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2019/12/25 決算書の読み方・目的を解説

決算書は、会社の財務状況が一目でわかるようにまとめた書類です。

決算期に1年分のまとめとして作成し、株主や関係会社への報告や、法人税を算出するための確定申告に用います。

 

今回は、決算書とは何なのかという基礎知識や、活用方法をご紹介。決算書を作成するための、具体的な作業スケジュールも解説します。

 

1.≪会社の家計簿?決算書とは

決算書は、会社の一定期間の経営成績や財務状況をまとめた書類です。

決算書に含まれる書類には、以下のようなものがあります。

・貸借対照表

・損益計算書

・株主資本等変動計算書

・キャッシュフロー計算書など

 

決算書は会社ごとに定めた年に1度の決算日から2ヶ月以内に作成し、これらを元に確定申告を行います。

税法改正の施行が4月1日になることが多いため、大多数の会社では3月に決算を行い、決算書もこの時期に作ります。

 

決算書は確定申告だけではなく、株主や取引先に対する業績報告や、金融機関から融資を受ける際の与信管理にも用いられる重要な書類です。

 

(1)決算書と財務諸表の違い

決算書とよく似た言葉として「財務諸表」があります。

2つの言葉が指すものはほぼ同じで、単純な言い換えもできますが、決算書の中でも有価証券報告書を提出する会社(上場企業など)が作成するものを財務諸表と呼びます。

 

ちなみに、それ以外の会社が作成する決算書は「計算書類」です。

同じ決算書でも、財務諸表と計算書類では含まれる書類の種類が異なります。

 

財務諸表

・賃借対照表

・損益計算書

・株主資本変動計画書

・製造原価報告書

・キャッシュフロー計画書

・附属明細表

 

計算書類

・賃借対照表

・損益計算書

・株主資本変動計画書

・個別注記表

 

2.≪決算書の読み方!財務三表はここをチェック≫

決算書を見ると、企業の経営状況を確認することができます。

決算書類の中でも代表的な

・損益計算書

・賃借対照表

・キャッシュフロー計画書

の3種類について、読み方を解説していきます。

 

(1)会社のもうけが一目瞭然「損益計算書」

損益計算書の構成は、左側に科目・右側に金額という形でシンプルな表です。

1事業年度で会社が使ったお金と儲けたお金を全てまとめ、どれだけ損失・利益があったかをまとめています。

 

まず、上の3つの項目「売上高」「売上原価」「販売費および一般管理費」で、会社の本業の経営成績がわかります。

「営業利益=売上高−売上原価−販売費および一般管理費」という計算で、会社の本業が赤字か黒字か、またその金額がどれだけかを表しています。

 

次の「営業外収益」「営業外費用」で、会社が本業以外に使ったお金と儲けたお金がわかります。

ここに含まれるのは家賃収入や支払利息など、本業以外で発生する金額の中でも恒常的なものです。「経常利益=営業外収益−営業外費用」という計算式になります。

 

最後に「特別利益」と「特別損失」は、会社の本業以外で、かつ突発的に発生したお金の動きです。資産の売買や、災害損失、盗難損失などが含まれます。

そして、全ての収益から全ての損失と費用を引いたものが「税引前当期利益」。

そこから支払いが発生する、法人税などの税金を引いたものが「当期利益」という見方になります。

 

(2)会社の財産チェック「貸借対照表」

賃借対照表は別名「バランスシート」とも呼ばれます。

表の左右でバランスをとって、同じ金額になるようにすることが名前の由来です。

 

賃借対照表に記載する項目は大きく「資産」「負債」「純資産」の3つのカテゴリに分かれていて、表の左側に資産、右側に負債と純資産が載っています。

 

資産とは、預金・売掛金・商品在庫・不動産など会社が持っている財産のこと。負債は借入金・買掛金・社債など、会社が負っている借金です。純資産は資本金・利益余剰金など、自己資本のことを言います。

 

計算式で表すと「資産=負債+純資産」となり、その会社にどれだけの財産と負債があるか、割合はどのようになっているかがわかります。

 

(3)会社の家計簿「キャッシュフロー計算書」

キャッシュフロー計算書とは、会社の現金が1事業年度でどのように動いたかを示す書類。項目ごとに、期首と期末の状況を比べてどのような収支になったかを記載します。

 

厳密に決まったフォーマットがあるわけではありませんが、大項目は「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」の3つに分けることが多いです。

 

営業キャッシュフローは商品販売やサービス提供など、会社の本業で得たキャッシュ量を表します。

投資キャッシュフローは事業の維持に必要となる資金です。固定資産の取得や売却などが当てはまります。「営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー」を「フリーキャッシュフロー」と呼びます。

財務キャッシュフローでは、会社の資金が不足したときに行なった資金調達の方法や、返済状況がわかります。

 

3.≪決算書の活用方法

決算書には、先にも触れたように3つの役割があります。

 

・税金の確定申告

・株主・関係会社に対する成果報告

・与信管理

 

しかし、この他にも決算書を活用して企業の健康状態を測る、「財務分析」という活用方法があります。

経営分析は決算書に記載されている数字を比較して、企業の「収益性」「安全性」「成長性」を分析するものです。

 

会社の収益性は、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」をそれぞれ売上高で割り、売上高利益率を求めることでわかります。

前年度よりこれらの値が大きくなっていると、1事業年度で会社の収益性が向上したと言えます。

 

安全性は会社の資産と負債を比較し、「流動比率(流動資産÷流動負債)」や「当座比率(当座資産÷流動負債)」を調べることで分析できます。

これらの数値は%で表し、高ければ高いほど安全な経営ができているということです。

 

成長性は売上高・総資産の規模などを、同社の前期や同業界の市場平均値と比較して確かめます。

「売上高成長率」や「経常利益成長率」を分析することで、会社の成長スピードや業界での位置付けがわかります。

 

4.≪良い決算書は毎日の入力作業から

決算書類は決算期に集中して作るものではありません。事業年度中、毎日のお金の出入りや使い道を記帳していき、その積み重ねが決算書になるのです。

間違いがない決算書類をスムーズに作成するためには、日々の帳簿付けが鍵になります。

 

そして、その帳簿をまとめて決算書にするのが、決算期の作業です。

例として、3月決算の企業で決算書を作成する場合の理想的なスケジュールと、それぞれの作業にかかる日数を見ていきましょう。

 

4月(1ヶ月):記帳

・通帳のコピーを取る

・データ入力の際に必要な情報を収集

・領収書・請求書を整理

 

5月上旬(10日):決算整理事項の確認

・決算整理仕訳を作成

・会計ソフトに仕訳を入力

・残高試算表を作成

・総勘定元帳を作成

 

5月中旬(10日):決算書の作成

・損益計算書・貸借対照表を作成

・個別注記表を作成

・勘定科目内訳書を作成

 

5月下旬(10日):申告書の作成

・法人税の申告書を作成

・地方税(事業税・都道府県税・市町村民税)の申告書を作成

 

5月末(10日):申告書の作成・税金納付

・法人税・消費税を税務署に申告

・地方税(事業税・都道府県民税)を都道府県税事務所に申告

・市町村民税を各市町村に申告

・金融機関で税金を納付

 

5月末(1日):書類保存

・決算書・申告書を決算報告書として保管

・保管義務のある書類を、定められた期間保存

 

5.≪決算書を提出する方法

作成した決算書は、株主・金融機関・税務署になどに提出します。

持参して手渡しが望ましいですが、提出先が多い場合には郵送も可能です。

 

決算書を郵送で提出する場合は、案内状・送付状を添えて信書として郵送します。ゆうパックやゆうメールは、信書を送ることができないためNGです。

 

6.≪まとめ≫

決算書は、毎年決算期に作成する重要書類。会社の1年間の利益や損失、財務状況をまとめて記載します。

主に株主や関係各社への成果報告・税金の申告・信用審査などに利用しますが、記載内容を元に会社の経営状況を診断することもできます。会社が何を重要視した決算書を作るのか?ここが分かっていると、数字の記載箇所・表示科目も変わってくることがあります。

 

経理関係者にとっては年に一度の大仕事となる決算書作成には、スケジュールをしっかり組んで計画的に取り組みましょう。

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2019/12/11 法人税等とは?「法人税等調整額」の取り扱いも解説

損益計算書や賃借対照表で用いる、「法人税等」という言葉。

法人税や、それに類する税金を表すことは予想できますが、具体的に何が含まれているのか知っていますか?

 

今回は、法人税等に含まれる税金や、会計処理上の扱いについて解説。ほぼ全ての企業で毎年必要になる作業なので、法人税等の仕訳や処理方法を知っておきましょう。

 

 

1.≪法人税等とは?

企業の経理業務には、「法人税等」という言葉が登場します。

文字通り「法人税や、それに類するもの」という意味ですが、具体的にどんなものが法人税等に含まれるのかはご存知ですか?

 

法人税等には、以下の3つの税金が含まれています。

 

・法人税

・住民税

・事業税

 

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

 

(1)法人税

「法人税等」というくらいなので、当然法人税等のメインは法人税です。

法人税は会社の所得に対して課税される税金で、個人事業主における所得税にあたります。そのため、「法人所得税」と呼ばれることもある税金です。

 

法人税の税率は法人の区分や所得金額により異なり、所得金額が高くなるほど税率も上がる「累進課税制度」が採用されています。

国に対して納める国税で、法人税等に含まれる税金の中では唯一の国税となっています。

 

(2)住民税

法人税等に含まれる税金2つ目は、住民税です。法人税等に含まれる住民税は、個人のものと区別するために「法人住民税」と呼ばれることもあります。

 

法人住民税は法人が事業所を置く市区町村に納付する税金です。法人税が国税なのに比べ、こちらは地方税。

法人住民税には2種類あり、法人税額よって金額が変わる「法人税割」と、資本金の額などに応じて金額が決まる「均等割」の2つの合計金額を支払います。

法人税割は、赤字だった年など法人税がかからない場合は支払いが発生しませんが、均等割は赤字の場合でも支払い義務があります。

 

(3)事業税

事業税は法人が事業を行うにあたって利用している、道路や港湾、消防、警察といった公共施設・公共サービスの費用を負担するための税金です。

 

法人税と同じく所得金額に対して課税されますが、納める先は国ではなく地方自治体の地方税です。

資本金が1億円以上の法人の場合は、所得に課税される「課税割」だけではなく「付加価値割」「資本割」も加わります。

 

ただし、このうち法人税等に含まれるのは所得割のみ。付加価値割と資本割は、法人税等ではなく「販売費および一般管理費」に計上します。

 

(4)租税公課との違い

法人税等と似た勘定科目に、「租税公課」というものがあります。

 

租税公課とは、その名の通り「租税」と「公課」、国や地方自治体に納める税金や、国・地方公共団体・その他団体などから課せられる会費・組合費・賦課金・罰金などを計上する科目です。

損益計算書上では、「販売費および一般管理費」という部に属しています。

 

しかし、法人税等に含まれる法人税・住民税・事業税の課税割は、租税公課には含まれません。法人税等は、損益計算書上「法人税、住民税および事業税」という部となります。

なぜなら、法人税等は所得の中から支払われる税金で、損金算入できないためです。

 

(5)法人税等は消費税の課税対象外

課税売上高が1,000万円を超える法人には、消費税の支払いが発生します。

消費税は税金の中でも「間接税」といい、顧客や取引先が商品の購入に際して支払った消費税を法人が一旦預かり、それをまとめて納付するものです。

 

先にも触れましたが、法人税等は所得の中から支払われる税金なので、消費税の課税対象にはなりません。

消費税の課税所得を算出する際には、法人税等の金額を除いて計算します。

 

2.≪法人税等の申告について≫

法人は1年分の法人税等を、「中間申告納付」と「確定申告納付」の2回に分けて納付します。

 

法人税等はその法人の1年分の所得に対して課税されるため、1年の営業が終わってみないと具体的な納税額が確定しません。そのため、まず中間申告では「前事業年度の法人税額÷12×6」、つまり前事業年度に支払った法人税の半額を支払います。

中間申告納付を会計処理する際は、「仮払法人税等」という勘定科目を使います。

 

その後、1年分の所得金額がわかった上で「確定申告納付」を行い、残りの法人税等の正確な金額を算出します。

法人税等の金額が確定したら、会計処理で「仮払法人税等」の金額を、「法人税等」の科目に振り替えます。

 

3.≪法人税等の調整額とは?≫

会計上の利益と法人税の課税所得にズレがある場合、法人税法が定める方法で所得を再計算し、法人税等の調整を行います。

その場合に発生するのが、法人税等調整額です。

 

(1)法人税等調整額の見方

「法人税等調整額」という科目は、損益計算書の「法人税等合計」の内訳にあります。

「法人税、住民税および事業税」から「法人税等調整額」を引いた金額が、実際の法人税等の支払い金額となります。

 

(2)企業会計と法人税のズレを調整

なぜ法人税等調整額が必要になるかというと、法人税法上の所得の計算ルールと、一般的な企業の利益の計算ルールが同じではないため。

一般的な利益の計算方法で企業の所得を算出すると、法人税等が過剰または過少になってしまうケースがあるのです。

 

そういった場合に、「税効果会計」という作業を行なって法人税等調整額を算出し、「法人税、住民税および事業税」の金額に加算・減算します。企業会計上と法人税のズレを解消するために使用する科目が「法人税等調整額」であると言えます。

税効果会計の対象になるのは、「貸倒引当金繰入超過額」「減価償却費」「退職給付引当金」「賞与引当金」「繰越欠損金」といった将来解消される見込みのある一時差異のみです。

 

4.≪法人税等の仕訳計上のポイント≫

先に触れたように、法人税等は「中間申告納付」「確定申告納付」と年2回に分けて納付します。

そのため、法人税等を仕訳計上する際は、「仮払法人税等」「未払法人税等」という勘定科目を使って処理します。

 

まず、前年分の法人税額をベースにして、中間申告で納付すべき法人税等が50万円と計算された場合。

借方:仮払法人税等 500,000円

貸方:現金 500,000円

 

次に、1年間の営業利益が昨年分より増えたため、確定申告で納付すべき法人税等が110万円だとわかった場合。

110万円のうち、50万円は先に支払っているので、以下のように仕訳を行います。

借方:法人税等 1,100,000円

貸方:仮払法人税等 500,000円

   未払法人税等 600,000円

 

最後に、法人税等の残りを現金で納付した場合、仕訳は以下のようになります。

借方:未払法人税等 600,000円

貸方:現金 600,000円

 

このように、法人税等の納付に際しては、中間申告・確定申告・納付時の3段階に分けて仕訳を行うことになります。

 

5.≪まとめ≫

法人税等には「法人税」「住民税」「事業税」の3つの税金が含まれます。他の税金を計上する「租税公課」とは分けて考え、所得から支払う税金のため消費税の課税対象にもなりません。

 

法人税等の納付は中間申告・確定申告の2回に分けて行い、会計処理は「仮払法人税等」「未払法人税等」という勘定項目を使って3段階に分けて仕訳。

少し複雑な作業が必要ですが、ほぼ全ての法人で毎年必要な処理となるため、経理担当者・経営者の方はしっかり把握しておきましょう。

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2019/12/04 税務調査とは?調査の流れや必要な準備を解説

税務調査は、税務署が各会社の申告・納税状況が正しいかどうかチェックする調査のことです。

毎年約20万件の調査が行われ、中小企業は平均で5年に1回程度の頻度で税務調査を受けます。

今回は、税務調査とはどういった内容なのかや、その流れについて解説します。

税務調査に備えて、きちんと準備をしておけるようにしましょう。

また、税務調査は「交渉」が最も重要になります。よって、依頼している税理士によって結果が変わることもあり、税務調査は信頼できるプロの税理士に依頼するようにしましょう。

 

 

1.≪税務調査とは?≫

税務調査とは、法人・個人事業主・個人などが、正しく納税を行なっているかどうか調査すること。

税務に関する帳簿や書類を確認し、申告通りの内容になっているかどうかを調べます。

実施される税務調査の数は、年間約20万件。毎年、全法人の6%程度が税務調査を受けることになります。

 

2.≪税務調査で実際に行われること≫

それでは、実際の税務調査ではどのようなことが行われるのかを見ていきましょう。

 

(1)調査方式は「任意」と「強制」の2種類

税務調査には、任意調査と強制調査の2種類があります。

 

  • 任意調査

脱税の疑いなどがない場合に行われる税務調査。任意調査の場合は事前に連絡が入り、日付を決めて調査が行われます。税務の実情が申告通りなら、特に問題ありません。

ただし、税務調査の場で調査官から質問を受け、それに虚偽の答えをしたり黙秘をしたりすると、罰則が課せられる場合があります。

 

  • 強制調査

脱税の疑いがある場合、強制調査が行われます。強制調査を行うのは、税務署ではなく「マルサ」とも呼ばれる国税局査察部です。「脱税の隠蔽工作が悪質なこと」「脱税額が1億円を超えること」が強制調査の条件となっています。

裁判所の令状を持って、事前連絡はなく直接現場に踏み込み、帳簿などの証拠を差し押さえます。

 

(2)事前に行われる準備調査の内容

税務調査とは、任意調査でも強制調査でも、対象の事業所に出向いて実際に帳簿などを見聞することをいいます。

実は、税務署の調査官は、実際に税務調査を行う前に「準備調査」を行い、当日にチェックするポイントなどを定めてきています。

 

準備調査には、「内偵調査」と「外観調査」の2種類があります。

 

  • 内偵調査

飲食店や小売店などに、調査官が客を装って来店すること。レジ打ちの有無・客数・客単価・従業員数などを事前にチェックし、税務調査の日に帳簿の内容と実情が合致しているかを調べるために行います。

 

  • 外観調査

外観調査は、社長の自宅や会社の事務所、所有している土地などの状況を事前に確認する調査です。

例えば、社長が自宅の修繕工事などを行なっていた場合、税務調査の時にその金額を会社の帳簿に計上して公私混同をしていないかを調べます。

 

(3)実地調査で調べられること

税務調査当日、会社の中で行う調査を実地調査といいます。

実地調査では、主に帳簿を中心にチェックが行われます。

総勘定元帳

・現金預金出納帳などの補助元帳

会計伝票、給与台帳

預金通帳

領収書、請求書などの証拠書類

各種契約書

これらの帳簿の内容が、調査官が持参している過去の申告内容と合っているかどうか照らし合わせる作業です。

 

場合によっては、帳簿調査の他に現況調査が行われることもあります。

現況調査とは、現物の資産を実際に調査すること。金庫やレジを開けて抜き打ち調査し、そこにある現金と現金出納帳の金額が合致しているかどうかなどを調べます。

 

また、調査官には質問検査権があるため、帳簿の内容や申告状況について質問を行います。

先に触れましたが、虚偽や黙秘には罰則が課せられるため、税務調査に立ち会う担当者は、これらの質問に間違いなく適切に答えなければいけません。

 

顧問税理士がいれば、社員に代わって質問に答えたり、経費の使い方等について説明したりすることもあります。

そのため、税務調査には会社の顧問税理士が立ち会うのが基本です。

なお、税務調査は「交渉」が最も重要になります。よって、依頼している税理士によって結果が変わることもあり、税務調査は信頼できるプロの税理士に依頼するようにしましょう。税法の解釈などのプレゼンテーション、税務調査の経験が重要となります。素人の方が分一人だけで対応すると、納める必要のなかった税金を負担することになるケースもあります。税務調査はプロの税理士に必ず依頼すべきです。

 

(4)事前連絡あり?税務調査の流れ

任意調査の場合、税務調査が行われる2週間ほど前までに、税務署から会社または顧問税理士に連絡が入ります。

日付も指定されますが、その日に都合が悪い場合は日付をずらすことも可能です。

 

強制調査の場合、証拠を隠滅される恐れがあるため事前連絡はありません。

とはいえ、強制調査は相当悪質なケースでない限り行われることはないため、一般的な企業は気にする必要はないでしょう。

 

調査当日は、当日10時ころ、調査官が事業所を訪れて調査が始まります。

調査官の人数は、中小企業の場合、1名か2名のことが多いです。質問への受け答えや帳簿の説明、対応のアドバイスなどをしてもらうため、税理士にも立ち会ってもらうのが安心です。

 

税務調査にかかる時間は、法人の場合、基本的には2日間で実施され、1日あたり6〜7時間となります。特に問題がなければ、それより早く終わることもあります。

規模の小さい会社で、特に問題がなければ調査は2日間で終了します。大企業や何か問題が見つかった場合は、3〜5日続けて調査が行われることも中にはあります。

 

3.≪法人を対象とした税務調査は5年に1回≫

法人を対象とする税務調査では、主に法人税・消費税に関わる財務状況がチェックされます。

 

(1)法人への税務調査の頻度

税務調査をどのくらいの間隔でするといった決まりは、特にありません。

会社の規模・業績・業種などによって、税務署側が一社ごとに調査周期を決めています。

ほぼ毎年行われたり、20年以上も行われなかったりと様々です。

一般的な中小企業では、多くても3年に1回。5年に1回ほどが平均的な頻度と言われています。

 

1回の税務調査で3年分の帳簿を調査するため、新規起業の会社は3年目から税務調査が入りやすくなります。

ただし、1年目から大幅な黒字が出るなど、税務署が注目するポイントがあると、起業まもない会社にも税務調査が入ることがあります。

 

(2)税務調査が入りやすい会社の特徴

税務調査が入りやすい会社は、「脱税の疑い」とまでは言わないまでも、脱税をしやすい、またはしている可能性が疑われる会社という見方もできます。

具体的には、以下のような会社が条件に当てはまります。

 

・現金を扱う業種

売上が急増している

売上の伸びと利益の伸びが比例していない

粗利の変動が大きい

売上の伸びに対して人件費の伸びが大きい

・支店や店舗が増えているのに売上が伸びていない

・代表者の報酬が多すぎる

・代表者が、報酬額に比べて高価すぎる買い物をしている

 

また、大きな会社ほど脱税額も大きくなるので、規模の大きい会社に優先的に税務調査が入りやすいです。

また、赤字の会社も、粉飾決算で黒字を赤字に見せている疑いがある場合、税務調査が入る場合があります。

とはいえ、税務調査が行われる絶対的な規則性はなく、3~5年に1回は税務調査が実施されると考えたほうがいいでしょう。

 

(3)税務調査に必要な準備・ポイント

税務調査が入るという連絡があったら、過去3年分の帳簿や財務に関する書類を整理し、調査官に見せられるようにします。

具体的に、準備する書類は以下のものがあります。

 

売上に関する書類

・請求書

・見積書

・受注書の控え

・総勘定元帳

・小切手の控え

・売掛帳など

 

仕入や経費に関する書類

・買掛帳

・支払い領収書

・請求書

・納品書

・発注書など

 

その他の書類

・法人税の納付書控え

・源泉所得税の納付書控え

・資産関係の契約書

・現金残高のわかる通帳

・手形帳など

 

雇用に関する書類

源泉徴収簿

扶養控除申告書

・出勤簿やタイムカード

・雇入関係書類

・退職給与受給申告書など

 

当日の調査中に、3年以上前の帳簿を見せるように求められる場合もあるため、保管義務のある書類はできるだけ整理しておきましょう。

 

また、当日の質問では、一見調査に関係のない、経営者の私生活について聞かれることもあります。

例えば、最近の買い物、旅行、乗っている車、子供の学校や習い事などについて。これは単なる世間話ではなく、暮らしぶりから脱税の疑いがないかどうか判断しようとしています。

余計なことを話すと疑いを深められてしまう可能性があるため、聞かれた以上のことは答えないのが税務調査時のポイントと言ってもいいでしょう。

 

4.≪税務調査は個人も対象になる≫

税務調査は個人が対象になることもあります。

個人の税務調査の場合、主に相続税がチェックされ、申告件数全体の25%~30%に対して調査が行われます。

 

ちなみに、調査対象はランダムに決まるわけではなく、申告書の内容から、漏れや誤りがある可能性が高い人が選ばれています。

個人の場合、法人のように帳簿付けは行なっていないため、主に預金・金融資産・不動産・保険や、相続者の収入状況などが調査の対象となります。

 

もちろん、個人事業主に対しても税務調査は行われます。

消費税も納税している課税事業者であれば、基本的には、税務調査は定期的にあるものだと考えていいでしょう。昨今では、建設業や不動産事業の業種に調査が多い傾向があります。

これは景気によって業績が上がっている事業者の方が多いこと、調査による税務署の否認統計がこれらの業種に多いことが影響していると考えられます。

 

5.≪税務調査のその後の流れとは≫

税務調査の結果は、調査が行われた約1週間〜数ヶ月後に出ます。

調査官が何も問題がなかったと判断すれば、その通知をもって税務調査は終了となります。会社側が行う手続き等は、特にありません。

 

税務調査で問題が見つかり、指摘事項がある場合は、調査結果の内容や指摘について税務署が説明を行います。

指摘事項に不服があれば、会社側は異議申し立てや訴訟を行うことができます。

 

最後に、税務調査で問題があり、税務署が修正申告を求める場合。修正申告を行うと、過去の申告の誤りを認めたことになり、税金の追納が必要になります。

修正申告を行なった後では、内容に不服があっても異議申し立てができないため、顧問税理士によく相談してから修正申告を行いましょう。

 

6.≪まとめ≫

税務調査とは、各会社が正しく申告や納税を行なっているかどうかをチェックするための調査のこと。

年間20万件、前企業の6%が調査を受けることを考えると、あなたの会社にいつ税務調査が回ってきても不思議ではありません。

繰り返しになりますが、税務調査は「交渉」が最も重要になります。よって、依頼している税理士によって結果が変わることもあり、税務調査は信頼できるプロの税理士に依頼するようにしましょう。

 

もちろん調査の有無に関わらず、脱税はいけないことですが、税務調査に常に備えて正しい帳簿付けと申告を行うようにしましょう。

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2019/11/27 給与計算でミスが発覚!ミスを防止するための対策とは?

社員の生活に直結する給与計算は、決してミスが許されない作業。しかし、人が行う仕事にはどうしてもミスが付きものです。

 

今回は、給与計算にミスが発覚した時の対処方法をご紹介いたします。

速やかに正しい対応をして、ミスの影響を最低限に抑えましょう。

 

給与計算のミスが起こらないよう、予防する方法やミスが起こりやすいポイントも解説します。

 

 

1.≪給与計算のミスによって起こる問題≫

給与計算のミスによって起こる問題は、多岐に渡ります。

まず、

 

・社員に不信感を抱かせる

・会社の信頼が失墜する

 

など、心理面の問題。給与が本来の額より少なければ誰でも嫌な気持ちになりますし、逆に払いすぎていた場合は本人も知らない間に横領をさせてしまうことになります。

 

また、給与計算のミスが相次いだり、税金・保険料のミスを放置したりして脱税の疑いをかけられてしまった場合、会社自体の評判も悪くしてしまいます。

さらに、ミスをしてしまうと、給与計算の担当者の査定にも響くでしょう。

 

他に給与計算のミスは、実務面にも影響を及ぼします。

 

・訂正業務が必要

・税金・保険料の追徴・訂正申請が必要なことも

 

気持ちの面で申し訳ない以上に、給与計算のミスのせいで余計な業務が増えて、他の仕事を圧迫してしまうのです。

他にも、給与計算に用いる社員の個人情報漏洩などのリスクも考えられます。

 

2.≪給与計算でミスに気付いた時の対応≫

それでは、実際に給与計算のミスに気づいたら、どのように対応すればいいかを解説していきます。

 

(1)①本人に通知・お詫びをする

給与計算のミスに気づいたら、何より先に本人に通知・お詫びをします。

 

嘘をついたり、誤魔化そうとしたりすると、嘘が嘘を呼んで余計に大きな問題に発展しかねません。給与計算のミスがあった社員本人に、給与計算にミスがあった事実と金額の過不足を伝え、誠実に謝罪しましょう。

 

システム上の問題などで大人数にミスがあった場合には、正しく事実が伝わるよう謝罪文を作成・配布してもいいでしょう。

 

(2)②正確な給与明細を作り直す

本人への謝罪が済んだら、正確な給与明細を作り直します。

ミスをすると「早く訂正しなければ」と焦ってしまいがちですが、ここでもミスがあるとさらなる問題を引き起こしかねません。迅速性も大切ですが、入念にチェックをして正しく給与計算し直しましょう。

 

(3)③なぜミスが起きたのかを説明する

ミス発見時、または訂正をする際に、ミスの原因が浮かび上がるはず。

どこがどうして間違ってしまったのかを本人に説明し、再度謝罪しましょう。

 

複数人で給与計算を行っている場合は、ミスの原因をチームに共有するのも大切です。

 

(4)④過不足の修正

正しい給与明細に基づいて、給与の過不足を清算します。

 

  • 払い過ぎていた場合

給与計算でミスをして多く払いすぎていた場合、従業員から過払い額を払い戻してもらう必要があります。

手渡し・振込どちらでも問題ありませんが、過払い分ときっちり同額を受け取り、金額を明記した領収書を渡しましょう。

 

従業員がスムーズに対応すれば事を荒立てる必要はありませんが、払い戻しを渋るような場合は「不当利得返還請求権」で過払い分を請求することになります。

会社側のミスで給与が多く支払われたのだとしても、受け取った従業員は会社に不利益を与えたということになってしまうのです。

 

もし、それでも返還しない、過払いに気付いていたのに長期間に渡って申告しなかったなど悪質な場合には、社内対応の枠を超えて警察や弁護士に相談することになります。

 

  • 不足していた場合

給与の支払額が不足していた場合は、速やかに不足分を支払います。

支払い方は、普段給与を支払っている方法と同じでいいでしょう。

正しい給与明細と、不足分の支払いを本人に確認してもらい、金額を明記した領収書を受け取ります。

 

(5)⑤翌月給与での相殺は違法?

過払い分・不足分が少額なら、翌月の給与に足し引きして相殺すればいいと思うかもしれません。

しかし、それは「賃金全額払いの原則」に違反してしまう対応です。結果は同じになるとしても、原則的には給与は給与、過不足分は過不足分として対応します。

特に不足がある場合は、当月中に速やかに不足額を支払うようにしましょう。

 

ただし、過払いの場合には翌月調整も可能です。

労使協定に「ミスがあった場合には翌月に調整する」という文言がある場合や、本人と話し合って同意が得られた場合には翌月以降に過払い分を相殺しても問題ありません。

 

3.≪給与計算でのミスが起きやすいときとは≫

それでは、給与計算のミスが起こりがちなのはいつなのか、タイミングや注意点を解説していきます。

 

(1)異動や年齢によって項目が変化したとき

給与計算のミスが発生するのは、給与額や保険に何らかの変更があったとき。

異動や昇進などで給与額・支払い方法に変更があると、変更忘れや入力間違いでミスが起こりやすくなります。

 

また、社会保険料・雇用保険料が変わる年齢でも、ミスが起こりやすいです。

・40歳:40歳になる誕生月より、介護保険料の徴収開始。

・64歳:雇用保険料の免除開始。4月1日時点で64歳以上の人が免除対象。

・65歳:65歳になる誕生月の前月で、介護保険料の特別徴収終了。

 

(2)税額や保険料が改定されたとき

給与収入にかかる税額や保険料は、頻繁に改正されます。

この改正に対応しきれず変更漏れがあると、全社に渡る大規模な給与計算ミスが起こりかねません。給与計算の担当者は、毎年の改正を注意深くチェックするようにしましょう。

 

税金・保険料の改正タイミングは、以下の通りです。

・健康保険料:毎年3月

・雇用保険料:毎年4月

・住民税額:毎年6月

・厚生年金保険料:毎年9月

 

(3)月途中の入社・退社があったとき

月途中に入社・退社した社員は、給与の日割り計算が必要になります。この計算を忘れて、ひと月分払ってしまった、または払わなかったというのは、起こりうるミスです。

日割り計算の方法も会社の就業規定によって異なるので、よく確認する必要があります。

 

さらに、入退社時は保険の手続きも複雑です。

入社時、雇用保険料は当月から、社会保険料は翌月から控除を始めます。月の途中で退職した場合、退職月分の社会保険料は掛かりません。

 

(4)イレギュラーな支給があったとき

臨時の賞与・祝い金・見舞金などイレギュラーな支給があったときも、給与計算のミスが起こりやすいタイミング。

支給自体は正しく支払っても、税金や保険料の課税対象になるかどうかで納めるべき税額・保険料が変わり、正しく納付できない可能性があります。

 

4.≪給与計算でミスをなくすための対策≫

最後に、給与計算のミスをなくすための防止策について考えていきましょう。

 

(1)給与計算のルールを見直す

ミス防止の基本は、給与計算のルールを見直すこと。給与計算の担当者が変わるときにも同じルールで引き継げるよう、誰が見てもわかりやすい資料を整備しましょう。

欠勤控除、日割計算の算出法など曖昧になりがちな部分も、賃金規定を確認して正しい方法で行う必要があります。

 

また、交通費や扶養控除の不正を防止するため、定期的に社員情報をアップデートするのも大切です。

 

(2)ミスしやすいポイントを押さえる

給与計算でミスをしやすいポイントは、先に触れたように給与に何らかの変更があるタイミング。

社会保険が変わる年齢の社員や、入退社・異動があった社員を事前にリストアップしておけば、ミスしやすいポイントを重点的にチェックできます。

 

(3)ダブルチェック体制を導入

人の手で行う作業には、入力間違いなどのミスが付き物です。

そして、自分のミスには自分ではなかなか気づくことができません。

 

給与計算は一人に任せるのではなく、複数人で行なうダブルチェック体制を導入しましょう。

ただし、チームで給与計算を行う場合、ルールの周知や作業の進捗など情報共有をしっかりしていく必要があります。

 

(4)給与計算ソフトや専門家に代行依頼

給与計算のミスは、入力間違い・計算間違いといったヒューマンエラーで起こるケースが最も多いです。

そのため、給与計算はソフトを用いて、できるだけ自動化するのがおすすめです。

 

もしくは外部業者に給与計算を委託すれば、専門家が正確に給与計算をしてくれる上、自社で経理スタッフを雇う必要がなくなり人件費の節約にも繋がります。

 

5.≪まとめ≫

給与計算のミスは、社員のモチベーション低下や会社の信頼失墜に直結する問題。できるだけミスを防止し、万が一ミスがあった場合には速やかな対応が不可欠です。

 

給与計算のミス防止には、ミスが起こりやすいタイミングを知ることが大事。

また、ソフトで自動化したり、給与計算自体を外注したりすることで、ミスをなくしてスムーズに会社を運営することができます。

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2019/11/06 給与計算で算出する「所得税」とは?

毎月の給与総額を算出し、社会保険料や源泉徴収税を差し引く作業を給与計算といいます。

 

給与計算は社員の生活に直結する業務のため、ミスは厳禁。給与計算に関わる控除や税率は、給与計算担当者が詳しく把握しておく必要があります。

 

今回は、源泉徴収税の中でも所得税について詳しく解説いたします。

給与計算での所得税の算出方法や、注意点について知っていきましょう。

 

 

1.≪給与計算で算出する「所得税」とは?≫

所得税とは、その名の通り所得に対してかかる税金。所得金額が上がるほど税率も高くなる累進課税制度を採用していて、多く稼ぐ人ほど多く支払う税金となっています。

 

サラリーマンなど会社勤めの方は給与計算の際に天引きされ、個人事業主の場合は確定申告で所得を申告することで支払額が確定します。

 

(1)給与と所得の違い

「給与」と「所得」は混同されがちな言葉ですが、実は少し意味合いが違います。

 

まず給与とは、会社から支払われる賃金や、個人事業主の場合は自分で稼いだ売り上げ。所得とは、そこから「必要経費」を差し引いたものです。

住民税の計算は、この所得に基づいて行います。

 

所得から差し引ける必要経費は、個人事業主の場合、事業所の家賃や商品の仕入れ金額、従業員に支払った給与など、売り上げを出すために必要な出費です。

会社勤めの方は、仕事の時だけ着るスーツや靴、自分の携帯を仕事にも使う場合の通信費などが当てはまります。

 

しかし、毎月具体的な金額を申告して給与計算するのは難しいため、「給与所得控除」という一定の式に当てはめた額が採用されます。

給与所得控除については、後の項目で詳しく解説するので、そちらを参照してください。

 

そのほかに、扶養家族の数に従って課税額が減額される「扶養控除」、ふるさと納税などの「寄付控除」、誰でも無条件で差し引かれる「基礎控除」などの控除も必要経費に含まれます。

 

(2)所得税の仕組み

先にも触れましたが、所得税は「累進課税制度」が採用されている税金。所得額が上がると税率も上がり、多く稼ぐ人ほど多く負担することになっています。

 

所得金額ごとの税率は、以下の通りです。

 

〜195万円:5%

195〜330万円:10%

330〜695万円:20%

695〜900万円:23%

900〜1800万円:33%

1800〜4000万円:40%

4000万円〜:45%

 

所得税の金額は、給与総額から必要経費や控除を引いた額にこの税率をかけて計算します。

 

(3)「源泉徴収」とは

源泉徴収とは、従業員の給与から支払うべき所得税や住民税を、会社が前もって差し引き、国に支払うことをいいます。

従業員を雇い、給与を支払っている事業者は、必ず給与計算の際に行わなければいけません。

 

源泉徴収をすることで、会社勤めの人は毎月の給与から少額ずつ税金を支払っていることになり、確定申告をする必要がなくなるのです。

 

2.≪給与計算で所得税を算出する前に押さえておきたい用語≫

それでは、給与計算で所得税を算出するに当たって、必ず知っておきたい用語を解説していきます。

後で解説する計算方法にはこれらの用語が登場するので、実際に給与計算をする前に言葉の意味を理解しておきましょう。

 

(1)課税所得

課税所得とは、給与の支払い総額から必要経費や控除を全て差し引いた金額です。

この課税所得に、先にお伝えした所得税の税率をかけると、所得税の金額が算出できます。

 

(2)扶養控除申告書

扶養控除申告書は毎月の給与計算ではなく、年末調整のタイミングで必要になる書類。正式には「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」という名称です。

 

年に一度、従業員本人が記入して提出し、扶養している家族や配偶者がいることを申告する書類です。

ここに書かれた内容を元に、扶養控除の金額が決まります。

 

(3)給与所得控除

給与所得控除は、会社勤めの人の必要経費にあたるものです。

 

会社に勤めている人は、仕事をするときに着る服や靴の購入費、仕事関係の電話にかかる電話代などを自分で負担しています。

これらの具体的な金額を一人一人に申告させていると毎月の給与計算の業務量が膨大になってしまうので、給与の額に対して全員一率で計算するのが給与所得控除です。

 

給与所得控除の計算式は、給与収入の額に応じて異なります。

 

〜180万円:収入金額×40%(65万円に満たない場合には65万円)

180〜360万円:収入金額×30%+18万円

360〜660万円:収入金額×20%+54万円

660〜1,000万円:収入金額×10%+120万円

1,000万円〜:2,200,000円(上限)

 

(4)給与所得の源泉徴収税額表

「給与所得の源泉徴収税額表」とは、その名の通り給与所得に対してかかる源泉徴収税額の一覧表です。

給与の金額と扶養家族の数を参照すると、複雑な計算を経ずに源泉所得税額がわかるようになっています。

 

3.≪給与計算で所得税を計算する方法≫

それでは、給与計算で所得税を算出するための計算方法を解説していきます。

 

(1)所得税の計算式

給与計算で所得税を計算する場合、必要になる情報は以下の通りです。

 

・給与の支払い総額

・社会保険料の総額

 

例えば、給与・社会保険料が、以下のような内容の人がいた場合。

 

基本給:200,000円

残業手当:15,000円

非課税の手当(通勤手当など):6,000円

健康保険料:9,970円

厚生年金保険:16,766円

雇用保険料:1,105円

扶養親族等の数:2人

 

この場合、給与計算で源泉所得税を算出する計算式は以下のようになります。

 

給与の支払い総額総額:200,000円+15,000円=215,000円

社会保険料の総額:9,970円+16,766円+1,105円=27,841円

 

そして、「給与所得の源泉徴収税額表」を参照する際は、給与から社会保険料等を差し引いた金額と、扶養親族等の数が必要です。

 

給与の支払い総額総額−社会保険料の総額=187,159円

扶養親族等の数:2人

 

この条件で、最新の平成31年版「給与所得の源泉徴収税額表」を参照すると、「1,100円」と記載されています。

よって、この人の源泉所得税額は1,100円です。

 

(2)「給与所得の源泉徴収税額表」の見方

給与所得の源泉徴収税額表は、給与計算の際に求めた「給与総額−社会保険料」と「扶養親族等の数」を基準に参照します。

 

まず、「給与総額−社会保険料」を算出し、一番左の欄で当てはまる行を探しましょう。

上で挙げた例だと、「187,159円」は「187,000円以上、189,000円未満」の行に当てはまります。

 

そして、「扶養控除申告書」が提出されている従業員は「甲」欄の扶養親族の人数に該当する場所、それ以外の従業員は「乙」欄を参照します。

 

4.≪給与計算で所得税を算出する時の注意≫

それでは、給与計算で所得税を算出する際、注意するべきポイントを解説していきます。

 

(1)扶養家族の数え方

給与計算で、扶養家族として数えることができる家族の条件は、以下の通り。

 

・年間の所得金額が38万円以下(給与所得103万円以下)

・16歳以上の親族(6親等内の血族または3親等内の姻族)

・納税者と生計を一にしている

 

基本的には、パート・アルバイト・無職などで収入が少ない配偶者・16歳以上の子供・老親など、同居や仕送りをしている家族の中でこの条件に当てはまる人数を数えるだけです。。

ただし、以下の条件に当てはまる場合、実際に扶養している人が存在しなくても、扶養家族の数を加算して給与計算します。

 

・本人が障害者、寡婦(寡夫)、勤労学生の場合:1条件につき1人加算。

・同一生計配偶者・扶養親族(16歳未満を含む)が一般障害者または特別障害者の場合:1人加算
・同一生計配偶者・扶養親族(16歳未満を含む)が同居特別障害者の場合・2人加算

 

(2)賞与の源泉所得税の計算方法

賞与の源泉所得税を計算するときは、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用います。

給与計算の時と違うのは、この表で賞与にかける税率を参照する点です。

 

例えば、賞与金額が100万円、扶養親族が2人という場合、「扶養親族2人」の欄から「987,000円以上、1,370,000円未満」の行を参照します。

すると、左の欄に書いてある賞与に対する源泉所得税率が「32.672%」とわかります。

 

100万円×32.672%=326,720円

 

この場合の賞与の源泉所得税額は、326,720円ということです。

 

(3)復興特別所得税も同時に徴収

2011年に発生した東日本大震災の復興財源にあてるため、2013年から所得税に加えて復興特別所得税も徴収されるようになりました。

 

復興特別所得税の税率は、課税基準となる所得税額の2.1%。毎月の給与だけではなく、賞与も課税の対象です。

興特別所得税は、2037年まで徴収される予定となっています。

 

5.≪給与計算で算出した所得税の納付方法≫

給与計算で算出した源泉所得税は、翌月の10日までに会社が納めます。

基本的には毎月行う手続きですが、従業員10人未満の小規模な会社は「納期の特例」という制度を利用すると納付のタイミングが年2回にまとめることができます。

 

納付方法は、e-taxもしくは所轄の税務署の窓口。「所得税徴収高計算書(納付書)」を作成し、従業員全員の所得税の合計額を支払います。

 

6.≪まとめ≫

給与計算で所得税を算出する方法は、給与総額と社会保険料を先に求め、「源泉徴収税額表」で扶養家族の数を参照するだけ。

一見簡単ですが、給与計算の中で忘れてはいけない大事なステップです。

 

課税対象にならない収入の範囲や、扶養家族の数え方がやや複雑なため、給与計算を担当する方は制度をよく知っておきましょう。

また、頻繁に制度改正がある部分でもあるため、毎年の変更点にも注意を払う必要があります。

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2019/10/17 給与の計算方法は7段階?日割り計算の方法も紹介

毎月何気なく受け取っている給与明細。しかし、給与明細に書かれているそれぞれの項目が、どのように計算されているか知っていますか?

 

今回は、給与計算の方法とその準備、リスク管理などについて解説していきます。給与計算の手順をステップごとに紹介いたしますので、経理担当の方も参考にしてみてください。

 

1.≪給与の計算方法は会社により異なる?≫

給与計算の方法を知る前に、まずは前提として給与計算の基本を知っておきましょう。

給与計算の方法は会社によって違い、また従業員の生活に直結する業務特有のリスクも伴います。

 

(1)計算方法は会社により異なる

給与計算の方法は会社によって異なります。

それは、給与の支払い方法や会社ごとに規定している手当などが会社ごとにバラバラだから。そのため、今回ご紹介する給与計算の方法はあくまで一般的な例で、全ての会社にこれが当てはまるとは限りません。

 

(2)給与計算のリスク

給与計算はどんな会社にも発生する基本的な業務ですが、実は特有のリスクも伴います。従業員の生活に直結することだからこそ、少しでも計算ミスがあると従業員からの信用を失ってしまうのです。

勤怠の記録システムが万全でないと、残業代の未払いなどの問題が起こってしまうこともありますね。

 

また、給与計算の遅れは給与の遅配にも繋がるので、毎月期限内に済ませることが必要です。そして、給与計算をするためには、家族や保険の情報、マイナンバーなど、従業員の個人情報を用います。

大切な情報を預かるからこそ、情報漏洩には細心の注意が必要となります。

 

(3)給与計算に必要な知識

給与計算に伴うリスクを防ぐためには、予防策の準備が必要です。

人の手が関わる以上ケアレスミスは起こり得ますが、システムがきちんと整っていればリスクを最小限に抑えることができるのです。

 

  • 労務

まずは、給与計算の担当者が「労働基準法」や「就業規則」などの知識をきちんと理解していること。

小規模な会社でも、なあなあにならないよう明確なルールが必要です。国の法令に則して、就業規則と給与規定をきちんと定めましょう。

 

  • 税務

給与計算には、所得税や住民税といった税金も絡んできます。給与計算の担当者は、国の税制度についても精通する必要があるのです。

 

源泉徴収税の計算ミスや、控除漏れがあった場合は追徴や訂正申請が必要となるので、税金関連のミスは何としても防がなければいけません。

 

  • リスク管理

最後に、情報漏洩などに対するリスク管理です。給与計算の担当者による故意の流出はもちろん、ハッキングなどによる情報漏洩にも注意しなければいけません。

 

社員を雇用する際は契約条件に守秘義務の項目を入れたり、経理情報を扱うPCは一段とセキュリティに気を配ったりする必要があります。

経理データの持ち出しも、社内規定などで禁止しておいたほうがいいでしょう。

 

2.≪給与の計算方法は7段階≫

それでは、給与計算の方法をステップごとに解説していきます。

給与計算には、全部で7つの段階があります。

 

(1)①勤怠状況を確認・集計

まずは、タイムカードなどの情報から各従業員の勤怠状況を把握します。集計期間中の労働時間について、従業員一人ずつの状況を確認しましょう。

次の3つの項目に分けて集計します。

 

・労働日数

・労働時間

・時間外労働

 

(2)②総支給額を決定

次に、労働時間の情報から総支給額を決定します。

時間外労働には法令で定められた割増率があるので、それに則した割増率で計算しましょう。

 

さらに、会社独自の手当(通勤手当・家族手当・役職手当など)があれば、ここで加算します。

 

・基本給

・時間外手当

・各種手当

この3つの合計が「総支給額」となります。

 

(3)③控除額を計算

次に、給与から天引きする税金や保険料などの「控除額」を計算します。

一般的なサラリーマンの給与にかかる税金・保険料には、以下のものがあります。

 

・雇用保険料

・健康保険料

・厚生年金保険料

・所得税

・住民税

 

扶養家族の数などにより非課税所得がある場合もあるので、この計算式は従業員の個々の状況によって変わります。

また、社宅の家賃など税金・保険料以外に会社が天引きしているものがあれば、ここで差し引いておきます。

 

(4)④手取り金額を計算

「総支給額」から「控除額」を引いたものが、「手取り金額」となります。従業員に実際に支払うのは、この手取り金額です。

 

(5)⑤給与明細作成・賃金台帳への記録

ここまで計算した内容を元に、給与明細を作成します。

給与計算した数字を給与明細のフォーマットに当てはめるだけなので、難しい作業ではありません。

 

また、支払いの記録を後に残せるよう、賃金台帳にも記入します。

 

(6)⑥支払・給与明細配布

給与明細の内容に従い、各従業員に給与を支払います。

その際、必ず給与明細も一緒に交付します。給与明細の交付は所得税法で定められている義務なので、どんな会社・雇用形態でも必ず交付しなければいけません。

 

(7)⑦社会保険料、税金納付

最後に、社会保険料や税金を、会社が従業員に代わって納付します。

社会保険料は会社と従業員が折半する決まりなので、納付額は全従業員の給与から差し引いた控除額のちょうど2倍となります。

 

3.≪日割りの給与を計算する方法≫

次に、月収ではなく日割りで給与計算する方法をご紹介いたします。

 

(1)就業規則を確認

実は、日割り給与の計算方法は法律で定められていません。そのため、各会社が定めている就業規則や賃金規定に従うことになります。

下で挙げるのは、一般的な例です。

 

(2)月の途中で入社した場合

月の途中で入社した場合、一般的な計算ルールは以下の3パターンが考えられます。

 

1.暦日基準

(給与)÷(その月の日数)×(所属日数)

2.所定労働日基準

(給与)÷(その月の所定労働日数)×(出勤日数)

3.月平均の所定労働日基準

(給与)÷(月平均の所定労働日数)×(出勤日数)

(月平均の所定労働日数)=(年間の所定労働日数)÷12

 

各種手当については、日割りする根拠がないものは月途中の入社でも満額支給されます。ただし、弁当代や通勤手当など1日分の金額が明確な場合には、満額ではなく日割り計算となる場合もあります。

 

(3)月の途中で退職した場合

月の途中で退職した場合、月の途中での入社と計算ルールは基本的に同じです。

 

ただし、退職の場合は上の計算方法に加え、出勤しなかった日数分の給与を満額から差し引くという計算方法もあります。日額の求め方は、入社のケースと同じ3パターンです。

退職は円満な形だけではない可能性もありますが、どんな形であれ給与計算期間に少しでも労働した従業員には給与を支払う必要があります。

 

(4)その他の給与計算の方法

上記の他にも、「日給月給制」や「変形労働時間制」などの制度を導入している会社があります。

 

  • 日給月給制

日給月給制とは、給与形態のひとつ。

あらかじめ定められている月の給与から、欠勤・遅刻・早退などで労働しなかった時間分をそこから差し引くという計算方法です。

具体的な計算式は、以下の通り。

 

・(給与の総額÷1ヵ月の通常就労日数)×勤務日数+残業給与=支給額

 

日給月給制では手当も含めて1ヶ月分の給与となっているので、欠勤などがあった場合には手当も含めて減額されます。

 

  • 変形労働時間制

変形労働時間制とは、労働時間を月・年単位で調整することで、時間外労働を調節する制度のことです。

労働基準法では、「週40時間・1日8時間」以上の労働を時間外労働と定めています。これが変形労働時間制を採用すると、例えばある週に60時間働いても、次の週の労働時間が20時間になれば時間外労働は発生しません。

 

週単位だけではなく月単位でもこれが可能なため、多く働いた月の給与が増えない代わりに、長期休暇をとった月も満額の基本給が貰えるということに。

繁忙期と閑散期に波がある業種で、導入されていることが多い制度です。

 

4.≪給与の計算前の準備について≫

最後に、給与計算をする前に必要な準備について解説します。

 

(1)就業規則・給与規定を整備

就業規則・給与規定が定まっていないと、そもそも給与計算ができません。

取り決めが必要な項目は、以下のようなものがあります。

 

・始業と終業の時刻、休憩時間の規定

・時間外労働・深夜労働・休日労働時間に関する割増率(法令で規定あり)

・会社独自の時間外計算があるかどうか(宿直手当、夜勤手当、代休時の割増率など)

・時間外計算の単位

・日割り計算の方法

・給与の計算方法・締め日と支払い日

 

(2)従業員情報を収集・更新

従業員個人の情報も、給与計算には不可欠です。

給与計算に必要な情報は、以下の通り。

 

・給与の振込口座

・通勤経路と交通費

・扶養家族の人数

・勤怠管理

 

通勤経路や扶養家族については、申請内容次第で給与を多く受け取る不正も可能となってしまいます。従業員情報は、定期的に見直し・更新をしていきましょう。

 

(3)適切な保険の加入

従業員を雇用する企業では、従業員を守るために保険に加入しなければいけません。

正社員以外のパートやアルバイトも、収入金額や労働時間などが条件に当てはまれば保険に加入させる義務があります。

 

企業が加入すべき保険には、以下の種類があります。

 

・健康保険

・厚生年金保険

・社会保険

・介護保険

・雇用保険

・労災保険など

 

5.≪まとめ≫

給与計算の方法は、法令で定められている部分と会社が独自に規定している部分があります。とても多くの知識が必要となるので、見た目以上に大変な作業です。

 

また、従業員の生活や個人情報に関わることなので、ミスや遅れ、情報漏洩は許されません。給与に関わる情報は厳密に管理し、正確な計算ができるようにシステムを整備していきましょう。

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2019/10/10 【給与計算の基本】手取りって何?

新社会人になりたての時、自分で給与計算していた額と実際に支払われた額が違って驚いたことはありませんか?

これは、給与から税金や保険料が引かれてから支払われるため。実際に手元に入る収入を「手取り」と呼び、実際にはこの手取り給料で毎月生活することになります。

 

今回は、手取りを算出する給与計算の方法について解説していきます。

 

 

1.≪給与計算の基本!手取りって何?≫

給与計算時に当然のように使っている「手取り」という言葉ですが、その意味をきちんと理解していますか?

まずは「手取り」という言葉の意味や、どんなものによって左右されるのかという基礎知識を知っていきましょう。

 

(1)手取りは実際に受け取る金額

手取りとは、毎月の給与の総支給額から、支払うべき税金や保険料が差し引かれた金額のことです。給与の中から実際に手元に入ってくる金額なので、「手取り」と言います。

計算式は以下の通りです。

 

「額面給与」-「控除」=「手取り」

 

「額面給与」とは、基本給に時間外手当や会社ごとに規定された手当などがプラスされた総支給額のこと。

一般的に、年収は税などが差し引かれる前の総支給額で計算します。

 

「控除」とは、給与収入の中から国や保険組合に支払う税金・保険料のことです。従業員の手に渡る前に、会社によって天引きされます。

 

そして、総支給額から税金などが抜かれ、実際に手に入るお金が手取りです。

 

(2)額面が同じなら手取りも同じ?

実は、額面が同じなら手取り額が同じということにはなりません。

これは、人によって課税されない「控除額」が異なるため。

 

例えば家族を扶養している場合、「扶養控除」が適用されて1人あたり年間38~58万円が非課税所得となります。

所得税などの税金は、総支給から非課税所得を引いた後の金額に課税されるので、額面の給与が同じでも手取り額は一人一人細かに異なるのです。

 

また、日本では求人広告などに提示される給与額は「額面」に一本化されていますが、海外ではそうは限りません。「額面給与」を「Gross」・「手取り額」を「Net」と呼び分け、求人票にはどちらの金額を提示する場合もあります。

海外での就職を考える人や、日本での事業を拡大して海外の人材を雇用したい人は、「Gross」と「Net」の使い分けを覚えておいた方がいいでしょう。

 

2.≪給与計算の手取りを算出する方法≫

それでは、給与計算で手取り額を算出する方法を解説します。

繰り返しになりますが、手取りとは総支給額から控除を除いた金額なので、給与計算においてはその両方を計算する必要があります。

 

(1)支給されるもの

まずは、給与計算のベースとなる総支給から計算していきましょう。

 

  • 基本給

基本給は、雇用契約や社内規定によって定められています。

もし、勤怠で欠勤や遅刻・早退があった場合には、日割り給与や時間当たりの金額を算出して差し引きます。

 

営業職などインセンティブがある仕事の場合は、基本給に歩合給がプラスされる場合もあります。

 

  • 時間外手当

時間外手当とは、残業や休日出勤に対する手当のことです。金額は法律によって定められています。

 

・残業手当

週40時間・1日8時間を超えた労働時間に対して加算される。

計算式は「基本給(1時間)×1.25」

深夜残業(22時~翌5時の間の残業)の場合、「基本給(1時間)×1.5」

 

・休日出勤手当:

法定休日と法定外休日があり、計算式が異なる。

法定休日は「基本給(1時間)×1.35×出勤時間数」

法定外休日は、時間外労働の場合「基本給(1時間)×1.25×出勤時間数」

時間外労働でない場合は、「基本給(1時間)×出勤時関数」

 

  • 家族手当

家族手当は、企業がそれぞれの規定で導入している福利厚生です。

家族手当の制度がない企業もありますが、家族手当を何らかの形で導入している会社の割合は78.1%という調査結果もあり、非常に身近な手当と言えます。

配偶者や子供が主な対象となり、支給額の相場は以下の通りです。

 

・配偶者:月額10,000~15,000円ほど

・子供:月額3,000~5,000円ほど

 

  • その他

その他、会社ごとに規定している手当もあります。

多くの企業が導入している手当の例は、以下の通りです。

 

・資格手当

・住宅手当

・通勤手当

・役職手当

 

手当の種類や金額は企業が自由に決められるので、中には「禁煙手当」「オシャレ手当」などユニークな手当も。金額はそこまで大きくないこともありますが、企業が何を重視しているかという性格が出やすい部分です。

 

(2)控除されるもの

次に、総支給から差し引かれる「控除額」を計算します。

 

  • 健康保険料

健康保険料は、従業員が怪我や病気で医療機関にかかるとき、負担額を減らせるように加入しているものです。

会社が加入している保険組合によって保険料率が変動し、保険料の負担額は従業員と会社で折半となります。

 

  • 厚生年金保険料

厚生年金保険料は将来年金を受け取るための掛け金です。健康保険料と同じく、会社と従業員が折半して負担します。

国民年金保険料は収入額に関わらず一律ですが、厚生年金保険は給与の額が基準となって保険料が異なります。

 

  • 所得税

所得税は総支給額から控除や非課税の手当といった、「非課税所得」を除いた金額に課税されます。

累進課税制度を採用しているので、給与の金額が高くなると税率も上がるシステムとなっています。

 

  • その他

その他、給与から差し引かれる控除には以下のものがあります。

 

・雇用保険:失業した時に失業給付を受けるための保険。

・介護保険料:介護を受ける立場になった時、負担額を減らすための保険。

・住民税:住民票を置いている自治体に支払う税金。

 

他には、会社によっては「労働組合費」「退職金の積立金」「社宅の家賃」なども引かれることがあります。

給与計算時、これらすべての控除額を総支給額から引くと、手取り金額を算出することができます。

 

3.≪給与計算で手取りの目安をシミュレーション≫

それでは、実際の給与計算の例を挙げて、手取り金額の目安を計算していきましょう。

 

(1)手取りの目安は額面の75~80%

加入している保険組合や控除などの条件によって、手取り金額は異なります。

しかし、多くの人の場合、手取りの目安は「額面の75~80%」と言われています。

 

例:

月収22万円の場合→手取り16万5,000円~17万6,000円

年収400万円の場合→手取り年収300万円~320万円

 

ただし、会社の規定で非課税の手当が非常に多い場合や、船員保険など一般の健康保険と大幅に保険料率が異なる保険に加入している場合、手取り金額の目安はこの限りではありません。

 

(2)手取りが分かれば逆算もできる

手取り金額が分かれば、逆算して総支給額や源泉徴収税を算出することも可能です。

 

「手取り金額÷0.75~0.8」という式で大体の総支給額がわかります。

なお、源泉徴収税を算出したい場合は、「総支給額×2~2.5」です。

 

(3)給与計算の無料シミュレーションサイト

これらの計算式はあくまで目安なので、正確な金額ではありません。

もっと詳しく手取り額や総支給額を知りたい場合には、シミュレーションサイトを利用しましょう。

インターネットで検索すると、給与計算の無料シミュレーションサイトが多数出てきますよ。

 

4.≪転職時の給与計算は手取りと額面に注意!≫

転職をする時は、前職での年収を尋ねられることが多いです。そういった場合は、手取り金額よりも額面を優先します。

 

(1)大事なのは手取りより額面

就職・転職の場面で給与の話をする時は、基本的に額面ベースです。実際にもらっていた金額ではなく、自分の額面年収を把握しておきましょう。

 

給与明細の「総支給額」に書いてあるのが額面の月収、年収は12ヶ月分の額面月収にボーナスなども足した「1年間に支給されたすべてのお金」です。

ただし、交通費や経費精算など、使途が明確かつ使った金額と支給された金額が一致しているものは年収に含みません。

 

(2)転職サイトへの「登録」は額面

転職サイトに登録する時は、前職(現職)での年収や希望の年収・月収などを入力します。

その場合も、手取りではなく額面の年収・月収を登録するようにしましょう。

 

(中見出し)「求人広告」「面接」も額面

 

日本国内では、求人広告に記載される給与も額面で統一されています。

ただし、海外ではGrossとNetどちらも使用されるので、海外企業や外資系企業の求人を見る時は気をつけましょう。

 

また、面接で前職の年収や希望年収を聞かれた時も、すべて額面の金額で答えるようにします。

 

5.≪まとめ≫

手取り額とは、給与の総支給額から税金などの控除を除き、実際に手元に入る金額のこと。額面は同じでも、個々の条件により手取り額は異なります。

手取り額の大体の目安は、総支給額の75~80%です。

 

また、転職関連で聞かれる年収や月収は、すべて手取りではなく額面ベースになることを覚えておきましょう。

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2019/09/25 確定申告の期限はいつまで?忘れたときの対処法も紹介

「確定申告を忘れた!」「うっかり期限を過ぎてしまった!」ということは、誰にでも起こりえます。そこで放置してしまうと、無申告加算税が課せられ、本来支払う必要がない税金まで払わなければいけなくなることも。

 

今回は、確定申告を忘れた場合の対処法をご紹介。確定申告が遅れた場合のペナルティや、ペナルティを回避する方法も解説していきます。

 

 

1.≪確定申告の期限は?≫

確定申告の期間は、毎年2月16日~3月15日。2月16日や3月15日が土曜日・日曜日にあたる場合は、後倒しになります。

 

つまり、確定申告の期限は3月15日ですが、この期限を過ぎても確定申告の手続き自体は可能。ただし「期限後申告」となり、ペナルティが課せられます。

 

2.≪確定申告を忘れた場合の対処法≫

それでは、確定申告をうっかり忘れてしまった方のために、対処方法を解説していきます。

 

(1)できるだけ早く確定申告を行う

確定申告を忘れた場合の対処は、「できるだけ早く確定申告を行う」これ一択です。

 

先にも触れましたが、3月15日の期限が過ぎても確定申告の手続き自体は可能です。手続きの内容も、期限内と同じです。

異なるのは受付日時のみですが、遅れて確定申告をした場合は遅れた日数に合わせたペナルティが課せられます。このペナルティ「無申告加算税」については、後の項目で詳しく解説します。

 

(2)事情がある場合は税務署に相談する

単純に忘れていたのではなく、確定申告が遅れてしまったやむを得ない事情がある場合は、期限後申告をする前に税務署に相談しましょう。

 

やむを得ない事情とは、例えば「確定申告期間に病気で入院していた」「海外に渡航していた」「災害にあって手続きができなかった」などです。

個別のケースにもよりますが、やむを得ない事情の証明ができればペナルティが免除される場合もあります。

 

(3)来年は忘れないように心得ておく

期限後申告が2年続くと、青色申告の承認が取り消される場合があります。連続ではなくても、断続的に遅れる年が続くと取り消されてしまう場合も。

来年は確定申告を忘れないよう、しっかり心得ておきましょう。

 

3.≪確定申告の書類の提出方法≫

「確定申告の期間内に税務署に行けないから、期限に遅れてしまう」と焦っている人もいるかと思います。または、「期限内の確定申告を忘れたから、税務署に行きづらい」という人もいるかもしれませんね。

 

実は、確定申告は税務署に直接赴く以外の方法でも提出できます。

それぞれの提出方法について、詳しく見ていきましょう。

 

(1)郵送を利用する

郵送での提出は、切手と封筒だけ用意すればできるので手軽です。

用意する書類は窓口に提出する場合と変わりありません。確定申告書類を封筒に全て入れ、控えを受け取るために切手を貼った返信用封筒を同封して郵送しましょう。

 

送り先は納税地の管轄税務署です。郵送では提出期限は消印が有効となるので、3月15日中に忘れていたことに気付ければ期限内の提出が可能です。

 

(2)e-Taxを利用する

確定申告をe-Taxで提出するには、電子証明書の取得やカードリーダーの購入など事前準備が必要です。

しかし、手続きを全て電子で行うことができるので、紙の書類は必要ありませんし提出にかかる時間も一瞬です。すでにe-Tax利用の手続きが済んでいる方であれば、直前まで確定申告を忘れていても安心ですね。

 

(3)管轄の税務署に直接提出

もちろん、確定申告は管轄の税務署に直接提出することもできます。

書類でわからないところがあれば職員の方に質問できますし、直しがあった場合も郵送やe-Taxでの提出より手間がかかりません。

 

税務署の開庁時間は平日の8:30~17:00です。確定申告書の提出自体は、時間外収受箱へ投函することによりいつでも提出できます。

 

4.≪確定申告を忘れた場合のペナルティ≫

それでは、確定申告を忘れた場合のペナルティについて詳しく見ていきましょう。

 

(1)無申告加算税

確定申告の期限に遅れると、「無申告加算税」というペナルティが課せられます。

無申告加算税は、納付すべき税額に対して「50万円までは15%・50万円を超える部分は20%」の割合を乗じて計算した金額となります。

 

例えば、納税額が100万円なら、

 

(50万円×15%)+(50万円×20%)=17万5,000円

 

ということになりますね。もちろん本来の納税額100万円も納付しますから、計117万5,000円の納税が必要になります。

 

ただし、税務署の調査を受ける前に自ら期限後申告を行った場合は、この無申告加算税の税率は5%に軽減されます。

同じく納税額が100万円の場合は、

 

100万円×5%=5万円

 

ということになります。追及される前に自分で申告することで、3倍以上もペナルティの金額を抑えることができるのですね。

 

また、期限後申告であっても無申告加算税が課されないケースもあります。

 

①無申告加算税が課されないケース

無申告加算税が課されないケースは、以下の2つの条件を両方満たした場合です。

 

  • 法定申告期限から1ヶ月以内に、自主的に期限後申告をしたこと
  • 期限内申告をする意思があったと認められること

 

このうち、期限内申告をする意思があったと認められる」とは、以下の条件を満たしていることです。

 

  • その期限後申告で確定した納税額を、全額法定期限内に納めること
  • 期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、かつ、期限内申告をする意思があったと認められる場合の無申告加算税の不適用を受けていないこと

 

つまり、期限後すぐに自分から申告し、さらに過去にも確定申告が遅れたことがなければ、悪質ではないので容赦しましょうということですね。

そのため、これまで確定申告が遅れたことがなく、うっかり忘れたことに1ヶ月以内に気付いた場合には、早めに期限後申告をすれば通常の確定申告と何ら変わりはありません。

 

(2)延滞税

確定申告により確定した税金を法定期限内に納めないと、延滞税が課せられます。

これは「確定申告自体を忘れた」ことには直接関わりはありませんが「確定申告後に税金の支払いを忘れた」場合に適用されるものです。

 

延滞税は、支払いが遅れた期間によって課税率が変わります。

原則的な課税率は、以下の通りです。

 

  • 納期限の翌日から2月を経過する日まで:年3%
  • 納期限の翌日から2月を経過した日以後:年6%

 

ただし、平成26年1月1日以後の期間は「特例基準割合」が適用されて税率が低くなります。

具体的な税率は、以下の通りです。

 

  • 納期限の翌日から2月を経過する日まで:年6~4.5%(期間による)
  • 納期限の翌日から2月を経過した日以後:年9~9.2%(期間による)

 

(3)青色申告に関わるペナルティ

先にもお伝えしましたが、青色申告をしている場合、2年連続で期限後申告となると青色申告の承認が取り消される場合があります。

青色申告の承認が取り消されると、10万円・65万円の青色申告特別控除が受けられなくなるなど、税制上の優遇が受けられなくなってしまいます。青色申告を行なっている個人事業主の方は、特に確定申告を忘れないように気をつけましょう。

 

(4)重加算税

重加算税とは、意図的に実情と違う内容で確定申告をした場合に課せられる罰金です。多くの場合、所得を過少に申告し、「脱税」や「ほ税」をした場合に課せられます。

 

課税率は税額の35~40%と高額で、もし払えない場合は不動産や貯蓄の差し押さえなどの処分が行われます。

確定申告は期限内に忘れず行うのも大切ですが、内容を正直に申告するのも重要です。

 

なお、もし意図的ではなく確定申告の内容を間違えてしまった場合は「修正申告」を行えば重加算税の課税は免れられます。

 

5.≪確定申告を忘れたら、修正申告は必ず行おう≫

確定申告は、

 

  • 忘れない
  • 忘れて期限を過ぎてしまったら、なるべく早めに期限後申告をする
  • 内容は正しく申告する
  • 確定した税金は期限内に納める

 

以上のポイントを守って行うようにしましょう。

ペナルティはあくまで悪質な脱税を取り締まるためのものなので、誠実な対応をしていればそこまでひどい罰金が課せられることはありませんよ。

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2019/09/11 コーポレートファイナンスとは?【意味や定義を解説】

「コーポレートファイナンス」という言葉を聞いたことがありますか?難しい経済用語のように思えますが、要はコーポレートファイナンスとは「企業価値を高めることを目的とした財務活動」のこと。

財務活動の中で、特に資金調達のことをコーポレートファイナンスと呼ぶことも多いです。

 

今回は、そんなコーポレートファイナンスの基礎知識や戦略、企業価値の求め方について解説していきます。

 

 

1.≪コーポレートファイナンスとは?≫

コーポレートファイナンスとは、企業価値を高めることを目的とした資金調達・資金運用といった財務活動のことです。

また、必要な事業資金を市場から調達することをコーポレートファイナンスと呼ぶこともあります。

 

さらに、「企業の財務や金融」「資金調達の方法」「投資判断の方法」などの意味でコーポレートファイナンスという言葉が使われることもあります。

現時点では「コーポレートファイナンス」は多様な意味を持つ言葉なのです。企業側から見るか、投資家側から見るかで意味合いが変わってくるので、なかなか理解しにくいところがあります。

 

「コーポレートファイナンス」という言葉で呼ぶと難しく感じますが、要は「企業の利益を上げて大きくしていくための経営戦略」ということ。決して難しいことではなく、どの企業も目標としている基本的なことですね。

 

この記事では、コーポレートファイナンスという言葉は企業側から見た「資金をどのように調達し、どのように運用するか」という財務戦略という意味で使っていきます。

 

(1)コーポレートファイナンスとプロジェクトファイナンスの違い

コーポレートファイナンスとプロジェクトファイナンスの違いは、以下の通りです。

 

  • コーポレートファイナンス:企業の事業全体に対する投資・出資・融資などの集め方・運用方法

  • プロジェクトファイナンス:企業が行う一つのプロジェクトに対する投資・出資・融資などの集め方・運用方法

 

コーポレートファイナンスで調達する資金は、企業そのものの価値や信用が評価対象となります。それに対し、プロジェクトファイナンスの場合は一つのプロジェクトの収益性などが資金調達の際の評価対象です。

 

2.≪コーポレートファイナンスにおける企業価値の求め方≫

コーポレートファイナンスの目的は、その企業の「企業価値」を最大化すること。投資家側からすると、企業価値が投資の判断基準(コーポレートファイナンス)となります。

ここでは、そもそも企業価値とはなんなのか、また企業価値を判断するための指標について解説していきます。

 

(1)企業価値とは

企業価値とは、一言でまとめると「企業全体の経済的な価値」のこと。具体的には、「その企業が将来にわたって生み出すフリーキャッシュフローの現在価値」を意味します。

「フリーキャッシュフロー」とは「自由に使える現金」のこと。つまり、負債ではない企業の純資産ということですね。

この純資産を増やして経営を安定させることが、コーポレートファイナンスの目的です。

 

例えば、純利益1億円という売上がこの先10年続くであろうという企業の企業価値は、10億円です。さすがに実際の計算はここまで単純ではありませんが、「その企業にこの先見込める利益の総額」というイメージですね。

これを最大化するための資金調達・資金運用の方法がコーポレートファイナンスなのです。

 

(2)企業価値をもとめる際に使われる指標

企業価値を求める際に使われる指標には、以下のものがあります。

 

  • NPV(正味現在価値)
  • DCF法
  • IRR(内部収益率)

 

それぞれについて、詳しく解説していきます。

 

(3)NPV(正味現在価値)

NPV(正味現在価値)とは、「Net Present Value」という言葉の略です。「企業が将来にわたって生み出す利益を、現在の価値に換算した場合の企業価値」という意味です。

NPVは「その企業に投資することにより、どれだけの利益が得られるのか」を判断する指標となります。

 

  • 企業価値=将来のキャッシュフローの総額(現在価値)−投資コスト

 

投資家や株主、金融機関が企業に出資・融資するのは、企業が将来にわたって生み出す利益を購入することと同じです。その将来にわたって生み出す利益より投資額の方が少ないとわかれば、投資をする価値があるということになりますよね。

 

しかし、現在の1万円と、10年後の1万円の価値は違います。

例えば、10年後に日本の経済規模や物価が10倍になっていれば、10年後の1万円は現在の1,000円の価値しかありません。ここまで極端なことはありえませんが、投資する側がお金の価値の変動を含めた損得を計算するために求めるのが、NPV(正味現在価値)なのです。

 

(4)DCF法

DCF法とは「Discounted Cash Flow」、直訳すると「割引キャッシュフロー」の略。事業が生み出す期待フリーキャッシュフロー全体を、一定の割引率で割り引いて企業価値を算出する方法です。

 

  • 企業価値=将来のフリーキャッシュフローの総額を加重平均資本コスト(WACC)で割り引いた現在価値

 

先に解説したNPV(正味現在価値)も、DCF法のうちの一つ。事業・プロジェクト・企業など、収益を生み出す資産を所有し続けた時に生み出す利益を、加重平均資本コスト(WACC)を用いて現在価値に換算したものです。

 

(5)IRR(内部収益率)

IRRは「Internal Rate of Return(内部収益率)」の略。新規の事業やプロジェクトの収益率を計算し、投資判断を行うためのもので、「事業やプロジェクトのNPVがちょうどゼロになるような割引率」と定義されています。

簡単にいうと、ある事業やプロジェクトが将来生み出すフリーキャッシュフロー(現在価値)と、それに必要な投資額(現在価値)がちょうど均衡する割引率となります。

投資家はあらかじめIRRにハードルレートを定め、その企業のIRRがハードルレートを超えていれば投資するという判断を行います。

 

3.≪コーポレートファイナンスにおける資金調達≫

最後に、コーポレートファイナンスにおける資金調達の方法について解説していきます。

広義でいうコーポレートファイナンスとは企業の資金調達活動そのものなので、企業間の与信取引や、売上金で運営をする内部調達なども含みます。

 

しかし、ここではコーポレートファイナンスの中でも企業の外部から資金を調達する「株式資本」「負債」の2つについて詳しく見ていきましょう。

 

(1)株主資本

企業が株式を発行し、将来的な収益を見越した投資家がそれを購入して集まる資金が「株主資本」です。

 

コーポレートファイナンスにおける株主資本の最大のメリットは、返済の義務がないこと。例えば当初1万円で購入した株式の価値が経営状況の悪化などで100円まで下がっても、それは投資家の見通しが甘かったという自己責任になるので企業は補償義務を負いません。

また、信用度の面で借入や社債発行ができない企業も、株式の発行なら資金調達をすることができます。

 

ただし、株主の持分によって経営権が生じるため、場合によっては外部の投資家や投資企業に経営権が奪われる可能性があります。また、株主には持分に合わせた配当が必要となるので、一度発行した株式には株式資本コストがかかります。

こういったリスクもあるので、株式の発行時には「誰に、どのくらい株式を発行するのか」という設計を考えることもコーポレートファイナンスの一部です。

 

(2)負債

負債は、金融機関や投資家・投資企業などからお金を借りるという資金調達方法です。もっとも単純かつ一般的なコーポレートファイナンスの方法となります。

もちろん借金ですから返済の必要があり、利息という負債コストも追加でかかりますが、設備投資などで大きな出費が必要となる時には有効なコーポレートファイナンスです。将来にわたって利益を生み出す見込みがある、企業価値が高い企業ほど高額の借入が可能となります。

なお、借入の他には、新株予約権付社債・普通社債の発行という方法もあります。

 

ただし、借入をするためには担保や保証人が必要となる場合が多く、会社の信用が問われます。また、期日が来れば経営状況に関わらず返済をしなければいけないので、赤字経営のベンチャー企業や零細企業には厳しい資金調達方法といえるでしょう。

 

4.≪まとめ≫

「コーポレートファイナンス」という言葉の意味や、企業価値の求め方がわかりましたか?

コーポレートファイナンスとは「企業の利益を上げて大きくしていくための経営戦略」のこと。聞きなれないカタカナ用語にすると難しく感じますが、実はどの企業も行なっている基本的な経営戦略なのです。

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2019/09/04 単式簿記とは?【複式簿記との違いを解説】

単式簿記とは、2つある帳簿付けの方法のうちシンプルで簡単なものです。簿記の知識がなくても帳簿付けをすることが可能ですが、複式簿記より記録しておける内容が少ないのがデメリット。

 

今回は、そんな単式簿記と複式簿記の違いや、単式簿記で帳簿付けする方法を具体的に解説していきます。

メリット・デメリットを把握して、自分に最適な帳簿付けの方法を選びましょう。

 

 

1.≪単式簿記とは?≫

単式簿記とは「簿記」の記帳方法の一つです。対になる言葉として「複式簿記」があり、単式簿記の方が複式簿記よりもシンプルで簡単です。

 

そもそも「簿記」とは、会計報告を行うために帳簿をつけること。この帳簿を元に会計業務を行い、会社や個人事業の財務状況を報告します。

 

(1)単式簿記と複式簿記の違い

単式簿記と複式簿記の違いは、1回の取引につき、1つの項目を使うか、複数の項目を使うか。

単式簿記では「収入or支出」と「勘定科目」「金額」のみを一列に書き記します。複式簿記では帳簿を左右で「借方」と「貸方」に分け、借方と貸方の金額が同じになるように記帳していきます。

 

言葉の説明だけではわかりづらいので、具体的な例を見ていきましょう。

同じ取引を単式簿記と複式簿記のそれぞれの方法で記帳すると、以下のようになります。

 

例1 ◯月◯日、金融機関から100,000円の借り入れを行なった場合

 

単式簿記:◯月◯日 収入 借入金 100,000円

複式簿記:◯月◯日 普通預金 100,000円 / 借入金 100,000円

 

例2 △月△日、10,000円の電気代を現金で支払った場合

 

単式簿記:△月△日 支出 電気代 10,000円

複式簿記:△月△日 電気代 10,000円 / 現金 10,000円

 

例3 ×月×日、50,000円の商品を売って現金を受け取った場合

 

単式簿記:×月×日 収入 商品売上 50,000円

複式簿記:×月×日 現金 10,000円 / 商品売上 10,000円

 

そして、これらの取引が行われた後、単式簿記の帳簿は以下のようになっています。

◯月◯日 収入 借入金 100,000円

△月△日 支出 電気代 10,000円

×月×日 収入 商品売上 50,000円

 

単式簿記の場合は、お金の出入りを「収入・支出」の2パターンのみで管理します。そのため、収入の総額から支出の総額を引けば、収益がプラスかマイナスかがすぐにわかります。

この例だと、借入金10万円から支払いで1万円が減り、そのあと5万円の売上が入ったので、現在「14万円」のプラスだということがわかりますね。

ただし、「預金」「現金」という区別はないので、口座にあるべき金額はいくらか、手元にあるべき金額はいくらかということはわかりません。

 

また、単式簿記ではあとで返済する必要がある借入金も「収入」として計算してしまうので、最終的に手元に残る利益は「4万円」だという情報もわかりません。

さらに、帳簿を付け始める以前の預金額や借り入れ総額もわからないので、会社の会計の大枠を把握するのは難しいです。

 

次に、同じ取引が行われた後の複式簿記の帳簿を見てみましょう。

 

◯月◯日 普通預金 100,000円 / 借入金 100,000円

△月△日 電気代 10,000円 / 現金 10,000円

×月×日 現金 50,000円 / 商品売上 50,000円

 

こちらでは、例えば「電気代を支払った」という情報だけではなく、「電気代を現金で支払った」という情報がわかります。借入金の10万円は普通預金に入り、現金として手元にあるのは4万円だという情報もわかりますね。

複式簿記は単式簿記よりも書き方が複雑ですが、複式簿記の帳簿からは単式簿記よりも多くの情報が読み取ることができるのです。

 

また、複式簿記の場合は、お金の出入りを「資産・負債・純資産・収益・費用」の5つに分けて管理します。

上記の取引だと、「借入金」は「負債」、「電気代」は「費用」、「商品売上」は「収益」です。

 

そして、会計業務の際はこの帳簿をもとに「貸借対照表」と「損益計算書」を作成します。

これは「資産・負債・純資産・収益・費用」それぞれのカテゴリの総額はいくらなのかを算出するものです。これにより、会社がどのような財務状況にあるのかを詳しく分析することが可能になります。

 

(2)単式簿記は目的のみを記録する

単式簿記では、取引により現金が増えたのか・減ったのかという「収入・支出」と、その取引の目的のみを記録します。

「収入」のカテゴリになるのは、勘定科目でいうと借入金・売上金・事業主貸など。逆に「支出」になる勘定科目は、地代家賃・仕入・水道光熱費・通信費・給料賃金など全ての出費です。

 

そして、単式簿記では取引の「手段」の記録はしません。

手段というのは、現金のやりとりがあったのか、クレジットカードや売掛・買掛などで後払いになったのか、口座に振り込みをしたのか…などの支払い方法のことです。そのため、取引にかかった金額の出所はどこなのか、どこに入ったのかという情報はわかりません。

 

個人事業主や規模の小さい会社で、複雑な取引はなく現金の出入りさえわかればいいという場合は単式簿記でも十分です。

しかし大規模な会社では詳細な財務状況の把握が必要になるので、単式簿記が採用されることはほぼありません。

 

2.≪単式簿記のメリット・デメリット≫

それでは、単式簿記のメリット・デメリットを見ていきましょう。

 

(1)単式簿記のメリット

  • 簿記の知識がなくても記帳できる
  • 現金のプラス・マイナスがすぐにわかる
  • 作業工程数が複式簿記より少ない

 

まず、単式簿記の大きなメリットは簿記の知識がなくても記帳できること。

その取引が「収入」か「支出」なのかということは誰でも直感的にわかりますから、付け間違いも少ないです。家計簿をつける感覚で、誰でも帳簿付けができます。

確定申告も、白色申告なら単式簿記の帳簿付けで問題ないので、大きな控除枠が必要ない場合は手間が省けるでしょう。

 

また、単式簿記の帳簿は「収入-支出」というシンプルな計算で総計ができるので、収益がプラスかマイナスかということが一目でわかります。

詳細な経営状況の分析は必要なく、ざっくりプラスかマイナスかわかればいいという場合も単式簿記で十分ですね。

 

そして、単式簿記の場合は、複式簿記のように「貸借対照表」や「損益計算書」に発展させる必要がありません。

複式簿記が他の会計書類を作るための土台としての意味合いが強いのに比べ、単式簿記はそれだけで完結しているのです。

 

(2)単式簿記のデメリット

  • 経営状況が把握しづらい
  • 青色申告ができず、控除額が減る

 

単式簿記のデメリットは、記録しておける情報が少なく経営状況の把握がしづらいこと。ある程度規模が大きく、借入金や株式の配当、買掛金、売掛金など複雑な取引がある事業の帳簿付けは、単式簿記では無理でしょう。

 

また、確定申告で「青色申告」をするためには複式簿記での帳簿付けが義務付けられています。

10万円・65万円の青色申告控除など、青色申告は税制で優遇されるポイントがたくさん。単式簿記の帳簿ではこの優遇が受けられないので、納税額で損をしてしまう可能性があります。

 

3.≪単式簿記の書き方・記入例≫

先の例では不要な項目を省略しましたが、実際に単式簿記で記帳するときには以下の項目が必要です。

1つの取引ごとに、それぞれの項目を埋めて表を作っていくイメージです。

 

  • 日付
  • 収入or支出
  • 勘定科目
  • 金額
  • 摘要

 

記入例

◯月◯日 収入 借入金 100,000円 A銀行

△月△日 支出 電気代 10,000円 B電力

×月×日 収入 商品売上 50,000円 C株式会社

 

4.≪単式簿記の帳簿を作成する方法≫

単式簿記はノートに手書き・エクセル・会計ソフトなどで簡単に作成することができます。会計ソフトを使えば、最初から必要な項目や勘定科目のリストが用意されているので簡単です。

しかし、単式簿記にはあまり多くの項目は必要ないので、手書きやエクセルで1から作成してもそこまで手間はかかりません。

 

5.≪まとめ≫

単式簿記は簿記の知識がなくても作成しやすく、初心者におすすめの帳簿付けの方法です。収益のプラス・マイナスを一目で把握でき、確定申告も白色申告なら単式簿記の帳簿でできます。

 

ただし、事業が大きくなってくると詳細な経営状況は把握できず、複式簿記に切り替えざるを得ません

単式簿記の帳簿では青色申告もできないため、納税額で損をしてしまうというデメリットも把握しておきましょう。

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