑所得・総合課税の配当所得・一時所得のいずれかの場合は、確定申告書Aを使用します。他に事業所得・山林所得・不動産所得などがある場合には、確定申告書Bを使用します。

 

他に確定申告に必要な書類は、以下の通りです。

・本人確認書類

・所得を証明する書類(源泉徴収票・支払調書など)

・控除を受けるための書類

 

4.≪雑所得の確定申告を行うメリット≫

雑所得の確定申告を行うメリットは、払いすぎた税金が還付される可能性があることです。

副業でも、支払い元が所得税を源泉徴収している場合があり、その場合は払いすぎた所得税が戻ってきます。

 

また、雑所得は確定申告をしない場合のリスクが大きく、税務署に無申告がバレてしまうと追徴課税が課せられる可能性があります。

追徴課税の税率は重く、実際に支払うべきだった税額よりかなり余計な出費になってしまうため、雑所得があった場合には正直に申告しておいた方がいいのです。

 

5.≪まとめ≫

雑所得は、定められた所得のカテゴリに当てはまらない、年金・副業・先物取引などで得た所得のことです。

年末調整を受けているサラリーマンは、雑所得が20万円以下であれば確定申告の必要がありませんが、その他の方は雑所得の金額がいくらでも申告をする必要があります。

 

また、所得税の確定申告が必要ない方も、住民税の申告は必須です。

無申告の場合は重い追徴課税が課せられることもあるので、雑所得を得た方は申告を忘れないようにしましょう。

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2020/01/15 租税公課とは?経費として計上できる税金を解説

租税公課とは、企業・個人事業の帳簿に登場する勘定科目です。その名の通り、租税(税金)と公課(公的負担金)を合わせたものですが、実は税金であっても租税公課に含まれないものもあります。

 

今回は、租税公課に含まれるもの・含まれないものを詳しく解説。

帳簿付けには必ず必要な勘定科目なので、しっかりと内容を把握しておきましょう。

 

 

1.≪租税公課とは何か≫

租税公課とは、「租税」つまり国や地方に納める税金の一部と、「公課」国や公共団体などに支払う交付金・会費などの公的な課金を合わせた勘定科目です。ちなみに、読み方は「そぜいこうか」です。

 

おおまかに言うと、税金や公的負担金を経費として計上するための科目ですが、税金の中には租税公課に含まれないものもあります。

租税公課の対象になるもの・ならないものは、次からの項目で詳しく解説します。

 

2.≪「租税」「公課」の対象になるもの≫

それでは、租税公課の対象となるものを「租税」と「公課」に分けてご紹介していきます。

 

(1)「租税」の対象になるもの

租税の対象となるのは、国・地方に納める税金のうち、事業に関連していて、ペナルティ等の意味合いがないものです。

 

①国税

租税に含まれる国税には、以下のようなものがあります。

 

・登録免許税

・印紙税

・収入印紙

など

 

②地方税

地方税のうち、租税に含まれるのは以下のものです。

 

・固定資産税

・不動産所得税

・償却資産税

・自動車税

・軽自動車税

・自動車取得税

・自動車重量税

・事業税

など

 

(2)「公課」の対象になるもの

公課の対象となるのは、罰金や科料などを除いた公的負担金です。

 

➀各種手数料

まず、次のような市区町村役所などで支払う各種手数料は、租税公課に含まれます。

 

・印鑑証明書・住民票などの発行手数料

・その他公共サービスに対する手数料

 

②団体に対する会費・交付金

公的な団体(商工会・商工会議所・協同組合・同業者組合・商店会等)に対して支払う、会費や交付金なども租税公課の対象です。

 

・会費

・組合費

・賦課金

など

 

3.≪租税公課の対象にならないもの≫

税金や公的負担金の中でも、租税公課の対象にならないものもあります。事業そのものに関係のない税金・公的負担金は、経営者や会社が支払ったものでも経費としては認められません。

 

また、以下に挙げる税金等は、事業に関連していても租税公課には含まれません。

 

(1)所得税・外国法人税

所得税・住民税など、個人に対して課せられる税金は租税公課に含めることができません。なぜなら、事業に対してかかるのではなく、事業から得た所得に対して課せられるものだからです。

 

これらは、租税公課に含まれないだけではなく、損金算入することもできない税金です。

基本的には、事業と個人の口座を分けて個人のお金から支払いますが、やむをえず事業用の口座から支払って帳簿付けをする場合には、「事業主貸」という勘定科目を使います。

 

また、法人税額から控除する外国法人税についても、租税公課には含みません。

 

(2)法人税・都道府県民税・市町村税

企業にとっての所得税や住民税にあたる法人税・都道府県民税・市町村税も、租税公課に含めることができません。

こちらも個人の場合と同様、事業に対してかかるのではなく、事業から得た所得に対してかかる税金だからです。

 

これらの税金は、原則的に損金不算入とされています。

法人税・都道府県民税・市町村税を支払って帳簿付けする際は、「法人税等」という勘定科目を用います。

 

(3)各種加算税や加算金・延滞税や延滞金・過怠税

税金の支払いが遅れた時に課せられる、加算税・加算金・延滞税・延滞金・過怠税といったものも租税公課には含まれません。

支払いが遅れたことに対して発生する税金は、所得を減額して課税額を減らす要因にはならないためです。基本的に、ペナルティの意味を持つものは租税公課には含まれないと覚えておきましょう。

 

ただし、利子税と「地方税の納期限の延長に係る延滞金」の損金算入は認められています。

これらはどちらも、延納や申告期限の延長が認められた場合に発生する税金です。延滞税のようなペナルティとしての性質がないため、租税公課に含めて損金算入することができるのです。

 

また、社会保険料の延滞金も損金算入できることになっています。

 

(4)罰金・科料

交通違反や法規違反の際に発生する、罰金や科料も租税公課には含めません。延滞に関する罰金等と同じく、こちらもペナルティの意味合いを持つためです。

 

犯罪等による罰金によって支払う税金が減額されるのはおかしいので、租税公課に含めたり、損金算入したりすることはできなくなっています。

 

4.≪個人事業主の場合はここに注意!≫

個人事業主も、帳簿付けに租税公課という勘定科目を使うことがあります。

個人事業主が租税公課を扱う場合、企業とは違うポイントを見ていきましょう。

 

(1)事業主個人の税金は租税公課に含まれない

先にも触れましたが、所得税・住民税など、事業主個人に課せられる税金は租税公課に含みません。

これは、例え事業主が一人だけで運営している事業であっても、事業と個人は切り離して考えるためです。

事業主個人の収入や支出は事業とは関係ないため、租税公課に含めて損金算入することができません。

 

他には、

・家庭用の自動車関連税

・相続税

・贈与税

・国民年金保険料

・国民健康保険料

など、個人が支払う税金・公的負担金も、租税公課には含みません。

 

(2)消費税は経理方式で取り扱いが異なる

消費税については、経理方式によって租税公課に含めるかどうかが変わってきます。

経理方式には、「税込経理方式」「税抜き経理方式」の2種類があります。

 

・税込経理方式:売上高・仕入高に消費税を含めて計算する方法

・税抜経理方式:売上高・仕入高に消費税を含めず計算する方法

 

そして、それぞれの経理方式で、消費税の扱いは以下のようになります。

 

・税込経理方式:消費税を租税公課に含める

・税抜経理方式:消費税を租税公課に含めない

 

税抜経理方式の場合は、消費税を租税公課ではなく「未払消費税」という勘定科目で処理します。

 

ただし、個人事業だと、そもそも消費税の課税業者ではない場合も多いです。

開業してから2年以内の個人事業、また売り上げが1,000万円を超えない場合は、消費税の計算自体が必要ありません。

 

5.≪租税公課の対象ではないが控除の対象となるもの≫

税金や公的負担金の中には、租税公課には含まれないものの控除の対象となるものもあります。

 

(1)相続税

遺産を相続する際に発生する相続税は、経費に計上することができません。相続税の扱いに伴って、税理士等に依頼した場合の費用も同様です。

これは、相続税が事業に関係するものではないためです。

 

しかし、相続税は租税公課に含めることができなくても、控除対象となる税金です。

贈与税額控除・配偶者控除・未成年者控除・障害者控除・相次相続控除・外国税控除などを利用して、税金の支払い額を抑えることができます。

 

(2)国民健康保険や国民年金の保険料

こちらも広く捉えれば公的負担金ですが、事業ではなく個人に課せられるもののため経費に計上できません。

 

ただし、国民健康保険・国民年金は、所得税の社会保険料控除の対象です。

確定申告の書類には1年間に支払った社会保険料を記入する欄があり、そこに支払い額を記入すると所得から差し引かれて、結果的に節税になります。

 

6.≪まとめ≫

租税公課とは、事業に関して支払った税金・公的負担金を損金算入するための勘定科目です。

 

ただし租税公課に含まれない税金もあり、事業に関連しないもの・個人に課せられたもの・ペナルティの意味合いを持つものは損金算入できません。

少し複雑ですが、帳簿付けには必須の勘定科目のため、しっかり把握しておきましょう。

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2020/01/08 経常利益とは?計算方法と優良企業の見分け方

損益計算書に登場する様々な項目は、企業の経営状況を判断するための大きなヒントです。

 

今回は、その中でも「経常利益」について詳しく解説していきます。

企業の本業と、本業以外の収益を合わせた経常利益は、企業の実力を表す数字です。経常利益率を求めることで、業界の中でその会社がどのような位置付けなのかもわかりますよ。

 

 

1.≪経常利益とは何か≫

経常利益とは、企業が事業全体で得た利益のことを言います。

混同しやすい言葉に「営業利益」がありますが、意味が違い、これは企業が本業で得た利益のこと。

 

会社によっては、不動産収入や株の運用など、本業以外の部分で利益が出る場合があります。

経常利益は、企業が得た本業の利益と、本業以外の利益を合わせた、全ての利益の合計額を言います。

 

2.≪経常利益と他の利益との違い≫

決算期に企業が作成する損益計算書には、「利益」とつく項目が5つあります。

この項目では、それぞれの違いと関係性を知っていきましょう。

 

「売上総利益」

売上総利益とは、商品の売り上げによって獲得した利益のことです。

 

「売上高—売上原価」という計算式で求め、例えば50円で仕入れた商品を100円で売っている場合、50円が売上総利益。

その売上総利益の一決算期分の合計が、売上総利益となります。

 

「営業利益」

先にも触れましたが、営業利益は企業が本業で獲得した利益です。

自動車会社なら自動車の売り上げ、食品会社なら食品の売り上げという風に、会社の中心となる事業の利益のことを言います。

 

「売上総利益—販売費及び一般管理費」という計算式で求めることができます。売上総利益から、人件費や家賃などの経費を差し引いたものというイメージですね。

 

経常利益と営業利益の関係を見ると、企業がリスク分散できているかどうかや、経営のどこに問題点があるかがわかります。

例えば、営業利益が赤字なのに経常利益が黒字という場合、業績が悪化しているのにその他の部分からの収入が大きいことを示します。

本業が赤字でも、それをカバーするだけの収入源やサイドビジネスがあるということで、本業には改善の余地があるものの、リスク分散はできているということになるでしょう。

 

逆に、営業利益に比べて経常利益が少ない場合、本業の業績をそれ以外の経営が足を引っ張っているということになります。

 

③「経常利益」

経常利益は今回メインで解説していくものです。

先に解説したように、会社の本業と本業以外の利益を合計したもののことを言います。計算式は「営業利益+営業外収益—営業外費用」です。

 

営業外収益としては、会社が所有している不動産の家賃収入や、本業以外のサイドビジネスの利益などが考えられます。

 

④「税引前当期純利益」

税引前当期純利益とは、法人税などを支払う前の利益のことを言います。

経常利益との違いは、特別利益・特別損失が計算に入ることです。

 

特別利益・特別損失とは、通常の経営では起こらない利益や損失のことです。例えば、株や不動産の売却益や盗難・災害による損失など、一度限りの損益のことを言います。

 

税引前当期純利益は、「経常利益+特別利益—特別損失」という計算式で求めます。

 

⑤「当期純利益」

当期純利益は、税引前当期純利益から税金を差し引いて、最終的に会社の手元に残る利益のことです。

「税引前当期純利益—法人税等」という計算式で求めます。

結局、一年で会社がどれだけ稼いだのかという結果は、当期純利益を見て判断します。

 

経常利益と純利益の関係性を見ると、企業の安定性がわかります。

例えば、経常利益が赤字なのに純利益が黒字の場合。最終的に利益は残ったものの、通常の経営は赤字で、一時しのぎの特別利益で黒字を出したということになります。

このような企業は、近い将来経営が行き詰まる可能性の高い、赤字体質の企業と言えるでしょう。

 

逆に、経常利益は黒字なのに純利益が赤字という場合は、順調な経営を行っているところに突発的な損失があったと考えられます。この場合、その年は赤字だったとしても経営状態に関してそこまで心配する必要はないでしょう。

 

3.≪経常利益の計算方法≫

それでは、経常利益の具体的な計算方法や、含まれるもの・含まれないものを解説していきます。

 

➀経常利益の計算式

経常利益は、以下の計算式で求めます。

・経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用

 

営業利益とは、総売上から経費を差し引き、本業で得た利益です。

営業外収益は本業以外から得た収益で、営業外費用はそのためにかかった経費のこと。特別な損失や売却などは含めず、通常の経営を行う中で企業が得た利益を示します。

 

➁営業利益の出し方

営業利益の算出方法は、以下の通り。

・営業利益=売上総利益—販売費及び一般管理費

 

総売上からまずは仕入れにかかった原価を引き、そこから人件費・家賃などの全ての経費を引いたものが営業利益です。

 

➂営業外利益に含まれるもの

営業外利益に含まれるものは、企業が本業以外から得ている利益で、一時的ではないものです。

 

具体例を挙げると、

・所有している不動産の家賃収入

・所有している株式の配当金

・貸付金の利息

・有価証券利息

・為替差益

・本業以外の業務による売上

などが営業外利益に含まれます。

 

本業以外で得た利益であっても、固定資産の売却益や前期損益修正益など、通常の経営では発生しないものは営業外利益ではなく特別利益になります。

 

④営業外費用に含まれるもの

営業外費用には、通常の経営をする中で本業以外にかかった費用のことを言います。

 

具体例を挙げると、

・支払利息

・手形売却損

・有価証券売却損

・サイドビジネスの経費

などが営業外費用に含まれます。

 

固定資産売却損や前期損益修正損、盗難・災害による損失など、通常の経営では発生しない損失は特別損失になり、営業外費用には含みません。

 

4.≪経常利益はなぜ重要?≫

会社の経営状況を判断する際、なぜ経常利益が重要になるのでしょうか。

経常利益を見ることで、会社のどんな部分が判断できるのかを解説していきます。

 

➀企業の実力を表す経常利益

経常利益は、会社を通常に運営している場合に得られる総利益を示しています。

経常利益以降の税引前当期純利益や当期純利益には、一度限りの損益である特別利益・特別損失も含まれるため、実際の経営状況が判断できません。

 

また、営業利益だけでも会社本来の実力を判断することはできず、特に多角経営に乗り出している企業などは過小評価になりがちです。

会社の実際の実力や経営状況を見るには、経常利益がもっとも参考になるのです。

 

➁経常利益率を見れば優良企業が分かる!

経営が安定している優良企業を判断する目安として、経常利益率があります。

経常利益率は企業の売上高に対する経常利益のパーセンテージです。「経常利益÷売上高×100」という計算式で求めることができます。

 

経常利益率は、普通の企業で4%ほど、10%以上なら優良企業と言われています。

経常利益率が高い企業は、それだけ利益を生み出せる固定資産や収益事業をたくさん持っているということで、万が一本業が傾いても倒産するリスクが低いです。

 

ただし、経常利益率の目安は業界によって大きく異なり、上記の数字で一概に判断することはできません。

例えば、石油・ガス・鉱物業界は経常利益率が22.49%、銀行・信託業は14.74%など、一般の基準よりも経常利益率が高い業界もあります。

 

逆に、建設業は-204.01%など、全体の基準よりもかなり低くなっています。

企業研究や経営分析をする場合は、1社の数字だけではなく、業界の基準との比較を行うのも大切です。

 

5.≪まとめ≫

経常利益とは、会社の本業と本業以外の利益を合わせたもののこと。経常利益が大きい会社は経営が安定していて、倒産しにくい優良企業と言えます。

今回ご紹介した基準を参考に、企業研究や自社の経営分析を行ってみましょう。

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2019/12/25 決算書の読み方・目的を解説

決算書は、会社の財務状況が一目でわかるようにまとめた書類です。

決算期に1年分のまとめとして作成し、株主や関係会社への報告や、法人税を算出するための確定申告に用います。

 

今回は、決算書とは何なのかという基礎知識や、活用方法をご紹介。決算書を作成するための、具体的な作業スケジュールも解説します。

 

1.≪会社の家計簿?決算書とは

決算書は、会社の一定期間の経営成績や財務状況をまとめた書類です。

決算書に含まれる書類には、以下のようなものがあります。

・貸借対照表

・損益計算書

・株主資本等変動計算書

・キャッシュフロー計算書など

 

決算書は会社ごとに定めた年に1度の決算日から2ヶ月以内に作成し、これらを元に確定申告を行います。

税法改正の施行が4月1日になることが多いため、大多数の会社では3月に決算を行い、決算書もこの時期に作ります。

 

決算書は確定申告だけではなく、株主や取引先に対する業績報告や、金融機関から融資を受ける際の与信管理にも用いられる重要な書類です。

 

(1)決算書と財務諸表の違い

決算書とよく似た言葉として「財務諸表」があります。

2つの言葉が指すものはほぼ同じで、単純な言い換えもできますが、決算書の中でも有価証券報告書を提出する会社(上場企業など)が作成するものを財務諸表と呼びます。

 

ちなみに、それ以外の会社が作成する決算書は「計算書類」です。

同じ決算書でも、財務諸表と計算書類では含まれる書類の種類が異なります。

 

財務諸表

・賃借対照表

・損益計算書

・株主資本変動計画書

・製造原価報告書

・キャッシュフロー計画書

・附属明細表

 

計算書類

・賃借対照表

・損益計算書

・株主資本変動計画書

・個別注記表

 

2.≪決算書の読み方!財務三表はここをチェック≫

決算書を見ると、企業の経営状況を確認することができます。

決算書類の中でも代表的な

・損益計算書

・賃借対照表

・キャッシュフロー計画書

の3種類について、読み方を解説していきます。

 

(1)会社のもうけが一目瞭然「損益計算書」

損益計算書の構成は、左側に科目・右側に金額という形でシンプルな表です。

1事業年度で会社が使ったお金と儲けたお金を全てまとめ、どれだけ損失・利益があったかをまとめています。

 

まず、上の3つの項目「売上高」「売上原価」「販売費および一般管理費」で、会社の本業の経営成績がわかります。

「営業利益=売上高−売上原価−販売費および一般管理費」という計算で、会社の本業が赤字か黒字か、またその金額がどれだけかを表しています。

 

次の「営業外収益」「営業外費用」で、会社が本業以外に使ったお金と儲けたお金がわかります。

ここに含まれるのは家賃収入や支払利息など、本業以外で発生する金額の中でも恒常的なものです。「経常利益=営業外収益−営業外費用」という計算式になります。

 

最後に「特別利益」と「特別損失」は、会社の本業以外で、かつ突発的に発生したお金の動きです。資産の売買や、災害損失、盗難損失などが含まれます。

そして、全ての収益から全ての損失と費用を引いたものが「税引前当期利益」。

そこから支払いが発生する、法人税などの税金を引いたものが「当期利益」という見方になります。

 

(2)会社の財産チェック「貸借対照表」

賃借対照表は別名「バランスシート」とも呼ばれます。

表の左右でバランスをとって、同じ金額になるようにすることが名前の由来です。

 

賃借対照表に記載する項目は大きく「資産」「負債」「純資産」の3つのカテゴリに分かれていて、表の左側に資産、右側に負債と純資産が載っています。

 

資産とは、預金・売掛金・商品在庫・不動産など会社が持っている財産のこと。負債は借入金・買掛金・社債など、会社が負っている借金です。純資産は資本金・利益余剰金など、自己資本のことを言います。

 

計算式で表すと「資産=負債+純資産」となり、その会社にどれだけの財産と負債があるか、割合はどのようになっているかがわかります。

 

(3)会社の家計簿「キャッシュフロー計算書」

キャッシュフロー計算書とは、会社の現金が1事業年度でどのように動いたかを示す書類。項目ごとに、期首と期末の状況を比べてどのような収支になったかを記載します。

 

厳密に決まったフォーマットがあるわけではありませんが、大項目は「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」の3つに分けることが多いです。

 

営業キャッシュフローは商品販売やサービス提供など、会社の本業で得たキャッシュ量を表します。

投資キャッシュフローは事業の維持に必要となる資金です。固定資産の取得や売却などが当てはまります。「営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー」を「フリーキャッシュフロー」と呼びます。

財務キャッシュフローでは、会社の資金が不足したときに行なった資金調達の方法や、返済状況がわかります。

 

3.≪決算書の活用方法

決算書には、先にも触れたように3つの役割があります。

 

・税金の確定申告

・株主・関係会社に対する成果報告

・与信管理

 

しかし、この他にも決算書を活用して企業の健康状態を測る、「財務分析」という活用方法があります。

経営分析は決算書に記載されている数字を比較して、企業の「収益性」「安全性」「成長性」を分析するものです。

 

会社の収益性は、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」をそれぞれ売上高で割り、売上高利益率を求めることでわかります。

前年度よりこれらの値が大きくなっていると、1事業年度で会社の収益性が向上したと言えます。

 

安全性は会社の資産と負債を比較し、「流動比率(流動資産÷流動負債)」や「当座比率(当座資産÷流動負債)」を調べることで分析できます。

これらの数値は%で表し、高ければ高いほど安全な経営ができているということです。

 

成長性は売上高・総資産の規模などを、同社の前期や同業界の市場平均値と比較して確かめます。

「売上高成長率」や「経常利益成長率」を分析することで、会社の成長スピードや業界での位置付けがわかります。

 

4.≪良い決算書は毎日の入力作業から

決算書類は決算期に集中して作るものではありません。事業年度中、毎日のお金の出入りや使い道を記帳していき、その積み重ねが決算書になるのです。

間違いがない決算書類をスムーズに作成するためには、日々の帳簿付けが鍵になります。

 

そして、その帳簿をまとめて決算書にするのが、決算期の作業です。

例として、3月決算の企業で決算書を作成する場合の理想的なスケジュールと、それぞれの作業にかかる日数を見ていきましょう。

 

4月(1ヶ月):記帳

・通帳のコピーを取る

・データ入力の際に必要な情報を収集

・領収書・請求書を整理

 

5月上旬(10日):決算整理事項の確認

・決算整理仕訳を作成

・会計ソフトに仕訳を入力

・残高試算表を作成

・総勘定元帳を作成

 

5月中旬(10日):決算書の作成

・損益計算書・貸借対照表を作成

・個別注記表を作成

・勘定科目内訳書を作成

 

5月下旬(10日):申告書の作成

・法人税の申告書を作成

・地方税(事業税・都道府県税・市町村民税)の申告書を作成

 

5月末(10日):申告書の作成・税金納付

・法人税・消費税を税務署に申告

・地方税(事業税・都道府県民税)を都道府県税事務所に申告

・市町村民税を各市町村に申告

・金融機関で税金を納付

 

5月末(1日):書類保存

・決算書・申告書を決算報告書として保管

・保管義務のある書類を、定められた期間保存

 

5.≪決算書を提出する方法

作成した決算書は、株主・金融機関・税務署になどに提出します。

持参して手渡しが望ましいですが、提出先が多い場合には郵送も可能です。

 

決算書を郵送で提出する場合は、案内状・送付状を添えて信書として郵送します。ゆうパックやゆうメールは、信書を送ることができないためNGです。

 

6.≪まとめ≫

決算書は、毎年決算期に作成する重要書類。会社の1年間の利益や損失、財務状況をまとめて記載します。

主に株主や関係各社への成果報告・税金の申告・信用審査などに利用しますが、記載内容を元に会社の経営状況を診断することもできます。会社が何を重要視した決算書を作るのか?ここが分かっていると、数字の記載箇所・表示科目も変わってくることがあります。

 

経理関係者にとっては年に一度の大仕事となる決算書作成には、スケジュールをしっかり組んで計画的に取り組みましょう。

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2019/12/18 税効果会計をわかりやすく解説

税効果会計はなかなか理解が難しく、簿記の勉強でも躓く人が多い箇所です。

詳しい計算方法などは法改正で変わっていきますが、大まかな目的やメリットがわかれば税効果会計が理解しやすくなります。

 

今回は、複雑な概念である税効果会計の改正についてわかりやすく解説していきます。2018年の改正で、変更されたポイントについてもご紹介していきます。

 

 

1.≪税効果会計とは?目的と概要≫

税効果会計とは、会計上の利益額と税務上の利益額に差異がある場合、それを調整するために行う作業です。

 

企業が支払う法人税などは、法人税法で定められた計算方法で算出した利益額に対して課税されます。しかし、企業が会計業務で算出する利益の計算方法は、法人税法が定めるものとは異なるため、企業の実際の業績は税務上の利益に反映されないことがあるのです。

そのため、過剰または過少に算出された法人税等と、実際に支払うべき法人税等の金額の差を縮めるために税効果会計を行います。

 

ちなみに、2018年の改正以降、税効果会計の計算は簿記2級の試験に出題される範囲となりました。

 

2.≪税効果会計適用の手順とメリット≫

まずは、税効果会計を適用するための手順と、税効果会計を行うメリットを解説します。

 

(1)税効果会計の適用手順

税効果会計はざっくり言うと、「会計上と税法上の利益の差異を算出」→「差異金額に法定実効税率をかける」→「調整額を算出し、法人税等の金額に足し引きする」という手順で行います。

ちなみに、税効果会計で差異と認められるのは、将来的に解消が見込まれる「一時差異」のみです。

 

1.会計上の利益と税法上の利益の一時差異を算出

2.「差異金額×法定実効税率」で、繰延税金資産・繰延税金負債を算出

3.算出された金額を、「法人税等調整額」として損益計算書に計上

4.法人税等調整額を、税法上算出された法人税等に加算・減算して納付

 

一時差異とは、会計上と税法上で認識が異なる「貸倒引当金繰入超過額」「減価償却費」「退職給付引当金」「賞与引当金」「繰越欠損金」などのことです。

将来的に解消されるものの、認識時期が異なることで生じる差異を、税効果会計で調節する目的があります。

 

また、計算上で使用する「法定実効税率」は、以下の計算式で求めます。

法定実効税率

【法人税率×(1+地方法人税率+法人住民税率)+(法人事業税率+法人事業税標準税率×地方法人特別税率)】÷(1+事業税率+法人事業税標準税率×地方法人特別税率))

 

(2)税効果会計適用のメリット

税効果会計を適用するメリットは、企業会計上の損益と納付する税金額の関係がわかりやすくなることです。

税効果会計を導入することで、法人税等が課税される純利益がより会社の財政状態や経営成績の実態に近くなり、納付する税額も実態に即したものになります。

 

例えば、会計上は減価償却費に算入しているものの、税法上は上限金額を超えるため、損金不算入となっている経費がある場合などに税効果会計を導入するメリットがあります。

純利益の金額がより経営の実態に即した形になるため、利益に対して重すぎる税負担を避けることができるのです。

 

ただし、先にも触れたように、税効果会計で調整できるのは将来的に解消される一時差異のみ。税効果会計を適用することで結果的に節税になるということはありません。

 

3.≪「税効果会計に係る会計基準」の主な改正ポイント≫

2018年2月に、税効果会計に係る会計基準の一部改正がありました。

改正前とは異なる税効果会計の扱いについて、ポイントを見ていきましょう。

 

(1)子会社の株式資産についての将来加算一時差異の取扱い

改正以前は、子会社株式等に係る将来加算一時差異は、一律で繰延税金負債を計上するというルールがありました。

しかし、改正後は個別財務諸表での子会社株式等に係る将来加算一時差異の扱いが以下のように変わっています。

 

・親会社または投資会社が、その投資の売却等を当該会社自身で決めることができ、かつ、予測可能な将来の期間に売却等を行う意思がない:繰延税金負債を計上しない

・それ以外の場合:繰延税金負債を計上する

 

(2)中繰延税金資産の回収可能性の判定基準

税効果会計では、会社を5つのカテゴリに分けて繰延税金資産の回収可能性を判断します。

 

分類1:繰延税金資産の全額について回収可能性がある

・過去(3年)及び当期のすべての事業年度において、期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得が生じている。

・当期末において、近い将来に経営環境に著しい変化が見込まれない。

 

分類2:一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積る場合、当該繰延税金資産は回収可能性がある

・過去(3年)及び当期のすべての事業年度において、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が、期末における将来減算一時差異を下回るものの、安定的に生じている。

・当期末において、近い将来に経営環境に著しい変化が見込まれない。

・過去(3年)及び当期のいずれの事業年度においても重要な税務上の欠損金が生じていない。

 

分類3:将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)以内の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、当該見積可能期間の一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積る場合、当該繰延税金資産は回収可能性がある

・過去(3年)において、重要な税務上の欠損金の繰越期限切れとなった事実がある。

・当期末において、重要な税務上の欠損金の繰越期限切れが見込まれる。

 

分類4:将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)以内の課税所得の見積額に基づいて、当該見積可能期間の一時差異等のスケジューリングの結果、計上された繰延税金資産に ついては回収可能性がある

5年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを合理的に説明できる場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする

・過去(3年)及び当期において、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している

・過去(3年)及び当期のいずれかの事業年度においても重要な税務上の欠損金が生じていない

 

上記に該当していても、

 (A)将来において5年超にわたり課税所得が安定的に生じることを合理的に説明できるときは分類2に該当しているものとして扱う。

(B)将来においておおむね3年から5年程度は課税所得が生じることを合理的に説明できるときは分類3に該当しているものとして扱う

 

分類5:繰延税金資産の回収可能性はない

・過去(3年)及び当期のすべてで、重要な税務上の欠損金が生じている

・翌期においても重要な税務上の欠損金が生じることが見込まれている

 

2018年の改正では、分類2・3・4の基準や取り扱いについて変更がありました。

現在採用されているのは上記の基準なので、繰延税金資産の扱いにはこちらを用います。

 

(3)繰延税金資産および繰延税金負債の表示科目

改正前の税法では、繰延税金資産と繰延税金負債は、それに関わる資産や負債の内容に合わせて表示科目を選択する必要がありました。

2018年の改正以後は、繰延税金資産と繰延税金負債は以下のような表示科目で扱うことになっています。

 

繰延税金資産:投資その他の資産

繰延税金負債:固定負債

 

4.≪税効果会計の問題点≫

税効果会計を適用すると、実際の収益に基づいた税納付ができる反面、急激な経営状況の悪化に対応できません。

一時は一定の収益力があり、繰延税金資産を計上していた企業が、急激に業績を落として収益を上げられなくなると、将来法人税等を減算する予定が立たなくなってしまうのです。

 

先に多く納付した法人税等を取り戻す機会がなくなり、多額の繰延税金資産が毀損する事があり得ます。過去には、2003年にりそな銀行の将来の収益性が疑問視され、大きな社会問題になったこともありました。

 

5.≪まとめ≫

税効果会計は会計上と税務上の利益の差異を調整することが目的の作業です。

法人税等の課税所得が実際の経営利益と近くなり、実態に即した適正な納税ができるというメリットがあります。

 

頻繁に改正が行われている分野なので、計算方法や法定実効税率については適宜財務省のホームページなどで確認しながら対応しましょう。

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